最初の蓄音機は、1877年にトーマス・アルバ・エジソン(1847-1931)が発明、18
78年に特許を取得しました。
エジソンは1876年に電話機を発明した時に、送話口の振動盤が声に対して微妙
に振動することに気がつき、これを記録する方法を研究します。
工夫を重ね、ついに円筒にスズ箔を巻き付けて記録する方式を考案しました。
これがフォノグラフ(phonograph)と名付けられた蓄音機の第1号ですね。
彼は、エジソン・スピーキング・フォノグラフ社を1878年4月24日に設立し、フォノグ
ラフを商品化しますが、錫箔で出来ていた盤面は磨耗しやすく、繰り返しの再生に
は耐えられなかったため、数百台が生産されるにとどまります。
電話の発明でライバルであった電話会社ベル研究所のチェスター・ベルとサムナー
・ティンターの2人は、錫箔の代わりにボール紙の筒に蝋を染み込ませる改良を施し
、1886年にアメリカン・グラフォフォン社を設立して、1887年に「グラフォフォン」の
名で製品化します。
これに対し、エジソンは、紙の筒からソリッドワックスに代えて、1989年から改良型
フォノグラフとして発売し、対抗します。
このフォノグラフに、1888年にブラームスが「ハンガリー舞曲第一番」を、同年、12
才のヨゼフ・ホフマンが録音を残していますが、シリンダーの録音方式が残した宝で
すね。
シリンダー方式の蓄音機の黎明期のお話でした。
エジソンとベル&ティンターのシリンダー録音方式は、音の強弱や周波数を縦振動
に記録再生する方式でした。
ところが、ドイツからの移民、エミール・ベルリナーは、音の振動を横振動に変換して
シリンダーに刻む方法を考案し、さらに、シリンダーを捨て、円盤上に横振動を刻む
方法を発明します。
亜鉛の円盤に音を刻み、酸で腐食する、つまり、エッチングの技術を利用して安価
に大量生産の可能性を開くのです。
1895年、ベルリナーはフィラデルフィアにベルリナー・グラモフォン社を設立し、グラ
モフォンとして生産を始めました。
当初、再生音が不安定だったハンドル手回し式からスプリング・モータに改良され、
再生音の安定が得られるようになると、商品としての評価が高まってゆきます。
このように、1890年代は円筒型と円盤型の両方式が混在し、お互いに競争して開
発と発展を遂げていたのです。
しかし、複製を作るのが面倒なシリンダー方式は、次第に円盤式に押され気味とな
り、1904年にフランス・オデオン・レコードが両面盤レコードを発表する事で、シリン
ダー方式の敗北が決定的となりました。
前述したベルリナー・グラモフォン社は、1897年にヨーロッパに進出し、これがEMI
の母体となります。
イギリスで、円盤状蓄音機の特許を取得したオーエンは、1897年にザ・グラモフォ
ン社を設立、やがて、社名を英国グラモフォンと変え、HMVの略称で世界的に知ら
れる会社となります。
1901年、ジョンソンはビクター・トーキング・マシン社を設立しますが、これが世界的
レコード会社のビクターです。
1888年、シリンダー方式のフォノグラフとグラフォフォンの販売権を取得したリピンコ
ットは、ノース・アメリカン・フォノグラフ社を創立しますが、完成度も生産効率も良くな
く、販売が低迷したまま1894年に破産します。
辛うじて子会社のコロンビア・フォノグラフだけは生き残り、1895年頃からヨーロッ
パに進出、1902年からシリンダー方式を円盤型レコードの生産に切り替えます。
レコード産業の巨人、EMI、英国グラモフォン(HMV)、ビクターとコロンビアのお話
でした。
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