SHODAの部屋

『テニスと人生の大先輩、920先生のエッセイ』
                         920先生の許可を得て掲載しています。


~920の独り言~No.10
No.1001~


2023/3/31 No.1121
 テレビ70歳

  1953年にNHKのテレビ局が開局して以来、日本のテレビが70歳になったという。私が4歳の時にテレビが誕生したことになり、私とほとんど同じ時代を生きてきたことになる。

 社会評論家の大宅壮一が「テレビは国民1億人を総白痴化する」と論じた如く、マスメディアとして絶大な社会的影響力を発揮し、私たち団塊世代と伴に高度経済成長を牽引してきた。私が中学生の頃は年末の紅白歌合戦の視聴率は何と80%を超えていて、国民のほとんどがテレビの歌合戦を見ていたという。
 
  そんなテレビも古希を向かえ私同様衰えが目立ちだした。若者はテレビを買わず見ず、スマートホンで情報や動画を見るようになり、テレビを一日中見ているのは何を見たか覚えていない高齢者ばかり。

  昼食時のワイドショウは興味半分のコメンテータがいい加減なことばかり言っているし、夜の民放番組はどれもこれもお笑いタレントによる馬鹿番組ばかりだし、民放放送のCMは高齢者に対するオレオレ詐欺に近い健康サプリの異常な宣伝ばかりしているし。

スポーツくらいしか見る番組は無くなり、今日からプロ野球が開幕したので、テレビを見たらカープが完敗。     920



2023/3/24 No.1121
  クレディ・スイス銀行

  今週はWBC侍ジャパン優勝など、世界で大きな出来事があった。米国のシリコンバレー銀行がツイッターで起こった「取り付け騒ぎ」により一日で五兆円もの預金が我先にと引き出され破綻。相次ぐ信用不安により中堅銀行シグネチャー銀行の破綻が続くなど、米国発の世界金融市場の大混乱がもたらされた。

 世界の大富豪が出資していて潰れないと言われていたクレディ・スイス銀行が経営危機に陥り、世界金融システムの破綻に繋がるので急遽UBSに買収され、スイスの歴史的銀行再編が行われた。

 米国の威信低下により、敵対していたイランとサウジアラビアが外交正常化。ウクライナを侵略し戦争犯罪により逮捕状が出されたロシアのプーチンを習近平が訪問し中露首脳会談。岸田首相がグローバルサウスと呼ばれる新興国の代表格であるインドを訪問
後、ウクライナを電撃訪問しゼレンスキー大統領と会談などなど。混乱敵対する世界はこれからどうなるのであろうか。

  今から40年ほど前、スイスのバーゼル大学病院で働いていた時に作ったクレディ・スイス銀行の私の通帳にスイスフランの大金が残っていると思うが、どうなるであろうか。      920



2023/3/17 No.1120
 痛覚変調性疼痛

  第52回日本慢性疼痛学会が九州大学病院集学的痛みセンター細井会長のもと開催され、久しぶりに参加してきた。

 国際疼痛学会が40年ぶりに痛みの定義を改変した。痛みとは実際のあるいは潜在的な組織損傷に付随する感覚かつ情動の不快な体験。慢性痛は3ヶ月以上持続又は再発する疼痛。その機序は侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛に痛覚変調性疼痛が加えられた。

  慢性痛患者の身体的異常が明らかでない痛みは心因性疼痛として心身二元論により心療内科で診られていたが、第3の痛みの機序として脳の情動系、感覚系、認知系の可塑性変化によってもたらされる痛覚変調性疼痛が提唱され、慢性痛患者は身体的治療に加え精神心理療法、リハビリ療法などと集学的治療が行われるようになった。 

  我国の慢性疼痛患者は2千万人、経済的損失は年間4兆円以上といわれ、日本疼痛学会、慢性疼痛学会、ペインクリニック学会、腰痛学会、口腔顔面痛学会、頭痛学会など8学会が、「日本痛み関連学会連合」を発足させ、痛みの研究臨床の増進が図られている。

 以前救急救命センターで急性痛を血圧、脈、呼吸、体温に加えて第5のバイタルサインとしてとらえる研究を試みたことがあるが、慢性疼痛の臨床にもそのような観点が必要であろう。  920

 慢性痛:920の独り言(573)、天気痛:(592)
 世界疼痛学会:(798)、神経可塑性疼痛:(887)



2023/3/3 No.1119
  米国大富豪の投資先

 巨万の富を手にした米国のIT大富豪たちが、「不老長寿、若返り」に莫大な資金を投資し、有名な研究者を高額な給料で集めた研究所、ハイテク企業を次々に設立しているという。

 秦の始皇帝が「不老不死」の薬を探し求め、秘薬と信じられた水銀を飲んで死を早めたごとく、大富豪が不老薬により自分の若返りと伴に更なる巨額な富を手に入れようとしているのであろう。

  健康寿命の伸展を目指した老化研究事業、アンチエイジング分野に莫大な投資が行われていて、ハダカデパネズミの長寿研究、不老不死の薬の開発、人体冷凍保存研究、我国の山中iPS細胞などにも資金が投入されているという。老化に関わる老化細胞を除去する薬、ワクチンなどが研究開発されていて、自然な老化現象を「歳のせい」ではなく病気ととらえ、治療することで不老・若返りを目指すという。

 現在私達が治療している、癌、生活習慣病、動脈硬化、骨粗鬆症、白内障、フレイル、痴呆など、老化が関与している多くの疾患の発症を予防することが出来るようになり、高齢患者に対して禁句の「歳のせい」を言う必要がなくなる時代が来るであろうか
             920
920の独り言(1084):抗加齢医学会



2023/2/24 No.1118
  異次元の少子化対策

  我が国の昨年度出生数は80万人、死亡者数144万人で人口が60万人も減少した。私が生まれた昭和23年団塊世代の出生数は268万人、死亡者数95万人で173万人もの増加であった。

  急激な人口減少に危機感が生まれ、児童手当など経済的支援、学業保育、産後ケアなどの支援、働き方改革の推進など、出生数増加のための異次元の少子化対策が国会で論争されているが・・・。

  資源が乏しく、自然災害が多く、食糧自給率3割の小さな島国で人々が豊かな生活をするのに1億人を超える人間は多すぎるので、神の見えざる手が働き未婚化、少子化となり人口が自然に減っているというのに。日本と同じ位の国土で子供の教育力、国民の幸せ度、経済的豊かさなど世界トップクラスのフィンランドの人口はわずか500万人である事を知る日本人は少ない。

  子育て世代へお金のバラマキで効果のない少子化対策をするのではなく、人口減少は神の見えざる手が働いた結果ということを受け入れて、人口が増加している開発途上国もこれから先必ず訪れる人口減少社会の手本になるような異次元の対策を考えるべきと思う。
               920
 920の独り言(315):神の見えざる手
  920の独り言(692):日本の人口



2023/2/17 No.1117
  百寿者

 現在104歳を筆頭に百寿者の患者さんが、何と5人も入院している。それぞれの疾患でベッド上生活となっているが、皆に共通した特徴は、全員が女性で、美味しく食事をたべ、認知症はあるがいつも穏やかな笑顔でありがとうと感謝の挨拶をされる。

  百寿者、110歳以上のスーパーセンテナリアンから医学的特徴、生活習慣、性格、人生に対する考え方、遺伝的特徴など、健康長寿を実践する為のヒントを得て、一般高齢者の健康増進や健康寿命の延長、予防医療の革新、老化、長寿の研究がすすめられている。

  百寿者に共通する特徴は、遺伝的素因は2割で生活習慣が8割を占めている。肥満が少ない、動脈硬化になりにくい、心血管疾患リスクが低い、インシュリン感受性が高く糖尿病有病率が低い、
防御ホルモンであるアディボネクチンが多く分泌、慢性炎症反応が低く抑えられている、テロメアが長く保たれている、便中に特別な胆汁酸が多いなどなど。

  私が百寿の入院患者から教えられるのは、自分の人生を肯定的にとらえ今が一番幸せと幸福感が強く、いつもありがとうと感謝している女性が長生きするということ。私はとても百寿者になれない。   920

  老年的超越: 920の独り言(1023)


2023/2/10 No.1116
  ブルボンビーンズドーム

 
デビスカップ日本対ポーランド戦が三木市のブルボンビーンズドームで開催され、二日目の試合を観戦してきた。

一日目は日本がシングル戦で2勝し、二日目のダブルスは格上のポーランドチームに1-1の3セット目タイブレークの2時間半を超える激戦を勝利し、国別対抗戦独特の日の丸を掲げ太鼓を打ち鳴らしての応援などで盛り上がり面白かった。

 デビスカップは男子テニスの国別対抗戦の最高峰。グランドスラムという個人戦に人気が集中し、団体戦は注目度が低く有名選手の参加も少なかったが、サッカーワールドカップの様に国別対抗という戦いが注目を浴びる様になり、満員の観客であった。 
            
 初めて訪れたブルボンビーンズドームの大きく美しく立派な事!阪神大震災後に整備された広大な三木総合防災公園に屋内テニス場としては日本最大級で、壁面が半分緑化され、入り口がテニスボールデザインで、天井はドーム状で卵型の大きな明かり採りが三か所あり、中央に1500人観客収容のセンターコートと両側に8面のサブコートがあり、交通の便が悪い丘陵地にこんなに巨大で立派な屋内テニス場があることに驚かされた。     920



2023/2/3 No1115
  白馬乗鞍天狗原

  長野県小谷村栂池高原スキー場北側の白馬乗鞍岳天狗原の標高2100mの斜面で雪崩が発生しバックカントリースキーをしていた外国人数人が流され2人が亡くなったとのニュースがあった。

 白馬乗鞍天狗原と聞いて、55年前の大学2回生の時、山岳部の春山合宿で、栂池高原から入山し雪深い白馬乗鞍天狗原にテントを張り、雪の白馬岳山頂にアタックしたことを思い出した。最近ではバックカントリースキーと言われているようだが、当時は山岳スキーと称し、天狗原の急斜面で山スキーをしたことも思い出した。

 当時栂池高原スキー場は鐘の鳴る丘と呼ばれ、数軒の旅館があるのみのひなびたスキー場であった。その後スキー場脇の国定公園が分譲され、関西の学校の先生達が脱サラして多くの宿泊ペンションが建てられ、スキーブームと伴に人気が出て急速に発展していった。多くのスキーヤーが訪れる様になり、診療所が開設され医師の派遣が要請され、麻酔科医師になっていた私はスキーシーズンに二人組で一週間の診療とスキーを数年間続けたことも懐かしく思い出した。

 50年以上前のアルバムを出し、当時の登山計画書や写真を見ていると、雪山登山など青春時代の記憶が鮮明によみがえってきた。     920



2023/1/27 No.1114
  複雑系

  東西冷戦終結後は、世界全体に自由民主主義社会が広がり大きな戦争のない平和な社会が訪れると思っていた。

が、プーチンという一人の人間によりウクライナ侵略戦争がはじまり、戦争継続拡大、都市の破壊、多くの死者、食糧、エネルギー問題が世界規模で広がるなど、誰が予測できたであろう。

 40年前、私がハリ麻酔を見学に行った当時貧しかった中国が米国と肩を並べる2大経済大国になるとは予想だにできなかった。さらに、中国発コロナパンデミックが世界中で3年間も続き、大都市のロックダウン、習近平による中国の長期間にわたるゼロコロナ政策、突然の政策変更による感染爆発など、誰が予測できたであろう。

 現在の市場、社会、国家と言うシステムが「複雑系」である為にシステム片隅の小さなゆらぎが、システム全体の大きな変化をもたらすようになるので、未来を予測することが困難になっている。

 医療も不確実性、複雑系なので、プライマリケア医にとって、医学知識だけでは予測解決できないカオスな患者に対する複雑系への対処能力が求められていて、難儀する。    920



2022/1/20 No.1022
  チルい

 
「チルい」は英語で落ち着くを意味するchill outに由来し、あえて頑張らないで程よくゆっくり過ごすということらしい。  

 その昔、団塊世代の私が20歳の頃は急激な経済成長時代で、「24時間働けますか、ファイトイッパツリポビタンD」などがテレビコマーシャルに流れ、働きに働くことが美徳とされていた。

  ところが今では働き方や価値観が変わり、経済の低成長を受け入れ現状維持を良しとして、休日は家でリラクゼーションドリンク「チルアウト」を飲みながらゆっくり過ごす「チルい」過ごし方をする若者が増えているそうだ。 

  低成長時代の先進国での若者の共通する価値観もあえて頑張らない、ほどよくゆったり生きていこうという感覚になっていて、「チルい」は次世代若者の世界的行動基準という。経済成長が終わり低成長時代に生れ育った現在の若者は、豊かな現状に不満はないが、将来に対する不安が大きいという。

  急激な経済成長時代に育った団塊世代の私は、豊かになる明日に向かって一生懸命がむしゃらに過ごしてきたので、歳をとっても「チルい」過ごし方ができない。       920

 明るい未来:920の独り言(922)
 親ガチャ:920の独り言(1061)



2023/1/13 No.1021
 2023年度世界の10大リスク


 今年2023年度世界の10大リスクが発表された。

1:世界で最も危険な国家となったロシアのプーチン。
2:権力が集中し大きな過ちを犯す可能性が高い習近平。
3:人工知能AIの発展。
4:インフレによる世界的な景気後退と各国政治の不安定化。
5:デモ弾圧、欧米との対立に追い詰められるイラン。
6:ロシア侵攻に伴う世界的エネルギー危機。
7:貧富の格差に伴う男女平等の教育を巡る状況の悪化。
8:米国の分断。保守対リベラルの政治的、社会的、宗教的対立。
9:欧米のZ世代台頭。
10:水不足。世界の企業の3分の2が水不足に直面。
 プーチン、習近平が大きなリスクは分かるが、医療関係でも研究が進んでいる人工知能AIの発展が何故リスクに?
人工知能による自動生成される偽情報が社会に溢れ、大半の人々は真偽の見極めができなくなり、偽情報により民主主義が弱体化する危険があるという。Z世代台頭もリスク?

 今年も世界は大変なことなりそうだ。どうしよう。 920
 Z世代:920の独り言(1066)



2022/1/6 No.1111
  世界人口

  
世界人口が80億人を超え、増え続けているという。

私が生まれた1948年の世界人口は約25億人だったので、3倍以上増えたことになる。当時、我国の人口は約8千万人。出生数は約260万人。その後1億2千万人にまで増えたが、10年前より減少傾向になり、今年の出生数は80万人を割り、多死時代を迎え死者数は140万人を超え、我が国は人口減少時代を迎えている。

 私が生まれた時は、テレビも電気冷蔵庫も電気釜もエアコンも車もなく、薪でご飯を炊き、風呂を沸かしていた。資源のない、自然災害の多い小さな島国に急激に増えた1億人を超える人々が、食糧自給率38%と、物が溢れる豊かな生活を送るには、神の手による人口調節が必要なのであろう。

 一方コロナ感染が続くなか、食料、エネルギー、環境問題が地球規模で危機に陥っているというのに、何故か神の手が届かず貧しいインドが中国を抜き世界一になるなど、世界人口は増え続けている。

  人口増加、経済成長時代に生きてきて、これから我国の人口減少多死、経済低成長時代に終活を迎えようとしている団塊世代の私にとって今年はどのような年になるのであろうか。   920
 人口減少令和社会:920の独り言(959)



2022/12/30 No.1110
一隅を照らす

 今年の重大ニュースは?
地球規模では食料、エネルギー、環境問題など危機的状況である
にもかかわらず、世界人口が80億人を突破し増え続けていること。
 世界では、コロナパンデミックが6億人も感染し収束されない
というのに、ソ連のプーチンがウクライナを侵略攻撃し、世界中
を混乱におとしめていること。中国の習近平によるゼロコロナ政
策の大混乱。アフガニスタンの女性悲劇。トラス英最短女性首相
と接見したエリザベス女王が2日後に老衰で死去したこと。
 我が国では、安倍総理が殺害されたこと。殺人犯は旧統一教会の
被害者で政治問題に。唯一明るいニュースはワールドカップで森保
Jがドイツ、スペインに奇跡的に勝ち決勝進出したこと。
病院では、夏と冬に二度ものコロナクラスターが発生したこと。
長い間世話になった岡田教授が姫路日赤病院長に転職され、岡大
1内科から山本先生に変わり井川祥子先生が派遣されたこと。
一人の人間によって世の中は大きく変わるが、私は一隅を照らす
べく日々努力していたのに年末コロナに罹患。1週間の自宅軟禁で、
頑張っていた一隅を照らす心が老いと伴に折れそうになったこと。
                        920



2022/12/23 No.1109
  コロナクラスター

  
コロナ感染が尾道で、世界中で収束しない。中国ではゼロコロナ
政策が大混乱後緩徐されたようだが、感染の爆発が危惧される。
 我国はワクチン接種などで一般社会ではウイズコロナに舵が切ら
れ様としているが、病院ではゼロコロナが厳しく求められている。
 山本病院は今年夏、デイケアの患者からクラスターが発生し対策
を学んだが、11月末にクラスターが再び発生した。人工呼吸患者、
IVH患者、気切患者、癌患者など重症患者が発熱罹患。ゾーニング
を行い濃厚接触患者も隔離、レムデシビルiv、ラゲブリオ内服など
コロナ感染治療に加え、原疾患増悪に対する対応も大変であった。
さらに防護対策をしていたにも関わらず、看護師にも感染者が出て
危機的な看護体制になったが、ワクチン効果か治療効果か、コロナ
罹患患者が重篤にならず何とか乗り切り収束を向かえほっとした。
 と思っていたら、先日妻の納骨法要の会食後発熱者が出て、私は
発熱なく軽い風邪症状でコロナ抗原を調べたら5回もワクチン接種
したのに何と陽性が出た。軽い鼻声症状で7日間の外出禁止、自宅
監禁を経て、やっとハーシスからも解放された。 やれやれ。  
 920
 三密:920の独り言(1034)
 病院内クラスター:920の独り言(1095)


2022/12/16 No.1108
 納骨


団塊世代の都会への集団就職、移住、核家族化、檀家制度の崩壊
などにより、都会で新たにお墓を建てることは困難になっていて、
墓じまいなどとともに納骨堂が激増しているという。
最近テレビのコマーシャルで、墓地より安価、駅近くで便利、永
代供養などと納骨堂の宣伝が目に付く。特に大都市では顕著に増え、
非営利、継続性が重要視されるにもかかわらず、宗教法人に民間企
業が名義を借り納骨堂を経営する名義貸しが横行。営利目的になり、
赤字で納骨堂が閉鎖されるケースが増えている。札幌の大きな納骨
堂が破産して突然閉鎖され、行き場のない遺骨、引き取り手のない
遺骨が多く取り残され、大きな問題になっているという。
 20年前、海の見える墓地という触れ込みで衝動買いした海望園
という共同墓地に新しいお墓を建て、妻の3回忌に納骨した。まさ
か妻が先に入るとは。
都会では樹木葬、海への散骨、墓じまい、納骨堂などと言われて
いるが、海望園には新しい立派なお墓がいっぱい建立されていて驚
いた。私の骨は宇宙にまいてほしいと思っていたが、新しく建てた
墓に入ることにした。            920
お墓:920の独り言(990)
遺骨の尊厳:920の独り言(1019)



