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[7995]8中・結 浅草 百物語
=八卦(関東)
=19/09/08(Sun)10:57

敬称略です。



1景 座敷わらし 清水愛

ぽつんと座るメインを、10人が取り囲んで正座します。
赤や青の絣のような柄の小袖を着て、裸足です。
か細いソプラノが高音域で、糸を引くように語尾を伸ばします。
こだまするように、そのフレーズを何度も繰り返します。
メインはそのフレーズに口の動きを合わせます。

‘アタシのこと、視えるの?’

手話のような手踊りで始まり、11人がぱっと横一線に並んで、ダイナミックな動きの激しさを増していきます。

‘アタシのこと、視えるの?
 ねぇ、視えるの・・・‘

奥座敷で無邪気に遊ぶ子ら。
ひぃ、ふぅ、みぃ・・・ひとり多い気がする。
もう一度数えようとすると、だるまさんが転んだを始めます。
また数えようとすると、隊列をなして通りゃんせを始めます。

もうちょっと、ねぇもう少しだけ遊ばせて。
はかなく闇に葬られた子らの想い。

ベッド着は緋色の地に梅が枝の襦袢。
帯を解いて肌をさらし、連続ポーズ。
絶唱するロック・ボーカルに挑みかかります。
花道戻りで、冒頭での手話のような手踊りをもう一度繰り返し、強い印象を与えます。



2景 夢十夜 前田のの

椅子に掛けて目の前の鏡を見ます。
窓外の景色が鏡に映し出されます。
豆腐屋が喇叭を吹いて通ります。
喇叭を吹く頬がふくらんでいます。
のどかな金魚売りの声が聞こえます。
声がするなら姿も映るはずですが・・・

鏡の上を探します。
どこ?

声が嘘か、鏡像が嘘か、私が嘘か。
虚実ないまぜの世界で揺さぶられます。

アコーディオンが奏でるノスタルジックなワルツ。
レモンイエローのドレスを揺らし、ダンスシューズで踊る3人の少女。
合わせ鏡のようにぴったり寄り添うダンスで3人がシンクロしてゆきます。

3人は鏡像と実像の組み合わせか、
はたまた三美神になぞらえたものか、
謎掛けに想像力は膨らみます。

ベッド着は短いワンピースで、白地に淡いレモンイエローを差し、
品よくレースが添えられます。
本舞台でハイヒールを履き替え、優雅に花道を歩みます。
連続ポーズでひとつめの波、ふたつめの波と、重ねてうねりを起こします。

ベッドの立ち上がりでハイヒールを丁寧に脱いで、
はかなげな姿を幕のむこうに隠します。



3景 金縛り 熊野あゆ

(仮称)あゆちゃんから、しばしば呼び出されるわけよ、最近。
クセになっているってゆうかぁ〜

あぁ、またテレビつけっぱなしで寝てえぇ。
深夜だから、画面にカラーバー(試験放送)。
薄暗い部屋の壁が三原色で染まってる。

寝相が悪い子だね、この子ったら。
うつぶせだと自分の舌が気道を狭めて、眠りを浅くするっていうのに。
あぁあ始まってら、意識覚醒、身体は目覚めないままの状態、『金縛り』。
世間様は、夢魔の悪戯とか言いふらしますが、いい迷惑。

意識に追いつくように、身体のほうも揺り起こしましょう。
エクソサイズ替わりに、ソレ、操って踊らせてやる。
そぅれ、ソレソレ、夢遊病か、酔拳か。
意識をトバして半ば睡眠したままのダンスは、なにやらコンテンポラリーっぽい。

(仮称)あゆちゃんと私のデュエット。
ステップ、&ターン、そして脱力、&覚醒。
そぅら身体も心も眼を覚ましたところで、私はこれにて、アディオス。



アタシ、暗がりをひとり歩き続けました、いつのまにかぁ。
ネグリジェはなぜか横ストライプの三原色。
スポットライトを浴び、視線を感じるんですけどぉ。

これは夢かしら。
浅い夢から醒める瞬間に視る、はかない夢。
できれば醒めないでほしいの。

♪・・・会いたくて、あなたの胸で眠りたい♪

好きな、好きな、あなたに縛られていたい。
・・・・ずっと、ずっと



(ため息)あぁ、二度寝してらぁ。



4景 雪女 沙羅

雪の深山を思わせる舞台装置、白銀の世界に雪明り。
青白い逆光に浮かび上がる5人は、凍えたように固まっています。

吹雪が途切れ、重苦しいテーマ曲、苦々しげなセリフ。
男性ボーカルが押し殺した声で歌うとき、しのび寄るようにしなやかな動きで。
高揚して烈しく歌うとき、切れよくダイナミックな動きで。
静と動を表裏一体に、潮の満ち干きように変わります

