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[7991]7頭・中 浅草 Lovers
=八卦(関東)
=19/07/29(Mon)20:58

敬称略です。



1景 クレオパトラ 有沢りさ

ローマ人のように白い貫頭衣をストンとかぶります。
彫像のように固まって座っていた7人が次々と立ち上がり、
ゆったりと優雅に踊り始めます・・・ツンとしたお顔で。

おぉ、クレオパトラ、汝は気高く、内面からの輝きに溢れています。
人差指を立てて唇にあててみせ、キスでイチコロよ、アタシがあんたを虜にするのに一瞬もかからないわ。

7人をステージに横一直線に並ばせたかと思えば、メインを核に離合集散。
めまぐるしく変わるフォーメーションに、あれよあれよと気をとられます。

ミディアムテンポで気持ちよく流れる1曲目に続き、2,3曲目もその速度を引き継ぎます。
2曲目花道半ば、移動台に体を横たえて誘惑、相好を崩さないでさめたまま見つめられると、
視線に射すくめられます。

3曲目ピークを待ち、よく引きつけて狙いすましてポーズを放ちます。
4曲目立ち上がりから、アプローズ(賞賛)という言葉を何度となく浴びて、移動台ごと去ります。
レイドバック、背を向けヒップラインを強調、そして肩より肘を上げたポーズでトルソーのように固まります。
幕が閉じるまでのほんのわずかの間、にこやかな笑みをこぼします。



2景 じゃじゃ馬ならし 木葉ちひろ

ぎらついたハードロック。早弾きのギター、隙なく攻め込むドラムで、ケンカ奏法。
闘いながらもぴったり息を合わせるプレイを伴奏に、戦士の装束でふたりが熱くバトル。
ムチを振るい、間合いを詰め、絞め技の攻防。
チョーク、チョーク・・・ ロープ、ロープ・・・
手に汗握る天下分け目の一線、あぁ新日を思い出す・・・

あぁコケたぁ! 一巻の終わりか!?
残酷な結末予想を裏切って、助け起こして熱い接吻を交わします。
ツンデレかよ!!

面前でフリフリのピンクのワンピに着替えさせてもらい、うきうき、ワクワク、アイドル歌謡で花道を上ります。
 ♪夢の中では何度も言えるのに・・・ すきです♪
勇気を振り絞って、たいへんよくできました、まる

ラブラブモードでベッド。
 ♪ねぇ振り向いて、とりこにさせて、Turn to me♪

恋に恋する乙女の気持ちを表して、アゲて、はしゃいで花道を引いていきました。



3景 リチャード3世 香山蘭

血なまぐさい薔薇戦争を、陰謀と裏切りで王座に駆け上がるグロスター公リチャード3世。
黒いコートを羽織り、手には緋色の手袋、悪行の痕跡を隠します。
冒頭、メインの表情をピンスポットで浮かび上がらせれば、ふてぶてしい顔、射抜くように眼光鋭く。
政敵4人に見立てたバックダンサーに囲まれ、競うようにステップ、一歩もひけをとりません。
実兄クラレンスを、王妃エリザベスの弟リヴァーズ伯を、幼いエドワード皇太子を、ヘイスティングズ郷を、近親者は片っ端から亡き者に。

2曲目はときに消え入りそうなリズムで、蹴散らされた4人が亡霊のようにはけていきます。
そのリズムのまま花道上りへ。
盆に着くと短い挿入曲がかかり、ちょっと気分を変えます。

史実を超えて原作者が創り出した圧倒的なキャラクター。
肥大化した自我(背中の瘤のように)、
矮小化した良心(萎えた腕のように)。
危ない橋を渡って才覚ひとつで乗り切って、戴冠へ。

ベッド前半はラップ、ときおりスラングを挟みながら、大丈夫なんだから、と自分を諭すように歌います。
♪Dark nights in my players♪ 
(お祈りをするときだって、落ち込むことはあるさ〜)

王位を守るために最後の闘いに乗り込む王ですが、その前夜、夢に亡霊が現れて口々に罵り、まどろみを破られます。

♪open your eyes, open eyes wide♪

この4曲目がミクスチャー・ロックですが、拡声器を通した声が、エフェクターをかけたように不気味に響きます。
快適なテンポ、きれいに韻を踏んで社会を揶揄するラップです。

