〜920の独り言〜No.4 2005/1/7 No.210〜
 
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1/7 No.210
節目(その1)

  今年は戦後60年の節目の年だそうだ。
何をもって節目とするかは、人それぞれの人生観により異なるが日本の生活文化には、成人、結婚、厄年、還暦などの節目がある。
 インドには、人生の節目を季節に例えて暮す哲学があるそうだ。若葉の春は、勉学や就学に励む「学生期」。炎暑の夏は、職業を持ち社会、家族のために働く「家住期」。芳醇な秋は、勤めを果たし自然に向き合って自分自身の人生を見つめる「林住期」。寒い冬は、放浪と祈りの余生を過ごす「遊行期」。
 いつまでも忙しい家住期を続けると、欲望、悔恨、執着などがくすぶり続け、人生が完全燃焼しない。還暦などを節目として、自分を見つめなおし、自然に思いを馳せる林住期を経験することによってはじめて、悔いのない遊行期が迎えられるという。
 わが国は、戦後猛烈な努力によって物資的豊かさを得た。戦後60年の節目をもって、過去を振り返り、質素な中に秋の実りを味わえる心豊かな時代にしたいものだ。 

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1/14 No.211
節目(その2)

 私の恩師、故兵頭正義教授は、昭和27年に京都大学医学部を卒業し外科学教室に入られた。数年間外科医として腕を磨いた後、創設期の麻酔の臨床、研究を開拓され、若くして麻酔科の教授に。数年後、気管内挿管による吸入全身麻酔が普及し、各大学に麻酔学
教室が出来た頃、手術場の片隅で神経ブロックによる疼痛管理を始められ、ペインクリニック外来を創設された。数年後、全国にペインクリニックが普及した頃、神経ブロックに加えて、夜学で勉強された鍼を導入された。ニクソン訪中を契機に中国のハリ麻酔が世界に明らかにされ、一躍時の人となられた。数年後、ハリ鎮痛メカニズムが解明された頃、漢方薬を独自に勉強され、慢性痛に応用し、数年後には東洋医学が全国的に見直された。
 数年の節目で、外科、麻酔、ペインクリニック、鍼灸、漢方を極め、麻酔学会、ペインクリニック学会、鍼灸学会、東洋医学会などの会長を勤められた。その節目をつくる生き方に教えられることは多い。

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1/21 No.212
理想の死に方

人生八十年時代、各界著名人が望む理想の死に方特集が興味深い。
三笠宮崇仁:生も死も運命と心得ております。
瀬戸内寂聴:ひたすら遊行に徹し、最後の旅に出てバタンキューと。
多田富雄:脳梗塞になり右片麻痺ながら、歩き続けて果てに息む。
日野原重明:病床でレクイエムを聞きながら、最後の別れを言う。
立花隆:密林の象のごとく、誰も知らない所で誰に看取られることなく一人静かに死にたい。
養老孟司
:知ったことではない。
団鬼六:腹上死をとげることこそが老人の理想的な死に方。
中村紘子:百八歳でピアノを弾きながら。 渡辺淳一:情死。
近藤誠:癌死が幸せ。 
北杜夫:かなわぬが餓死、雪山での凍死。
角川春樹:夢と志を追及する中での暗殺を含めた突然の死。
ダライ・ラマ14世:死は再生・転生、現世の終わりに過ぎず。
西行:願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃。
920:西行のごとく、断食死こそ涅槃への道。

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1/28 No.213
大統領のゴルフ

 ドン・ヴァン・ナッタJr著の”大統領のゴルフ”が面白い。
ゴルフか釣りをさせれば、権力のトップにいる彼らの人格、品格困難な危機的状況でどう行動するかが、すべて見通せるようだ。
ルーズベルトは1926年に車椅子で回れるゴルフコースを設計。
アイゼンハワーはホワイトハウスの執務室の床をゴルフスパイクで傷だらけにし、大統領としての8年間に800回ラウンドした。
ニクソンはウォーターゲート事件に関する批判より、ゴルフについてのいかさまを言われることに激怒した。
JFケネデイはどの大統領よりゴルフは上手く、弁舌で相手を苛立たせるのに長けていた。
フォードは2m以内のパットはすべてOKした。
クリントンはスコアをごまかすのは不倫をごまかすのと同じくらい当たり前で、マリガンを連発した。
ブッシュ一家は政治もゴルフも攻撃的で安全を狙わず攻め、親子ともゴルフカート上でイラク問題に答えている。
 彼らにとって家族や国家も大事ではあるが、ゴルフはそれに劣らず大切であったようだ。 
  責任の取り方
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2/4 No.214
責任の取り方

 300年前の今日、元禄16年2月4日、大石内蔵助以下赤穂義士四十六士(16歳から77歳、平均39歳)が切腹した。”ハラキリ”として霊魂の宿る腹を切ることは、人がその本心を示す手段として最も確かな方法とされていた。
 わが国における切腹は平安時代の大盗、袴垂の切腹(988年)が最初とされ、以後、源義経の切腹(1189年)と続き、切腹が定着するのは武士の時代となった鎌倉時代以降といわれている。
 城主の切腹、家来の切腹、敵ながら天晴れな武士の切腹などから始まり、江戸時代初期には死んだ主君と男色関係にあった殉死が流行した。その後、切腹は自死の手段としてではなく、武士の刑罰としての切腹が一般的となったようである。
 切腹は武士が自らの罪を償い、不名誉を免れ自らの誠実さを証明する日本人固有の責任の取り方であった。
 最近、切腹ものの不祥事が目立つのは、わが国の指導者の責任の取り方の曖昧さが原因となっているのであろうか。
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2/11 No.215
男の引き際

 一度しかない男の引き際は難しく、晩節を汚す指導者が目立つ。苦労して上り詰めた地位に座ると、自分という存在の必要性の錯覚、居心地の良さ、権力という魔物に取り付かれるのであろう。
 引き際を誤る老害とよばれる国会議員、代表は中曽根元首相。過去の栄光に引きずられ特権を握り続けた、中内ダイエー会長、ナベツネ読売会長、海老沢NHK会長、堤西武会長などなど。
 一方、本田宗一郎の引き際の潔さは、ホンダの美風として残り、トップは後継者を育て、権力に執着しないことが業績の向上に寄与したという。 晩節の過ごし方が難しいようだが、東京地検検事堀田力は、転身にて見事な引き際を成し遂げたようだ。
 晩節を汚した最低の男は藤井前道路公団総裁であろう。一方、引き際の美学を見事に成し遂げたのはアイドル歌手山口百恵。
 団塊の世代であるわれわれ庶民も、晩節を汚さないような引き際の美学を考える必要があろう。 
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2/18 No.216
沈黙の津波