2022/12/9 No.1107
赤い丸型郵便ポスト


 郵便入れの赤い丸型ポストは、イギリスで最初に登場し現在でも
イギリスでは多くが設置されている。我が国では、戦後直ぐの私が
生まれた1948年に現在の形で全国にポストが設置されたという。
子供の頃は街のあちこちに設置してあり、手書きの手紙を投函した
思い出がある。
1970年より利便性向上などを理由に箱型が登場して丸型の生産、
設置は終了したという。芦屋市では丸型ポストの撤去交換が検討
されていたが、その希少性から地域住民から丸型ポスト存続を求
める声が相次いで市議会でも議論された結果、日本郵便は撤去せ
ずに使用を続ける方針を決めたそうだ。
 尾道でも赤い丸型ポストはほとんど見られなくなっているが、
山本病院の玄関横に創立以来、昭和26年製造の赤い丸型ポストが
設置してある。小学生が毎日通学時見ているし、時に葉書などが
投函されている。古き良き時代の思い出にと、集配する費用という
名目で年間数万円を郵便局に払い、レトロな赤い丸型郵便ポストが
歴史を背負い建っている。          920



2022/12/2 No.1106
  再編統廃合


 広島駅北口に県立病院、JR病院、中電病院を統合して急性期医療
を担う新たな病院を作り、さらに広島都市圏中規模急性期8病院を
再編し、役割分担を担い統廃合することが明らかにされた。
 10年程前、岡山大学の森田学長が岡山メディカルセンター構想を
立ち上げ、厚労省の協力を得て、地方都市における急性期病院の新
たなあり方を構築すべく頑張っておられたが、残念ながら頓挫して
しまったのが思いだされる。
少子高齢人口減少の地方都市では、今後急性期医療は高齢者医療
が主体になるし、研修医制度の変更により若手医師が大都会に集中
し地方の医師不足に加え、医師の働き方改革で、地方都市では効率
的な病院間の役割分担、連携による急性期病床の削減、病院の統廃
合再編が必須になっている。
 先日、私も参加した尾三圏域地域医療構想調整会議が開催され、
三原市では既に三原日赤病院と三菱三原病院が合併し、今回新たに
山田脳神経病院が三原医師会病院に統廃合されることが合意された。
一方、尾道市では土堂、久保、長江の3小学校を統合し、また
長江、久保の2中学校も統廃合し、小中一貫校にするという。
920



2022/11/25 No.1105 
  カラス
 サッカーワールドカップでドイツに勝利した日本チームユニフォ
ームのエンブレムには何故かカラスが描かれているが、先日長者が
原でテニスをしていて、高圧電線に100羽を超えるカラスが群れて
とまっていて驚いた。高須地区にも多くのカラスが居て、夏には私
が庭の畑で育てたスイカが大きくなり丁度収穫時になるとどうして
熟しているのが分かるのか、早朝カラスに真っ赤に熟れたスイカが
つつかれてしまっている。
鳥類のなかで高い知能を持っているカラスは、犬や猫よりも高い
脳化指数を持っていて、人間で言えば小学校低学年の6-7歳位の
知能を持っているといわれている。記憶力もあり、食べ物を隠して
いる多くの場所をすべて覚えているという。人の顔もしっかり記憶
し、自分を攻撃した相手の顔を覚えていて、後に仲間を加えて威嚇
してくるという。まるでヒッチコック映画“鳥”のようなので、私は
拍手の音でカラスを脅す時、顔を見られないようにしている。
 高須農協が朝6時と夕方5時にサイレンを鳴らしていたが、最近
早朝6時のサイレンが鳴らなくなった。長い間農協のサイレンで起
きていたが、毎朝6時前後になるとカラスが鳴いているのに気づい
た。今ではカラスの鳴き声が私の目覚まし時計になっている。
                  920


2022/11/18
  ウクライナ支援特別企画

第42回臨床麻酔科学会が京都国際会議場で開催されウクライナ
支援特別企画があるというので参加してきた。以前は専門医の単位
取得が主な目的であったが、専門医を断舎利したので、単位取得と
は関係なく面白そうな講演を聞いた。
1:会長講演:トランスレーショナルアプローチ:細菌感染と
急性肺障害。2:ノーベル賞記念シンポジウム:カプサイシン受
容体の発見と夢を麻酔科医に語る。3:招待講演:コロナ禍に進む
ワクチン開発研究の新展開―分子から倫理まで。などなどいずれの
講演も、最近の若い医師の専門医取得重視により、我国の基礎医学
研究論文数が激減している中、未知の基礎医学研究から明らかにさ
れる生態現象解明の重要さ、臨床への応用、将来への展望など興味
深く面白く講演され勉強になった。 
京都市とウクライナ首都キーウ市が姉妹都市ということで会長
の佐和貞治京都府立医大麻酔科教授が企画されたウクライナ支援
特別企画はウクライナの伝統的民族楽器バンドゥーラの美人奏者
歌手ナターシャ・ブジ―さんによる透き通った美しい哀愁漂う歌
声での歌の数々が素晴らしく胸に響き、大金をチャリティした。
                       920



2022/11/5 No.1103
  叙勲

  秋の叙勲の発表があり、何と私の長兄の木村信男が瑞宝双光章を受賞した。長年にわたり学校歯科医として公共的業務に従事し功労を積み重ねてきたので表彰されたようだ。

  私は男ばかりの四人兄弟で、上3人は皆歯科医。次兄は大腸癌ですでに亡くなり、3兄は今病で床に伏していている。長兄は20年ほど前、腹痛で食事が出来ないと言い当院で胃カメラ施行。幽門部に大きな胃癌をみとめ、JAで黒田先生に手術をしていただいた。

  手術を見学したが、胃がんが漿膜まで突出していて、腹膜播種一歩手前でダメだと思ったが、幸い転移なく元気に。歯科医院は息子が継いで隆盛を極めていて、その後も長い間元気で学校歯科検診を行い叙勲を受賞するなど、人間の運命は紙一重と思う。

  今日早速身内が集まりお祝いの宴。叙勲は誰がどのような基準で選考するのかなど、他人事として批判的に見ていたが、何はともあれ目出度い出来事に身内でご馳走を食べお祝いし盛り上がった。私も誰が選考したのか良く分からないが、今年6月に何故か広島県医師会長賞を受賞したので、私の表彰状を持って行き、長兄の叙勲祝いのついでに無理矢理身内のみんなに祝ってもらった。  920
  ほめる:920の独り言(1042)



2022/10/28 No.1102
  暇と退屈

  移動狩猟時代から定住農耕時代、産業革命後資本主義時代になり、人類にとって「暇と退屈」は“哲学的”テーマとなった。

  何もすることがない客観的な時間である暇と、何かをしたいのに出来ない主観的な退屈。豊かになった人々は暇を得て、暇つぶしをするが退屈する。なぜ人は退屈するのか。人間は退屈するが動物は退屈しないという。退屈することは自由であること。私達は自由であるため暇で退屈する。自由とは何か、時間とは何か。自由な時間にはその人に適した時間というものがあり、短いとストレスを抱えて、長すぎると暇と退屈を抱えることになるという。

  定年後は趣味三昧でゆっくり過ごしたいと言うが、趣味や道楽は仕事の合間を縫ってするから楽しくてストレス発散になるが、毎日しなければならない趣味は楽しいものではなくなってしまう。

 医師には定年がなく、開業医はいつまで働くかが大きな問題となっている。私は定年後を考える余裕なく働いているので、暇はなく退屈もしていないが、自由な時間もない。   920

  國分功一郎:暇と退屈の倫理学。新潮文庫。
 孤独伝染病:920の独り言(873)
 定年引退後:920の独り言(885)



2022/10/22 No.1101
蒜山高原

 
関西の軽井沢と呼ばれる蒜山高原には観光で、サイクリングで何度か訪れたことがある。約20年前には初冠雪後の上中下蒜山を縦走したし、真冬の雪山の中蒜山冬山登山をしたこともある。

この度コロナにより病院旅行も出来ず、皆ストレスが貯まっているのか、気分転換に病院登山部が蒜山登山を計画し、誘われたので久しぶりに中蒜山登山に参加してきた。

 天気予報で曇りのち雨だったので、天気が悪い場合は山には登らずに、雨天時蒜山高原観光ツアーの二本立てで、早朝6時に10名がワゴン車で病院を出発。幸い天気予報は外れ一日中快晴で、車から真っ赤なご来光を、帰りには夕焼けの太陽をみることができた。

 朝8時30分、日本百名水で有名な塩釜冷泉登山口から登頂開始。登り開始から急坂で、快晴の秋山を味わいながら昼前に中蒜山頂上、避難小屋に到着。20年前雪に囲まれた避難小屋で食事したことを思い出した。頂上で美しい景色を眺めながら沸かした熱いコーヒーを味わった後、全員無事下山。天気が悪い時用にと、予約していたジンギスカン蒜山大将に行き、食べ放題の肉を看護師達はたらふく食べ、蒜山温泉の露天ラドン湯に浸かり、疲れを癒してきた。 920
 蒜山:920の独り言(153)



2022/10/14 No.1100
 院内研究発表会

 
先日、職員全員が集まり第18回院内研究発表会が開催された。
1:オーラルフレイル対策のための口腔体操。
2:病院生活を「みえる化」してみて。
3:退所にむけて一致団結。
4:音楽をとり入れ心身ともに笑顔に。
5:転倒・転落アセスメントスコアシートの作成。
6:1年間のヒヤリハット報告と年間活動報告。
7:褥瘡と関節拘縮についての一つの取り組み。
8:家で暮らしたいー希望に添えるように。
9:腸脳相関。
10:身体拘束をせずに行うケアについて。
11:口腔ケアと発熱の関係について。
12:ほっこりする話。心と身体の健康
13:SDGsとコロナウイルス。
小さな病院だが、日々の医療業務での疑問を提示し問題点や対応
を検討し、医療業務の改善や質の向上を図るため、院内研究発表会
を毎年開催しているが、年々発表内容が向上し感心している。         920



2022/10/7 No.1099
  脊髄電気刺激療法

  今週の日本医事新報のプラタナスー私のカルテからというコラムに私の後輩のペインクリニック学会会長を務めた森本昌宏先生が「脊髄電気刺激療法との40年」と題する文章を投稿されていた。

 脊髄刺激療法が著効している患者の紹介に続いて、今までに350例程の脊髄刺激療法を経験し、痛みに対する強力な武器として脊髄刺激療法を行ってきた。が、その始まりは40年前の先輩の一言であった、と。

  「おい、森本、脊髄刺激療法を始めんど。硬膜外カテーテルにこの白金線を入れて消毒に廻しとけや。脊髄刺激ってしっとるよなあ?」「はい、もちろんのろんです」(じつは何のことかちんぷんかんぷんであった)。後に新潟大学の下地先生が、雑誌「麻酔」に投降されていたことを知った。このちんぷんかんぷんは、1982年にMedtronic社の機器の輸入が許可される少し前のことである。

 などと書かれていたが、この先輩の一言の先輩とは多分私のこと。40年ほど前ペインクリニックで下垂体ブロックなどさまざまな痛み治療に挑戦していた若かりし頃を懐かしく思い出させてもらった。             920
 会長:920の独り言(741)
  木村邦夫:多発性硬化症に対する埋め込み式硬膜外電気刺激療法。
     東洋医学とペインクリニック。VOl14,NO3,1984




2022/9/30 No.1098
スイスの氷河

  先日スイス地理院は2万枚を超える写真の分析結果からスイスにある氷河の体積が2016年までの85年間で半減したとの研究結果を発表した。現在では2016年と比較するとさらに12%減少し、地球温暖化の影響で氷河減少のペースが加速していて、今年は猛暑で過去最大の消失率だったそうだ。

 国連の気候変動に関する報告は、今世紀末までに世界の氷河は最大で47%減少、欧州などの小規模な氷河は80%以上減少するという。グリーンランドの氷河融解も加速しているが、NASAは宇宙にある2つの衛星を使って調べ5兆トンの氷河が失われたと発表した。

 今から40年ほど前にスイスバーゼル大学病院に留学していた時、ヒューギン教授に名前は忘れたが、美しい氷河を見に連れて行ってもらったことを思い出した。スキーをしたグリンデルワルドではマッターホルンを囲んでスイス側、イタリア側に氷河があったし、ユングフラウヨッホ、アイガーなどの有名な雄大で美しい氷河も懐かしく思い出す。

 地球温暖化による異常気象でパキスタンの大洪水、アフリカの干ばつなど連日ニュースになっているが、100年後にはあの世からスイスの美しい氷河はどのように見えるであろうか。       920


2022/9/23 No.1097
低ナトリウム血症

  電解質異常の中で低ナトリウム血症は最も多い電解質異常であるが、急性か慢性か、体液バランスなどで病態は異なり対応は難しい。

  急性低ナトリウム血症は脳浮腫を引き起こし中枢神経症状を主体とする症状をもたらす。暑い夏の多量発汗による急激な低ナトリウムの脱水により熱中症になるので、高齢患者には屋外の活動で多量発汗の際には、熱中症予防に水分補給と梅干し、トマトに塩、スイカに塩をふって食べるよう話しているが・・・。

  入院高齢患者は、心不全、利尿剤、甲状腺機能低下、腎不全、低アルブミン、SIADHなど基礎疾患はさまざまだが、軽度の慢性低ナトリウム血症が多い。慢性低ナトリウム血症高齢者は無症状なので放置されているが、注意機能低下などの認知機能障害、歩行時のバランス障害による転倒・骨折リスクなどが優位に高いことが明らかにされ、高齢者の慢性低ナトリウム血症への治療関与の重要性が最近指摘されている。

  真夏の週末午後の最も暑い最中に、無謀にも屋外でテニスをしている高齢のテニス仲間は、ふらふらしてバランスを狂わしているが、私が塩飴を配っているので、幸い未だ誰も倒れていない。 
 920


2022/9/16 No.1096
  森林セラピー

 
産業医の「職場での森林セラピーを用いたメンタルヘルス対策セミナー」が深入山のいこいの村ひろしまで開催され参加してきた。

 午前10時「森林資源を活用した健康保持増進効果」と題する講義を聞いた後、美味しい地産地消特製セラピー弁当を食べ、30名の参加者は数名のグループに分かれ、それぞれ森林セラピーガイドに引率されて、登山とは異なる森林セラピーストレッチ、腹式呼吸、森の中のハンモックなどを体験しながら、10年ほど前にも家族で歩いた思い出がある深入山セラピーロードを散策した。

 森林セラピーはストレスホルモン軽減、交感神経抑制による緊張緩和、副交感神経亢進によるリラックス効果、NK細胞亢進による免疫機能亢進など、森の中に身を置くことにより目・耳・鼻・触覚・味覚の五感を研ぎ澄まし、心身の健康維持・増進など医学的エビデンスに裏付けされた森林浴効果が体得できる。うつ病予防、復職などメンタルヘルス対策としても活用されている。

 歳を取り夜中に2度ほど目を覚ますのが日常的になっていたが、森林セラピー体験の夜は、久しぶりに目を覚ますことなく朝まで熟睡でき、森林セラピーの睡眠改善効果を実感した。  920
 セラピーロード:920の独り言(608)



2022/9/9 No.1095
 病院内クラスター

 
コロナ感染が治まらない。コロナ患者全数把握見直しなどウイズコロナ社会に向けて政府が右往左往し、備後地域も感染が治まる気配が無く、いつどこで感染してもおかしくない状態が続いている。

  当初病院でクラスターが発生すると、マスコミが大々的に報道し、病院長が謝罪するなど大騒ぎになっていた。が、今では大学病院をはじめ、全国の病院で数人から百人位の病院内クラスターおよび医療職の感染、濃厚接触自宅待機などが発生し、診療を縮小せざるを得なくなり、医療崩壊などと問題になっている。

  全国の老人施設でのクラスターが頻発している。尾道の基幹病院もクラスターが発生しているようだが、厳重に対策を講じている病院でも水際作戦などでクラスターの発生は防ぎようがない。

  私の小さな病院も注意はしていたが、先日デイケアでコロナ感染者が出現した。当日ギターの演奏があり、私が元気な入院患者にも参加を勧めたので、デイケア患者に加えて入院患者も濃厚接触となり、全員の抗原検査、隔離、ゾーニング、感染管理など大変であった。幸い職員への感染はなく、数人の患者感染で終息し安堵した。
                        920
  院内感染:920の独り言(416)
  水際作戦:920の独り言(430)
  パンデミック:920の独り言(456)
  インフルエンザ:920の独り言(863)


2022/9/2 No.1094
 キリン解剖記

 先日、福山市立動物園で飼育していたキリンの雄「フクリン」が前日までしっかりエサを食べていたのに翌朝死んでいるのを飼育員が発見した。今後解剖して死因を調べると、フクリンの写真つきで新聞に載っていた。何処で誰がどのように解剖するのだろうか?

