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[8003]6中・結 浅草 EARTH BEAT
=八卦(関東)
=20/07/02(Thu)19:31

敬称略です。


1景 カリンカ 早瀬ありす

マトリョーシカのような村娘7人は、赤い実をつけた枝を手折られるように、嫁いでゆく日を夢見ます。
郷愁を感じさせる歌声にのせて、皆で朗らかにフォークダンス的な舞踊。
赤、白、緑、色とりどりの民族衣装、おつむには花束を載せたような髪飾り、髪から垂らして風になびくリボンの可愛いこと。
スカートの裾をつまんで待ちあげたり、スカーフを無邪気に振りまわしたり、純真さをアピールします。

メインはカリンカにちなんで赤いダンス着、着替えたベッドではチャーミングな白。
3曲目は、女性ボーカルが気持ちを乗せてバラードを熱唱します。
歌いぶりに乗せられるように、ベッド着がはだけて白い肌をさらし、ポーズをなだらかに連ねます。

終曲、感傷的なデュオにのせて、持ち前の活発さが炸裂します。
活気あふれる曲にのり、いてもたってもいられない様子、後半から立ち上がり後にステップを入れて、花道まで大きく張り出してパフォーマンス。
すーっと駆け抜けるように後ずさりして、閉まりかかる幕間に消えてゆきました。



2景 ワヤン・クリ 橋下まこ

導入部はワヤン・クリ。人形使い「ダヤン」をダンサーさんが器用にこなします。
白い布一枚を隔てて、逆投影したモノクロの影絵芝居。
ジャワに伝わる神々の活躍を語るとき、水牛の革をくり抜いたアルカイックな人形がイキイキと動き出し、つい引き込まれます。

暗転すると、芝居から抜け出してきたような女神5人が、優雅にダンスを披露します。
ガムランの摩訶不思議な音響空間。
自然界にある、そよ風やさざ波に耳を傾けるようで、心やすらぎます。

メインの姿は、額を飾る立派な冠、豪華に飾り立てた装身具、黄色のパンツに金色の飾りが溶け込むようになじみます。
体中に吊り下げたコイン状の飾りは、しゃらしゃらと動きに合わせて音を立てます。
ダヤンひとりで操る5体の人形のように、一体感のあるアンサンブルを見せてくれました。

再び暗転、メインのベッドへ。
印象派のピアノ曲は、楽曲形式から離れて楽想に忠実に、自由自在に戯れるよう。
ブルーとイエローの照明に包まれて、掌で水をすくったり、かきまわしたり、はねさせたり、ジェスチャー豊かに『遊』んでみせます。
暗がりで、きらびやかな金色の装身具に光を注いで乱反射させるとき、彫像のような裸身も輝きます。
穏やかな世界にいっとき浸りますが、それも影絵のようにあとかたもなく消えてゆきます。



3景 セマー 武藤つぐみ

ステージ中央にぼうっと、たたずむ姿が浮かびます。
オーケストラ開演前のチューニンングのように積み重なる音の隙間から、和音が立ち上がり、音程が旋律を紡ぎ出し、やがて荘重なゆったりしたリズムを奏でます。

混沌から手を差しのべるように光明が射します。
宗教的儀式に従い敬虔な祈りを捧げ、トランスに入ります。
くるり、くるり、くるり、

♪you’l find out・・・、 find out・・・、 find out・・・ ♪

生命力に溢れ、躍動し、ウキウキするようなダンスではありません。
瞑想し、心を鎮め、脳内物質かなにかが出てくるまでの10分間。
まわれ、まわれ、まわれ、

ランプシェードのように白いスカートを広げ、まわればまわるほど裾が持ち上がってめくれます。
爪先で蹴って踵を落として足元で推進力を得て、律儀にそれを小刻みに繰り返します。

