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2001年6月20日(水)渋谷OS劇場 by Fu-maさん

1. 清野麗可
2. 美樹うらら
3. 広末順子
4. パイパンチ(木下りりこ・HIKARU)
5. 阿修羅

〜阿修羅さんラストステージ〜

 「本格派・実力者」。冠される評判通りのステージをいつも見せてくれる人。それが私の持つ阿修羅さんのイメージだ。初めてお会いしたのはいつだろうか?たしかミカドの運動会。阿修羅さん遅刻してきて、すっぴんで運動会に参加していたなあ。でもトリを務める出番の時にはメイクもばっちり決まっていて、息を呑むような美しさだった。さすが舞台人。空を切り裂く鋭い振り。見えない壁をぶち破って、ぐいぐい突き進んでくるような力強いステップ。テーマ性の強い巧みな舞台構成。豊富な運動量を示す、滴り落ちる大汗。まさに鬼神のような迫力のステージから一転。舞台からは想像できぬような舌っ足らずなポラでのトーク。そんな阿修羅さんには万人が魅せられる。事実、ファンの方々(「阿修羅隊」!凄く強そう…)をみても、かなりお若い方から、年配の方まで様々だ。
 阿修羅さんがアメリカ進出するという話は以前から聞いていた。ただ日本のストリップを引退してという決心には正直驚いた。阿修羅さんほどの実力者になれば、ある程度コース切りにも都合がつくだろうから、今話題の巨泉氏のように、半分はアメリカ、半分は日本というように、太平洋を又にかけて活躍するのだろうと思っていたからだ。…そう考えたのは私が「ビジネス」のセオリーに毒されたためだろうか。舞台人阿修羅さんはあえてリスクをとりにいった。名声を築き上げた世界を引退、そして新境地への挑戦。そんな気骨ある人のラストステージを観に行かずにはいられない。
 渋谷OS劇場。南口を出てまっすぐ伸びる商店街を通り抜け、坂を登りきったところに位置する。かなり年季の入った雑居ビルの二階。照明・音響とも正直設備は心もとない。全体的に厭世的ムードが漂う場末の小屋。でも私はひそかにこの小屋を贔屓にしている。従業員さんが非常に気さくでざっくばらんな話ができるからだ(劇場主は厳しそうだが)。よく奈々さん談義で盛り上がる(彼も好きらしい)。そんな訳でここは私の中では心安らぐ劇場といった位置付けになっている。
 ラストステージを目にするのは二回目。一度目は同じくここ渋谷OSでの芦川美紀さんのステージだった。あの時も場内に大きな横断幕が掲げられ、凄い盛り上がりだったことを覚えている。そんなことを思い出しながら、坂を駆け上がる。入り口には無数の花輪が掲げられている。「千堂あやか」「綾瀬ナナ」…、ビックネームが並ぶ。そしてもちろん「御幸奈々」。階段にもずらりと並ぶ。テケツ、ロビーの辺りがやけに静かなので不安に思ったのもつかの間、扉の向こうには人・人・人。いつもは椅子席さえ埋まらないのに、この日は上手のトイレ前、一段高くなったところまで詰め掛けている。投光席にまで入り込まんばかりの人の群れ。阿修羅さん三回目のステージのラストシーンだった。拍手の音に圧倒され、何とかスペースを見つけた投稿下でしばし呆然としてしまった。最後のポラ。一回り済むと、「阿修羅隊」が集合する。青い半被を纏い次々と舞台へと上がる。総勢十名弱。同じデザインのピンクの半被を身につけた阿修羅さんを中心に整列する。不必要にべたつく訳でもなく、それでいて信頼関係で結ばれている。踊り子さんと応援さんの理想の関係をそこに見た。場内があたたかい空気で包まれる。三回目修了。残すはラストステージのみ。
 四回目の幕が開いた。トップバッターは清野麗可さん。重厚な和装をものともせず明るく、楽しく踊る。いつ観ても元気いっぱい。ベッドで魅せる大人の女性の艶もいいが、なんといっても弾ける笑顔がいい。セクシーでいて底抜けに明るい表情、立居振る舞い。そういえば私がはじめて足を踏み入れた劇場の香盤でもトップを張っていた。いい人と出会えたと思う。がんばってほしいと心から願う。
 美樹うららさん。あどけない笑顔と場内をほんわかさせる優しい雰囲気が魅力だ。この人の情感豊かなステージ構成にはほろりとさせられることが多い。選曲のセンスも私は好きだ。しばらくぶりにお見かけしたが、ぐっと女性らしさが増し、洗練された表情をうかがうことができた。