  世界一キリンを解剖しているかもしれない郡司芽久さんの「キリン解剖記」が面白い。幼い頃よりキリンが大好きだったので、東大入学後キリンの研究者になることを決意し、運命的な恩師との出会いで19歳の冬に初めてキリン解剖をし、その後は正月もクリスマスもキリンの訃報で予定をキャンセルしてキリンの解剖を最優先し、全国各地の動物園からキリンの遺体を献体してもらい、これまで30頭以上のキリンの解剖を行い、キリンの8番目の首の骨を発見し、博士号を取得するまでの若き女性研究者の素晴らしい奮戦記。

 キリンは最も血圧が高い動物。頭の上げ下げで急激に血圧が変動するので後頭部にある網目状の毛細血管の塊があり、脳循環の緩衝装置となっている。と、キリンの循環に関しては若干の記載があるが、キリンの一回換気量は?長い首の死腔は?有効肺胞換気量は?
キリンの人工呼吸はどうするかなど、呼吸に関する記載はない。郡司さんの「キリン生理記」出版を期待したい。 920

 郡司芽久:キリン解剖記、ナツメ社。
 キリンの麻酔:920の独り言(349)



2022/8/26 No.1093
  不便益

 
 スイスでは自家用車はレジャーとして使用するもので、街周辺の地下駐車場にとめてある。子供も大人も老人も家から歩いて利用しやすい街作りになっている電車などに乗り学校、職場に行く。老いても若い時と同じように朝歩いて電車で街中に行き、お茶を飲みながら街中で過ごし帰宅するので、認知症、うつ病、生活習慣病などにならず寝たきりが少ない。

 一方我が国は戦後アメリカをめざし、狭い自宅に駐車場をつくり、自家用車での通勤、買い物をするのが豊かさの象徴と勘違いし、車社会の街づくりになってしまった。歩くことをしなくなり、老いてサルコペニア、うつ、認知症など寝たきりになる高齢者が多い。

 ぼけ防止、おしめの寝たきり防止に、便利な車ではなくて不便な徒歩、公共の乗り物で、四季をゆっくり味わう日常生活を送るよう高齢患者に言っているが、誰も聞く耳を持たない。

 便利は「楽」だが、不便には「楽しさ」がある。「楽」と「楽しさ」は違い、「楽しさ」は幸せにつながり、「楽」は寝たきり不幸になる。

  スイスのツェルマットのような自家用車のない楽しい街づくりを福山の“鞆”で試みてもらいたいものだ。       920
 コンパクトシティ:920の独り言(784)



2022/8/19 No.1092
  薬物依存

 以前、慢性疼痛学会で薬物依存症患者とともに素晴らしい講演を聴講したことを覚えている薬物依存治療の国内第一人者として知られる松本俊彦氏が出版された「誰がために医師はいる」が2022年度、第70回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞された。

 自伝的な語りを軸に、薬物依存症患者との壮絶な臨床経験から学んだ薬物依存症に対する斬新な考え方を興味深く書かれている。

 薬物依存症の本質は「快感」ではなく「苦痛」である。薬物依存症の患者が薬物に引き込まれるのは、めくるめく「快感」が忘れられなくて薬物が手放せないのではなく、これまで自分を苦しめてきた「苦痛」を一時的に消してくれるが故に薬物を手放せないのだ。

  「良い薬物」とか「悪い薬物」ではなく、薬物の「良い使い方」と「悪い使い方」が重要で、悪い使い方をする人は必ず何かの困りごとや悩みごとを抱えている。「ダメ ゼッタイ」は薬物依存症患者を孤立させ、彼らを回復から遠ざける呪文となっている。精神疾患は三つしか無い。鬱病の「泣き言」、統合失調症の「戯言」、せん妄患者の「寝言」。「アディクション」の反対語は「コネクション」。
「ベンゾ掃除」などなど勉強になった。

  松本俊彦:誰がために医師はいる:クスリとヒトの現代論。みすず書房。 
  人は何故薬物依存になるのか:920の独り言(916)



2022/8/12 No1091
  多死社会

  毎日コロナで何人死んだと、マスコミが不安を煽り、高齢者が不安に陥っている。これから私達団塊世代が寿命を迎え、毎日5千人、年間150万人以上の多死時代が訪れる。誰もが免れない死にどう立ち向かうべきか。高齢者にとって怖いのは死ではなく、介護に頼り寝たきりになるほうが怖いという。

  骨髄異形成症候群で頻回に輸血を行っている寝たきり高齢入院男性が、「だるくてつらいばかりで早く死なせてほしい」と言われる。私達は自分の力で生きているのではなく、生かされているので、お迎えはお天道様が決めるものなどと話しているが・・・。

  スイスバーゼルの自殺ほう助機関は私が生まれる前の1947年に世界でいち早く自殺ほう助を合法化した。スイスでは医師が患者に直接薬を投与する方法は禁止されていて、十分話し合い納得したうえで、医師が処方した薬を自分で服用する「自殺ほう助死」が外国人に対しても行われている。

  先日、イタリアで第1例目の自殺ほう助による安楽死が大きな話題になっていたが、我国の超長寿社会で自分の終末をどう生き最後の時を安楽死、自殺ほう助死、平穏死、ピンピンコロリ死、寝たきり死、老衰死など、どう迎えれば良いのか悩ましい。 920

 安楽死ツーリズム:920の独り言(534)
 安楽死:920の独り言(739)



2022/8/5 No.1090
  福山城

 
徳川家康の従兄弟の初代福山藩主水野勝成が1622年築城の福山城が昭和20年福山空襲で焼失後再建され築城400年を迎えた。今回、築城400年記念事業として福山城天守北側鉄板張りが復元リニューアルされた。

 私と福山城の関係は、小学校低学年昭和30年頃、お城の直ぐ横に材木商の友人宅があり、お城の周りで良く遊んでいた。中学時代は、お城の北側の空き地にテニス愛好家が整備したテニスコートが2面あり、軟式テニスをした思い出がある。高校時代は福山城藩主阿部正弘開設の誠之館高校時代の昭和41年に福山城が再建された。

 その後は20年ほど前からだろうか、花見テニス仲間と桜の季節にお城の北側にある昔軟式テニスをした古いテニスコートに集まり、お城を見ながら硬式テニスをした後、城址公園の満開の桜の下で宴会するのが毎年の恒例行事となっていた。そのテニスコートが今回の築城400年記念事業とともに閉鎖解体されて無くなり、花見テニス仲間も高齢化や病いなどで散り散りになってしまった。

福山城とともに老いてきた私も、復元リニューアルされることなく、終りを迎えようとしている。         920
 花見テニス:920の独り言(475)。



2022/7/29 No.1089
  安心費用対効果


  新型コロナ感染症が治まらない。抗原キットが不足、カロナールが足らなくなったと政府が右往左往。私は4回ものワクチンを打たれたが、発症予防、重症化予防効果があるのだろうか?

 ワクチン争奪戦の中、河野太郎元ワクチン担当大臣がファイザー社長と交渉しようとしたが首相でないとダメだと言われ、菅首相が直接に社長と価格内容等は極秘で交渉させられたという。
ファイザー、モデルナなどから8億回分以上のワクチン2,5兆円分が購入契約されて、ファイザーは莫大な利益を上げているが、契約残存し消費期限が切れる多くのワクチンが廃棄されるという。

 先日、塩野義製薬の内服薬の緊急承認が見送られたが、治療薬も1兆円を超える多額の予算で購入されている。多くの内服薬は早期に投薬しないと効果が無く、使用されていなくて、ファイザーの内服薬は200万人分確保されたが、使用は1万人分位のみ。他の治療薬も同様で、消費期限が切れる何千億円分が廃棄されるという。

 インフルエンザが影をひそめているが、欧米で一般治療薬として認めていないタミフルを我が国は5千万人分も備蓄し、消費期限が切れる備蓄抗インフルエンザ薬200億円分が毎年廃棄されている。

国民の健康と安心の為とは言うが・・・。     920                   
 ワクチン:920の独り言(1021)



2022/7/22 No.1088
 面会

 
コロナ感染症による病院でのクラスター発生が大きな問題となり、多くの病院が面会禁止の処置をとった為、当たり前であった患者の生きる喜びや家族の会える楽しみを奪い、不安や不満、思わぬ誤解や医療不信を招くなど面会禁止の悲劇が発生している。

  当院も原則面会禁止としていたがズーム面会、手紙や写真の掲載、是非会いたい人、東京、大阪などからの家族の面会には抗原検査陰性後の面会、急変時の面会などバランスをとった対応をしている。

90歳の認知症、閉塞性動脈硬化症で足の壊死した入院患者さん。寝たきり状態で開眼されるが全く発語なし。仕事の関係でオーストラリアに50歳から75歳までおられたとのことで、回診時に“ハロー ハーワーユー”と英語で尋ねたところ、何と“ファイン サンキュー アンドユー”としっかりした英語で返事をされた。ある時、奥さんが面会されていても全く無表情で発語が無いので、私が“アイ ラブ ユー”と言ってみたらと促し、奥さんが耳元で“アイラブ ユー”と言ったところ何と“ミー トゥー”と応答された。
奥さんは涙を流し喜ばれ、人生で最も幸せな面会をさせていただきありがとうございました、と。           920


2022/7/15 No.1087
  サングラス


 目と目を合わすことが出来るのは人間だけで、動物は出来ない。その昔、ルバング島から帰国した小野田元少尉がサングラスをかけたタモリと対談する時、目が合わせられないあなたとは話ができないと言ったことが話題となったことを思い出す。

  外人はかっこよくサングラスをかけているが、日本でサングラスをかけるのはヤクザ位と思ってきた。私は20年来の白内障術後で、最近テニスの時まぶしさを強く感じミスショットする様になり、光の程度に応じて色調が変わる度付きサングラスを購入し、生まれて初めてサングラスをかけてテニスをする様にしている。

 太陽光によりまぶしさを感じるのはふつうであるが、入院患者で自然光でも人工光でも強いまぶしさを訴え、一日中カーテンをおろし蛍光灯も消して、なおサングラスをかけている患者がいる。

 通常、眼疾患によるまぶしさの多くは直射日光や逆光などにより一過性に生じるが、「中枢性羞明」は常にまぶしさを自覚し続ける。中枢性羞明は中枢の異常によってまぶしさが生じていて、頭痛、眼痛、疲労感などを訴えることも多く、慢性疲労症候群、繊維筋痛症、眼瞼けいれん、慢性疼痛などに合併し常にサングラスを必要とする。  920
 信頼関係とオキシトシン:920の独り言(728) 



2022/7/8 No.1086
  オッサン村

 
オッサンとは男性優位に設計された社会でその居心地の良さに安住し、その陰で生きづらさや不自由や矛盾や悔しさを感じている少数派の人達の気持ちや環境に思いが至らない人たちのこと。

 日本一の「オッサン村」は永田町という。男女同権などと正論を声高に演説しているが、セクハラ、パワハラは当たり前で、大物政治家が酒の席で女性政治記者に乳を触らせてくれたら特ダネを教えるよ、などは日常茶万事のことらしい。

  紳士的おじさんと思われる安倍元首相が凶弾にに倒れたが、オッサンとおじさんの違いは?
多くの女性が、職場や社外の中年男性を素敵なおじさんか、関わりたくないオッサンか区別しているという。素敵なおじさんは、博識、自慢しない、いばらない、清潔感、言葉使い、人柄などなど。一方、オッサンは男尊女卑、いばる、スケベ、デリカシーがないなどなど。平気で嘘を言わなければならない政治家はオッサン顔が多い。おじさんとオッサンの違いは酒の席で最もその差が出るという。

  団塊世代のオッサン時代を経て歳を取り白髪のじじいになったので、スケベじじいと言われない様にしよう。    920
 佐藤知矢子:オッサンの壁、講談社現代新書。



2022.7.1 No.1085
  REBORN

 
2025年4月に「いのち輝く未来社会のデザイン」をメインテーマに大阪・関西万博が開催される。大阪パビリオンのテーマがREBORN(生まれ変わり)に決まったそうだ。

 総合プロデューサーは日本抗加齢医学会副理事長の森下氏。ヘルスケア・先端予防ドックのディレクターは日本抗加齢医学会理事長の山田氏などが役員となり、2050年の「近未来の病院」、「近未来の健康」を具現化するという。

 「アンチエイジング・ライド」と呼ばれる乗り物に乗ると数分のうちにデジタルセンシング技術で、「心・血管年齢」「筋・骨格年齢」「見た目年齢」「脳年齢」「感覚年齢」のエイジング・クロック(老化時計)が測定され、AIによる老化防止、健康な生活を送るために個々にあったアドバイスを受けることが出来る。吉本興業による免疫力を高める「waraii」パビリオン。ファインバブルにリラクゼーション機能やデジタルセンシング機能を加えて、心身ともに洗浄することが出来る近未来型人間洗浄機が展示されるという。

 健康志向が高い団塊世代が全員後期高齢者となり、生まれ変わり、若返りを求めて大挙し訪れるであろう。     920



2022.6.24 No.1084
  抗加齢医学会

  「心身ともに若々しさを保つアンチエイジング科学とエビデンス」をテーマの第22回日本抗加齢医学会に初めて参加した。会長講演 「脳のアンチエイジングと見た目のアンチエイジング」。シンポジウム「美肌と美声と美能を目指すアンチエイジング」、「若い感覚をキープする」「ミューズ細胞のもたらす医療イノベーション」「血管不全と酸化ストレス」「腸から考えるアンチエイジング」「老化治療のための戦略」など面白そうな演題がメジロ押し。

 堤紀子氏による特別講演「アーミッシュ:心と身体のアンチエイジング」は面白かった。北米の特定地域に暮すアーミッシュは電気や車など近代的なものを拒否し自給自足に近い生活をしている。老化も自然の過程として受け入れ、アンチエイジングと正反対の
考え方で、多くの老人が長い健康寿命で幸せな生活を送っている。

 生命にとって「老い」とは一体何だろうか。抗加齢医学会は「老化」を疾患と考え、老化のコントロールと.若返りを目指すという。懇親会には再生医療を受けたガクトが出演。

2025年大阪万博では2050年のヘルスケア・医療を体現すべく抗加齢医学会が医学会をリードして老化時計とかアンチエイジング・ライドなど全面的に協力しているという。 920

 堤紀子:アーミッシュの老いと終焉、未知谷。


2022/6/10 No.1083
  倍速視聴


 ITの急速な進化により情報が溢れる時代となり、生まれたときからSNSに親しみ効率性を重視するZ世代の若者たちは映画やアニメなどを倍速で視聴するという。2時間の作品を1時間で観ると、無駄な時間を減らし効率よく作品が観られるので、タイパ(タイムパフォーマンス)が良いというそうだ。

 映画などの録画を倍速視聴したのでは本来の感動が得られないが、オンライン授業の録画は2倍速でみても理解度は変わらず、講義動画は2倍速で視聴しても学習効果は変わらないという。

 私は録画を見ないので倍速視聴は良く分らないが、テニスのグランドスラム大会はスポーツの試合としては最も長い闘いで、4時間を超えることもあるので、倍速視聴がよさそうに思うが、結果が分っての録画では面白みが半減するし、スーパーショット応酬の感動も薄れるし、人生と同じ様な試合の流れが味わえないのでWOWOWのライブ放送を見るのを楽しみにしている。

  先日のフランスオープンのナダル優勝戦は時差で真夜中となり、残念ながら見る事が出来なかったが、テニス好きなZ世代の若者は録画を倍速視聴するのであろう。       920




2022/6/3 No.1082
  加速思考症候群

  今や世の中はあまりに多くの様々な情報が溢れ過ぎている。私はスマホをほとんど使用しないが、若い人達は一日中スマホを手にして膨大な情報の洪水にさらされている。現代人一日の情報量は江戸時代の人の1年分、平安時代の人の一生分の情報量だという。

 現代人は脳と言う処理装置で、平安時代の人より数万倍の情報を処理していることになる。あまりの情報過多により脳は休まることなく思考が加速し続け、感情が壊され心の異常がもたらされている。落ち着きがない、短気でせっかち、感情の起伏が激しい、集中力が続かない、飽きっぽくなる、不平不満が多い、取りこし苦労が多く不安にさいなまれている、イライラするなどの症状を持つ人は多い。
 私は元来イラチで、最近は患者にも看護職員に対してもイラチがひどくなり歳のせいだと思っていたが、パソコンを開くと膨大な医療関係情報は無論、世界中の政治・経済問題、ウクライナ、プーチン、バイデン、習、中米対立をはじめ、環境問題、スポーツ情報、芸人情報、小さな事件、事故にいたるまで瞬時にして膨大な情報にさらされていて、「加速思考症候群」に陥っているのであろうか。

 情報を絶ち坐禅でイラチを治そうと思うが上手くいかない。 920

  アウグスト・フリ:加速思考症候群、心をバグらせる現代病。
         ハーパーフリンス、ジャパン。



2022/5/27 No.1081
  医療DX令和ビジョン2030


 日本の医療現場はデジタル化が遅れていて非効率的な作業が多く、医療におけるDX(デジタルトランスフォーメイション)の遅れがコロナ感染により明らかにされた。

 コロナ感染者情報管理システム(ハーシス)は医師からファックスで送られた患者の紙情報を保険所でシステムに入力するという手間が問題になった。さらにワクチン接種記録システム、ワクチン配送・在庫管理システムなどと連動されてなく、データがそれぞれのシステムでバラバラに管理され混乱した。

 日本の医療分野情報の在り方を根本的に解決するため、患者情報を一元的に管理し情報を共有できるようにする、「医療DX令和ビジョン2030」が政府の骨太方針に提言されるという。
2030年までに電子カルテを100%普及させ、電子カルテの情報を標準化し、レセプト、検診結果、予防接種に加えて診療情報、検査結果、投薬治療など全般にわたる情報を共有することにより、業務の効率化、正確なデータに基づく分析、診療の質の向上、治療の最適化、医療サービスの向上を図るという。
紙カルテに慣れ親しんだ時代遅れの老いた私は、マイナンバーカードをやっと手に入れたが、新たな情報化時代についていけない。      920

 加藤勝信:コロナ禍乗り越え、新たな時代に。第38回日本救急医学会中国四国地方会、特別講演。



2022/5/21 No.1080
  中国四国地方会

  第38回日本救急医学会中国四国地方会が、post covid-19 with covid-19をテーマに岡山国際交流センターで開催された。3年ぶりの現地開催。旅行がてら学会に行くのを趣味にしていたが、コロナによりステイホームしていたので、久しぶりに学会に参加してきた。

  「コロナ禍乗り越え新たな時代に」と題して前内閣官房長官の加藤勝信氏による特別講演。「医療関係者の皆さんお疲れ様」と題してテツandトモによる「なんでやろ~」ライブが会長も飛び込み参加し面白かった。
 
  中国四国地方会といえば、先日の日曜日には中国四国医師テニス大会が行われた。瀬戸内海に面した広島、岡山、山口、愛媛、香川の5県からテニス愛好家や家族など約100人が集まり、交通の便が良いので数年前からは尾道の備後運動公園で毎年5月頃に行われている。久しぶりに参加したが、70歳以上は3名のみで、私は上から2番目であった。若い人との試合に勝つことも出来なくなった。

  救急医学会も若い人ばかりで、私のような白髪の年寄りは少なく趣味の学会参加もテニス大会参加もぼつぼつ終わりにしなさいということであろうか。              920 



2022/5/13 No.1079
  鍾馗(しょうき)


 世界三大危機と言われる災害、疫病、戦争に見舞われている。コロナパンデミックで約5億人が罹患し600万人が死亡したと発表されているが、実際は1500万人以上が死亡しているという。

 大都市のロックダウン、外出制限、移動制限などのステイホーム、ワクチン、マスクなどでも収束が見込めず。世界経済に及ぼす影響、不安・偏見・差別などの社会不安、テレワーク、オンライン教育など対人関係に及ぼす影響、貧しい国との格差など、コロナ疫病によるさまざまな危機が懸念されている。

 地球規模の環境破壊、温暖化による災害が大きな危機となっているのに、プーチンがウクライナを侵攻し欧米対ロシア中国対立と、世界はVUCA:Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambigresity(曖昧)と危機的状態に陥っている。

 先日、浄土寺阿弥陀堂で第30回薪能が開催され、能「鍾馗」が演じられた。「鍾馗」は中国唐の時代に第六代皇帝「玄宗」がペストパンデミックで病に伏している時、疫病を追い払った神。大きな目を見開き口を横一文字にして睨みつける薪能の鍾馗により尾道のコロナ疫病は収束するだろう。     920


2022/5/6 No1078
  TAVI


  超高齢化社会になり大動脈弁狭窄症患者に大腿骨頸部骨折の合併発症が激増しているという。大腿骨頸部骨折は年間17万件発生していて、約2%に重症ASが合併しているので、年間およそ3400件が手術をするかどうか主治医、患者、家族、術者、麻酔科医、循環器科医が悩んでいる。

  以前は手術の中止が推奨されていたが、日本循環器学会が新しいガイドラインで、重症ASを合併していても大腿骨頸部骨折の手術を先行することを推奨すると明記された。

 当院でも何例か経験したが、高齢者が骨折の手術をせず保存的に加療していると寝た切りになることが多く、最近では生命予後よりQOLが重要視されるようになり、寝たきりになるようなら死んだ方がましという高齢者が多くなったことが考慮されたのであろう。

 超高齢者に対する侵襲的治療の是非には悩まされることが多いが、徳島大学で何と102歳のAS患者に対してTAVIを行ったという。先日、高齢の男性患者さんに胆管癌が見つかりAS心不全のため加療できなかったが、患者さんの強い希望により広島大学でTAVI
を行い心不全が改善し、胆管がんにはステントを入れ、百歳まで生きると言われていたが・・・。        920