♪・・あらわ傷を披露、   (ヒロ〜、ヒロ〜)
   けれど血は出ぬわが身、
   中身がからっぽの強み、
         伴う痛み、(ズシンとドラミング)
来た道振り返り (ズシン)
生まれる弱み・(ズシン)

『痛み』でダイブしてから流れるようなベッドが加速。
一拍遅れて入る歌い方、カッコよくいなすようなフレーズを味方にして、耳から入って腕や脚から流れ出るように魅力的なダンス・ベッド。

立ち上がりから花道戻りは奔流のようによどみなく。
立ち回りを交えて、この悲劇を締めくくります。

没1485.8.22. Bosworth Field(享年32歳)
死因;うつぶせにさせられ、切っ先が頭蓋骨を破り脳まで貫通。



4景 十二夜 星崎琴音

舞踏会が始まりました。
伯爵令嬢はひとりぽつんとパートナーを待ち続けます。
小姓で男装のシサーリオ(正体はオリヴィア)が、気遣って話し相手を務めます。

待ち人が来ました。
公爵と令嬢は仲良さそうにワルツでいい雰囲気に。
きらびやかな衣装、心浮き立つシャンソン、3組の社交ダンスは、場の空気も華やいで、心なごませるシーンです。

ところが女心はわからぬもの、男装と知るよしもなく、令嬢ったらシサーリオに首ったけに。
恋のもつれに人違いが重なって・・・



物語の展開をここで断ち切って、令嬢の気持ちにフォーカスしたベッドへ。
花道上りからベッドまで3曲を、恋の芽生え、恋に夢中、失恋とつなぎます。

Fall in loveはジャズバラード。
甘くせつないフレーズで酔わせます。

Crazy for loveは憧れとためらいを抱え込み、
賞賛の言葉にもいちいち『May be』とつけます、13回も!

ベッド着は目のさめるようなレモンイエローでロングドレスのよう。
いつくしむ表情、明るい微笑で、歌詞のメッセージを伝えます。

Broken heartはゴスペルで。
さりげない詞で始めた伸びやかなボーカルが、傷心の深さを伝えます。

 ♪抱いた膝に次々こぼれるしずく・・・♪

ひとつめの『すき』でスワン、ゆるやかに解いて余韻に浸ります。

恋破れても何度となく『すき』と重ねるボーカルを、ゴスペルコーラスが支えます。

 ♪Loving you ,It’s true・・・♪

回り続けるミラーボールを背負って、幕に消えていきます。



5景 The Scottish play 川菜ひかる

フェアなんて最悪じゃぁん。
邪悪なのに『いいね』しよ!
W−I−C−K−E−Dぃ〜
悪の力を呼び覚ませ!

のっけから客席を3人の魔女が奇抜なコスチュームで煽ります。
(その裏で、ここには登場しない主人公は、予言に翻弄されて破滅への道を辿ります)

♪Long live, havin’ some fun!
 We got all the ways to be wicked♪

プラチナブロンドのウィッグ、派手な赤と青を配したスタジャンにホットパンツ。
するりと伸びたおみ足に黒の網タイツ。
ヒップホップ調のノリで、チアガールばりにきびきびと、人文字なども披露します。

ベッドのコスチュームは、胸まで届く網タイツ。
肌の白さが浮かび上がります。

小悪魔的なキュートさで、悪戯っぽく含み笑い、
翻弄される運命など、どこ吹く風。
あっけらかんとはしゃぎ回ります。



6景 オセロー 空まこと

オセロー(ムーア人)に殺された妻デズデモーナ。
原作にはありませんが、死後のデズデモーナの心境を推し測り、
さまよえる魂を形象化してみせます。

3曲構成、それぞれ冥途、安息、涅槃。
板付きで暗闇から、ベールに包まれた屍状態で浮かび上がります。
身を起こし、ベールを被ったままバレエ振り。
死者を葬送するようなチェロとコントラバスが物悲しく響きます。
すべては盆の中、直径2.5mの空間で進行します。

生前の記憶がフラッシュバック。
とまどい、慌てふためくさまを、優雅でダイナミックな動きで表します。
小刻みに踏むステップは前衛的な印象を与えます。

2曲目、弦楽四重奏曲に合わせてなだらかに動きます。
ブリーツ流れる白く長いドレスはくるぶしまで届きます。
頭頂部からすっぽり被るベールは顔の表情が見て取れるほど薄く透けます。
それが膝丈まであり、速度を抑えてゆるやかに舞うと、
ベールの襞が漂って海中のクラゲのようにも見えます。
曲の半ばで全裸のうえにベール1枚の姿へ。
弦楽合奏で細やかな漣のような音に包まれ、彷徨のなかの安息へ。