 今年の第34回ダボス会議で、世界の指導者が取り組むべき優先課題は、1位:貧困、2位:途上国に不利にならない公平なグローバル化、3位:気候変動、4位:教育、多量破壊兵器は7位、世界経済は9位などであった。
 フランスのミッテラン大統領は、スマトラ沖津波災害に各国が地球市民としての連帯を示したことを評価し、途上国を直撃する飢餓、感染症といった”沈黙の津波”にも同様の支持を呼びかけた。
 経済のグローバル化で先進国と途上国の貧富の格差は拡大し、途上国の貧困、飢餓、感染症、教育、および地球温暖化などは津波ほどの眼に見える衝撃はないが、ゆっくりとそれ以上に深刻な被害を広範にもたらしているという。
 世界の指導者が多く集い、”影のサミット”と称されるダボス会議で、わが国の指導者から気のきいた発信は見られなかった。
 27年前スイスバーゼル大学留学時、ダボスにスキーに行ったことが懐かしく思い出された。 
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2/25 No.217
MOTTAINAI

 昨年度ノーベル平和賞受賞者ワンガリ・マータイさんが”MOTTAINAI”を世界共通語として広めることを提言された。
 彼女は木の伐採により故郷の川が干上る過酷な現実を経験し、再びおたまじゃくしが棲める川を取り戻すため、グリーンベルト運動を創設。植林を通して貧しい人々の自然保護への意識を高め、女性の地位向上、ケニアの民主化に加え、環境保護が平和へのカギということで、ノーベル平和賞を受賞。”MOTTAINAI”は、古来より自然への感謝の気持ち、畏敬の念、モノを大切にする日本固有の生活文化、日本人の心、生き方そのものであり、親が子供に教える基本的な道徳であった。
 多量生産、多量消費、多量廃棄、モノが溢れる国になると、茶碗にご飯粒を残しても「もったいない、ばちがあたる」と、怒る親もいなくなってしまった。川はコンクリートで固められ、
おたまじゃくしも居なくなってしまった。   
 マータイさんから教えられることは多い。  
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3/4 No.218
老衰

 私が生まれた昭和23年時の平均寿命は男50歳、女54歳。死因は1結核、2呼吸器感染、3胃腸炎、4脳血管疾患、5老衰であった。それが50年後には平均寿命が男78歳、女87歳と顕著に延長し、死因では1悪性新生物、2心疾患3脳血管疾患、4肺炎、5不慮の事故、6老衰となった。
 高齢者が死因と推定できる病気がなく、老衰によって自然に生を閉じたときを老衰死という。人生50年の時代は、57歳の老衰死があったが、現在では何歳から老衰とするのであろうか。
 医学の進歩で世界一の長寿国となり、老衰死が増えていると思ったら、診断技術の進歩、病院死の増加などにより老衰死は減ったようだ。
 無理やり癌をみつけられ、心疾患を指摘され、脳卒中を治療され、インフルエンザ、ノロウイルス感染と騒がれ、高齢化社会になっても静かに老衰死を迎えることは難しいようだ。 

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3/11 No.219
生涯教育

 医師の経験年数と医療の質を関連づけた研究結果がアメリカの医学雑誌に発表されたそれによると医師の経験年数と医療の質に負の相関が、経験年数と知識にも負の相関が得られたという。
 経験豊富な医師ほど臨床技能が高いというのが、医師の専門的知識・技能に関する常識であったが、今回の研究で、経験年数が豊富な医師ほど質の低い医療を提供する可能性があるという。
 医師が知識と臨床技能を絶えず最新のものにする方法として従来行われている講義への出席や、医学雑誌の講読を継続するだけではあまり効果がないということらしい。臨床技能と医療の質を維持するためには、他の医師との交流などを含めた新たな生涯教育の必要性を指摘している。
 この研究結果は、わが国の専門医更新制度、日本医師会生涯教育制度のあり方にも参考になりそうだが、年配医師、熟練した老医などからの反論が聞こえそうだ。  

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3/18 No.220
インフルエンザ(その2)

 先日の休日当番医では、インフルエンザに罹患した若い人が23人も来院していた。最近の患者は、平気で私の顔の直ぐ前で咳をするので閉口した。診察の合間にうがいをしたが、ウイルスは粘膜に取り付くと約20分で細胞の中に取り込まれ、喉より鼻の粘膜に多く付着するので、うがいの効果は限られている。
 ワクチンが良いかどうか分からないが、受験生は受験のため、看護婦に休まれると困るから、仕事が休めないから、老人は死ぬかもしれないからなどの理由でワクチンをうつのが気に障る。
 風邪は心や体の調子が崩れたときにひくもので、発熱・下痢は、体のバランスを取り戻す自浄作用である。年に一度位は発熱・下痢などによる休養で心体をリフレッシュすべきであろう。
 インフルエンザの語源は”星の影響”を意味するイタリア語。私はマスコミに踊らされずワクチンをうたないが、星運が良く今年もインフルエンザに罹らない。

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3/25 No.221
後山(うしろ山)

 後山は兵庫県・岡山県の県境にあり、標高1345mで岡山県の最高峰。氷ノ山・後山・那岐山国定公園に指定されている。1330年前奈良時代に役小角が開基した修験道の行場で、山岳信仰の聖地として崇められ、地元では行者山と呼ばれている。
 女人堂から後山中腹にある真言宗道仙寺奥の院(行者本堂)に向う行者参道は、奈良県大嶺山の山上ガ岳とともに女人禁制が守られている。登山道は別にあるので後山への登山は女性も可。
 粟倉村キャンプ場から残雪に覆われた登山道を登る。舟木山を経て、1mを越す積雪の尾根道を進み後山に至る。稜線で強い風を避けて昼食。下りは稜線から奥の院を目指したが、ルートは無く、腰まで埋まる雪と急坂に苦難しながら巨大な岩の前に建てられた行者本堂に到着。奥の院からの行者参道も雪に覆われ迷いながらも、雪解け水の激しい渓流横の”是より上女人禁制”と書かれた鳥居のある女人堂に無事下山。東粟倉村の愛の村パークの立派な天然温泉で疲れを癒してきた。