2022/4/29 No.1077
人新世の資本論


 脳出血を患った兄のお見舞いで、今年4月オープンした福山アクティブワンに行ってきた。訪問、通所、入居の多機能施設ということで、一階は各種リハビリ設備、卓球、囲碁、足湯、3階には屋上庭園、立派な飾り物など高級感あふれる豪華な施設であった。

 豊かさを求め働きに働いて多量生産、多量消費、多量廃棄の資本主義社会を牽引してきた私達団塊世代が後期高齢者になるので、その利用を見込んでのQOLサービスという株式会社が設立。

 水、電気、介護などを含め、あらゆるものを商品化して限りない成長を求める新自由資本主義社会。365日24時間オープンの物で溢れるコンビニの数々、同様にいつでも輸入牛肉が食べれる牛丼屋、マクドナルド、家には通勤で乗る新しい大きな自家用車に買い物用自動車。大富豪による富の一極集中などなど。

 先進国の新自由資本主義社会の行き過ぎた経済活動が、経済格差、パンデミック、気候変動、異常気象をもたらし、現在の豊かな生活が破壊されようとしている。文明社会の危機にある今の時代に求められている持続可能な経済成長とかSDGsとか電気自動車などは根本解決にならず、唯一の解決策は「脱経済成長社会」という。 920

 斉藤幸平:人新世の資本論とこれからの豊かさ。広島県保険医協会市民公開講座。
 斉藤幸平:人新世の資本論。集英社新書。



2022/4/22 No.1076
 マスク美人

 
新型コロナウイルスの世界累計感染者数が5億人を超えたという。欧米では流行が続いているが、マスク着用義務撤廃などでマスクをしている人はほとんどいなくなった。一方、我が国ではほぼ全員のマスク姿が続いている。この違いは何故だろうか。

 相手の表情を見分けるのに欧米人が注視するのは主に口元なので、マスクをしていると対面で相手の感情を見抜くことができなくなるからマスクをしたがらないという。鼻も高すぎるし。

 一方、日本人は「目は口ほどにものを言う」といわれるように、目元を見る傾向があり、マスクをしていても相手の感情を推し量ることができるのでマスクに抵抗がないという。さらに美人かどうかは鼻を含めて顔の下半分が重要視されるので、マスクをしていると多くが美人に見える。

マスクなしの素顔を見られブスと思われたくないし、他人の視線が気にならずに落ち着くのでマスクがはなせない「だてマスク依存症」が激増しているそうだ。人前でマスクを外すことに抵抗を感じ、マスクを下着になぞらえて「顔パンツ」と言う人もいるそうだ。

 皆がマスク美人に、良いのやら悪いのやら。    920



2022/4/15 No.1075
 脳脊髄液漏出症学術集会

 第1回日本脳脊髄液漏出症学術集会が、主題:硬膜穿刺後頭痛と特発性低髄液圧症候群―脳脊髄液漏出を紐解くと題して明日4月16―17日に姫路市文化コンベンションセンターで開催される。
 “硬膜穿刺後頭痛”とは懐かしい。私は今から40年程前に臨床麻酔学会のシンポジウム「ペインクリニックにおける合併症:予防と対策」で「硬膜外ブロック治療時の硬膜穿刺後頭痛」と題して発表したことを思い出す。

 当時大学ペインクリニックでは多くの頸部、胸部、腰部硬膜外ブロックを施行していて、誤った硬膜穿刺をドラポンと称し恐れていた。硬膜外穿刺針によるドラポンでは頭痛が必発し、痛みの治療時にドラポンによる新たな頭痛が発生するのは大きな問題であった。

そこで、ドラポン後の難治性起立性頭痛に対するブラッドパッチをふくめた様々な治療法の効果を検討した。さらにドラポン後、直ぐ一椎体前後で注意深く硬膜外穿刺し、硬膜外腔に自己血を注入するブラッドパッチを行うと頭痛発生予防効果があることを発表した。

 学術集会に参加して40年前に硬膜穿刺後頭痛に対するブラッドパッチの効果を発表したことを年寄りの戯言として発言しようと思ったが・・・。               920
 木村邦夫:硬膜外ブロック治療時の硬膜穿刺後頭痛。
      日本臨床麻酔学会誌、Vol5,No3,1985



2022/4/8 No.1074
  青春18きっぷ

 
今年の4月より、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ18歳から法律的に大人になるという。
 
  青春18きっぷは、学生が春夏冬の休暇を利用して鉄道旅行しやすい様に発売されたが、年齢にかかわらず誰でもが利用できる全国JR線の一日乗り放題のきっぷとなっている。青春18きっぷで大人になり一人旅する18歳の若者はどの位いるのだろうか。

 その昔、私は18歳の時、大学の入学式前日に福山から大阪まで自転車で行ったことを思い出す。当時、若さと勇気に満ちた世界貧乏旅行記:小田実の「何でも見てやろう」を読み、北海道大学に行った私の親友とヨーロッパ貧乏自転車旅行を計画した。が、1年間の休学が無理となり、その代りとして一人で自転車での日本一周を計画。夏休みを利用してまず西日本一周自転車の旅にでた。野宿や小学校の講堂や民家やユースホステルに泊まりながら、計画性より偶然性を大切にする青春の旅をしたことを懐かしく思い出す。

 冒険の様な無謀な体験が出来るのは若者の特権と思っていたが、今では青春18きっぷで冒険の様な旅をしているのは若者ではなく圧倒的に中高年ばかりのようだ。       920



2022/4/1 No.1073
  21世紀の災害

 
21世紀も火山列島の我が国は東北大震災、近未来発生するであろう東南海大地震、火山爆発など自然災害から逃れられない。さらに21世紀は人類活動による炭酸ガス上昇に伴う地球温暖化で巨大台風、洪水、海水上昇など、人災という災害が地球規模で頻発する。さらに新たな災害としてコロナパンデミックが発生した。世界中で5億人が罹患し経済への影響など大きな地球規模の災害になった。 自然災害や人災によるさまざまな災害による地球の破滅を抑え、経済、社会、環境にまたがる地球の未来を持続可能にしてゆくために、持続可能な開発目標SDGsが国連で採択され、国や企業やわれわれ個人の持続可能社会に向けての行動が求められてきた。
 
  ところがどっこい、また新たな災害が発生した。大国ロシアがウクライナを侵略。欧米対ロシア、中国、独裁と民主主義、経済不況、食糧危機、第3次世界大戦予兆など、プーチンという一人の独裁者によってSDGsによる持続可能社会どころか、世界規模の災害がもたらされようとしている。

  21世紀に発生するさまざまな災害で地球環境は、国際社会はこれからどうなり、我が国は私はどうすれば良いのであろうか。    920



2022/3/25 No.1072
  走れない

 
先日、カープの歴代OBスターが集まり、マツダ球場でカープのレジェンドゲームが行われた。中国新聞創刊130周年記念事業の一環で、コロナパンデミック禍での医療従事者に感謝のメッセージということで、松村県医師会長が始球式を行い、収益の一部100万円が県医師会に寄付されたという。

 OBスター達のバッティング、投球、グローブさばきなどはさすがであったが、往年の名選手も70歳前後になると、何と言っても走れないのには驚いた。走塁でも守備でも、わざとではないかと思われるくらい、滑稽でのろまな走りであった。

 団塊世代の私は70歳を過ぎた今でもテニスを楽しんでいるが、自分では一生懸命走って感覚的には十分間に合って取れると思ったボールが、あと一歩、二歩も間に合わなくて取れないことが多くなった。若い人から見ると、テニスコートでの私の動きは、カープのレジェンドの滑稽なのろまな走りと同じように見えるのであろう。

 小さい子供たちは分けもわからなくいつも走り回っているが、高齢になると走らないし、走れなくなる。歳を取るということは走れなくなるということであろう。      920



2022/3/18 No.1071
  岡田裕之先生

 
岡山大学消化器内科学教授の岡田裕之先生が定年を迎えられた。30年程前、私が山本病院に来た時と同じくして、ネーベンとして週一回消化器の診察をしてもらっていた。岡大病院を離れられた一時期を除いて、その後も優秀な医局員派遣を含めて診療をしていただき、教授になってからも月に一度病院に来られ診療をしていただいていた。非常に熱心で優秀なうえに、忘年会とか病院旅行にも参加されていた。個人的にも兄貴と慕われ、当直の時に一緒にゴルフ練習や食事をしたことが懐かしく思い出される。

 昨日は最終講義が「消化器病学40年の軌跡~素晴らしい出会いに恵まれて」と題して対面とウエブによる同時配信があり、聴講させてもらった。長い間,岡大消化器内科の重責を担ってこられた先生の診療、教育、世界に発信する研究などを話され、人間関係
を大切にされる人柄が滲みでていた講演で感動させられた。

 明日が山本病院での最後の診療になると思うので、先生に以前診てもらっていた岡大肝移植第1例目の患者さんを含め職員全員との記念写真を撮ることにしている。今後は姫路日赤病院の院長として赴任されるとのことで、ますますの活躍を期待したい。 920



2022/3/12 No.1070
 ウエルビーイング

 健康とはフィジカルに、メンタルに、ソーシャルに、最近では加えてスピリチュアルにウエルビーイングなこととWHOで定義されていて、医療関係者では良く知られている。
  労働者の健康を守るため、働き方改革により残業や過重労働制限、ストレスチェックなどが法律で定められているが、近年、効率性とか収益性とか価値観の変化により、従業員の幸福感や満足度が企業の業績に影響を与えるようになり、健康な職場づくりとして、企業にとって従業員の健康や幸せを表す「ウエルビーイング」が経営に欠かせないキーワードになっているという。

  厚労省は医療分野における労働災害で最も多い看護介護職の腰痛対策を勧めている。当院では理学療法士の指導で、昼の休憩時間に腰痛体操の音楽を流して皆がラジオ体操、ストレッチをする様になり、私の腰痛は治らないが、腰痛を訴える人が少なくなったという。

  当院はわずか100人足らずの職員だが、先日、看護師同士の職場結婚があった。何と今まで6組もの院内カップルが誕生しているし、勤続50年の看護婦さんも働いている。ウエルビーイングな職場を目指して。    920


2022/3/4 No.1069
 シス(SISU)

 
まさか大国ロシアのプーチンが常軌を逸したウクライナへの進軍、原発爆撃、核兵器使用を口にするなどとは言葉を失う。ロシアの国民はどう思いウクライナの国民は今後どうなるであろうか。

  欧米ではフィンランドの「SISU」が流行語になっているという。フィンランドは教育、経済、幸福度など世界でトップクラスの良い国として注目されているが、ロシアの隣国に位置し、その歴史は苦難の連続で、2度にわたるソ連の侵略戦争でフィンランドは劣勢ながら激しい戦いで独立を死守し、現在は世界一幸せと言われる素晴らしい国になっている。その原動力が「SISU」ということらしい。

  「SISU」とはフィンランドの人々に古くから受け継がれている特別な精神力のことで、困難に立ち向かう勇敢さ、忍耐、必ずやり遂げる力、不屈の精神といった意味合いがある。フィンランド人の内に秘めた強さを表す「フィンランド魂」とされている。

 フィンランドが「SISU」によりソ連邦からの侵略に打ち勝って現在の幸せな国家を築いたように、ロシアからの侵略にさらされているウクライナも「SISU」によりこの困難に打ち勝って、幸せな良い国を築いてもらいたいものだ。        920
 フィンランドメソッド:920の独り言(460)




2022/2/25 No.1068
 良い国ランキング

  コロナパンデミックのなか、色々あったが北京冬季オリンピックが無事終了した。北京にはニクソン訪中後、昭和50年頃であったろうか、ハリ麻酔見学のために行ったことがある。専門店で美味しい北京ダックを食べたが、国民は私が子供の頃の日本の様に、国民皆が貧しくて人々の移動は徒歩か自転車で、天安門前広場が自転車に乗った人々で溢れていたのを思い出す。

 北京冬季オリンピックではノルウエー、スエーデン,フィンランドなど北欧の国々の活躍が当然ながら際立っていた。

 フィンランドの教育が世界一なのは良く知られているが、北欧の国々の人生の選択自由度、ワークライフバランス、社会的支援、社会的寛容、腐敗度など幸福度ランキングも上位を占めている。さらに経済の効率性、安定度、治安の良さ、報道の自由、健康と福祉、低い貧困率、女性・子供にとって良い国、水、空気がきれいなど、良い国ランキングでもダントツ上位を占めている。

 人口500万人足らずの幸福で良い北欧の国々から、人口10億の中国も人口1億の日本も米国も、特にウクライナを攻めているロシアは学ばなければならないことが多い。    920

 フィンランドメソッド:920の独り言(460)
 岩竹美加子:フィンランドの教育は何故世界一なのか。  新潮新書。
  堀田都喜子:フィンランドはなぜ午後4時に仕事が終わるのか。   ポプラ新書。


2022/2/18 No.1067
辞世の短歌

 
若い時の結核治療ストマイにより50年間聴覚脱失したおばあさん。短歌が趣味で、毎回来院時短歌を外来カルテに書いてもらっていた。呼吸不全が増悪し入院され、呼吸苦のなか、回診時に入院カルテに短歌を書いてもらっていたが、辞世の短歌となった。
 
12月13日:入院。
覆面の うちより覗く目鼻だち 男看護師頼もしきかな

12月21日:不眠で。
子孫らのかけてくるメール あたたかく 今宵の糧に いだきてねむる

1月4日:
春光の光は窓辺に及びきて 暑き正月三が日 すごす

1月11日:
子孫らの数を数えて 三が日幾年も たがわぬ型をかぞえて きたりぬ

1月18日:夜間不穏。
子供らへ メールがうれしくて またもさいそくする 老いて われは

1月25日:長生きさせてほしくない、と。
うらうらと 春日を受けて 生きてゆく 山本病院階館

2月1日:辞世の短歌
うらうらと 春日を受けて休むもう わが人生の さいごの つとめ

2月14日:死亡 享年 92歳 合掌。

デフリンピック:920の独り言(844)




2022/2/11 No.1066
 Z世代


 2000年前後に生れた20歳前後の新社会人の若者を「Z世代」と呼ぶことを知った。カナダのベストセラー小説「ジェネレーションX」から派生して名付けられたという。

 戦後のベビーブームで高度経済成長を牽引してきた団塊世代の私。バブルが崩壊し就職氷河期など不運な世代と言われる団塊世代の子の団塊ジュニア世代。その団塊ジュニア世代から生れたのがZ世代の若者。団塊世代から見ると孫に当る若者たち。

 もの心ついた時からインターネットに馴れ親しみ、スマホを日常的に使いこなしSNSでコミュニケーションを行ってきた若者たち。不満はないが環境破壊、格差社会、人口減少など、漠然とした将来不安があるため、安定を求め普通が一番という。SDGsに関心が高く、自動車は買わず共有するシェアリングや、定額でモノやサービスを一定期間利用するサブスクリプションなど、物を持たないのが良いと考えているという。

 今の若者は、などというじじいになった団塊世代の私が20歳頃、四当五落、下宿で徹マン、24時間戦えますか、おおモーレツなどはZ世代の若者にジェネレーションギャップで通じない。920

 団塊世代:920の独り言(39) 
 ALWAYS:920の独り言(253)
 サブスクリプション:920の独り言(940)



2022/2/4 No.1065
 薬学部

  日本の薬剤師の人口あたりの数が世界で群を抜いて多いことを知った。人口10万人当たり190人。米国95人、ドイツ67人、オランダ21人などに比べてその多さが際立つ。

  厚労省が医薬分業を推進するために、病院外薬局の調剤報酬を異常に高く(ドイツ、英国比で3倍以上)した結果、平成15年よりたった3年間でそれまでの2倍、24校の私立薬学部の大増設が競われ、既に多かった薬剤師数が薬学部乱立により激増したという。すべての病医院に門前薬局が併設されているのは、諸外国から見て異常な状態で、私も不便で面倒と思っていたが・・。

  日本薬剤師会の会長も、需要に比べ多すぎる。国がもっと計画的にすべきだった。薬学部の定員を減らすべきだが、これからもっと増える予定なので、仕事内容を広げる必要がある、と。

 薬学部乱立に加え突然の6年制移行により定員割れ、学生の質の低下、留年生や国試不合格者増加などの学校が出現するなど、さまざまな問題が噴出しているという。以前より歯学部も同じ様なことが起きていて対策が話し合われているというが。これから先、
人口減少時代を迎える我が国で、医師も過剰になることが想定されているので、医学部でも同じ様なことにならなければ良いが。    920 
 院内処方:920の独り言(788)


2022/1/28 No.1064
  医師の働きがい改革

 
団塊世代の私が医師になった頃は高度経済成長時代で、24時間働けますかなど、豊かさを求めて皆が働きに働いていた。医師の労働時間、過重労働などという発想は全くなく、頑張り続ける医師にされ連日病院泊まり込みなどは当たり前であった。

 過重労働による過労死が問題になり働き方改革法案が施行され労働時間が規制された。医師に関しては5年間の猶予が与えられていたが、2024年より医師の時間外労働の上限規制、病院内での宿日直許可基準など、「医師の働き方改革」が実施される。

 病院での日当直医、地方で365日24時間救急医療を担う医師、偏在する専門医など、医師不足が危惧されているが、団塊世代が全員亡くなり急激な人口減少時代を迎える2040年以降からは医師過剰になると言われている。

それまで、医師偏在の是正、女性医師活用、看護師の特定医療行為(麻酔専門看護師養成の是非)などのタスクシェアリングに加え、働きに働いてきた団塊世代で私の様な高齢医師も「働きがい改革」で、まだ現役で働くことが求められそうだ。    920
 医師の働き方改革:920の独り言(915)


2022/1/21
  老化予防ワクチン

 
不老不死は人類永遠の夢と言われているが、ガリバー旅行記に出てくる不死の国では、老いても死ねない老醜が描かれている。

 不死は無理としても、いつまでも若々しく実際の年齢より若く見られたいという抗加齢アンチエイジングは美容の世界において発展してきた。多くの生活習慣病は加齢とともに悪くなっていくので健康長寿を目指すアンチエイジング医学が提唱され、生活習慣改善に加えて加齢関連疾患の研究に鎬が削られていて、最近ワクチンで老化細胞を除去することがマウスで成功し、動脈硬化、アルツハイマー認知症などの治療に期待されるという。

 東アフリカの乾燥地帯の地下で生活しているハダカデパネズミ(トンネルの中は温度が安定しているので体毛は退化して赤裸でトンネルを掘るために出っ歯)は、不細工だが驚くことに老化現象が見られないのでその生態解明が不老長寿の実現につながるのでは
ないかと注目されている。死なないのではなく、病気やけがで死ぬが、老衰で死ぬことは許されないという。

  老いのコントロールが夢物語でなくなりそうだが、不老の世界は不自然なので、私は老いを受け入れ白髪を染めたりはしない。           920


2022/1/14 No.1062
  生き物たちの死にざま

  メスに食われながらも交尾を止めず死んでゆくオスカマキリの話は有名。故郷の川を旅立ちはるかかなたの大海をさまよい数年後母なる川に戻り、傷つきながら川の上流にたどりつき、メスは川底に卵を産みオスは精子をかけてオスもメスも死んでいく鮭の思いとは。数か月も絶食し卵を守り続け孵化を見届けて死んでいくタコの母の気持ちとは。老体にむち打って花の蜜を集め死んでゆくミツバチ、地面に仰向けとなり空を見ることなく死んでゆくセミの気持ち。