 広末順子さん。初めてお会いする方だったが、そのハイレベルなダンステクニックには驚かされた。渋谷の狭い舞台上で、流れるようなステップを踏む。脚は優に頭上まで蹴りあがり、体を沈み込ませるのもお手のもの。ポラでは元気いっぱいな姿を観ることができた。
 「パイパンチ」のお二人。実は私が初めて観た踊り子さんはHIKARUさんだった。背が高く、女性的な、魅力的な体を全面に生かして舞う姿にはいつでも心惹かれる。そして大迫力のベッドパート。あれから何人もの踊り子さんと出会ったが、初めて観たHIKARUさんのベットパートほどの「興奮」はまだ味わっていない。木下りりこさん。なかなかお会いできるチャンスがないが、いま一押しの踊り子さんであることには変わりない。何と言ってもその魅力は豊かな「表現力」。「今この舞台に立っている彼女は何を思っているのだろう」。その深い精神世界を垣間見た後は、その一挙手一投足から目が離せない。その振りひとつからも、彼女の内面世界を読み解きたくなる衝動に駆られる。
 二人そろってのダンスパート。木下さんの動きが鈍る。脚が動かない。ふと舞台を見上げる。木下さんの頬に涙がこぼれ落ちる。堪えていたものがどっと噴き出したかのような瞬間。異変に気がついた清野さん、美樹さんが駆け寄る、抱きしめる。普段はまったく読み解けない彼女のその心の内。この時ばかりは観客全員も痛いほど窺い知ることができた。
 二人のステージが終わる。いったん幕が下りる。そして・・・。
 もうまったくスペースが見当たらない超満員の場内が一瞬静まり返る。上手、下手通路には万全の体制を整えた「阿修羅隊」の面々が控える。投光下には後輩、同僚の踊り子さんたちも詰め掛ける。そしてアナウンス。「皆さん大変長らくお待たせいたしました。阿修羅さんラストステージです!」。終わると同時に幕がせりあがる。深い青と水色の重厚なドレスに身を包んだ阿修羅さんの姿を眼にすると、地鳴りのようなどよめき、凄まじい拍手が乱れ飛んだ。まったく駆け引きなし。一曲目からハイペースで飛ばす。力を振り絞るようなホイッスルの響きが調子を合わせる。十台を超えるタンバリンのハーモニーも降り注がれる。阿修羅さんを中心に場内がひとつになっていく。二曲目、赤と青のタンクトップとショートパンツでさらにスピードアップして舞う。持てるすべての力をこの瞬間に注入しようという意気込みが痛いほど感じられる。この熱狂を一身に受け止め、怯むどころかすべてを受け入れ力に変えてしまう。トップダンサーしかできない芸当だろう。三曲目、二曲目と色が入れ替わった衣装で登場。場内の拍手も一糸乱れない。この大人数のタンバリンのテンポもずれない。信じがたい。四曲目、トップレスにぴっちりとした黒タイツ姿で登場。さらに勢いは増す。これからも訪れるであろう困難をこのようにして乗り越えていくんだなあと思わせる、見えない圧力を真一文字に切り裂きズイッと進み出る阿修羅さん独特のステップが炸裂する。フルに四曲。息切れすることもなく踊りきった。ベッドパートは木製の椅子を持ち込んで、じっくりとポーズを見せる。ラストは本舞台で深い深いフルブリッジを決め、数え切れないリボンを受け終了する。
 会場の張り詰めた空気はまったく弛緩しない。ラストオープンショーが始まる。現れた瞬間、ステージ前配られたクラッカーがいっせいに炸裂する。驚く阿修羅さんめがけて四方八方から紙リボンが飛ぶ。笑みがおぼれる。場内が暖かい雰囲気で包まれる。観に来ていた踊り子さんたちが一斉に舞台に駆け上がる。フィナーレへ。
 後輩からドル札で作ったワンピース、円札製のネックレスが贈られる。そして劇場主から花束。同僚後輩から花束。最後に、「阿修羅隊」の代表から大きな花束が。抱き合う二人。拍手が鳴り響く中、最後の幕は下ろされた。
 なぜ安くもない金を費やして劇場に足を運ぶのか。その答えが一つつかめた気がする。「すべてを認め、許し、暖かく包み込む」何かが劇場にはある。世間の風評など軽く蹴散らすような何かだ。その「何か」をつかむため、私は今日も場末の町々を訪ね歩く。

(このレポートは、Fu-maさんのご好意により、掲示板から転載させていただきました。)

 

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