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4/1 No.222
ぽっくり

 わが国では年間約8万人が突然死する。
働き盛りの中年男性が睡眠中に突然うなり声をあげて突然死する青壮年急死症候群は日本を含む東南アジアに多く、わが国ではぽっくり病と呼ばれている。その本態はブルガダ症候群による特発性心室細動で、植え込み型除細動あるいは家族によるAEDが必要で、本日の救急蘇生委員会の講演が役に立つ。
 奈良の斑鳩にある浄土宗の吉田寺(きつでんじ)は、念仏中に安楽往生したという故事からぽっくり寺と呼ばれている。欧米人は突然死を好まないが、日本人は歳をとると長患いせずにぽっくり逝きたい願望があり、ご利益を求めて多くの参拝者が訪れる。参拝者の約9割は高齢女性であるというのが興味深い。
 本当のぽっくりは、大和言葉で保久利(ほくり)往生といって、十分生きて安らかに死ぬことで、突然死ぬことではないという。
 ちなみに犬猫のぽっくり病はパルボウイルス感染による急死のことをいうそうだ。  

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4/8 No.223
還暦総得度

 今年還暦を迎える人が生まれた終戦昭和20年の平均寿命は50歳であった。現在では人生80年を超える時代になり、団塊の世代も控え、還暦後の過ごし方が議論されている。
 現代は科学万能、物質文明偏重により、精神文明の衰退が指摘されている。地位、名誉、貧富、優劣、美醜、嫉妬などの相対的価値観の世界に生き続けると、人生の根本問題を
明らかにしないまま虚しく過ごしてしまうことになる。
 60歳という人生の節目を機に、諸行無常(刹那の人生を永遠の眼でみつめる)諸法無我(すべてのこだわりを捨てて、ありのままの自分に出会う)により涅槃寂静(煩悩の炎を吹き消し、欲望・執着のない安らかな心境に到達し、人生の真実を明らかにする)に至ることを目指す。
 得度とは迷いの世界から悟りの世界に渡ることで、還暦総得度運動が薦められている。 

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4/15 No.224
ステータス

  アメリカでは成功者は社会への貢献が求められている。日本人は成功者ほど寄付やボランティアをしないといわれる。見栄っ張りのアメリカでは社会への寄付の多さが成功者として
のアメリカンステータスになるようだ。
  ハリウッドスターはオスカー賞の会場に巨大な自動車で訪れていたが、今年はデカプリオなどが小さな環境車プリウスで来場。エネルギーの消費が富の象徴であるアメリカで、環境問題に関心を持つことがハリウッドスターのステータスになりつつある。
 先日、高級料亭西山別館に自転車で行き、駐輪場を聞いたところ下足番にいやな顔をされながら、他の高級自動車の邪魔になるので、木の陰のほうに置くように言われた。
  わが国ではベンツなどの高級車に乗ることが開業医ややくざのステータスになっているようだが、究極の環境自転車が私のステータス。

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4/22 No.225
女性の世紀

 昨年の米紙フォーブスによる世界で最もパワフルな女性100人で、トップはライス米大統領補佐官、2位は中国の呉儀副首相、3位はインドのソニア・ガンジー国民会議議長などとなっていた。ライス補佐官は50歳で米国務長官に抜擢され世界を動かす。
 わが国でも女性CEOがダイエー、三洋電機などに誕生しつつあるが、日本女性の100位入りはなかった。アメリカでは企業の半分は女性社長だそうだ。
 人を刺す蚊はメスのみ。卵を産むのにたんぱく質が必要なので子孫を残すために命がけで人を刺し吸血している。カマキリは交尾中にオスはメスに食べられ、クロゴケグモという毒グモのメスは交尾が終わるとオスを食い殺す。
 75歳以上の日本人をみると、女100人に男56人。高齢化社会は女性社会の到来ということ。
 我が家では妻、3人娘、雌の柴犬で女:男はすでに5:1で女性の世紀に突入。  

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5/6 No.226
霧島連峰

 わが国最初の国立公園である霧島連峰を縦走した。えびの高原登山口より霧島23山の中の最高峰(1770m)韓国岳(からくにだけ)に登る。左に硫黄山を見ながら火山道を
登り、すり鉢状の火口が大きく口を開けた火口跡である山頂にたどり着く。獅子戸岳を経て、噴煙を上げる新燃岳(しんもえだけ)に至る。月面を思わせる巨大な火口と奇岩、その中に見えるエメラルドグリーンの神秘的な美しい湖に思わず絶句する。縦走路の景色は目まぐるしく変化するが、新燃岳から見える霊峰高千穂峰は二つの寄生火山を従え天にそそり立っており、神々が降り立つと言われるのが納得される。高千穂峰は溶岩や赤茶けた火山石などで大変登り辛い山であったが、山頂には天照大御神の命令でニニギノミコトが降臨に際して逆さに立てた”天の逆鉾”が立てられおり、日本創始の地であることが示されていた。
 霧島の谷あい標高920mの秘境新湯温泉の硫化硫黄を多量に
含んだ乳白色の混浴露天風呂で疲れを癒してきた。

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5/13 No.227
でんでんむしのかなしみ

 ある日 でんでん虫は 大変なことに 気がつきました。「私は いままでうっかりしていたけど、私の背中の殻の中には悲しみが いっぱいつまっているではないか」 この悲しみは 
どうしたらよいでしょう。「私はもう生きていられません」と、友達のでんでん虫に言いました。「私はなんという不幸せなものでしょう、私の背中の殻の中には悲しみが いっぱいつまっているのです。」友達のでんでん虫は言いました。「あなたばかりでは ありません。
私の背中の殻の中にも 悲しみはいっぱいです。」べつの友達にも聞きました。どの友達も 同じことを言うのでありました。とうとう はじめのでんでん虫は 気がつきました。「悲しみは誰でも もっているのだ。私ばかりではないのだ。私は 私の悲しみを こらえていかなきゃならない。」そして このでんでん虫は もう嘆くのをやめたのであります。
 癌末期で悩んでいる患者さんに、美智子皇后の愛読した童話 新美南吉作”でんでんむしのかなしみ”を見せてあげました。

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5/20 No.228
バーゼル大学

 スイスのバーゼル大学病理学者リュグリ氏らが、ナポレオン1世の死因は胃がんであったと結論づけ、毒殺か病死かの論争に終止符をうったそうだ。
 バーゼル大学は1459年設立のスイス最古の大学。オスラー、ニーチェなどが教鞭にたち、ユングなどをはじめとする世界的権威者が数多く誕生している名門大学。病院は1265年にBurger Spitalとしての誕生から750年もの歴史がある。
 バーゼルはドイツとフランスとスイスの国境に接し、ローマ帝国時代からライン河の要塞として栄えた美しい街。廃棄物規制に関するバーゼル条約、時計の世界的展示をするバーゼルフェアなどが有名。ノバルティス、ロッシュの本社を擁し、製薬業の世界的中心都市でも
ある。最近ではバイオクラスタとして発展しているそうだ。
 27年前バーゼル大学病院で、W.Huginn麻酔科教授、当時世界外科学会会長でもあったM.Allgower教授などに指導していただき苦労したことが懐かしく思いだされる。