  もっとすごい生き物。ハサミムシは飲まず食わずで1か月以上も卵の世話をし続け、孵化した子供たちは周りに食糧がないので、母親の身体を食べ始める。母親は少しずつ身体を失なっていく。遠ざ
かる意識の中で彼女はどんな思いで命を終えようとしているのであろうか。数か月後、石の底から元気なハサミムシが出てくる、母の死骸を後にして。などなど生き物たちの死にざまを文学的に興味深く書かれた稲垣氏の本が非常に面白い。

 超長寿社会により死生観が変わってきた我国で、長い老いの時を晩節を汚さない様に生き、団塊世代の私達はどのような死を迎えるのであろうか。                920
 稲垣栄澤:生き物たちの死にざま。草思社文庫。


2022/1/7 No.1061
  親ガチャ

  団塊世代の私が育った戦後の貧しい時代から高度経済成長時代にかけては、アメリカンドリームなどと頑張れば努力次第で誰でもが豊かになれると、若者が夢や希望を抱いていた時代であった。

 その後は限りない経済成長を目指す資本主義社会となり、一部の金持ちと貧富の格差が出現し国民総中流社会から格差社会になった。格差社会では人生の勝ち負けは家庭環境で決まってしまうという。

  自らの人生が親の経済力で決まってしまう状況を、何が入っているか分らないカプセル玩具の販売機「ガチャガチャ」になぞらえて「親ガチャ」と呼ぶそうだ。高い夢や希望を持たない若者の諦めの気持を「家が貧乏で親ガチャに失敗した」というそうだ。

 中国でも一部の大金持ちと貧富の差が大きくなり、都会では一生働いても手に入らないマンションが林立し、若者の一部が一日中何もせずに、人生を諦める「寝そべり」が流行しているという。韓国でも結婚、就職、子供、マイホームなどすべてを諦めて生きる若者たちが「N放世代」と呼ばれ社会問題になっているという。

 地球環境破壊、格差社会、「親ガチャ」、「寝そべり」「N放世代」など、夢や希望が持てない若者の行く末が案じられる。    920


2021/12/24 No.1060
寂し・淋し

 歳を取ると月日の経つのが何と早く感じることか。妻が亡くなってもうはや一周忌、今年も終わりを迎える。 30年間世話になった名門グリーンストンヒルズテニスクラブの藤井直訓丘長も亡くなり今年末で閉鎖する。毎週日曜日ストレス発散の楽しいテニスをさせてもらっていた親友が心の病で倒れるし、兄が脳卒中で倒れるし、多くのテニス仲間とも別れを迎える。

 11年間続いていた福山文化大学も今年末で終了する。年10回、著名な講師の講演を楽しみにしていて、ほとんどの講演に妻とともに出席していたので100人位の講演を聞いたことになる。小泉純一郎、石破茂、安藤忠雄、養老猛、明石康、天野始、中西進、五木寛之、橋本大一、辛抱治朗、長尾和宏、鈴木大地、田原総一郎、坂東真理子など多くの講演を聞き勉強させてもらった。

  秋川雅史氏による「夢のある人生」と題する最終講演が、先日亡くなった新井満日本語詞「千の風になって」の歌で終わった。

 私のお墓の前で 泣かないでください そこに私はいません、ねむってなんかいません、千の風になって あの大きな空を吹き渡っています。

 人にとって最大の「寂しさ」は生まれた時から、一日ごとに持ち時間を失ってゆくこと:車谷長吉。        920
 わびさび:920の独り言(1017)


2021/12/17 No.1059
  リーダー

  コロナパンデミックに対する各国首相の対応に関し、世界の首相の危機時におけるリーダー論が盛んに論じられている。

  求められるリーダーは、“組織”と“場所”と“時”によって大きく変わってくる。ガキ大将の私が子供の頃のリーダー像は、「おれについてこい」型であったが、最近では個々人の能力を引き出すような優しいリーダーが求められているという。

  人を説得して動かすには「論理」と「感情」と「信頼」が重要で、リーダーの最も重要な仕事は「判断」と「決断」。人間的に尊敬でき、多様な人材の潜在力を引き出す「行動力」、「責任感」も求められる。リーダーには「運」と「タイミング」が大切で、
平時の良いリーダーが危機時の良いリーダーになれないことや逆の場合もよくあること。

  奇想天外な言動と容姿から宇宙人と呼ばれていた日本ハムの新庄剛志新監督が計算した気配りなどで好感度を上げ注目を集めている。プロ野球の監督として脱常識で新たなリーダー像をつくりだすだろうか。来年はカープより日ハムが興味深い。         920
  Never Waste a Good Crisis:920の独り言(1050)



2021/12/10 No.1058
  硬式テニスボール

 
COP26で地球温暖化対策が話し合われたが、地球上では海洋汚染、大気汚染、森林破壊など多くの環境汚染問題を抱えている。

  このような環境汚染に対して今私にできることは?硬式テニスボールは、ゴム製のボールにフェルトを巻きつけてあり空気穴がないため、内部の空気圧を高めて弾力性を保っている。保存中に空気圧が下がらないよう、金属製の缶にボールが梱包されている。グランドスラム大会では一度に出されるボールは6個で9ゲームごとに新しいボールに変えられる。私も毎回新しい缶からボールを出しているが、古くなったボールや缶の処分に困っている。硬式テニスボールは年間4億個生産され、1億2千万缶のペット缶が古くなったボールとともに廃棄されているという。プラスチックごみに換算して約4万トン。

 地球環境が悪くなると、テニスをするどころではなくなるので、 プロ野球で折れたバットを箸やゴルフのティに再利用している様に、使い古した硬式テニスボールを小学校の椅子と机の下に移動時に音が出なくなる様再利用するとか、ウイルソンが開発し紙パックに入った地球環境を考えたボールを手に入れたので使うことにしよう。     920

 持続可能な開発目標:920の独り言(1030)



2021/12/3 No1057
  不要不急

 
コロナパンデミックによる緊急事態宣言では「不要不急」の外出を控えるようにと政府が呼びかけた。感染防止と経済対策のはざまで、一体何が不要で何が不急なのか。日々の生活から人生哲学まで多くの問題提起となった。

 夜の外飲食、観光旅行は不要不急ということで禁止。スポーツや観戦も不要不急で東京オリンピックが無観客となった。コンサート、講演会、文化交流会、学会なども不要不急と見なされ軒並み中止となった。新年会、忘年会、入社式、入学式、卒業式なども中止に。廿日会も中止に。学校生活や仕事なども不要不急なのであろうか、家から出ずに在宅でのオンライン授業とかテレワークなどとなった。

  病院の見舞いも感染防止から不要不急とみなされ、すべての病院で面会禁止となった。臨終の看取りもできない、葬儀も行わない。
僧侶は不要不急の存在なのかなどと、さまざまな問題が発生した。

  人は生存のためだけに生きているのではない。古代ローマ人は「パンとサーカス」といった。私達にとって「本当に必要なこと」とは、「本当に大事なこと」とは何であろうか。私達は一日一日をどう過ごすべきであろうか。         920
 不要不急:それでも大切なものはなにか、新潮社。



2021/11/26 No.1056
 写経

 
92歳で胃癌術後再発腹膜播種の患者さんが入院してこられた。毎日日記を書いておられるようであったが、訪室すると日記帳の裏のページに小さな字でぎっしりと何かを書いておられるので見せてもらったところ、般若心経をボールペンで毎日書いておられた。
聞くと20年来毎日欠かさず筆で写経を書いてこられたとのこと。入院して時間があるので書いていると言われるが・・。

  手書きで文字を書くことは高い集中力が求められ前頭葉を活性化する。一字一字書くごとに心が落ち着き、心と身体を癒やしてくれる。写経に集中しているとβエンドルフィンが分泌され、幸福感がもたらされる。目の前のことに没頭することにより、マインドフルネス効果が発揮され、悩みやストレスから解放される、などなど。

  写経による良い事をすべてを得られているような穏やかな表情で、認知症状もなく、十分生きてきたので死ぬのは怖くない。痛み無く逝きたいと、点滴などの治療は拒否され、痛みをコントロールしながら写経が書けなくなり、数日後、穏やかに逝かれた。      
 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中 無色
 無受想行識 無限耳鼻舌身意 無色声香味蝕法 無限界 乃至
  無意識界 無無明 亦無無明尽 乃至 無老死 亦無老死尽  
      920


2021/11/19 No.1055
  比婆山

 
広島県と鳥取県の県境にある比婆山連邦は1200m級の山々が馬蹄形に連なり、ブナの自然林は天然記念物に指定されている。古事記に登場するイザナギノミコトが葬られたといわれ、御陵とも呼ばれ、一帯は比婆山伝説地として広島県史跡に指定されている。

 ヒバゴン伝説、春は草花、夏はキャンプ、秋は紅葉、冬はスキーと自然が一杯で、広島県民の森となっている。吾妻山ロッジと伴に休止されていた公園センターは今年4月1日より再開されていた。

 20年近く前にじじばば登山隊で、春に縦走したことがあるが、今回誘われて久しぶりに秋山を縦走してきた。

 早朝6時出発。8時毛無山登山口。晩秋の落ち葉が一杯の登山道は空気が美味しく歩くのに心地よい。烏帽子岳を経て御陵に。何と雪道になっていた。晩秋と早冬を味わいながらの山登り。360度展望の池の段で昼食。立烏帽子岳を経て3時に無事下山。15km、7時間の山行であった。公園センターで温泉に入り、6時帰宅。

 5峰の上り下りで膝を傷め下り坂が左膝痛で辛くなった。帰宅後知事選に行こうと思ったが膝痛の為歩けなくて棄権。どうなるかと心配したが、シップをして一晩熟睡すると翌朝痛みは軽快していた。膝はまだ若いのだろうか、痛み無く歩くことが出来てほっとした。
                      920


2021/11/12 No.1054
  財務次官モノ申す

 
18歳以下の子供や困窮大学生に10万円、マイナンバーカードに3万円を給付するという。経済対策なのか少子化対策なのか貧困対策なのか。どこにそんな大金が。どんどんお札を刷らないと。

 地球では温暖化が、世界では米中対立、貧富の格差が大きな問題となっている。我が国の大きな問題は、少子高齢化による人口減少。資源が少なく自然災害が多い小さな島国に1億人以上の人間が豊かに暮らしていること自体が不思議で、少子化による人口減少は自然のなりゆき。大切なのはこれからの少子高齢人口減少社会を脱成長、小欲知足で皆が穏やかに過ごせるようにすることであろう。

 矢野康治財務次官がモノ申す。このままでは国家財政は破綻する。誰が総理になっても1166兆円の借金からは逃れられない。コロナ対策は大切だが、人気取りのばら撒きが続けばこの国は沈む。今の日本の状況はタイタニック号が氷山に向かって突進している様なもので、巨大な債務の氷山の存在に気づいているが、霧に包まれているせいで、衝突を避けようとしていない。このままでは日本は沈没してしまう。現役財務次官がこの様な本当のことを言って大丈夫だろうか。
  財務次官モノ申す:文藝春秋。11月号。


2021/11/5 No.1053
 芸術の秋

 
先日、福山城築城400年記念として福山喜多流大島能楽堂で福山名所(などころ)コンサートが開催された。

  「備後の仏像から歴史を紐解く」と題して濱田宣氏による神辺国分寺の金剛力士像、草戸明王院五重塔内三尊、尾道浄土寺不動妙座像、阿弥陀如来像などの詳しいお話。講演の後、暦年の守護に感謝するとともに、今後の平安と興隆を祈念し、仏法僧による声明。草戸千軒を記念して制作された小唄「草戸千軒町」、仕舞「枕慈童」の能楽。ソプラノ声楽家による「荒城の月」を初めとする日本歌曲など盛り沢山のコンサートであった。

 文化の日には尾道しまなみ交流館テアトロシェルネで、しまなみ街道・秋の音楽休暇村2021が開催された。

 地元出身の若手音楽家によるピアノとバイオリンのアンサンブルの饗宴後、演出講師による迫力あるナレーションと尾道大学生が描いた四季の絵画をバックに、バイオリンを主とした弦楽楽団による「北半球の四季・南半球の四季」と題する珠玉の演奏であった。

 コロナにより文化活動が制限されていたが、いずれも密で沢山の観客と伴に濃密な芸術の秋を堪能させてもらった。  920
 芸術の秋の夜:920の独り言(799)


2021/10/29 No.1052
  故スティーブ・ジョブス

 
ヒットIT商品を次から次にと生み出し米アップル社を世界一のIT企業に導き、50歳ですい臓がんに罹患し死亡したスティーブ・ジョブス氏が死亡して今年で10年となる。

  彼は一時永平寺への出家を考えていたほど禅の影響を強く受けていたことで知られている。

 他の会社の製品を参考とせず、iPhoneやiPadなど新製品を次から次にと世に送り出せたのは、坐禅により真理を自分の外に求めず、自分自身の中にあるITに関する直感を磨いたから。

 付け加えるより取り去る、飾り立てるより簡潔にし、機能を絞り込んだシンプルさを製品に求めたのは、不要なものは悩みや雑念を含めすべて手放し心軽やかに生きる禅的生き方から。アップル社を追放された時、過去にとらわれることなく新会社を立ち上げ成功し、アップル社復帰後の飛躍、膵臓がん術後の活躍につながったのは、今この瞬間を全力で生きるという禅の考え方から。

  私も坐禅をしてきたが、じっと座って自分の心を観察し落ち着かせ、物事をクリアに見て現状を把握し、この一瞬を全力で生きる大事なものは何かを未だ見つけられない。      920



2021/10/22 No.1051
アンコンシャスバイアス

 団塊世代の私は、男は仕事女は家庭が当たり前の時代を過ごしてきたので、今のジェンダーフリーの是非は別にして、つい男のくせにとか、女だてらになどと思ってしまうことがある。

 東京オリンピック会長であった森喜朗氏が「女性がたくさん入ている理事会の会議は時間がかかりすぎる」と女性差別らしき発言をしたことによって、会長職を辞めさせられてしまった。

 アンコンシャスバイアスとは自分自身は気づいていない無意識の偏見のこと。もののとらえかたとか考え方の歪み。それまでの人生経験、知識、価値観をベースに判断し、何気ない発言や行動として現れる。自分自身では偏見と思っていないので、思い込み、決めつけとなると問題が生じる。

 あ:諦め、い:意地悪、う:内向き、え:遠慮、お:おとなしい、から、か:感動する、き:機嫌よく、く:工夫する、け:健康で、こ:貢献する、と、老人としてのアンコンシャスバイアス「あいうえお」に気づき、「かきくけこ」で高齢社会を幸せに過ごそうという、坂東真理子氏による講演が面白く素晴らしかった。   920

 坂東真理子:幸せな人生のつくり方、福山文化大学講演会。



2021/10/15 No.1050
  Never Waste a Good Crisis

 
コロナパンデミックにより、世界中で政治、医療、経済など、大きな危機を迎え大混乱がもたらされた。

 世界各国でロックダウンやワクチン接種、医療崩壊、経済不況、一極集中是正などさまざまな危機対策が行われてきた。我が国では菅政権が崩壊し新たに岸田政権となったが、この危機をチャンスに変えることができるであろうか。

  Never Waste a Good Crisisはチャーチルの名言の一つと言われ、危機に接しても決して悲観することはない。それは新たなチャンスとなり人生の糧となる。この危機を無駄にするな。目の前の逆境はあなたを成長させるための鍵。危機は最大のチャンス、と。

  知り合いの先生に三人目の赤ちゃんが生まれおめでとうといっていたら、何と非常に珍しい先天的代謝異常が分り、母児ともに入退院の繰り返しと大変な事になったという。奥さんも医師だが、上の子供たちの世話とか、研究や忙しい医師の仕事を今後どうするかなど、今までの人生で考えられなかった危機が襲ってきたと悩んでおられたので、Never Waste a Good Crisisを話してあげた。
励ましの言葉になったそうだ。          920



2021/10/8 No.1049
  浜までは海女も蓑着る時雨かな

 歳を取った患者さんが、もう十分生きたのでオシメになるくらいなら死んだ方がましなどと言うので、「浜までは海女も蓑着る時雨かな」を話している。

 どうせ海で濡れるのだが、せめて浜までは蓑を着て雨にぬれずに身体を大切にする。歳を取ると残り少ない命で、どうせ死ぬ命だが、生かされている命を大切にし、精一杯生きる努力をすること。バングラデシュの子供たちの希望は大人になること、多くが大人になれずに死んでしまうという命は大切なものだから、と。

 大学の同級生で前衆議院議員の親友、清水君が再び衆議院議員に請われて立候補すると言う。前回落選してから自病院を基幹病院として千床近くの医療介護福祉施設の京都清水メディケアシステムを立ち上げて大変だというのに。

 歳を取った政治家の是非は別にして、歳を取り残り少なくなった人生だが、自分のため人のために夢を持ち希望をもって新たな気持ちで挑戦しようとするその生き方に感服する。

 私も歳を取り残り少なくなった人生だが、悠々自適に過ごさせてもらえないので、彼から学ばせてもらおう。   920


2021/10/1 No.1048
 笑う

 「四角い仁鶴がまーるくおさめまっせ」の笑福亭仁鶴が亡くなった。仁鶴は笑いについて、「この世は大概しんどい、だから人間の笑いという調味料がなかったら生きていかれへんのとちゃうやろうか」と言っていたという。

 昔の王族貴族は、おもしろいことを言って笑わせてくれる召使いを抱えていた。ヨーロッパでは宮廷道化師と言われていた。日本では茶坊主などとも言われ、主君のストレス解消が役目であった。戦後経済成長時代は、世の中がストレスフルな競争社会となり、ストレス発散に笑いを求める風潮がひろがった。テレビ普及とあいまって、仁鶴をはじめとする落語、漫才などのお笑いタレントが次々に出現し大活躍をして、私達団塊世代に笑いをもたらしてくれた。

  現在ではテレビはお笑いタレントが活躍する馬鹿笑い番組ばかりになり、テレビが国民を総白痴化してしまっている。

  先日73歳の誕生日を迎えた。歳を取ると哀れである。馬鹿番組などと、白痴に加えて笑うことが少なくなり、ストレスが発散できずに元気を失い、健康を失ってしまう。       920
 笑いの医力:920の独り言(403)
 ユーモア: 920の独り言(1002)
 笑いと健康:920の独り言(1005)



2021/9/24 No.1047
 農耕民族と牧畜民族
 

 我が国はコロナ感染予防のため、公共の場で全員がマスク姿だが、米国はマスクをする人が少ないのは何故であろうか。

 古い昔よりの農耕民族か牧畜民族かの違いにより、日本文化は個人の自由より地域社会の調和を重要視し、米国は個人の権利を重んじる様になった。我が国の水田稲作では隣人との協調が重視され、米国で良い牧草地を求めての移動は個人の権利が重視された。共同生活する草食動物と弱肉強食の肉食動物の違いのよう。異なる文化遺産の違いによって、全員マスク姿の我が国とマスクの強要は個人の自由を侵害するので、マスクをすると米国では白い目で見られる。

