SHODAの部屋

『テニスと人生の大先輩、920先生のエッセイ』
                         920先生の許可を得て掲載しています。


〜920の独り言〜No.7
No.550〜700




2014/9/19 No.700
 ぼっち


 「ぼっち」は友達がいなくて孤独な状態、と同時に集団と一定の距離を置くという意味にも使われている。

 京大を始めとして、全国の大学の学生食堂で、周りを壁で仕切る一人用「ぼっち席」を設ける動きが広がっているそうだ。一人で気兼ねせずにスマホを見ながら食べれるので人気があるという。

 今の若者は対人関係が苦手で、おひとり様を好むが、周囲から孤独に見られることを嫌う。学食で一人で食べる「ぼっち飯」は新入生が最も恐れることらしい。「一人ぼっち」と見られることを嫌い、友達が居なくて孤独であることは情けない事と思い、インターネットでの繋がりを求めるという。

 ヒトは一人で生まれ一人で死んでゆく孤独なもの。孤独な人間は協調性に欠けるが、想像力豊かで、自分の考えで行動出来るようになる。人の目、他人の評価を気にせずに自分の考えで行動できるのは「孤独の力」。混沌とした時代を生きる最も必要なもの、それは「孤独の力」だそうだ。

 私が学生の頃は、対話や交流や協調が学生生活の基本との教えで、昼食は雀荘で、夕食は先輩のおごりで、部活の皆と食べたことを思い出す。                  920

 五木寛之:孤独の力。東京書籍
 齋藤茂太:孤独力。青崩堂
 齋藤考:孤独のチカラ。新潮文庫


2014/9/12 No.699  
  盛者必衰
 
 
少子高齢化で凋落時期に入り明るいニュースが少ない我が国は、全米オープンテニスでの活躍により”錦織圭”一色となった。天皇皇后陛下の軽井沢テニスロマン以来のテニスブームが到来するのでは。

 早朝、深夜に錦織圭選手の全試合をライブで見たので体調が狂ってしまった。ジョコビッチ、ナダル、フェデラー、マレーのビッグフォーのいないグランドスラム決勝戦は10年来だそうだ。決勝戦がフェデラーであったら優勝出来ていたのに。

 新しい時代の幕開けであろうか。米国はマッケンロー、アガシ、サンプラスなど一世を風靡した選手以降は凋落著しく、現在ベスト10以内に米国選手はいない。

 今回興味深かったのは、準決勝での世界ナンバーワンのジョコビッチとの対戦。両者ともユニクロテニスウエア―を着ての対戦であった。ソニーの副社長盛田氏の個人ファンドで錦織圭を米国に送り出した世界のブランド、ソニーは最近凋落傾向にあるという。一方、小さな安売りカジュアルメーカーが世界ブランドのスポーツウエア―ユニクロとして登場してくるとは。

 今度の日曜のテニスは、錦織圭バージョンのテニスウエアを着てしよう。                        920


2014/9/6 No.698
  ブルーインパルス


 瀬戸内水軍祭り in 尾道に航空自衛隊アクロバット飛行チームブルーインパルスが飛来した。

 会場の因島には駐車場が少なく、道路が大渋滞すると言うので、しばらく使っていなかったサイクリング自転車を出して空気を入れ、久しぶりにしまなみ海道を走り、因島大橋そばの特等席の場所でブルーインパルスの編隊飛行を見学した。アクロバット飛行を展示飛行と言うそうだが、6機の機体からスモークを出しながら6輪の輪を描いたりハート型を描いたり、爆音とスピードで圧倒的な迫力の編隊飛行など11種類の展示飛行を見ることが出来た。

 ブルーインパルスの基地は松島にあり、東北大地震では、津波により壊滅的な被害を受けたが、ブルーインパルスの機体や隊員は福岡の芦屋基地での展示飛行の為難を免れたそうだ。1960年発足したブルーインパルスは、事故や墜落など幾度かの存亡の危機を乗り越えて「夢と感動」を描く展示飛行を続けているという。