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5/27 No.229
鱧(はも)

 先日、京都の高台寺馳走高月で秘傳鱧料理を食べてきた。京都で新鮮な海の魚が手に入らなかった昔、生命力ある鱧が生きたまま手に入る唯一の魚で珍重された。鱧は骨が多くて
硬いためそのままでは食べにくい。京都の料理人はいかに美味しく食べるかの工夫を重ね、鱧の骨の構造を解明して開き方、皮一枚を残して切れ目を入れる"骨切り”という技術を編み出した。夏の伝染病に悩まされていた頃、鱧の生命力にあやかろうと、祇園祭の時期に好んで食べるようになり、夏の京料理の代表となった。
 鱧はうなぎ、穴子と似ているが、脂肪分は多くなく白身で淡白、旨みの成分であるアミノ酸が多く含まれており、骨切りに加えて素材の味を最大限に引き出すのが料理人の腕の見せ所となる。
 秘傳による”骨抜き”された”鱧しゃぶ”は、あっさりでさっぱりしていて、なお旨みが凝縮された絶品であった。

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6/4 No.230
麻酔科学会

 神戸のポートピアホテルで第52回日本麻酔科学会学術集会が”躍進する麻酔科学”をメインテーマとして開催され参加してきた。
 5000人を超す麻酔科医が参加していたので、学会期間中の全国の予定外科手術件数は激減していたことであろう。
 手術麻酔から集中治療、救急医療、ペインクリニック、緩和医療など”なんでもできる医者”として幅広く活躍しているので、17を超える会場で、さまざまなテーマが討論されていた。
 最近マスコミでも麻酔医不足が取り上げられ話題になっているが、マンパワー不足は深刻で、学会最大の課題として、日本の麻酔医、世界の麻酔医、麻酔科開業、出張麻酔、米国のnurse anesthetistの功罪、アジアの麻酔、女医問題なども話し合われていた。
 それにしても30年も前から、これからは医師過剰時代が来て、イタリアのごとく医師免許をもってタクシー運転手をする時代がくるといわれていたのに、最近の医師不足問題はどうなっているのだろう。 

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6/10 No.231
戒老録

 老人は医者に冷たくされても怒らないこと。
医者は正直いって、年とった患者は本気で診る気になれず、ぴちぴちした若い患者は一生懸命治療するのが自然な思いである。もし薬が一人分しかなかったら、もし人工呼吸器
が一台しかなかったら、それは老人にではなく、若い患者に使用されるべきであろう。
 高齢になり食べれなくなったら寿命と考えること。90過ぎの老人が食事の誤嚥による肺炎になって死んでどこが悪いのであろう。流動食、経管栄養、胃ろうなどもってのほかで、
最後の日まで食べたいものを食べさせるのが自然であろう。
 老人の敵となる気管内挿管、気管切開などは拒否すること。人間にとって大切な言葉は最後の瞬間まで残すべきであろう。
 などなど曽野綾子さんの尤もな意見には賛同するが、わが国では多くの医師が自然の思いを超えて、なお少しも手を抜かず、老人の治療を行っているのであります。 

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6/17 No.232
コード・ブルー

 昨日、外科系懇話会で予期せぬ疾患の症例検討が行われたが、外科系医師に是非読んで欲しい本がある。それは”コード・ブルー”。
 外科医となり初めてのIVH挿入、初めての緊急気管切開、初めての重症外傷患者などのトラブルを通して、初心者がどうやってメスの使い方を学び、上達していくか。外科医がいかにミスを起こし、ミスから逃れられないか。ボストンの外科医が7年間の研修で実際に遭遇した不確定な出来事やジレンマを Complications:A Surgeon's Notes on an Imperfect Scienceの題で出版したもの。
 医療行為は不完全な科学であり、誤りから逃れられない人が行う手作業であり、危険と隣り合わせのものであること。医療の不完全、不可解、不確定な体験と考察が興味深く書かれている。
 日本語訳の題名”コード・ブルー”は、患者の容態が急変してACLSが必要な場合に医師・看護師を集合させる呼び出し暗号。何故ブルーなのかは、患者のみならず、そこにいる医師も蒼ざめるから。  

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6/24 No.233
火垂るの墓

 藤井川の養老温泉付近にホタルを探しに行き、暗闇の川辺を青白い光を放ちながら数匹のホタルが飛んでいるのをやっと見つける事が出来た。 
 ホタルというと、まだテレビなど無かった子供の頃、虫かごいっぱいのホタルを捕まえて、部屋に吊った蚊帳の中に放したこと。心の中に根づいているほの暗い水田、小川などの美しい
自然の情景。”火垂るの墓”での兄妹のはかない命と防空壕でのホタルのシーンなどが思い出される。
 火垂る、星垂る、灯足るなどの語源を持ち、短い間夕闇に幻想的な世界を演じるホタルが放つその光は、日本人の魂。
 卒業式での蛍の光、窓の雪が聞かれなくなった。自然環境の結晶であり、センス・オブ・ワンダーを育むホタルが乱舞する美しい日本の自然と風土を守る愛国心を若い人たちにもってもらいたいものだ。  

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7/2 No.234
ペグ・イントロン

 大手コンビニでは一日3回賞味期限をチェックし、おにぎりなど期限が1日未満のものは期限切れ2時間前に捨てる。パンなど期限が数日のものは24時間前に捨てるそうだ。ローソンが昨年1年間に廃棄した食品は約400億円で年間利益を上回ったという。
 C型慢性肝炎に、週1回体重に応じて容量調節投与する高価なインターフェロンが発売された。100μg/0,5mlが3万2千円。体重45kgの患者は60μg投与なので、0,3mlを皮下注射して残りは捨てる。正確には0,7mlで溶解するので、半分以上を
捨てることになる。1回の治療ごと高価な薬の半分以上を1年間にわたって捨て続けなければならない。数種類のアンプルを作ればこんな馬鹿げた使い方は防げると思うのに。
 製薬会社の利益優先、医師の医療経済観念の欠如、厚生省の無策が、この様なもったいない使い方を許すことになる。
 借金まみれの国のくせに。マータイさんに申し訳ない。

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7/8 No.235
ホームドクター犬
(その4)