 医師の派遣をしていただいている岡山大学病院で、旭川医大の学長解任問題と同じ様な問題が発生し、前学長がSNSで「岡山大学を正常化する会」を発信する異常事態に陥っているという。

  米国は出身校とは関係なく教授になるが、日本は医局という制度があり、多くの教授が自校の医局出身となっている。現在の私達の人間関係は良い面も悪い面も農耕民族という過去の文化遺産の影響が今に生き続けていて、隣人とうまくやれない人は追放される。       920



2021/9/18 No.1046
 全米オープンテニス大会

  世界貿易センタービルに旅客機が激突し炎上崩落した同時多発テロから20年。米国ニューヨークのグラウンドゼロで9,11追悼セレモニーがおごそかに行われた。同じ時、そのニューヨークで全米オープンテニス大会が盛大に行われていた。

  女子では同時多発テロ以降に生まれた10代同士の決勝戦で18歳のラドゥカヌが優勝し、2億7千万円もの優勝賞金を獲得した。復権したタリバン政権では男尊女卑のイスラム原理主義で女子の仕事、娯楽、スポーツは制限されているというのに。

  世界一のコロナ感染が続いている米国で、世界最大のメインコートでは3万人を越える観衆がビールを飲み食いしながらナイスショットに誰一人マスクせずに皆が大歓声をあげていた。我国では国民全員がマスク姿で静かな生活を送っているというのに。

  メインコートで立って大歓声をあげている観衆の男も女もデブが何と多いことか。米軍が撤退したアフガニスタンでは故中村哲医師の用水路建設にも関わらず、長い間の紛争や干ばつによる食料不足や貧困で、国民の3人に一人が飢えに苦しみ、多くの子供たちが栄養不良状態だというのに。           920


2021/9/10 No.1045
 ドンマイ


 テニスでダブルスの試合をしていて、相方がミスをした場合、「ドンマイ・ドンマイ」と言ってミスをした相方を励ますことをする。「ドンマイ」とはドント・マインドのトとドの音の落ちたもので、正真正銘の英語だそうだ。

 気にしない、平気ということで、ミスした相方のストレスを発散させて、落ち込まずに実力を十分発揮させるようにすること。ミスがストレスとなり、調子が狂うことはよくあること。ちょっとしたミスをきっかけに流れが変わることはテニスに限らず他のスポーツでも、人生でも、社会でもよくあること。

 世界最強自由民主主義国家アメリカが、ベトナム戦争敗北以降再び大きな敗北をアフガニスタンで味わっている。同時テロ事件のアルカイダをかくまっていたイスラム原理主義のタリバン国家を倒し、民主主義政府を樹立し莫大な資金と軍事的支援を長い間行っていたが、歴史的、宗教的、民族的、地理的な情勢判断ミスを犯し、タリバン国家やテロ組織の復活をきたすことになってしまった。

  このミスはアメリカ帝国の凋落、中国の台頭を加速する流れとなるに違いない。アメリカの同盟国である我国がこの悪い流れを変えるには「ドンマイ・ドンマイ」と言うしかないであろうか。 
        920
  流れ:920の独り言(843)


2021/9/3 No.1044
  パラリンピック


 コロナパンデミックの中、子供たちの観戦も制限され無観客で開催された東京パラリンピックが終盤を迎えている。

 パラリンピックは社会復帰を進める目的で発祥し、福祉の側面から捉えられていたが、次第に競技としての性質が高まり、時代の流れとともに勝利至上主義になった。テレビ中継ではアナウンサーが障害のことはあまり話さずにメダル数のことや順位、タイムなどばかりを声高に叫んでいるのに違和感を感じる。

 目が見え、耳が聞こえ、手があり足があるのが当たり前な生活を送っていると、手や足が無い人が上手に泳いだり、走ったりするのを見ると感動する。

  「勝つことではなく、参加することに意義がある。人生において重要なことは成功することでなく、努力することである。大切なのは勝利したかどうかではなく、よく闘ったかどうかである。失ったものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」などと、難しいことを子供たちに教えるのではなく、目の前で手足のない人が泳ぎ、走るところを見て感動すること。五体満足なことが「当たり前」ではなくて、「ありがとう」と感謝すべきことあることを感じることが子供たちにとって最高の教育になると思うが・・。   920
  デフリンピック:920の独り言(844)
  当たり前:920の独り言(1001)



2021/8/27 No.1043
  メスのボス


 故中村哲医師が長い間復興支援を行っていたアフガニスタンで、タリバンが米国の支援を受けていた政府軍をいとも簡単に打ち負かし、混乱のなかイスラム原理主義国家が復活する。

 様々な歴史的、宗教的、地理的、民族的問題を抱えているアフガニスタンに強制的な自由民主主義はなじまなかった。女性の権利を尊重すると宣言しているが、女性の教育や娯楽禁止、ブルカ強制などの女性差別が変るであろうか。

 我が国も儒教の影響で男尊女卑の歴史的背景があり、団塊世代は男は仕事、女は家庭の時代で、家では妻に尻にひかれていても社会の重要組織はほとんど男性であった。時代は変わり、現在では共働きが当たり前になり、女性の社会進出がすすんだが、組織の女性トップは欧米の先進国に比べ少ない。

 高崎山のニホンザル自然動物園で、トップだったオスザルを喧嘩で倒したメスザルがボスとして君臨したという。メスザルがボスになるのは長い自然動物園の歴史で初めてのことだそうだ。

 アフガニスタンでは無理と思うが、サル山にならい我国で女性の首相が誕生することが出来るであろうか。      920
  女性が日本を救うことができるか:920の独り言(613)
  とまどう男たち:920の独り言(813)



2021/8/20 No.1042
 ほめる


 「自分で自分をほめたい」とのメダリスト有森裕子選手の名言があるが、今年53歳で亡くなった平成の三四郎、金メダリスト古賀稔彦氏は、ほめることにより勝てる子供を育てていたという。

  日本人は人をほめることが少なく、他人の欠点ばかりを問題にして批判し攻撃ばかりする人が多い。「豚もほめれば木に登る」と、ほめて成長させることが勧められているが、結果だけではなく、プロセスも上手にほめることが必要で、さらに論理的にしかることも大切という。

 子供より大人、大人より老人のほうがほめられることが少ないから、歳をとってほめられるのはこの上ない喜び生きがいとなるそうだ。ほめられれば、たいていの老人は歳を忘れて我を忘れて元気が出て活力が湧き、死ぬのを忘れるという。歳をとった人が勲章をもらうのを冷ややかに見ていたが、勲章は薬石に勝る大変な力を持っているというのがうなずける。

  先日、若い女性患者から「先生は映画俳優みたいですね」とほめ殺しのようなことを言われ、年甲斐もなく舞い上がってしまった。
                     920
 ピグマリオン効果:920の独り言(630)
 アドラーの教え:920の独り言(783)



2021/8/13 No1041
 初盆

 
故人の霊魂はあの世とこの世を行き来するということから、玄関で初盆の迎え火を炊き、般若心経を唱えた。 

  般若心経の中心にあるのは「空」と「無」という思想。

  私達は元々、色も触覚も視覚も意識も何も無く、素粒子が寄り集まり物の形になっている。素粒子は時々刻々変化し形を変えている。私という存在も素粒子の集まりで、周りにある素粒子と常に入れ替わっていて、私を含め宇宙全体がすべてつながっているという。

 私達は奇跡的な縁により誕生し、新陳代謝として地球上の物を食べ排泄し、酸素を取り入れ炭酸ガスを出し、身体の素粒子は常に入れ替わり、生命とは素粒子の流れの淀みとも考えられている。私が死んでも素粒子として無くなることはないということ。

  矢作直樹氏は、それを「人は死なない」と表現し、死ぬと肉体は無くなるが、霊魂となって生き続けるといわれている。以前、救急学会で矢作氏の魂に関する特別講演があるというので楽しみにしていたが突然中止された。エビデンスを重視する救急医学会で科学的に証明できない霊魂が存在することは難しい。 

  初盆で霊魂を感じさせてもらおう。          920
 920の独り言(401):素粒子物理学と般若心経。
 920の独り言(437):生命とは何か。
 920の独り言(556):人は死なない。
 920の独り言(724):魂は存在するか。



2021/8/6 No.1040
号泣

 「泣く子は育つ」と昔の赤ん坊は良く泣いていたが、最近では泣かない様にしつけられているのか、大きな声で泣いている幼児を見ることが少なくなったように思う。

 男は女性の涙に弱いので、女性は泣く権利をもっているが、私は男たるもの泣いてはいけないと育てられた。アメリカではリーダーは人前で泣いてはいけない涙は禁止といわれる。ウオーターゲート事件で窮地に陥っていたニクソン大統領がテレビで涙を見せ、国民は失望し命取りとなった。一方、韓国ではセウォル号沈没事件で、非難の的になっていたパククネ大統領が涙を流したことにより国民からの非難が静まったという。

 私は高校野球で、敗者の悔し涙をみるのを楽しみにしているが、甲子園で涙を流す選手はプロ野球では大成しないそうだ。

  参加することに意義があったオリンピックもプロ選手が参加する大会となりメダル争いが過酷になっている。プロの選手は涙を見せることはないが、柔道をはじめ男も女も厳しい練習に耐えメダルへのプレッシャーを背負った選手が優勝決定戦でも、3位決定戦でも、勝者も敗者も、うれし涙、悔し涙で号泣する姿に感動させられた。 920

 涙、人はなぜ泣くか:920の独り言(190)       
  甲子園で泣く様な選手はプロで大成しないは本当か:920の独り言(595)




2021/7/30 No.1039
  超人たちの肉体

  先日、最新画像科学で超人アスリートの進化する肉体を解明するテレビ番組があり、知らないことばかりで感動させられた。

 人類最速ウサイン・ボルトは生まれつき側弯症を克服するために限界への練習で肉体を鍛えていたが、特に足底筋群が非常に発達していたとは。

競泳世界選手権6冠を達成したケレブ・ドレセルは、厳しい無呼吸泳法の練習によって効果的な酸素取り込みができるように、何と胸鎖乳突筋が非常に発達していたとは。
  
  マラソン2時間切りの世界新記録を達成したケニヤのエリウド・キブチョゲは高糖質食により糖の吸収を高める腸トランスポータが発達し、筋肉の糖質不足が防がれていたとは。

  リオ・パラリンピック陸上で全距離種目メダル獲得のタチアナ・マクファーデンは、Ya sama ロシア語で「私にはできる」。逆境の中を生き抜くことで培った強靱な精神力は脳の前頭前野、第一次運動野、補足運動野の発達をもたらしていたとは。

  アスリートの強い意思の力は脳を変化させ、超人的な努力を長時間続ける事を可能にし、驚くべき肉体の進化が得られていたとは。

 NHKスペシャル:タモリと中山伸弥「超人たちの身体」
 アスリート限界への挑戦。



2021/7/23 No.1038
 2回目東京オリンピック 

  時の流れを早く感じるのは歳のせいであろうか。あっという間に月日が過ぎ去ってゆく。

  世の中はどれくらいの速さで変わっているのであろうか。ラジオ、テレビの発明から普及までの時間はおよそ40年、パソコンは20年を切り、インターネットに至っては10年で普及したという。

  白黒テレビ普及率は、1960年は24%で、第1回東京オリンピック開幕時の1964年に普及率は87%に激増したという。
この年の東京都の人口が1千万人を突破。同じく白黒テレビの受信者数が1千万人を突破し、東名高速、東海道新幹線開通、多量生産、多量消費、高度経済成長の幕開けとなった。

  当時、オリンピック前の人々の関心は高いものではなかったが、開会式でのブルーインパルスによる五輪マークをはじめ、活躍する選手のテレビ放送を見て多くの国民が感動し、私も記憶しているが、東洋の魔女がソ連を負かして優勝した女子バレーボール決勝戦のテレビ視聴率は85%を記録したという。

  あれから約半世紀。
すべての国民が携帯を持ちSNSなど瞬時に情報交換できる時代になり、情報が溢れる2回目東京オリンピックから、今の若者はその昔私達団塊世代が若い時感じた純な感動を得るであろうか。920

ケチがつく:920の独り言(1033)


2021/7/16 No.1037
  死の恐怖

  
マスメディアが毎日、コロナで何人亡くなったとかワクチン接種で何人亡くなったとか恐怖を煽っているが、高齢化社会で多死時代を迎え、年間死亡者数は130万人、毎日約3700人が亡くなっている。

  コロナで突然亡くなるのは怖いと、ピンピンコロリで早く死にたいと言っていた高齢ばあさんがワクチンを早く打ってほしいと、右往左往している。

  この世は魂を成長させるためにあるので死ぬのは怖くない、肉体は無くなっても魂は生き続けると、宗教は永遠の命を主張し、死は怖くないという。キューポラ・ロスの死の受容プロセス、否認と孤立、怒り、取り引き、抑うつ、受容の五段階の後には、神の下に行ける希望があるという。

  日本人は仏教的無宗教。お寺、神社は宗教を信じていなくても、ひとつの安らぎを担っている。日本人の多くは、日本の文化として宗教なしで死の恐怖を乗り越える術を探している。
 高齢で認知症になるのは死が怖くなくなるためで、神の贈り物と言われる。100歳を超えるようになると、「老年的超越」により死が怖くなくなり、自然にお迎えを迎えられるようになる。
        920
  老年的超越:920の独り言(1023)



2021/7/9 No.1036
  うま味

  笑福亭鶴瓶がこくうまキムチの宣伝で、「こくーとうまみやでー」と美味しさを表現しているが、“こく”“うまみ”とはどんな味?うま味とは甘味、酸味、塩味、苦味に加えられた5つ目の基本味。

  うま味は日本学者によってグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸であることが発見された味覚。和食の出汁の素材である昆布、鰹節、干し椎茸などにうま味物質が豊富に含まれていることから、日本人にしか分らない味、和食にしかない味などと言われていたが、今では基本味として、umami は国際語になっている。

  美味しさを表す「旨み」と味覚の「うま味」が混同されるが、うま味は単独では好ましい味ではないが、うま味が存在することにより、味の持続性、広がりや深みが増し、濃厚でコクがある満足感の得られる美味しい味になる。

 和食の代表一汁三菜は、汁物は塩分を減してもおいしく食べられ、世界で注目されており、海外のシェフがうま味を学び、日々の食事をヘルシーでおいしくすることに加えて動物性食材を減らし植物性食品を中心にすることで、地球環境の維持や持続性という観点からも注目されているという。 日本人に生まれ、和食が味わえて良かった!     920

 二宮くみこ:うま味とは何か。麻酔2020増刊号、会長企画。


2021/7/2 No1035
 ねつ造論文


 また、麻酔科医による多数のねつ造論文が明らかになった。昭和大学の麻酔科医によるねつ造論文、その数何と117論文。以前、東邦大学の麻酔科医によるねつ造論文数が172論文で、世界一位のねつ造論文数であった。世界のねつ造論文数ワースト
3は日本人の1位と今回の3位と2位のドイツ人でいずれも麻酔科医によるものとなった。

  論文ねつ造といえば、小保方氏のSTAP細胞論文、ノーベル賞間違いなしといわれていたアメリカベル研究所のシェーンねつ造論文が世界中を驚かして有名。

 インパクトファクターの大きい有名誌でのねつ造論文は影響が大きく、降圧薬ディオバンの心血管イベント予防効果に関する論文ねつ造では、製薬会社が1兆円を超える売り上げを挙げたという。影響力とか業績とか関係なくても、自分の論文が活字化されるとうれしいものだが、優秀で真面目な麻酔科医がインパクトファクターは小さいとはいえ、ねつ造論文のその数の多さに驚かされる。サイコパスは外科医に多いと言われるが、麻酔科医も多いのであろうか。

  ねつ造論文ではないが、Lancet,NEGMといった一流誌に掲載されたコロナ感染症に関する論文が相次いで撤回されているという。     920

 論文ねつ造:920の独り言(682)
 サイコパス:920の独り言(823)


2021/6/25 No.1034
  三密

  昨年の流行語大賞は、コロナ対策での「密閉」「密集」「密接」の「三密」。清水寺の昨年の漢字も「密」であった。

  「三密」の本来の意味は、空海が開いた真言宗の教えという。「密」とは弘法大師空海が唐から伝授した密教の密のこと。「身密:しんみつ」、「口密:くみつ」、「意密:いみつ」の三密のことで、身体を整え、言葉を整え、心を整えること。

  都市のロックダウンとか緊急事態宣言とか、まん延防止処置とか「三密」になることが禁止されたが、コロナパンデミックは世界中で収まる気配がなく、ワクチン接種が急がれているが、東京オリンピックもどうなる事やら。

  病院もクラスター予防対策として家族の面会を禁止しているため、病状が悪くなった時の家族の面会とか、面会できない故のさまざま
な問題に苦慮している。

  三密対策としてオンライン授業、オンライン診療、オンライン会議、オンライン面会、テレワークなどが勧められているが、直接対面せず、目と目を合わせない人間社会は今後どうなるのであろうか。

  仏教では大切なことは面授でしか伝わらないと言われている、どうしたら良いか空海さんに聞いてみたい。    920

 面授: 920の独り言(9)
 ユマニチュード:920の独り言(678)


2021/6/18 No.1033
  ケチがつく


 私が中学の時、国威発揚、経済浮揚を目指して東京オリンピックが開催され、感動したことや、その後の驚異的な経済成長時代が懐かしく思い出される。

 あれから50年、少子高齢化とともに円熟期に入った我が国が2回目の東京オリンピック誘致に成功した7年前の誘致団のあの大喜びは何だったのだろうか。

 その後はまるで呪われたオリンピックの如くケチのつきどうし。誘致を積極的に行った猪瀬元東京都知事の徳洲会からの資金提供による失脚に始まり、新国立競技場のデザイン白紙撤回、1兆2兆とトーフでもあるまい運営費高騰、五輪エンブレムデザインの盗作疑惑、真夏のためマラソン競技を北海道に突然変更。森オリンピック組織委員長の女性蔑視発言による失脚、五輪演出チームの解散等々。

  極め付きはコロナパンデミック。1年間の延期にも関わらず世界中でコロナ感染が続き、政府は右往左往。これほどケチがついたオリンピックが今まであっただろうか。ケチのつきついでに、コロナ感染の再拡大、首都直下型地震、富士山噴火、五輪後日本経済困窮などが起こらなければ良いが。    920


2021/6/11 No1032
  名門テニスクラブ閉鎖

 大阪なおみの棄権で話題となった全仏オープンテニス大会が終盤を迎え盛り上がっているが、私が所属している名門グリーンストンヒルズテニスクラブが閉鎖されることになった。

 テニスクラブの存在はその地域の文化レベルの高さを表していると、クラブ内で様々な催しを企画されたり、坂本九をメンバーにされたり、福山オープンテニス大会を主催し選手の育成や、福山テニス協会の会長も務められた丘長で元アサムラサキ社長の藤井直訓氏が亡くなり、諸般の事情により閉鎖されるという。

  松永ローンテニスクラブも、神戸外国人クラブとの定期交換試合や錦織圭も参加していたジュニア育成大会などを開催していたが、会長の死亡により閉鎖されてしまい、メンバーは分散してしまった。

  尾道市では備後運動公園にあるセンターコートが改造されたし、福山市では竹ヶ端運動公園球場を大きな大会が開催出来る様に拠点施設として増改築するとのことで、名門テニスクラブは次々に無くなるが、若い人が活躍できる公共のテニス場は整備されるという。