 50年前、東京オリンピック開会式で、国立競技場の日本晴れの上空にブルーインパルスが5輪の輪を描くのを白黒テレビで見て感動したのは夢と希望に燃えていた中学生の時であった。

 あれから50年・・・・・。                920


2014/8/29 No.697
  個人情報


 先日の広島市土石流災害では70人を超える犠牲者となった。災害初期には行方不明者が数人と報道されていたが、しばらくすると50人を超える行方不明者に増えて驚いた。高度情報化社会での個人情報保護が行方不明者の存在を分からなくしたそうだ。

 ベネッセホールディング事件では、子どもの顧客情報が盗まれて名簿業者に売買される事件があった。何故子供の情報が宝となり、名簿業者というビジネスが成り立つのか。子供の情報が漏れて子供はどの様な被害を被るのであろうか。その昔、私が子供の頃は近所の子供の名前は無論、学年や兄弟の名前などみんな知っていた。私の悪がきも知られていて、悪い事をすると近所のオヤジに怒られ、直ぐ親に知れたものだ。

 スウェ―デンやノルウェ―では、個人の職業、住所、家族構成、子供の名前、電話番号などすべてオープンになっているという。

 高度情報化時代で、多くの人がスマホを持ち、世界中のさまざまな情報を瞬時に簡単に得ることが出来る。高校1年同級生女性徒殺人事件では保護されているはずの加害者や家族の個人情報がスマホで詳しく知ることが出来たそうだ。

 私はスマホを持たないが、個人情報って何?     920


2014/8/22 No.696
  フレイル


 超高齢化社会となり、痩せてきた、力が入らない、食欲がない、脚が弱った、疲れやすいなど不定愁訴を訴える患者は多い。明らかに年齢によるものであっても、「歳のせい」というのは医師として禁句らしい。それではどう対応したら良いであろうか。

 老年学会が「フレイル」という年寄りには分からない用語を作り出してくれた。虚弱を意味するfreiltyからきている。

 “サルコぺニア”、”ロコモ”に次いで”フレイル”。歳をとり筋力低下や心身の活力が衰えた状態は歳のせいによる老化現象で仕方がないとされてきた。これからは、あなたは「フレイル」なので、家に閉じこまらないで外に出て、規則正しい栄養ある食事を美味しく食べ、適度な運動をし、呆けないで、たくさんの薬を飲むのを止めて、寝たきりにならない様にしましょうと指導する。

 我が国はこれから団塊世代の私達が歳をとり、「メタボ」から「肥満サルコぺニア」となり、「ロコモ」と「認知症」が加わり、「フレイル」から要介護高齢者となる。世界に先駆けた我が国の超高齢化社会の老人対策を話し合うため、この秋、「サルコぺニア・フレイル研究会」が発足する。

 私は今日から肉を食べ、筋トレをしようと思う。     920


2014/8/8 No.695
  Choosing Wisely

 
 アメリカで各医学会が提唱して、無駄な医療を医療者も患者側も控えようとする試みChoosing Wisely(賢い選択)が医師を中心に爆発的な広がりをみせているという。

 4歳以下の子供の風邪に投薬してはならない。風邪に抗生剤を投与しない。爪水虫と診断されて服用している薬はほとんど無駄。急性蕁麻疹の原因を調べる検査はほとんど無駄。危険なサインのない腰痛の画像診断しても無駄。リウマチの関節炎にMRI検査は無駄。65歳以上の糖尿病患者のHbA1c;7.5未満達成の為の薬物投与は行うべきでない。高齢者のコレステロールを薬で下げてはいけない。認知症高齢者の胃ろうは避けた方がいい。認知症の行動異常にまず薬で対処してはいけない。頭を打ったからといって脳CT検査は無意味。高齢者のPSA検査はほとんど無意味。PET癌健診は控えよ。大腸内視鏡は10年に一度で十分。余命10年未満の人への癌健診は控えよ。無用な胸部X線はするべからず。入院中の無駄な繰り返し血液検査はしない。2種類の抗精神薬の投与はしない。高齢者に6種類以上の投薬は避けた方が良い。などなど。