3曲目は、ミニマル・ミュージックのよう。
ピアノやチェンバロが繰り返す旋律が、弦楽器を背景に浮きたちます。
天井から射し込む6条の青い光の帯。
1燈だけ淡い黄色が救いの手をさし伸ばすようにして、降り注ぎます。
しめやかに進む儀式で、一瞬ですが膝つき反り返りでポーズを切ったとき、
淡い光のなかに神々しい裸身が浮かび上がります。
最後は眠るように動きを止め、涅槃に達して暗転。



7景 お気に召すまま 川上奈々美

男装ギャニミード(正体はロザリンド)は、姉妹のように仲のよいエイリーナ(正体はシーリア)と共に、シーリアの父フレデリック公爵の追跡から逃れます。
道中、身の安全のため貴族から貧民へと身をやつします。
ふたりは鳥籠をきらって自由を求め、オーランドの森に潜入したのですが、
そこは危険がいっぱい、罠だらけ。

さぁさぁ、皆の衆もオーランドの森へ!
何が起こるか、ワクワク、どきどき。
ミステリー・ツアーの始まりです。

プロジェクターの画面いっぱいにバスの車窓風景が広がります。
ミステリー・ツアーにフラワー・ムーヴメントがのり移って(映画つながり)、
令嬢はヒッピースタイルに扮しています。
ヒッピーならゴーゴー・ダンスだっけ?
多少ならハイでラリっても、合言葉はラヴ&ピースで心は通じます。

ギャニミードはいとおしいオーランド様と偶然こんなところで再会するとは!
こんな姿で名乗れないケド・・・。
そのまま意気投合して男友達として、オーランド様に恋の成就のてほどきを。
うまくいくといいですネ、誰とぉ?って、それアタシのことじゃん!

導入部での1曲目はストレートなロックで小気よく。
8人がノリよく、ほぼフリースタイルで踊りなか、ギャニミードとオーランドの掛け合いが。
説いてみたり、逃げてみたりとからんで、正体をロザリンドと明かしてからは、
落ち着いた声でしんみりと歌う、ゴスペルバラードへ。

♪ It's a cold and it's a broken Hallelujah♪
              ・・・神を讃えよ・・・

静まり返ったなか、純白の衣装を脱ぎ去り、レインボーカラーのベッド着へ。
逡巡しながら花道から盆へ。
のたうちまわりながら、ブルースでベッド。

気の多い男を引きとめようともがく女心の苦しさを訴える熱唱。
愛に溺れ恋に焦がれて、狂おしく悶える表現力に目を奪われます。

気を失った常態から呼びさまされて、立ち上がりはディスコ曲。
1曲目のアンサーソングの位置づけで、ライトなポップスセンスが光ります。

世界中を旅して回ろうゼ!
ロンドン、ハンブルク、パリ、ローマ、リオ、香港、東京、LA、ニューヨーク、アムステルダム、モンテカルロ、バーミンガムのシャード横丁(俺んちだけど)
さぁ、遊びまくろうぜ、パーティー、パーティー!

気ままなステップ、明るく幕の向こうに消えていきます。



8景 真夏の夜の夢 星崎琴音

円陣でパックを囲む妖精の集い。
底抜けに明るい印象で、いたずら好きの妖精たちがじゃれあうように賑やかに。

ボサノバ・アレンジで耳障りのいいメロディラインが颯爽と、先へ先へと走ります。
ステップも軽快に捌きます。

インストに入ってパン・フルートが主旋律のパッセージを吹いたのを合図に、
天からハートが降ってきて、もれなく妖精に媚薬のプレゼント。
パックの悪戯好きにも呆れます。
『媚薬』の威力にかこつけて、妖精たちは枕投げに追いかけっこに、唇の奪い合いに耽ります。

消え入るようにか細い声で、アカペラでソプラノのソロパート。
♪and when they let you down,(気分サゲ?)
The morning rolls around(明日になれば〜)♪

続いてコーラスを重ねて、新しい日が始まるんだから・・・と唱和します。
同調するように輪が広がり、次第にスケールを大きくしていって。
エンディングは晴れ晴れとした顔で締めくくります。


                          以上

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