メインはバレリーナのよう。
白のコルセット、下は長めにゆとりを持たせたスカートで、
ターンにふわりと裾をなびかせます。

バックダンサーは女王エルサのように澄んだ水色のコスチューム、
フィギュア・スケートのようにスカートを短めに仕立てて、
すらりとした脚を見せつけます。

ベッド着は腰巻の上に、薄手のガウンを羽織ります。
軽い生地はシースルー、淡い水色の刺繍文様をあしらい、衿に白いファー。
女王らしく高貴な印象を与えます。

はかなげにしみじみと歌う3曲目。
4曲目はうってかわってドラマチックにロックバラード。
いつものように静止ポーズを丁寧に積み重ねるのですが、
曲想にしなやかな肢体を預けるように動き、やがて太い流れを作りあげ、気宇壮大。
やがて花道戻りで壮大なピークを築きます。



5景 妖狐 雅麗華

白い和服、帯に九尾をたらし、白い羽根扇を手にします。
メインを核に白狐4匹をステージ中央に結集させます。
ステージ奥から客席頭上に向けて豪快に放つ白色光ですが、
妖狐を逆光の中に立たせて神秘的。

かわいらしく跳ね回る仔狐に取り囲まれ嬉しそうな妖狐は、
ゆったりと日舞を、白足袋でそろりそろり。

2曲目は舞台奥で早替わり、仔狐が下手にはけると、
あやかしの妖狐が奈落に誘います。

♪この指とまれ・・・
  連れてってあげる・・・
   後戻りはもうできない・・・♪

光沢のあるつややかな銀色の創作着物が、照明を派手に乱反射。
裾を割れば着物の裏地は闇のような漆黒で、裸足の足元を覗かせます。

手にした羽根扇は大ぶりで血のしたたるような真紅色。
華麗に捌けば、羽ばたくというよりは、鳶が空を切って浮揚するようで、
颯爽とした立居振る舞いです。

♪開かずの森へ・・・
  後戻りはもう出来ない・・・♪
(リバース か/え/れ/な/い・・・)
闇の奥から、ささやきが。

立ち上がりから移動台に乗っての花道は、お得意の扇子遣いで、
荒業、隠し技をふんだんに交えて縦横無尽。
ロックアレンジの和楽器の伴奏に合わせて、一気呵成に扇子の舞。
花道戻りもギアを上げ続けて、目にもとまらぬスピードで、
華麗に舞台を締めくくります。



6景 濡れ女 織田真子

夏だ! 海だ! サーフィンだ!
渚でAMラジオから流れる、御機嫌な60年代サーフ・ミュージックで、
レトロに演出します。

花柄ビキニのキュートな3人娘は、肌もピチピチ。
水鉄砲でやぁい、やぃ、と無邪気にかけっこ。
サンオイルぬりぬりした小麦色の肌は、水滴をはじきます。
イイおんながこんなにいるとは、濡れ女の豊漁です。
シャワーが霧となってステージ上を漂い、虹の架け橋もかかりそう。

1曲目、渚ではしゃぎまわった後に、
2曲目、サーフボード抱えて沖へ。

この曲ならテレビっ子世代にも聞き覚えがありそうな。
♪のってけ、のってけ、のってけサーフィン・・・♪
シンプルなメロディラインをしつこく繰り返し、
なじんだフレーズを脳内で反復させます。
エレキのテケテケテケ〜が懐かしい。