 国内でペットとして飼われている犬の平均寿命が急速に延び、12年前と比べ3,3歳も長くなり11,9歳となったそうだ。人間の年齢に換算すると12年間に17歳も長生きするように
なったことになる。我が家の柴犬も12歳でまだ元気。日本人は男性に比べ女性の寿命が著しく延長しているが、犬の場合は性差による寿命の差は見られないという。
 ワクチン接種が浸透して感染症が激減したため、死因は人間同様に癌、心不全など加齢による生活習慣病が7割を占めるという。
 最近のわが国では、高齢者の介護、ターミナルケアは在宅から施設、病院に移行し、自宅で家族に囲まれての死亡は少なくなったが、強い絆で結ばれた老犬のターミナルケアは、自宅で不眠不休の介護、涙の看取りをする家族が増えているそうだ。
 家族の絆が希薄になりつつあるわが国で、高齢者の介護、緩和ケア、ターミナルケアなど老犬介護から学ぶことは多い。

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7/15 No.236
官僚的予測

 厚労省は今後団塊の世代が高齢化し、少子高齢化時代を迎える2015年問題への対応を視点として介護保険を改正するという。
 団塊世代は小・中学校では60人学級のすし詰教室で、文部省はそれでは学力がつかない、落ちこぼれがでると予測したが、学級崩壊や学力低下は、その後の40人学級になってからであった。高校・大学卒業する頃、労働省は就職難、失業者が溢れると予測した。しかし高度成長時代をもたらし、逆に人手不足であった。団塊世代が40歳を超えてくると窓際族が増え、企業経営が困難になると予測されたが、団塊中年パワーにより好景気を持続させた。
などなど、団塊世代に対する”官僚的予測”は見事な程外れてきた。
 団塊世代の名付け親、堺屋太一氏は、歴史的・世界的にみても人口減少時代には新文化が花開いているという。今後の知価時代には、知恵を持ち、金を持ち、時を持った団塊世代の高齢者がいぶし銀文化の新たな社会をつくるに違いないという。
 さてどうなるか、三浦課長さんに聞いてみました。

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7/22 No.237  
 
平家平

 平家平(1693m)は、石鎚連峰の東端に位置し、愛媛県と
高知県の県境にある山。
 壇ノ浦の戦いで入水自殺したとされる第81代天皇、安徳帝は合戦の前に屋島で身代わりをたて一命をとどめていた。源氏の執拗な追跡に、数百名の平家一族と人里離れた険しい吉野川源流に沿って東祖谷から落ち延びる途中に滞在したのが山名の由来という。
 7時45分、住友フォレスターハウスから登り始める。ブナ林の渓流に架けてある苔におおわれた丸太橋は多くが朽ちて渡り難い。なすび平、一の谷越と悪路の登りを経て冠山に至る。冠山からは腰まで伸びた笹の原を歩き平家平頂上に12時着。昼食。周囲は見渡す限りの深い森、渓谷の山並みの展望がすばらしい。自然林を渓流沿いに下山。7時間の山歩きであった。
 若干8歳から四国の険しい山中を苦難の逃避行を行った安徳帝に思いを馳せながら、マイントピア別子の展望露天風呂で疲れを
癒してきた。 

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8/5 No.238
日光金谷ホテル

 第39回日本ペインクリニック学会が宇都宮で行われ、今年も座長の依頼がきたので参加してきた。せっかくなので、関東以北の最高峰日光白根山に登るべく、学会終了後あの日光金谷ホテルに宿泊した。
 徳川家康の霊廟である東照宮のある日光は明治維新後、外国から訪れる有名人、外交官などの避暑地として発展。自宅の一部を外国観光客の宿泊施設としたのが金谷ホテルの始まりで、昭和天皇をはじめとして、英国エドワード王子、ヘレンケラー、チャップリン、アイゼンハワー、アインシュタインなど著名人の宿泊者名簿のサインが飾ってある。明治6年創設は、日本最古のリゾートホテルといわれ、建物は有形文化財に指定されているそうだ。
 ところが、夜半より物凄い落雷となり、大きな落雷音が鳴り止まず、古い大きな窓ガラスがビリビリ響き一睡も出来ず。翌朝まで雨が降り止まず、日光白根山登山は断念せざるを得なかったが、古き良き時代を偲ぶ時を経験させてもらった。
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8/12 No.239
癌難民

 現在世界中で紛争や災害により、住み慣れた居住地を離れざるを得なくなった難民の数は4000万人以上。家族を殺され、家を焼かれ、不安な生活を強いられている難民の80%は女性、子供といわれている。
 日常的なレイプ事件で身ごもった子供を支える家族制度、国の保護など何も存在しない難民キャンプで、栄養失調による病気の彼女たちの願いは飲み水と今夜の食料。
 一方、誰でもどこでも自由に保険証1枚でハイレベルの医療を受けることが出来る世界一の医療保険制度を実現し、世界一の長寿国となった日本で、患者の医療満足度は低いといわれる。
 わが国には癌に罹患し、最高の先進的ながん治療を求めて各地の病院をさまよう人々、新薬を探し求め右往左往する人々、医師との信頼関係が築かれず医療不信に陥る人々、多くの情報にまどわされうろたえる人々など、いわゆる”癌難民”と呼ばれる人たちが溢れているという。   
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8/19 No.240 
栄枯盛衰

 終戦記念日に呉の大和ミュージアムに行った。大和の技術力もさることながら、若い兵士の父母への手紙、遺書などを見て文面の純粋さ、その達筆さに、これらが同じ日本人で、しかも20歳前の若者の文筆とは、いつものことながら感激させられる。
 戦後は人権という個人の権利ばかりが教育され、他人の非をあばくことをもって正義とし、損になることを知りつつ他人のために尽くすことなど、忘れ去られてしまった。
 経済成長を目的とした効率性のみが追求され、経済大国になったが、40兆円の収入しかないのに80兆円分の生活をし、1000兆円の借金まみれにも慣れてしまい、物だけが溢れる。
 豊かな個人生活ばかりに目を奪われる社会になると、子供を産み苦労して一人前にすることや、高齢になった父母に感謝し熱心に介護することなどの基本的な大切さを忘れてしまう。
 仁義無き戦いにも明るい未来が見えてこない。
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8/26 No.241
男と女の悲しい死体