 高齢化社会突入の我が国で、団塊世代は無駄のない賢い医療選択をせざるをえないと思う。           920                              
 室井一辰:無駄な医療。日経BP社


2014/8/1 No.694  
 モテ筋


 モテ筋とはもてる筋肉のことらしい。女性は筋肉が乏しいので、男性の筋肉に本能的に性的魅力を感じるそうだ。

 一般的に一番もてる体型は逆三角形の身体。広い肩幅と広い背中。女性に人気の筋肉は、大胸筋、広背筋、僧帽筋、三角筋だそうだ。男性は割れた腹筋に憧れるが、女性からはさほど人気がなく、外腹斜筋によるくびれがエロ筋とも言われ好まれるという。

 先日のウインブルドンテニスやワールドカップサッカーで、選手が裸になったときの逆三角形の厚い胸板に、女性ファンが歓声をあげていたのを思い出す。

 一方、男性を魅了する女性のモテ筋は、美しい姿勢をかたち作るインナーマッスル。特に究極のインナーマッスルである骨盤底筋であろう。男性を魅了する骨盤底筋は年齢と共に筋力が衰え委縮し薄くなってしまう。男性にもてる為にも、将来の尿失禁を予防する為にも、肛門締め腹式呼吸を看護学校の学生にも勧めている。

 先日、風呂場の鏡で自分の身体を見て驚いた。何というモテ筋の委縮姿であろうか。サルコぺニアにならない様努力しなければ。
                              920



2014/7/18 No.693
 ゲンゴロウ


 ゲンゴロウは、私が子供の頃には近場の水田で捕まえて遊ぶなど、身近な昆虫であった。ところが最近では、都会の水田で見ることはまれになり、絶滅危惧種に指定されているそうだ。

 尾道の御調町では、農業と自然の共生を取り戻し、里山や農業の豊かな自然を守る運動が行われている。農薬を減らし、”ひよせ”と呼ばれる溝、水の流れなどにより、生き物に配慮した「生き物保全田んぼ」には、ゲンゴロウ、カエル、赤とんぼ、ホタルなど多くの生き物が共生している。ゲンゴロウが住む生物の多様性を育む田んぼで米を作り「美味しくお米を食べて自然を守れる源五郎米」として売り出されている。

 先日、生き物保全田んぼに生息するホタルの観察会が開催されたので参加させてもらった。日本のホタル研究の第一人者である大場信義さんによるホタルの話を聞いた後、御調町大原地区の田んぼのあぜ道を暗闇の中散策して、源氏ホタルや平家ホタルの幻想的な光を観賞し、日本にしかない夏の風情を味わせてもらった。

 夏は夜。ホタルのおほく飛びちがひたる。ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも いとをかし。            920
   ホタル:920の独り言(281)


2014/7/11 No.692  
 日本の人口


 アベノミクスの新経済成長戦略の骨太方針で、50年後の人口を1億人に維持するという何とも馬鹿げた目標が盛り込まれた。

 地震、津波など自然災害の多い小さな島国に、1億人を超える人口は多すぎる。多すぎる人口故の問題が噴出しているのに。

 経済成長の為には人口の減少は致命的なので、多すぎる人口を維持する為に経済成長を求めるというGNPやGDP至上主義で、GNHの考えが全く欠けている。その結果、日本の若者は将来が不安になり、明るい未来の希望が見えてこない事が少子化に繋がっているというのに。

 人口が減少すると国力が低下するというが、我が国と同じ位の国土のフィンランドは、子どもの教育力も国際経済競争力も世界第1位で、その人口はわずか520万人。国際的にも存在感が大きい平和国家スイスは人口800万人。

 私達団塊世代により急激に人口が増え、経済成長を達成した後で、少子高齢化、人口減少を向える我が国は、成長という価値観を見直して、円熟した国を目指す戦略を取るべきと思う。