楽しさを満喫した渚の1日も過ぎようとしています。
気のせいか波の音がひときわ大きく聞こえます。
夕暮れ、どこか人目のつかないところへ。

ビキニの紐に指がかかり、するすると。
『あっち向いててね』
『うん』
返事だけはいいのですが、釘付けになった目が離せません。
すいかを抱えて、それも立派なの2個。
おいしくいただきましょうか、後ほどに。



7景 かざぐるま 桜庭うれあ

風もぴたりと止んだ蒸し暑い晩、血染めの着物で佇む女房。
抱えた乳呑み児は一陣の風とともにかき消えます。

これはなにかと目をこらせば、
曼殊沙華の花のように、地べたから屹立するかざぐるま、20〜30本はあろうかと。
ストレートの黒髪振り乱し、狂乱の顔は白塗りに、あわれさよりも怖ろしさが先に立ち。

たのみます、この児を抱いておくれ、とせがみます。
抱いてみなされ、
今に、石地蔵のように重くなる。

風も凪ぐと、空気が一変して朗々と島唄が流れます。
母の愛をせつせつと。
♪出逢う喜びと、叶わぬ悲しみと・・・
 蕾に秘する、幾千の夏(=いのち)

なだらかな音階を連ねて、一音一音を後引くように朗唱すれば、
言の葉がじわり、心に沁み入ります。

白い襦袢で盆に横たわります。
清涼な風が吹き、よく通る声で敬虔な歌が流れます。
心洗われ、身も浄め、さりげなく、そして潔く、盆を後にします。



8景 ゴースト 南まゆ

紗の向こう側に、麗しの美女。
紗をはさんで手前に、椅子に腰かける身なりのよい男性。
ステッキとハットを身にまといます。

曲はロマンチックなスタンダード・ジャズナンバー。
現世に降臨した彼女は、かつての恋人にも姿を示さず、霊としての存在のみ示します。
悪戯してハットを奪ったり、ステッキを受け渡したり・・・やがて寄り添いダンス。

♪I spend the lonely night dreaming of a song・・・♪
・・・思い出深い歌をきっかけに、あなたのことが蘇り、私の心につきまとって離れません。

当時の燃え上がったふたりの想いを胸に、男性はうつむいてわびしげに去ります。
傷心を癒すようにおだやかなヴァイオリン・ソロ、やがてピアノが寄り添います。
メインはオフホワイトのイレギュラーヘムスカート。
前身頃を大胆にカットして、ほっそりした脚を覗かせます。

甘みなバラードへ。
♪You’re in my arms・・・
So close together・・・♪

右手、左手を順にあげ、’together’のところで祈りを捧げるように掌を重ねます。
やっと気づいた、私は君のそばにいたい、So close と。

間奏でオーケストラがドライブ、ホーンセクションが音のアーチをかけ、
仰ぎ見るような反身でのポーズへ、鬱屈した想いを解き放ちます。

♪And still so far・・・♪
と寂しく締めくくります。

立ち上がりは天にも昇るような恋の讃歌、ブラック・コンテンポラリーでスロウ・バラード。
睦まじいふたりが互いに称え合い、高め合う理想の恋愛を歌います。

♪I will love you so for always・・・♪

盆から花道戻りは、きびすを返して後ろ髪引かれるような表情。
そのまま移動台で、すらっとした手脚をのびやかに使う、自然な立ち姿にポーズ。
‘always’のひとことを心に刻みます。



9.フィナーレ 百物語の締めくくり

1本、また1本、そして最後のロウソクが揺らいで消えて、闇に鉦が3度、ちんと鳴る。
静寂に耳をこらせば、7つの演目が走馬灯のように一瞬、よみがえる。

そう、終わったはずでした。

さぁ、張った、張った、張ったぁ、つっ込んでぇ、つっ込んでよ〜
胴元がBetをけしかけ、その声を合図に狂おしく曲が始まります。
今日いちダンサブルなシーンが、ラスいちに繰り広げられます。

ベールにシスターを思わせるゆったりとしたコスチュームは、
朱や紫のアーシーな色使いで、和様の文様を埋め尽くします。
長い袖を振りまわし、跳ぶ、跳ねる、身をそらす。

エンディングは唐突に、光と音とともに動きを止めてしまいます。

さて、お帰りはくれぐれもお気をつけて。。。。。。。。。


                           以上

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