 松永とグリーンストンの両名門テニスクラブに所属して、親しい仲間とテニス、飲食など楽しい週末の時を過ごさせてもらっていたが、私も老いて時代の流れとはいえ、一時代が終わったようで寂しい限りだ。            920

 メセナ:920の独り言(332)


2021/6/4 No.1031
 メンタルヘルス

 全仏テニスで大阪なおみ選手が試合後に義務づけられている記者会見を拒否し、罰金のうえ2試合目を棄権したことが大きく報道された。内向的で人前で話すのが得意でなく、トップアスリートとして、意見を言わねばならないストレスで気分がすぐれず鬱状態で
あったと。

 球技スポーツでは球が小さくなるほど、メンタルの関与が大きくなってくるという。特にテニスは1対1で長時間戦うので、自分のミスに対し感情がコントロールできず大声を出したり、ラケットを投げつけて壊す有名選手は珍しくない。

 スポーツは心技体、フィジカルとメンタルで思考、感情、行動を整えることが重要。大会で実力を発揮するため、多くのスポーツ選手がメンタルトレーニングで自信をつけ、集中力を高めることを行っている。最近ではマインドフルネスが注目を集めていて、ワンプレーヤージョコビッチ選手も試合前に必ず行っているという。
 同じテニスでも私が行っている週末テニスは、日頃の貯まったストレスが発散できて、その夜は心地よい疲れで熟睡できるので、メンタルヘルスになっていると思う。      920

 920の独り言(779):スピーチ
 920の独り言(985):テニスは健康寿命を延長する。


2021/5/29 No.1030
  持続可能な開発目標:SDGs

 
コロナパンデミックが収まる様子を見せない。世界では約1億7千万人がコロナに罹患し、約350万人が死亡と言われているが、WHOは実際はその2-3倍が死亡していると推察している。

  コロナパンデミックは収束していないし、今後必発すると思われる強毒性の鳥インフルエンザ、さらに薬剤耐性菌が人類に戦いを挑んでいる。限られた地球環境の中で人類だけが爆発的に増殖し環境を破壊していることに対する見えざる神の手であろうか。われわれ人類はどう対応したら良いであろうか。

  自由資本主義による多量生産、多量消費の改善。都市への一極集中から分散型社会へ。CO2排出制限による地球温暖化防止。開発途上国の人口増抑制などなど。さらに、貧困や飢餓をなくす、すべての人に健康と福祉、安全な水とトイレを世界中に、質の高い教育をみんなに、エネルギーをみんなにそしてクリーンに、人や国の不平等をなくす、海や陸の豊かさを守る、平和と公正を全ての人になど、持続可能な開発目標SDGsが声高に叫ばれているが・・・。

 答えの出ない事態に耐える力、解決策のない困難な問題に対してあきらめず辛抱強く対応できる力のネガティブ・ケイパビリティがわれわれ人類に求められているのであろう。    920
  ネガティブ・ケイパビリティ:920の独り言(837)
   Negative capability: 920の独り言(782)



2021/5/21 No.1029
  老いるショック
 
  団塊世代の高齢化により、未曾有の高齢化社会がやってくる。高齢化社会に伴い、老いや死をテーマにした本が溢れているし、新聞の広告欄を見ると週刊誌ですら老い方、死に方、死後の問題などをテーマにした高齢特集が毎週組まれているのには驚く。

 老いるのは生き物、人間のみならず、社会も国家も、制度もすべて老いて死を迎える時が来る。私達団塊世代により驚異的経済成長がもたらされた日本の老化は無論、最強国家アメリカの老化凋落も資本主義の老化も明らかになりつつある。

 健康寿命でいつまでも若く元気でという老化に対する理想が語られているが、老いるのは決して美しいものではない。それは一種の傷害であり辛いもの。元気で長生きした人にも必ず訪れる超高齢化の行く末は「寝たきり」か「認知症」か「突然死」のどれか。

 若い時に「オイルショック」を経験した団塊世代が高齢者となり、日本列島に老いても元気で健康でなければならない「健康という病」が蔓延している。団塊世代の私達はコロナパンデミック、ワクチンパニックにも「健康という病」にも「老いるショック」も打ち勝てるであろうか。                920
  老性自覚:920の独り言(731)
  老老介護:920の独り言(670)


2021/5/14 No.1028
じじばば

  
コロナパンデミックに際し、感染を恐れない若者に対して重症化を恐れる高齢者との危機感の違いが指摘されている。
 
  大都市に緊急事態宣言が発令され、若者の不要な外出、夜の飲食の制限、映画館、スポーツジムなどの自粛が要請されている。

  テレビのニュースで、東京で休業するボーリング場が写された。多くの人がボーリングをしていたが、何とじじばばばかり。ばばがここが休みになると、することが無くなり健康問題になると。以前カラオケは若者のたまり場であったが、今ではヒルカラなどじじばばのたまり場。グランドゴルフは無論、卓球、登山、講演会などもじじばばばかり。それも、8割から9割は、ばばさん。

 少年のひ弱さ、若者の覇気、老年期の円熟はそれぞれの時の「自然の恵み」と言われてきたが、時代が変わり、老年期の定義を変える必要があろう。

 団塊世代の私が子供の頃、古希を越えたじじばばがボーリングやカラオケをするなど想像できなかったが、自分が古希を越えたじじになってみると・・・。

  重症化を防ぐためと称し、高齢者から先にワクチンを打つのがうなずける?     920
  古希:920の独り言(812)
 70歳:920の独り言(859)



2021/5/7 No.1027
 世代交代

 先日松川るい氏による「歴史の転換期と日本外交」と題する講演を聴いた。東大法学部卒、外務省に入り国際情報統括官組織主席事務官、日中韓協力事務局次長、女性参画推進室初代室長を経て参議院議員に。次世代を担う女性議員。50歳。

 世界は米国の凋落、中国の台頭など激変時代を迎えている。我国は敗戦後何も無い時代から、男性は家庭を専業主婦に任せてジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれるように24時間働きに働き、経済成長をもたらした団塊世代が牽引してきた。時代は大きく変わり日本社会は団塊世代のジェンダー観は壊れ、男女同権、低経済成長、地球環境問題など持続可能社会を目指す時代に。豊かで明るい明日を目指す高度経済成長時代を知らない若者の世界観も変わってきた。

  フランスマクロン大統領は43歳、カナダのトルドー首相は49歳、ニュージーランドのアンダーソン首相は40歳女性。フィンランドサンナ・マリン首相34歳女性、アメリカハリス副大統領は56歳女性。

 我国の管首相は私と同じ、ぎらぎらの高度経済成長を担った団塊世代の72歳。老いの円熟も必要だが、時代が変わったので、若い人の邪魔にならないように、世代交代は必要と思う。  920
 920の独り言(923):成長から円熟
 920の独り言(924):ポスト資本主義



2021/4/30 No.1026
  苦難にある者の告白

 ニューヨークのある病院の壁に作者不詳の詩が掲げられているという。
  苦難にある者の告白
  大事を成そうと 力を与えてほしいと神に求めたのに慎み深く従順であるようにと 弱さを授かった。

  偉大なことができるようにと強い身体を求めたのによりよきことができるようにと 病弱を与えられた。
 幸せになろうとして 富を求めたのに 賢明であるようにと 貧困を授かった。
 
  人生を享受しようとあらゆるものを求めたのにあらゆることを喜べるようにと 生命を授かった。

 求めたものは一つとして授からなかったが願いはすべて聞き届けられた。

  神の意に沿わない者であるにもかかわらず心の中の言い表せない祈りはすべてかなえられた。
 私はあらゆる人の中で最も豊かに祝福されたのだ。


2021/4/23 No.1025
  自然死のすすめ。
 
  超高齢化時代に伴う多死時代を迎えるにあたり、高齢者の死に方を論じる本が溢れている。

  石飛幸三氏による「平穏死のすすめ」がベストセラーになり、平穏死が流行語にもなったこともあり、それまで多く行われていた胃瘻が激減した。当院でも日常的に胃瘻増設を行っていたが、最近ではほとんど行わなくなった。しかし、胃瘻はしてほしくないが、高齢だが出来るだけのことはしてほしいと言われる家族は多い。

 最近では上野千賀子氏による「在宅ひとり死のすすめ」とか、東大名誉教授で元救急部教授の矢作直樹氏による「自然死のすすめ」など、高齢者の上手な死に方のすすめが論じられている。

  食べれなくなったら、それはお迎えのサイン。欧米では高齢になり食べれなくなったら寿命が来たと、老人も若者も家族も医師も政府も皆がそう思っているので経管栄養などは行われないという。

  我が国では、自分が高齢になった場合には何もしてほしくないが、唯一の父母だから何とか長生きしてほしいと希望する家族は今でも多く、少ない末梢輸液で看取るのが良いと思うが、人の生死に関する対応には苦慮する。             920


2021/4/16 No.1024
 百寿者による命の授業

日野原重明氏は小学校に出向いて、100歳から10歳の君にと、「いのちの授業」を続けられた。

 10歳の小学生に「いのち」はどこにあるかと尋ねると、多くが胸をさして心臓にあると答える。聴診器を与えて自分の心臓の鼓動を聴かせる。心臓は血液を全身に送るポンプの役割をしていることを教え、大切だが「いのち」ではない。「いのち」とか空気とか時間は目に見えない。お金とか、地位、名誉など目に見えるものより、目に見えない「いのち」の大切さを教えられた。

  「いのち」とは人間が持っている時間のことで、時間を使っていることが生きていること。命は今しかない。私達は今この瞬間しか生きることができない。「いのち」とは自分の使える時間のこと。「いのち」を大切に、一日一日の時間を大切にして、時間を自分の為だけではなく他の人のためにも使う。「いのち」を大切にすることとは長生きをして、多くのことを他の人のためにすること、と。

 尾道に100歳で一人暮らしをしている元教諭石井哲代おばあさんが「その日、その時を全力で。さびない鍬でありたい」と、いのちを大切に元気の秘訣を発信しておられる。

  とても私は百寿者になれそうにない。     920


2021/4/9 No.1023
 老年的超越
 
 人生100年時代となり、100歳を超える特に女性が激増していて、外来でも入院でもセンテナリアン、百寿者の女性患者は珍しくなくなった。

 100歳を超えるおばあさんが入院しているが、皆が「ありがたい、ありがとう、死ぬのは怖くない、今が一番幸せ」などと言われる。100歳を超えるような人は、自分の病気のこととか、老いに伴うさまざまな衰えを否定的にとらえず、現状を肯定して、ありのままを受けいれ、不安感が弱くなり、感謝の気持ちが高まって幸福感を抱く「老人的超越」を得るようになるようだ。

 今日一日を一生と思い生きる「一日一生」とか、今この一瞬間を大切に生きる「而今」とか、あせらず、あわてず、あきらめず「ネガティブ・ケイパビリティ」とか、マインドフルネスとかは百寿になるような人は、自然に身に付くようになる。あるいは、そのような生き方をしてきた人が百寿者になれるのであろう。

 超高齢になると老い、病気、寝たきり、認知症などつらい事ばかりなので、人生太く短くと思っていたが、至福に包まれる百寿を目指すのが良いのか悩ましい。           920



2021/4/2 No.1022
おひとり様

  世界一長寿となった日本女性が一人で安心して老いを過ごす心構えを書いた「おひとりさまの老後」がベストセラーとなり一世を風靡した東大名誉教授でおひとり様の上野千鶴子氏が、気を良くされたのか続いて「在宅ひとり死のススメ」を出版。

  すごい勢いで「おひとりさま女性」が増えているが、お一人様は負け犬ではなくて寂しくも不安もない。二人世帯の方がお一人様より満足度が低い。老後はお一人様が一番幸せ。私は生きているあいだのことしか関心が無い。葬式やお墓などの終活には何も関心が無い。葬式は密葬で、遺骨は散骨で、などと。老後のお一人様の孤独
に伴うさまざまな不安・問題に対する上野流考え方を提言している。
 
  地球上の植物も動物も人間も、オスとメスがいて子孫を残すために生存しているという大原則を無視。すべての生命は何らかの縁あって生まれてきて、死後にも何らかの縁が続くもの。家族がいて、生老病死、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦をはじめとする四苦八苦を体験するのが人生であろう。

  おひとり様を楽しみ、在宅でひとり好きなように死んでいいわけはない。賢い女性は・・・などと言っていると、森喜朗氏のように非難されそうだが。            920
 上野千鶴子:在宅ひとり死のススメ、文春新書。



2021/3/26 No1021
 ワクチン


 コロナパンデミック対策とされるワクチン接種で、政府も国民も右往左往。
ワクチンの有効性、安全性、副反応、アナフィラキシーなどの医学的問題以外に、開発競争、ワクチン争奪戦、中国産ワクチン問題など、情報が溢れていて、メディアリテラシーが必要になっている。

  子宮頸がんを予防する効果があるとWHOが認めているのが、HPVワクチン。我国も無料で中高生の女性に定期接種が行われていたが、さまざまな副反応疑いが出現し、メディアが薬害として大々的に報道した結果、厚労省が接種の積極的推奨を中止。現在ではほとんど接種が行われていない。子宮頸がんは若年化して増加していて年間3万人が発症。3千人が亡くなっているという。

  インフルエンザワクチンは初期に全学童への集団接種による流行阻止効果が認められず一時期接種率が低下。その後、老人ホームで超高齢者がインフルエンザで亡くなり、メディアがインフルエンザは命に係わる病気と大々的に報道し、多くの人がワクチンを接種するようになったが、毎年流行が続いている。が、今年は何故か!全く流行認められず、尾道は0人?

 私はコロナワクチン打ちたくなかったが、先日接種させられた。    920



2021/3/19 No.1020
穢れ

  「穢れ:けがれ」とは単なる汚れではなく、不潔、不純、不浄など精神的汚れを含む諸悪の根源であり、単なる汚れは水で洗い流すことができるが、けがれは消毒などできない。

 神道による神は穢れを嫌うので、神社は常にきれいに掃き清められ、きれいな水で身体を清め、手や口をゆすぐなど、穢れを取り除く「禊:みそぎ」という宗教的儀礼が行われる。

  神道は病人、疫病、死、遺体などを穢れとして遠ざけ、救うことをしなかったが、穢れを忌避して禊を行うことが神の疫病予防になっていた。穢れである病人や死や遺体の救済を代わりに行ったのが仏教。仏教が穢れを救済する役割を果たし、土葬は穢れになるから火葬にして弔うようになったという。現在でも結婚式は神前で、葬儀は仏式でということになっている。

  日本神道の綺麗好きな宗教観が伝統的に引き継がれ、毎日の入浴、手洗い、家では靴を脱ぐなど、日本人は世界一綺麗好きな民族となった。新型コロナという疫病の穢れに対し、常にみそぎを行う綺麗好きなことが、山中伸也氏のいうファクターXの一つであろう。 920

  疫病の日本史:本郷和人、伊沢元彦。宝島社新書。


2021/3/12 No.1019
 遺骨の尊厳
 
 
遺骨には霊的な存在が詰まっていて、家族とのつながり、遺骨の尊厳があり、遺骨は死者の形見の一つとして大切にされてきた。

 東日本大震災で行方不明遺骨がDNA鑑定などで、10年後に明らかになり、遺族の元に届けられたという。激戦地で犠牲となった住民の遺骨が眠っている沖縄南部の土砂を辺野古埋め立てに使用することに対し、遺骨の尊厳が感じられないと問題視されている。

  我が国では戦没者の遺骨収集を国の責務とする戦没者遺骨収集推進法が立法化されているし、米国潜水艦と衝突して沈没した水産高校実習船えひめ丸の引き揚げ問題など、日本人の遺骨への執着は、世界的には奇異に映っているそうだ。

  荼毘にふした遺骨を拾う際、関東では骨を全部集めるのに対し、関西では一部の骨しか拾わない。残した骨を処分するのに関東の人は違和感を感じ、関西の人はそんなに集めて骨壺に入らないしどうするのと思う。最近では、遺骨を自然に帰す樹木葬、散骨が  流行っているし、多くの遺骨を集め他人の遺骨と一体化した仏様の姿を供養する寺も出現した。遺骨のあつかいは国、地域、時代と供に違っていようと、その尊厳は保たれるべきであろう。     920



2021/3/5 No.1018
 100ワニ

 100日後に死ぬワニと題し、死まであと何日とカウントダウンしながら何気ないワニの日常生活を毎日描いた4コマ漫画が話題になったことがある。

 100日後に死ぬとしたらどうするか。癌などであと2年との余命宣告を受けたならどうするか。もし3日後に死ぬことが分かったとしたらどうするか。

 人は老いやがて病みそして死ぬ。人は必ず死ぬもので死を迎える時間が長いか短いかの違いだけ。死について考えることは、どう生きるかを考えること、といわれる。

 比叡山千日回峰行を二度満行した天台宗大阿闍梨の酒井雄哉師は今日一日を一生だと思い大切に生きることを「一日一生」と言い実践された。道元による禅語「而今」は、私達は「今」を生きることしかできないから、この今一瞬を大切に生き切るということ。

 浄土真宗の葬儀に読まれる蓮如による御文章。
 我やさき、人やさき、きょうともしらず、あすともしらず・・・朝(あした)には紅顔ありて、夕(ゆうべ)には白骨となれる身なり・・・。                920



2021/2/26 No.1017
  わびさび


 人の世のはかなさ、無常であることを美しいと感じる美学が日本文化の中心思想にあるという。質素な中に趣を感じる「わび」、古さの中に趣を感じる「さび」。「わびさび」の中に美を見いだす。

  「詫び」は、わびしい、悲しみ嘆く、落ちぶれることを意味していたが、その状況を悲観することなく、むしろそれを味わう気持ちを表現する言葉となり、静かで質素を美しいと感じる言葉となった。

  「寂び」は時間の経過により古くなる、劣化する、錆びる、淋しい、生命力が無くなっていくさまなどを意味していたが、それが転じて、古くて枯れることででてくる味わい、年月を経て古びたものの趣き、寂しい孤独などを美しいと感じる言葉となった。

  超高齢化社会、核家族化、伴侶の死などで独居高齢者が急増している。コロナパンデミックの影響もあり、孤立して引きこもり、病気、自殺、薬物依存、孤独死する人が激増し、我国も英国に次いで
「孤独・孤立対策担当室」を設置し対応策を講じるという。

 年老いて独りじじいになり社会的孤立に陥るか、それとも孤独な人生を「詫び寂び」の美学として味わいながら過ごせるだろうか。
                       920
 孤独伝染病:920の独り言(873)
 定年引退後:920の独り言(885)
 8050問題:920の独り言(889)
 コドクシ:920の独り言(890)


2021/2/19 No.1016
  死者の尊厳

 平成時代は「葬送激変の時代」だったと言われているそうだ。葬儀は近親者のみの家族葬になり、葬儀をせず火葬する直葬、火葬場から遺骨を引き取らないゼロ葬、遺骨を寺に送り永代供養してもらう送骨、海洋散骨、樹木葬などの流行、墓じまいなどなど。

 今までは「家」制度を前提として子孫によって遺骨は保存、継承されていたが、核家族化、未婚化、少子化が進み家制度やお墓の維持が困難になり、祖先を敬うというより個人の意思を尊重し、墓を不要と考える人が増え、「死者の尊厳」が脅かされているという。