最後には、スカートの下に体を埋めるように沈んで、止まります。
スカートに埋もれた顔は、恍惚の表情かもしれません。
場内はしーんと静まりかえります。



4景 アンダルシア 矢沢ようこ

フラメンコ・ギターは旋律を自在に操り、大胆に弦をかき鳴らします。
カンテは声を振り絞って、気持ちを込めて歌います。
ヒターノ(いわゆるジプシー)の流れを汲んだ、巧みな表現力を備えた音楽。
シャープな動きでかっこいいステージを群舞で引っ張ったあと、ベッドでは渾身の力を振り絞ります。
終曲は穏やかな人間味あふれる立ち上がりで、魂に救いを施します。

赤いシャツに黒のジャケット、パンツ。
下手にたたずんで、目の前の椅子に置かれたハットを、ひょいと取り上げます。
気障ったらしいけどかっこよく、ギターがコンパス(息の長いリズム)を繰り出してからは輪をかけてかっこよく。

メインを軸に、同じ格好のダンサー4人が取り囲む、厳粛なアンサンブル。
予測できないほど目まぐるしく動き回ります。
後半からは、突然流れを断ち切るようにパルマ(手拍子)。
5人の気持ちが前へ、前へと出て、せめぎあうようです。

2曲目はギター演奏でややフュージョンぽく、流麗に。
ショール1枚をふわっとまとい、盆に足を踏み入れてから、情熱的なカンテに身をゆだね、瞑想するような表情で腰をくねらせ、踵から地面に踏み込むように、フラメンコ・モード。
表情で引きつけたまま、のめりこむようにしてスケールの大きなポーズベッドへ繋げます。

立ち上がり4曲目は、いつくしむようなバラード。
ここまでのドラマと苦難を洗い流すように、整理されたポーズを連ね、いよいよ大詰めはレイバックで引き締めます。



5景 オクトーバーフェス 川菜ひかる

みなが浮かれまくるオクトーバーフェスでは、バンド演奏が威勢よくにぎやかに、会場の気分を盛り上げます。
ジョッキ片手に娘っこが、乾杯!、乾杯!、乾杯!の大盤振る舞い。
バンドが歌ものを奏でると、みないっせいに体を揺すって歌い始めます。
マーチのテンポでほがらかに。
♪Rucki Zucki!
    Rucki Zucki!
       Rucki Zucki!・・・♪

あーほんとにウマいねぇ
そこのチロリアンハットのにぃさんイカすねぇ、こっち来て呑みなよ〜
酩酊で理性の替わりに痴性を目覚めさせ、ふくらはぎ撫で回して、キモ!、あっち行けぇ
でも2秒たたずに乾杯で、無礼講ぢゃあぁ赦せ赦せ。

アップテンポな曲に移ると、ブラスが小気味よいフレーズを奏でて、ここぞとばかり呑めよ呑めよと焚きつけます。
呑みまくってストレス発散しつくしたメインは、笑顔で花道を上ります。

白いブラウス姿で前をはだけさせ、ヒップを揺らして桃色で裾の短いスカートを軽やかになびかせて、捲り上げたりして挑発します。
ゆるやかなターンや切り返しでリラックスした動きのあるベッド。

終曲は底抜けに明るいディスコナンバーで。
原曲は蛮族をテーマとしたせいか、もともとは誇張して力の入りまくった振付でしたが、
ここではキュートさを出して、往年のアイドル歌謡の振付をちょっとおおげさにした感じ。
メリハリのきいたディスコのリズムと、軽やかな振りが掛け合わさって融合し、新鮮味を感じます。



6景 琉球 清水愛

花笠を目深にかぶり、あでやかに目を引く琉球紅型のべべを着て、三板を手にし、しゃなりしゃなり、優雅に下手から3人が現れます。
琉球舞踊のスタイルはちょっとくだけて、のっけからロック調。
指笛であおり、鳴り物で盛り上げ、ドスンと太鼓を打ち込めば、3人娘はすかさずあいのてを入れて三板(カスタネットのこと)をかちりと響かせます。