 腹上死こそ男の本望、理想の死に方という人がいるようだが、その語源は中国最古の法医学書の作過死という項目の中からで、台湾では色風、英語ではcoition deathと呼ばれるようだ。
 上野正彦監察医が検視した腹上死170例の報告によると、夫婦間が86例、愛人関係が84例。季節は春に多い。夫婦や内縁関係では男性が5-8歳年上で、愛人、ホステスなどの場合は14歳とかなりの年齢差があった。平均は男性46歳、女性33歳であった。男性が圧倒的に多いが、女性の腹上死は年齢差が少ないばかりか男性が年下のケースが多かった。
 死因は男性では60%が心臓、37%が脳、女性では80%が脳卒中。行為中より行為後のほうがはるかに多い。心臓発作は行為が終わった後の眠りについた時に多い。脳卒中は行為中に発作を起こしながら、死ぬまでに時間がかかる。
 腹上死の年齢が意外と若いこと、女性にも腹上死があること、行為中のみでなく行為後の死亡も含めることなど知らなかった。
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9/2 No.242
宇宙船地球号

 米国主導による個人の利益欲望の追求、能力の自由な発揮が無条件で容認され、自由主義、市場主義、能力主義、効率主義が推し進められている。その結果として、先進国の発展途上国へのグローバルな市場競争は激化して地球環境どころではなくなる。
 宇宙船地球号にとって、環境は第一の公共的問題であるが、個人・国家の自由な活動に制限をかけるような環境問題は、自由・市場主義の物質文明のもとでは無視されてしまう。
 地球号内の日本丸は、地域誘導・族政治により高速道路、橋はでき、
補助金がばらまかれ、物質文明を謳歌する国になったが、日本丸の行き先を考える政治が疎かにされた。その結果、自然は失われ、人々の心は荒び、なにもかも国に依存、権利ばかりを主張し、子供には借金を残すだけで明るい未来を示せず、借金まみれで沈没寸前。
 生き残りを賭けてさらなる市場競争原理による物質文明を追求し宇宙船地球号、日本丸はどこに行くのであろうか。 
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9/9 No.243  
フォーカスト・ファクトリー

 以前外科医は外傷、腹、肺、骨、血管、子宮などすべての手術を行っていた。が、医術の進歩に加え手術成績の向上、ミス防止には数をこなす反復化が必要となり、専門化、細分化されてきた。
 しかし、心臓外科医の技術の未熟さによる医療過誤、腹腔鏡手術の試験で専門医とされていた医師の半数が不合格なことなど、手術症例の少なさによる技術習得、非効率的医療が問題となっている。
 そけいヘルニアは外科1年目で習い、一般外科医なら手術時間は約1時間で再発率10%が平均的。しかし、トロントのヘルニア専門で成功したショルダイス病院では手術時間は30、入院費用は半分、再発率は1%以下。この病院の十数名の医師はヘルニア手術しかせず、一人の外科医が1年間に800症例をこなすという。
 今後の病院の生き残りは、専門化、細分化、自動化、機械化、コンピュータ化された医師による多くの患者にベルトコンベア式の効率的でミスのない完璧な手術を行うことであろうか。 
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9/16 No.244
ハリケーン「カトリーナ」

 ハリケーン「カトリーナ」による自然災害は黒人、貧困層の逃げ遅れ、災害救助の遅れなどの人災が加わり、自由資本主義国家の名主であるアメリカ合衆国のさまざまな恥部をさらけ出した。
 1881年12月8日、オーストリアの首都ウイーンにある劇場で火災が発生。死亡者398人を含む1000人以上の被害者が出た。この災害を契機に1882年より馬車による世界で最初の公的救急救助活動が行われるようになった。被害が大きかったのは、当時の女性のスカートが重く長く裾が広がり、動きにくくて逃げ遅れた為でそれ以降、現代版の洋服が流行るようになったという。
 神の怒り、感染、公害、テロ、環境破壊による自然災害など、災害はその時代・文明の隠れた実相を明るみに出すようだ。
 アフリカで誕生した人類が世界各地に移動したのは、災害から逃れる為であったという説がある。災害から逃れ生き延びてきた人類の生存を脅かす最も危険な災害は人間自身になったように思う。
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9/23 No.245
サムシング・グレイト

 人間の運命は遺伝子によって左右されるのであろうか。一卵性双生児は違う環境に育ったとしても音楽、趣味、好みの異性のタイプが一致している。恋愛遺伝子、ゲイ遺伝子など
人の相性、同性愛なども遺伝子によって規定されているという。
 哺乳類には雄が複数の雌と交尾する「乱婚型」とペアボンド(つがいの絆)によって両親で子供を世話する「一夫一妻型」が存在する。チンパンジーは雄も雌も複数の相手と配偶する
乱婚型で夫婦の絆はほとんど無いという。乱婚型をペアボンド型に変えることが遺伝子操作によってできるようになったという。
 人類は乱婚型なのかペアボンド型なのかどちらであろうか。わが国では結婚しない、すぐ離婚する、セックスレスカップルの増加により少子化が進行しているが、彼らは突然変異なのであろうか。遺伝子が環境によって眠ってしまったのであろうか。
 何故人は生まれ、何のために生きているのか。われわれの遺伝子はどこからきて、どこにいくのであろうか。
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9/30 No.246
大きなお世話

 戦後のどん底に生まれ、15歳で東京五輪、21歳で大阪万博を経験し、明るい明日を夢見て、家族みんなで成長を目指した努力の結果、便利で豊かで物が溢れる先進国となった。 そして今、
 若者は結婚しなくなり少子化が問題となる。国は育児費用を支給するということで子供を増やすという。
 ストレスと効率を追求する社会に飽食が加わり、生活習慣病国家となる。国は食塩・野菜摂取量、1日歩数、アルコール量、肥満度の目標値を設置し、医療費削減を目指すという。
 高齢化社会となり介護費用が増大する。国は予防給付と称する予算を計上し、運動をしない老人を集めて運動をさせ、食が細った老人の栄養管理を行い、寝たきりを減らすという。
 大学時代の友人清水鴻一郎君が衆議院議員に初当選した。何故小子化なのか、何故生活習慣病なのか、介護保険の光と影などしっかり見据えて、家族制度も崩壊し、先行きが明るくない借金大国日本丸の舵取りをやってもらいたいものだ。