 我が国の人口は、その時代時代に、”見えざる神の手”により調整されるものであろう。           920


2014/7/4 No.691
 スポーツ観戦


 サッカーワールドカップで日本は予選敗退し、ウインブルドンでは錦織圭が敗退し興味半減したが、これからの優勝戦は見逃せない。

 カープが善戦しているのでプロ野球も気になり、松山秀樹や石川僚が出るゴルフも気になるし、テニスもサッカーもで忙しい。

 ワールドカップはメッシ、ネイマール、ロドりゲスなどスーパースターの迫力、息つく暇のない攻守、国対国の戦いが面白い、が、朝が早いのが難点。一方、ウインブルドンテニスは、夜が遅くなるのが辛い。プロ野球は終盤近くの最も面白いところで放送が終了するのが腹立たしい。

 野球、サッカー、テニス、ゴルフなどプレーするのも観戦するのもそれぞれ面白味が異なっている。野球は攻守がはっきり変わり、時間制限がない。一方、サッカーは決まった時間内で、激しく攻守が変わる戦いで、それぞれ見方が違ってくる。

 スポーツ観戦での見どころは試合の流れであろう。ピンチの後のチャンス、チャンスの後のピンチなど、特にテニスでは長い試合の中で、ここ一番のところでの頑張りかミスかで流れが大きく変わり、勝負が決まるところが、”人の人生”と同じ様で面白い。 920



2014/6/27 No.690
  メッシと滅私


 サッカー・ワールドカップで我が国は、欧州で活躍している選手を主体に、技術や戦略は世界に遜色ないレベルに達しているので期待していたが、残念ながら1勝もできず予選で敗退してしまった。

 負けた原因は色々言われているが、強豪チーム選手の身長、胸幅、攻守交代の速さなど身体能力の違いが一番の原因と思っていた。が、日本がワールドカップで勝てなかったのは、身体能力の違いではなくて、”文化の違い”がその原因という面白い指摘がある。

 サッカーはパス回しなど野球よりもチームワークが重要と思っていたが、実はそうではなくて、サッカーは”個”のスポーツだそうだ。

 個を強く強調するキリスト教社会の文化を持つ国で育った選手は、自分の個人能力を自分の責任で発揮し個人技で勝利するという。

 一方、聖徳太子の第17条の憲法「和を以って貴しとなす」という文化の我が国は、「個」より「組織」を尊重する部活で育ち、先輩後輩、チームワーク、以心伝心、チームの為に尽くす、チーム一丸となってとか、個を抑え組織で戦う滅私の我が国のチームはメッシに勝てないという。 なるほど。              920
 吉崎エイジーニョ:メッシと滅私:「個」か「組織」か?集英社新書


2014/6/20 No.689
  帰宅恐怖症候群


 グローバル化による企業競争の激化で残業、パワーハラスメントなどのストレスで自殺、うつ病など心の異常をきたす人が激増。従業員のメンタルヘルスケアが企業に求められている。

 仕事に対する熱意、没頭、活力などのワークエンゲイジメントによる予防から産業医による面談など、職場のメンタルヘルス対策が行われいるが、心の健康障害は職場のストレスではなかった。

 米国ペンシルバニア大学の研究チームが興味深い研究成果を発表した。ある地域の被験者達の頬内側をこすりコーチゾールを一日6回測定し、ストレスを感じていたかなどと伴に調査した。その結果は、被験者のコーチゾル測定値は職場に居る時の方が家庭に居る時より恒常的に低いことが分かった。被験者の職業の違い、既婚か独身か、男か女か、子どもが居るかどうか、仕事が好きか嫌いかなどに関係なかった。すべてのケースにおいて家庭の方が職場よりストレスが大きいという結果であった。

 帰宅恐怖症候群、主人在宅ストレス症候群、仕事に疲れて家でのゴロゴロは休養にならないことなどが納得できる。近頃私は病院に行く時も帰宅する時も”ため息”がでてしまう。
                               920
 ワークエンゲイジメント:920の独り言(625)



2014/6/6 No.688  
  健康の正常値


 健康とは身体的、精神的、社会的、霊的に良い状態の事を言う。身体的健康に関して、人間ドック学会が発表した健康診断の血圧脂質などの正常値が従来の正常値より相当高い値を健康な人の正常値としたことで論議を呼んでいる。