 西欧では死者は埋葬されなければならないとされているが、我が国では「墓地埋葬法」はあるが、個人にゆだねられていて、特に都会ではお墓を巡る環境は無秩序状態にあり、死者の尊厳を守る埋葬制度の必要性が議論されているそうだ。

 インドではガンジス川に遺骨を流す「水葬」、チベットでの「鳥葬」南西諸島の「風葬」などがあり、私はロケットで宇宙にまいて流れ星になる「宇宙葬」を望んでいたが、妻の納骨と団塊世代よりも何故か最近の若い人は墓参りを好むといわれているので、我が国の時代の流れに逆らって新しいお墓を立てることにした。 920
 お墓:920の独り言(990)

  先日、夫婦中の悪い高齢女性患者さんとお墓の話になり、私は絶対に夫の墓には入らないと。姑にもいじめられ、死んでからもそんな人達と一緒の墓にいるなど絶対に嫌だと。主人より先に死ぬと無理やり墓に入れられそうなので、主人より長生きして、自分の骨は樹木葬としてばら撒いてと子供に言っていると話されていた。



2021/2/12 No.1014
  日本人の死のかたち

  我が国では人はある瞬間に死ぬのではなくて、時間をかけて死んでいくとされている。死者は一挙に生者から死者になるのではなく、死が完成するには時間が必要とされてきた。

  仏教では人が亡くなった際、その人の魂は四十九日間、現世とあの世をさ迷うので、遺骨を自宅の仏壇に安置して、三途の川に到着する初七日から極楽浄土に行く四十九日まで自宅で供養し、その後の納骨、里帰りする初盆、一回忌など、私達はその間、静かに死んでいった人を家族として受け入れている。

  欧米では死んだらおしまいだが、我国では死んでからも死者は家族と強い関係性を持ち続ける。日本文化では死んだ者は死者として家のなかに存在している。その昔、ほとんどの人が自宅で家族に看取られて亡くなり、自宅で葬儀が行われていたので、生から死を自然の摂理として受け入れていた。

  最近では、日常生活の中で死と触れ合わず、死ぬのが当たり前から死なないのが当たり前になり、死を考えないようになり、過去50年の間に日本は一番死を恐れない国の一つから一番死を恐れる国に転じてしまったといわれている。       920



2021/2/5 No.1014
  日本人の死のかたち

  我が国では人はある瞬間に死ぬのではなくて、時間をかけて死んでいくとされている。死者は一挙に生者から死者になるのではなく、死が完成するには時間が必要とされてきた。

  仏教では人が亡くなった際、その人の魂は四十九日間、現世とあの世をさ迷うので、遺骨を自宅の仏壇に安置して、三途の川に到着する初七日から極楽浄土に行く四十九日まで自宅で供養し、その後の納骨、里帰りする初盆、一回忌など、私達はその間、静かに死んでいった人を家族として受け入れている。

欧米では死んだらおしまいだが、我国では死んでからも死者は家族と強い関係性を持ち続ける。日本文化では死んだ者は死者として家のなかに存在している。その昔、ほとんどの人が自宅で家族に看取られて亡くなり、自宅で葬儀が行われていたので、生から死を自然の摂理として受け入れていた。

最近では、日常生活の中で死と触れ合わず、死ぬのが当たり前から死なないのが当たり前になり、死を考えないようになり、過去50年の間に日本は一番死を恐れない国の一つから一番死を恐れる国に転じてしまったといわれている。       920



2021/1/29 No.1013
  あきらめ

  努力ですべてが解決するとは限らない。どうあがいても自分の力ではどうにもならないことがある。だとすれば、「あきらめ」が大切になる。あきらめることは、あるがままを受け入れることで、あきらめることで救われることもある。

  日本語で諦めるといえば、断念する、思いを断ち切るといったマイナスイメージで使われるが、本来の意味は真相をはっきりさせることで、「あきらめる」は「明らかにする」ということ。仏教語では、真実、真理を意味しているそうだ。

 「死」をあきらめきれず、受け入れられず、執着するのは人として当然なことだが、人間の力ではどうすることも出来ない死というものを受け入れるには「あきらめ」が重要になる。あきらめることにより、死というものを受け入れていくことができる。やがて訪れる自分自身の死をも肯定的に受け止めることが出来る様になるという。

  死は終わりではなく、生の続きである。死は不吉なもの、忌み嫌って避けるものではない。死があるからこそ生は輝き、生きる価値がある、と。             920



2021/1/22 No.1012
  ラストソング

 「看取る」と言う言葉は日本語独特の表現で、英語にはないという。「私は何人を看取ったとか、今まで何人を看取りましたか」などという表現はしないそうだ。 死に関する直接の主人公は患者で、医療者や家族は脇役ということ。

「看取る」のではなく、亡くなる人が次のステージへと向かう手助けをする「見送る」という表現をするそうだ。キリスト教など宗教的なこともあると思うが、人生の最後を向かえる人のそばに寄り添い、見送るということ。

 聴覚は最後まで残る感覚と言われ、死の間際で開眼も発語もなく反応がないように見える状態の時も、聴覚は残っていて耳は聞こえているという。欧米のホスピスでは認定音楽療法師が患者の思い出の音楽を演奏するなど活動しているが、死に直面した患者に対しても癒やし環境をつくる音楽療法が行われていて、死にゆく人にもその家族にも穏やかな尊厳ある見送り効果が得られているという。

 最近、我が国の葬儀場では、仏式葬儀に加えて要望によりエレクトーンで故人の好きだった音楽の生演奏を行いながら見送ることが行われている。         920

  佐藤由美子:ラストソングー人生の最後に聴く音楽、ポプラ社。


2020/1/15 No.1011
  2.5人称の死


  死には一人称の死、二人称の死、三人称の死があるという。一人称の死とは自分の死のこと。自分の死は自分が見ることが出来ないので存在しないのと同じ。医療が進歩して末期状態における延命治療の是非、本人の同意など尊厳ある死を望むという意味で一人称の死は存在している。三人称の死は、自分と関係のない人の死。

  三人称の死は死体を「もの」「数」として扱うことが多い。学会で扱う死亡統計であるとか交通事故死とか自殺とか、コロナで何人が亡くなったとか。

  死は常に二人称として存在する。死が自分に大きな影響を与えるのは二人称の死。二人称の死は友人、近親者の死。家族、伴侶の死は私達の人生において最も大きなストレスとなる。二人称の死には死後が存在し、大切な存在の喪失した人の悲嘆ケアが必要となる。

  医師が患者を2人称で診ていると、感情が入り込み客観的な判断ができなくなることがある。私は千人以上の患者さんを看取ってきたが、患者の死を3人称で看取っていると、医師ではなく評論家になってしまう。医師が患者に対するあるべき姿として、柳田邦夫氏による2,5人称の対応が勧められる。      920


2021/1/8 No.1010
 死を考える

  
老いて死ぬのは人間をはじめとする地球の生き物は無論、社会も国家も制度も必ず老いて「死」を迎える時がやってくる。先進国のコロナパンデミックを契機として資本主義の老化が明らかになってきた。資本主義の終末が訪れるのであろうか。

  こういう時代に、これまでの「生き方」「老いかた」「死に方」の常識ではなく、新しい「老い」「死」の考え方が必要になっている。

団塊世代による超高齢化社会と多死時代がやってくることもあるが、「老い」や「死」を考えることが一種のブームとなっているようで、「老い」や「死」に関する情報や本が溢れている。

 イエール大学で人気講義の翻訳版でベストセラーになった本:「DEATH:死とは何か、人は必ず死ぬ、だからどう生きるべきか」。東京大学救急部の教授を務めた矢作直樹氏による「人は死なないーある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索」。法華教を哲学とする石原慎太郎とキリスト教を生きる曾野綾子という対照的な死生観を持つ二人の対談本:「死と言う最後の未来」。患者を何とか生かそうと考えていた外科時代を経て、在宅訪問医として患者をどうやって死んでもらうかを考えている小堀鴎一郎氏と多くの死体を観察してきた養老孟司氏の対談本:「死を受け入れる事」。などが面白い。       920


2020/12/25 No.1009
  さよならだけが人生だ

  
コロナパンデミックなど色々な出来事があった今年もあとわずか。2年間の闘病の末、妻が大腸がんにより自宅で亡くなった。

  今まで病気知らずで特に胃腸は快調であったが、1昨年の暮れに突然腹痛を訴え、S状結腸癌によるイレウス腹膜播種のステージⅣであった。抗がん剤FORFOXを始めたところ、四肢のしびれの副作用が出現したが、著効を示して昨年の8月にはPETCTで、腫瘍、転移巣が消失したので、腹腔鏡手術を試みたが、多数の小さな腹膜播種があり摘出できず。その後FORFIRIに変薬などして1年あまり自覚症状なく、今年の9月には95歳の母親を見送ることもできた。しかし10月中旬、腹膜播種による小腸イレウスが出現し、癌性腹膜炎、感染性腹膜炎による膿腹水、発熱、腹痛、不眠などが出現。約2ヶ月間、IVH,モルヒネ皮下持続注入、鎮静などの在宅緩和医療と3人娘による献身的な介護により自宅で看取ることができた。

 男性にとって、長い間連れ添った伴侶を失うことは、人生において最も大きなストレスとなる。日常生活では100%妻に依存した生活を送ってきた私にとって、間違いなく残りわずかとなった人生をどう過ごすか大きな悩みとなった。       920


2020/12/18 No.1008
  WantとMust

  
人にはそれぞれにWant思考とMust思考の二つの相反する自分の思考が存在するという。Want思考とは「~したい」、「~でありたい」という自分自身の強い願望。Must思考とは「~しなくてはならない」「~でなければならない」という、人からどう思われるかとか、他者を意識したもの。

  Want思考は自分が楽しみたい趣味の様なもので、Must思考は他人のためにしなければならない仕事の様なものであろう。

  中年の危機(ミッドライフクライシス)とは中年期に誰もが陥るMust思考とWant思考との葛藤により生じる悩みの事。これが本当に自分のしたいことであろうか、もっと他にやりたいことがあるのではと、今までの自分の人生を問い直さずにはいられなくなり、それまでの生活を大きく変えることを試みたりする。

  高齢になると、今まで頑張ってきたけど自分の人生はこれで良かったと、諦めも含めて納得しMust思考の自分から開放されると幸せになれるのだが。人生終盤になってもMust思考にとらわれていると、往生際が悪くなってしまう。   920

  清水研:他人の期待に応えない、SB新書。
  中年の危機:920の独り言(612)


2020/12/11 No.1007
 喪中葉書

 コロナで振り回された令和2年もはや師走。「喪中につき新年のご挨拶をご遠慮申しあげます」、との葉書がたくさん送られてきた。

  18枚の喪中の葉書が届いたが、年齢の書いていない4人も多分ご高齢で亡くなられたと思うが、その人たちを除いた一人が七十一歳で、他は八十九歳、九十一歳、九十三歳、九十四歳、九十七歳、九十八歳、百歳、百二歳と百歳超えが二人もおられた。

  喪中とは家族など親しい人が亡くなった際、故人を偲ぶ期間。喪中の期間が一周忌までなのは、配偶者を失った夫は1年以内の死亡率が高い、人間は依存対象を失った場合およそ1年位の期間を経てその悲哀から立ち直るので、一周忌までが喪に服す期間であり、故人の冥福を祈りながらつつしんだ生活を送ることとされている。

  キリスト教では、人は死ぬと神様に導かれて天国に旅立つので喪中という概念は無い。浄土真宗も、人は亡くなると極楽浄土に旅立ち仏様になるので、喪に服すと言う概念はなく、故人の死後も変わらずこれまで通りの生活を過ごして良いという。

 伝統的な喪中葉書も高齢で天寿を全うされ亡くなった場合、喪中というより、訃報の知らせという意味合いが強くなっているようだ。 920



2020/12/4 No.1006
  人生の幸福度

 
欧米では人間の幸福度は若いころ高く、中年危機と呼ばれる中年で低くなり、高齢になると再び上昇するU字の曲線を描く。が、日本の高齢者、特に男性高齢者は70歳を超えた頃から一般的に年齢を重ねても幸福度が回復しないL字型になる人が多いという。

  経済大国から世界に先駆けて老人大国となった我が国は、その昔、老人は敬われていた。長寿社会となり敬老から嫌老に、核家族化で退職後社会的孤立感が加速し、多くの高齢者が介護のことなど老後を思い煩わなければならなくなった。特にばあさんに先に逝かれた爺さんは。

  脳は歳を取ると幸せを感じやすくなるという。人生経験を積み重ねるにつれ、今起こっていることをありのまま受け入れる高齢になるにつれ幸福度が上るという。百寿の超高齢者は、“ありがとう、なんとかなる”と、今を無条件で受け入れる「マインドフルネス」を自然に身に着けるようになるようだ。

  主人を看取り、独居となった高齢女性患者に幸せかどうか聞くと、「こんな事を言うのも何だが、長い間生きてきた中で今が一番幸せ」と、多くのおばあさんが笑顔で答えるのがうらやましい。 920

  男はつらいよ:920の独り言(816)


2020/11/27 
  笑いと健康

 
福山文化大学で落語家、林家正蔵の「笑いと健康」と題しての講演の後、落語を聞かせてもらった。落語は話し手の技術と聴衆の想像力で物語が広がり、最後はオチで大笑いする。

 林家正蔵は、テレビが生んだ最初の笑いブームの中心的存在で、手を額に当て「どうもすいません」で一世を風靡した初代林家三平の長男。入院中の父親三平の様態が急変し、家族が皆集まったところで、医師が「しっかりして、あなたの名前は?」と聞くと、朦朧とした状態で死ぬ間際になっても芸人根性を示し「加山雄三」と答え、皆の“涙と笑い”をさそったという。

 笑いはナチュラルキラー細胞を活性化し、癌細胞、ウイルスを攻撃し免疫システムのバランスを整えるので、コロナに罹患しない。脳の海馬を活性化し記憶力が高まる。自律神経のバランスが整う。エンドルフィンが分泌され、鎮痛作用、幸福感が向上するなど、特に“泣き笑い”はその効果を増大させる。

「笑う門には福来る」は、幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せがもたらされること。心配事が増え、ストレスが溜まり、眉間にしわが出来、笑顔が消えていたので、落語で笑わせてもらった。          920。


2020/11/20 No.1004
  イグ・ノーベル賞

  今年のイグ・ノーベル賞は、ヘリウムガスをワニに吸わせて、鳴き声の仕組みを解明した京都大学の西村氏らが「音響学賞」として受賞された。

  今年の受賞でイグ・ノーベル賞に日本人が14年間連続受賞したという。日本人の真面目さに何故を突き詰めようとする日本人気質と、遊び心を持ち合わせているからであろうと言われている。

 イグ・ノーベル賞はノーベル賞に対するパロデイ―で、「人々を笑わせた、考えさせた業績に与えられる賞。ウイットに富んだ科学者の研究成果に贈られる賞かと思っていたところが、風刺や痛烈な皮肉を込めた選定もあるという。

 今年は、新型コロナウイルスの感染対策を巡り「ヒトの生死に直ちに影響を与えるのは、医師や科学者よりも政治家であることを世界に示した」として、トランプ米大統領、ボルソナロブラジル大統領らが「医学教育賞」に選ばれたという。我が国のGo-To政策も受賞候補になって良かったのでは?

 今年の「医学教育賞」を選んだ素晴らしい選考委員にもイグ・ノーベル賞を与えたらと思う。        920


2020/11/13 No.1003
  そこまで言って委員会

 
非難と中傷の応酬、対立に終始していたアメリカ大統領選挙は78歳高齢のバイデン氏が勝利したが、トランプ氏は敗北を認めず、2日間にわたりゴルフに出かけ敗北宣言をしないという。この世には善人も悪人もいない。どのような善人にも悪が潜んでいるし、どんな悪人にも善なるものが潜んでいるという。
 
黒人女性として米国史上初の副大統領に就く予定のハリス氏は、平等・正義をかけた女性のはじめての副大統領として、私は最後にはならないだろう、すべての小さな女の子たちが可能性のある国だと知ったからだと、感動的な演説を行った。が、正義というのも様変わりし易いし、悪が栄え正義が敗れることもある。

 福山文化大学で辛抱次郎氏による「そこまで言って委員会~世の中の裏表全部語ります~」と題する講演会があった。アメリカ大統領選挙報道の裏表、コロナ報道の裏表、ヨット遭難報道の裏表など、政治、官僚、社会、報道の裏表を面白く講演された。

 コロナ感染者数、死亡数とも断トツ世界一となり、溢れる情報により、何が正しくて何がフェイクなのか判断できない世界最強自由民主主義国家アメリカの未来は危ういであろう。  920



2020/11/6 No.1002
  ユーモアとは、にもかかわらず笑うこと

 ユーモアは相手を和ませる、聞き手を和ませる、場の空気を和ませるなど、上品で知的なセンスあるユーモアはイギリス紳士に必須とされている。気配り、思いやり、遊び心、品のある気の利いた洒落などが根底にあって生まれる笑いがユーモア。

 一方、ジョークはトランプ大統領の如く、アメリカンジョーク、ブラックジョークなど、言葉のテクニックで聞き手を笑わせることを目的とし、冗談、悪ふざけ、いたずら、いじめ、見下す、差別するなど、笑いが相手を傷つけ争いをもたらすことがある。

 日本で悲しみに寄り添った死生学を定着させたアルフォンス・デーケン氏が亡くなった。悲しみの中にある人を支える真摯な傾聴と涙と包容力。そしてユーモアを忘れないスピリット。「ユーモアとは、にもかかわらず笑うこと」を実践し教育・指導されてきた。

  人間は笑うことができる唯一の動物。辛い、もうだめだと思う時、ユーモア心があれば前向きな気持ちを生むことが出来る。自分が苦しんでいるにもかかわらず相手に対する思いやりで笑いを示すと心のいやしとなる。ユーモアは人を和ませるとともに、人の心を開放することができる。

  深みのある真のユーモアは最もつらい時にこそ発揮される、と。 920



2020/10/31 No.1001
  当たり前

 菅新総理が、行政の縦割りを打破し大胆な行政改革により国民の「当たり前」を実現するといっている。

 「当たり前」なこととは、今日も朝がきて目が覚めること。毎朝普通に便が出ること。尿が出ること。見えること、手足が動くこと、しゃべれること、食べれること、歩けること、怒ること、泣くこと、笑うこと。これら「当たり前」なことの有難さが本当に分るのは、それらを病いで失ったとき。

 お釈迦様は「人の生を受けるは難く、やがて死すべきもの、いま生命あるはありがたし、(生きて居ることは当たり前ではなく有難いこと。死すことが当たり前)」と言って、「当たり前」と考えがちな「有難いこと」に気づき、常に感謝の気持ちを持つよう諭している。

 「当たり前」の反対語は「ありがとう」。「ありがとう」の語源は「有難し」。あるのが難しい、めったにないこと、ありえないことが起こっているという意味。

 何に対しても、「ありがとう、ありがとう」と大きな声で話される高齢おばあさん患者を診ているが、生きているという有り難いことにいつも笑顔で感謝しておられるのが素晴らしい。 920

ありがとう寺:920の独り言(967)