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10/7 No.247
禁煙ファシズム

 尾道医師会は尾道健康推進課と協力して禁煙指導対応医療機関リストを作成するそうだ。日本医師会も禁煙対策を強化しているようだが、このたび”禁煙ファシズムと戦う”という小谷野敦氏らの過激な意見満載の本が出版された。
 「禁煙推進医師連盟に所属する医師はしょせん身体についての技術屋に過ぎず思想や哲学に欠け、人間全体に関する見識を持っていない。現在の禁煙運動はまさにヒトラーによるナチの民族浄化に通じるファシズムである。健康、環境に悪いという社会悪の観点からすると酒のほうが煙草よりはるかに悪いのに、健康の義務化を強調するプロパガンダ戦略にのせられ、煙草を吸う人を汚い低レベルの人間として差別、抹殺しようとしている。」などなど。
 禁煙を指導する医師はよりよい指導のためにも、この過激な本に加えて”そこに酒あり煙草あり:酒と煙草を楽しむための医学書”
は読んでおくべきであろう。           

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10/14 No.248
看取り

 今朝早く尊厳死を希望していた母が90歳で逝った。突然倒れ、死に逝く母の希望に従い、自宅で少しの点滴のみで、他に何もせずに診るだけの医師として2ヶ月に及ぶ苦悩の末に看取った。
 安楽死を表すeuthanasiaという英語の語源はギリシャ語で、良い死という意味らしい。オランダ研究チームによると、末期癌患者は安楽死させたほうが自然に死亡した場合より家族、親族の悲嘆、心的外傷ストレス反応が軽減されたという。が、安楽死を施行した医師の心的外傷ストレスはどうだったのであろうか。
 助かる見込みのない病気を抱えた患者を看取るには医師の姿勢が大きな役割を果たす。死には個体の死に加えて霊的死、社会的死、家族的死など、さまざまな意味合い影響力をもっており、死に逝く患者よりは、その家族に対する対応などに苦慮することが多い。
 この十年間におよそ500人の患者さんを看取ったが、一人一人の患者さんおよびその家族から、生き様、死に様、医のあり方など
多くのことを考えさせられ学ばせていただいた。

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10/21 No.249
おまけの人生

 地球上の哺乳類はすべて一生の間に20億回心臓が拍動する原則があることはゾウの時間ネズミの時間でおなじみ。同じ人間においても、体重あたりのエネルギー消費量は赤ん坊が最も高くてネズミの時間に近く、歳をとるとエネルギー消費は落ちて、ゾウの時間に近いということになる。
 地球上の生物は基本的に自分の遺伝子を残さないと生物としての価値がなくなるので、生殖期には子づくりに励むもの。一方、生殖活動を終えた動物が長生きすると、食料を子供と取り合うことになるので、自然界に老いた動物は存在しないという。しかし、わが国は自然界の掟に反して、世界一の寿命を誇る高齢化社会になった。
一方、若者が子づくりに励まず少子化になっているのは、自然淘汰への道を歩んでいるのであろうか。
 人類のみが生み出した老いの時間は”おまけの人生”で、ネズミ年生まれのいらちな私だが、エネルギーを浪費せずにゾウの時間のごとくゆったりとした生物時間を過ごしたいと思う。のだが・・・

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10/28 No.250
センチュリアン

 1世紀以上を生き抜いた100歳以上の長寿者を敬意をこめて、センチュリアンと呼ぶそうだ。
 センチュリアンは昭和38年は153人であったのが、平成17年には25606人。女性21820人、男性3716人と顕著に増加した。
 人の寿命は遺伝子によって決まっていると思っていたが、最近の寿命の延長は、生活環境による影響が大きいのであろうか。人知の及ばない大自然の偉大な力が関与した遺伝子の97%は眠っており、環境条件が整うと眠っていた遺伝子が目覚めて活性化され、生命のばか力がでるという。
 先日、102歳の患者を在宅で看取ったばかりだが、このたび、101歳の女性に加えて、109歳の女性が入院してきた。広島県一の長寿者らしい。入院中に100歳になった患者を加えると、3人のセンチュリアンを診ることになった。
 現在日本最高齢は112歳ということなので、ここまでくるとがんばって日本一をねらってもらうことにする。

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11/4 No.251
大仏のたたり

 経済成長時代に夢の繊維としてもてはやされ、多量使用されたアスベストが今、悪魔となり健康被害をもたらしている。
 イギリス産業革命の時代、貧しい農村の子供達が過酷な条件のもと煙突掃除を行っていたが、1775年、イギリス外科医ポットが煙突掃除夫に陰嚢癌が多いことを報告し、ススと発ガンの相関関係を明らかにしたのが、職業環境と発ガンに関する世界初の報告といわれている。
 日本で最初の職業病は奈良の大仏職人の水銀中毒。奈良の大仏は、水銀と金のアマルガムを大仏に塗り、内部を熱して水銀を蒸発させて金メッキとする工法で18年かかって完成したが、大仏職人は多量の無機水銀を吸入することとなり、肺炎、むくみ、運動失調などをきたし”大仏さまのたたり”とされた。その結果、都が奈良から京都へ移されたそうな。
 産業革命以降、われわれの生活は効率、便利さを追求して大きく変化した。その代償として自然環境を汚染し続けてきた”ばち”があたることは今後も覚悟しなければならないだろう。
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11/11 No.252
山の霊力

 何故山に登るのかの問いに、エベレストを目指したマロリーの「そこに山があるから」の答えのごとく、西洋では山は征服するものという考えで登山が始められた。
 一方、山を崇め山に育てられてきた日本では、山に登ることは一種の宗教体験として行われてきた。日本人の神は山にあり、山を精神的鍛錬の場とする修験道は日本的宗教であった。
 エスキモーは霧がかかり視界が得られない海上でも、海の流れ海鳥の鳴き声、風の方向、匂いなど五感をフルに働かし、複雑に入り組んだ海岸にも関わらず遭難することはないという。
 一方、自然が失われすべて人工で覆われた都市生活の中ではわれわれの五感は完全に麻痺してしまい、行動は無論考え方さえ不自然になってしまう。
 人里離れたブナ林の原生林などに一人で行くと、麻痺していた五感が呼び起こされてくる。霊的なものに触れ、自然な人間を取り戻すには奥深い山に入るに限る。

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11/18 No.253
ALWAYS

  昭和33年、東京タワー建築中の東京の下町を舞台にした住民達の笑いと涙の人間模様を映画化した「ALWAYS三丁目の夕日」。

 主人公の家庭の子供と私がちょうど同じ年代の物語。住み込み集団就職、駄菓子屋、フラフープ、氷の冷蔵庫、三輪自動車など懐かしいものが満載。地域で最初に購入されたテレビの前に近所の人が集まり力道山の空手チョップを見るシーンは、私の場合は美智子妃殿下の結婚パレードであったことが思い出された。