 日本医師会、医学会などは、従来の学会が発表した正常値と異なると国民が混乱するのでと猛反発。高久医学会会長は血圧147で健康とは世界の常識とかけ離れていて非常識と述べたそうだ。

 一方、ワイドショーや週刊誌のマスメディアは、今までの厳格な基準値の設定には、産学協同による製薬企業の販売戦略が見え隠れしている事を指摘。1兆円を売り上げたディオバンに代表される製薬企業が関与したデータ操作、副作用の隠ぺい、研究費など医療界と製薬業界の癒着問題などを面白く暴いている。高脂血症に関しても、正常値を少し上げただけで、メバロチン販売が倍増したことが知られている。

 製薬会社後援の講演会で、脂質の権威と言われる教授が、自分は薬を服用してコレステロールを下げているので動脈硬化が予防でき健康で長生きする様な事を話されてた。事故で寝たきりになられなければ良いが。          920



2014/5/30 No.687
  山の日

 
  山に親しみ山の恩恵に感謝する「山の日」を、8月11日に日本国民祝日の日とすることが決まったようだ。

  我が国は古来より山に神が宿り、山そのものも神として畏怖され、神仏と交わることが出来る接点として、霊山への自然信仰がある。

  特に紀伊半島にある紀伊山脈は、役の行者を祖とする修験道の一大拠点である「吉野山」。空海により開山された真言密教の根本道場である「高野山」。全国に広がる、循環、再生、黄泉がえる熊野信仰の中心「熊野三山」があり、「紀伊半島の霊場と参拝道」は、世界文化遺産に登録されている。

  世界文化遺産登録10周年を記念して、「山の神仏:吉野、高野、熊野」が大阪美術博物館で開催されている。日本固有の宗教である神道と大陸から伝わった仏教が融合した日本独特の修験道や神仏習合の神や仏の姿をあらわした仏像や曼荼羅など、日本の魂の源泉が展示してあり、多くの見学者でにぎわっていた。

  私は高野山、吉野山、熊野三山の神々が宿る霊場にはそれぞれ参拝したことがあるが、改めて、熊野古道を極楽往生を祈願しながら歩いてみようと思った。               920




2014/5/23  
  イネムリ


 日本人は睡眠時間が短くて疲れ気味という。睡眠障害による医療費、労働生産性低下、事故などで年間約5兆円の経済損失があり、厚生労働省が健康づくりのための睡眠指針2014を発表した。

 若年世代は夜更かしを避け体内時計のリズムを保つ。勤労世代は疲労回復能率アップに短い昼寝をする。熟年世代は睡眠時間は短くて良いので朝晩メリハリのある睡眠をする、などを推奨。

 世界には夜だけ眠る単相睡眠文化、スペインのシエスタなど昼寝が制度化されたニ相睡眠文化、個人が気ままにうたた寝する仮眠文化があるという。外国人が日本に来て驚くのは、会議中、授業中、電車の中で居眠りをする人が多い事。「イネムリ」は起きている他人の前で平然と眠るが、直ぐに目覚めて反応するのが特徴で、「イネムリ」は国際語となっているそうだ。看護学校の授業中に生徒が眠るのは、授業が面白くないからではなくて、短い睡眠時間の疲れをイネムリで癒し能率アップを図ろうとしている?ので起こさないでいる。

 前期高齢者となった私は、早寝早起き早朝坐禅と、睡眠時間は十分に取れているにも関らず、昼食後椅子に座ったままイネムリをしてしまうのは、過労・加齢のためであろう。         

 920



2014/5/16 No.585 
 鞍馬天狗

 第23回尾道薪能が浄土寺の重要文化財である阿弥陀堂で開催された。今年の題目は「鞍馬天狗」であった。

 ”能”鞍馬天狗は、平清盛に負けた源頼朝の子供である牛若丸が平家に引き取られて鞍馬山に預けられ、鞍馬の大天狗から武術を教えられ源氏の再興を期するという物語り。

 私達団塊世代にとって鞍馬天狗とは、大仏次郎による時代小説で、幕末の京を舞台に鞍馬天狗と名乗る謎の勤王志士が黒ずきんで白馬にまたがり、新選組と争う物語りで、漫画や映画で見たことを思い出す。