優雅さのなかにもキレのいい動き、3人娘は息を合わせてのりのりで、思わず激しい舞踊となりました。

シンセサイザーでかすみがかかったように幻想的な響きをかぶせ、メインは黄の襦袢、襟を明るい紫にすると、互いの色を鮮やかに引き立てて色鮮やか。

3曲目は独特な琉球の言葉づかいで、娘を諭す親心を歌います。
花びらの朱で、指先をネイリング。
親娘いとおしむ気持ちを表情に浮かべて、美しくポーズ、ムードはさらに幻想味を加えます。

終曲は澄みわたるように明るい声、心に沁みる歌詞を待って連続ポーズへ。
聞かせどころで素朴な演技を実にいいタイミングではさみます。

♪ずっとずっと・・・岸辺を歩きましょうね、
手を離さずに(この命を感じるままに)・・・♪

立ち上がってきびすを返す、3歩引いて盆の外に立つ、こちらに向き直って深々と腰を折ってお辞儀。
喝采浴びて、花道を引いてゆきました。



7景 オリ・タヒチ 琴井しほり

南洋の楽園、ポリネシア。
プリンセスは海と対話ができ、その能力で島の危機を救おうと・・・
オリジナルストーリーを活かしてエンタテイメントに仕立てます。

序奏は打楽器を乱打してアップテンポに、続く曲では喜悦に満ちた笑顔こぼれる群舞へ。
モレ(腰みの)、イイ(ハンドタッセル)、椰子の実をブラ代わりにして、その上からレイの花飾り。踊り手は素朴そのもの、あけすけな笑顔でナイーブな印象を与えます。
腰を落とし加減にして小刻みにひねるようにして振り、膝を震わせ激しい動き。
木をくりぬいた太鼓は『Pate』といい、乾いた音が軽く抜けるように響きます。
土俗的な『Pate』のリズムに対し、アコースティックギターをウクレレのように重ね、いかにも南国的な気持ちよい流れをつくります。

絨毯ほどもある薄い布を、ふたりがかりで頭上に靡かせ、波に見立てて海洋スペクタクル。
踊り手たちが蜘蛛の子を散らすように去った後、引き締まった表情でひとり花道へ。
トケラウ語で♪Ou mata e matagi……♪、澄んだ声でプリンセスを‘その瞳よ、勇者の瞳’と称えます。

盆に着いたところでフラダンス。
サイドステップを右に2歩、左に2歩戻して、くるり回って初めから、手はたゆたう波のようになびかせます。
柔らかい身のこなしで丁寧に踊りあげて、いよいよベッドへ。

ミュージカル仕立てでボーカルは、気持ちを高揚させ自ら言い聞かせるように歌います。
♪See the light as it shines on the sea it's blinding.
   きれいな光景が目に浮かびます。韻を踏みながら、
♪(Skyline)・・・it calls me !

煩悶し、自問自答を重ねた末に、やっと一歩を踏み出す勇気が湧いてきて・・・
内省的な歌詞に合わせて、ポーズを淡々と置くように連ねました。

終曲はがらりと曲調を変え、コミカルながらも底抜けに楽しいダンスになり、客席との心理的な距離を縮めて、弾けまくります。

書き言葉を持たずに発展してきたポリネシアン。
オリ(≒踊り)はコミュニケーションツールそのもの、手も腰の動きも顔も目力も、渾然一体となって雄弁に‘語り’かけます。
この曲で見せるいきいきとした瞳こそ、♪Ou mata♪と称えたくなりました。



9.フィナーレ キューバ

流れてくるとドキドキする、サルサのあの打楽器とラテンのリズム。
コンガ、ボンゴ、クラベス(拍子木)、ウッドブロック・・・ホーンに小刻みなピアノ。
それらがいっぺんにワーっと話しかけてくるように鳴りだしたとき、『クラーベ』のリズムにのせてみなが踊り狂います。
 ♪っーた、つーたっ、たァったっ、たァー、♪(なんか空耳アワーみたい!)

トサカにコステイロでセパレート、おきまりのコスチュームで。
やけた肌を大胆にさらし、なにやら嬌声を上げ、興奮は最高潮に。
華やかなステージを、底抜けに楽しく締めくくります。


                         以上

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