 少し貧しくて不便な生活ではあるが、地域社会での助け合いの中で、心触れ合う温かい人間関係が描かれている。

 あれから50年、豊かさと便利さを追求した結果、ケータイが子供にまで普及したが、日本人はケータイを持ったサルと化し、家族を含め地域社会での豊かな人間関係、コミュ二ティは消失してしまい、安心して老後を迎えることさえ難しくなってしまった。

 私達は明るい文明社会に向っているのであろうかと、考えさせられる団塊世代にお勧めの映画であった。

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11/25 No.254
救命の連鎖

 本日の救急蘇生委員会の講演会は「心肺停止から社会復帰した3例の軌跡」で、救命の連鎖にて助かった生の症例の提示であり感激した講演でありました。

 愛知万博では、当初救急患者は救急車の搬送のみの予定であったが、愛知医科大学救命救急センターの医師が万博協会に乗り込み、愛知万博を救命救急のパビリオンとすべく、100台のAEDの設置、万博スタッフ3千人の救命救急講習、電気自動車に乗った救命士の
会場巡回、ドクターヘリが2分で飛んでくる体制が敷かれた。その結果、心肺停止の患者3人が助かり社会復帰し、その中でも居会わせた医学部学生が適切な心肺蘇生を行った美談も残された。

 わが国では無計画にAED設置が急速に行われているが、設置場所、費用対効果、事後検証による蘇生率の向上なども含めて、市民による除細動(PAD)に対しても、メデイカル・コントロールの検証体制が必要な時期にきたのではと思う。
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12/2 No.255
サナダムシのヒロミちゃん

 「笑う回虫」、「清潔はビョーキだ」などで有名な藤田紘一郎先生の講演会が府中地区医師会で行われ聴講してきた。

 インドネシア・カリマンタン島で、ウンチが流れる川で遊ぶ子供達の元気な目の輝き肌の美しさの話。わが国では10歳以下の子供の40%がアトピー、5人に一人が花粉症などアレルギー疾患が急増。その原因は回虫をはじめとする寄生虫を一方的に駆逐したためとの研究結果が認められた経緯の話。

 回虫ゼロ作戦から日本は世界一清潔な国になったが、共生菌を排除した結果、乾皮症、新興感染症、病原性大腸菌、膣炎、ノロウイルス感染症などが出現する話。

さらに超清潔志向が人間の精神的な面まで影響を及ぼし、sexできない、子供が育てられない、老人と付き合えないなど、日本人の”感性の減弱”まで引き起こしている話。さらに体内に飼っているサナダムシのヒロミちゃんの話から自然治癒力を抑える西洋医学の警鐘の話まで、ユーモアに溢れたすばらしい講演であった。

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12/9 No.256
クズ

 自由・平等・博愛を理念とするフランスで、移民の若者による暴動に対して、サルコジ内相が「社会のクズ」と呼び、問題を大きくしたことが報道された。クズは英語でジャンクというが、
フランス語では何といったのであろうか。

 ジャンクDNAは機能している遺伝子に付随するクズで、寄生者であることから利己的DNAとも呼ばれ、何の機能も有していないと思われていた。がしかし、遺伝子の中で最も変異し易い部分で突然変異を起こし、人間の進化、個性の決定など重要な役割を秘めていることが明らかにされた。

 地球上の生物は弱肉強食、寄生虫などすべてバランスをとり、共生して成り立っている。人間社会も異物、他者などをすべて排除しようとすると、集団が均一化して免疫力の低下、弱体化、異常化してしまう。

 「社会のクズ、人間のクズ」と呼ばれる存在もわれわれの社会には必要なのであろう。
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12/16 No.257
生命の星

 救急車は18世紀ナポレオンのエジプト遠征時に負傷した将兵をラクダの両側に吊り下げた箱に乗せて野戦病院に運んだのが始まりとされている。パリに帰ってからはラクダの代わりに馬車が軍隊専用として負傷者を運ぶようになったという。

 一般人に対しては、1882年オーストリアのウイーンでの劇場大火災を契機に、馬車による救急救助活動が行われるようになったのが世界最初の公的救急医療活動と言われている。

 わが国では1993年(昭和8年)麻野セメントから寄贈されたキャデラックを改装した車が横浜市に配備されたのが最初の救急車。尾道市では1960年(昭和35年)消防車を代用した
救急車で救急搬送が開始され、その年に7人が搬送されている。

 六角形の星の中に蛇が巻きついたアスクレピオスの杖を描いた救急車の世界共通のシンボルマークは”生命の星”と呼ばれるが、今年の救急出動が500万件を越す患者搬送の激増、ドクターカーの必要など、救急車のあり方に検討が必要になってきたようだ。

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12/23 No.258
特別年少兵

 新たに広範なエビデンスを評価した2005年度版救急蘇生ガイドラインがCirculation11月号速報版に発表された。

それによると、「突然心停止後の生存の最も重要な決定因子は、心構えがあり意欲的で訓練を積んだ救助者の存在である。二次救命処置による改善は、一般の救助者によるCPRの成功及びAEDの成功による生存率上昇に及ばない。」ことが明らかにされ、「突然心停止患者の社会復帰向上には、人命救助を行うことができる簡単で質の高いCPRを一般の救助者及び医療従事者に教えること。」が提言されている。

 先週、尾道市内の全中学校生徒代表33名に対して、AEDを含めた救急蘇生実技講習を行った。
 経済のグローバリズムにより”人”が壊されつつある中で、CPRの普及には、戦艦大和に乗船した特別年少兵と同じ年代の明日の日本を背負う若い生徒に対し、生命や友情の大切さ、助け合いの重要性を含めた教育が必要であろう。

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12/30 N0.259
国家の品格

 今年は小泉劇場、JR事故、姉歯偽装などの重大ニュースに加え、品格が疑われるマネーゲームが目立った年であった。

 ライブドアほりえもんによる劇場型マネーゲーム、村上ファンドの理念なき株利益追求、楽天ITによるTBS放送乗っ取り。極め付きは、みずほ証券誤発注で火事場泥棒のごとく、数分間で何億もの利益をあげた証券会社、などなど。

 市場経済至上主義のグローバリズムは、人を壊し社会を崩壊し、文化、国民性まで変えてしまう。卑怯でも下品でも、美しくない行為でも法律違反、規則違反でなければ、知恵を働かせた合理的な勝ち組とみなされるのであろうか。

 人工心臓開発で世界に名を知られる能勢之彦教授はアメリカで武士道にもとづいて行動し、武士道を通じて日本人としての誇りと自信が持てたという。

 藤原正彦先生には堀江、村上、三木谷氏らヒルズ族に武士道を叩き込んでほしものだ。