 天狗は山岳宗教とかかわりがあり、修験者が守護神として祀っていた。大山、比叡山、愛宕山などの霊山にはそれぞれ天狗伝承がある。山伏の服装で神通力があり、空を飛ぶことができる。天狗を妖怪な魔物とみなす風習もあり、その姿やイメージには様々なものがある。天狗は慢心の権化ともいわれ、鼻が高いのはその象徴で、得意になって自慢していると「天狗になる」。

 以前、貴船神社から鞍馬山に登ったことがある。鞍馬山の麓に巨大な赤鼻の天狗の像があったと思うが、能:鞍馬天狗の鼻は高くない天狗のお面であることを教えてもらった。    920

 京都古事の森:920の独り言(609)



2014/5/9 No.684  
 剣山


 剣山は標高1955m。四国にあり西日本第2位の高峰で、日本百名山に数えられている。北アルプスの”剣岳”は、名前のの如く頂上は鋭く尖った岩山であるが、剣山の頂上は平家の落ち武者が馬の調教をしたという言い伝えから「平家の馬場」と呼ばれていて、ミヤマクマザサに覆われた平坦な頂上となっている。

 昭和46年にリフトが設置されて登り易くなり、観光の山に変貌して、多くの登山者が訪れるようになり、頂上のミヤマクマザサ保護の為に、山頂の登山道は木道となっていた。

 日本人は、森羅万象全てに命が宿る山の霊力を崇め、山岳修行から日本独特の修験道という宗教を発展させてきた。四国では石鎚山と剣山が修験道の霊山として知られている。剣山山頂には宝蔵岩神社、日本百名水を守る大剣神社などがある。行場という難所もあるが、残雪で遮られていた。

 山の霊力、パワースポット、自然を求めてであろうか、山ガールファッションに身を包んだ若い女性登山者が多いのに圧倒される。その昔、多くの霊山は”女人禁制”であったというのに。

 下山後、剣木綿麻温泉で疲れを癒した。          920




2014/5/2 No.683
 区域麻酔専門医

 総合診療専門を含めた19の基幹領域の専門医の上にサブスぺシャリティ領域の専門医を設けるという新しい専門医制度が多くの問題点を抱えながら2017年度から開始予定となっている。

 新たな専門医制度が論議されている中、麻酔科学会でサブスぺシャリティとしての区域麻酔専門医を創設するという。

 術後疼痛管理、日帰り手術、予備能力低下高齢患者や重症患者、合併症例などのQuality of Recoveryを高めるためにエコーを利用した安全で確実な末梢神経ブロックや硬膜外ブロックなどの区域麻酔法の臨床、教育、研究を目的として、新たに区域麻酔学会が創設され、第1回日本区域麻酔学会が岡山で開催された。オープニングセレモニーでは、すでに歴史を持っているアメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカの各区域麻酔学会の会長がそれぞれの地域での現状と問題点などを話された。

 人類が経験したことがない超高齢化社会を迎える我が国で、医学の進歩により益々細分化、高度化された専門医による高齢者への医療はどこまで進化するのであろうか。         920


2014/4/26 No.682  
  論文ねつ造

 
小保方晴子さんのSTAP細胞ネイチャ―論文は悪意のない改ざんかそれともねつ造であろうか?何と、ねつ造と判決した理研の石井調査委員長までが自分の論文疑惑を指摘され辞任とは。

 論文ねつ造はベル研究所の超電導に関するシェーン論文ねつ造事件が有名であるが、韓国のES細胞論文ねつ造のファン教授事件、東邦大学麻酔科による172本の論文ねつ造。東大のRNA論文ねつ造により懲戒免職された多比良教授、分子生物細胞の加藤教授グループ事件など、枚挙にいとまがない。

 論文ねつ造は、自尊心、名誉、地位などに加えて”お金”が関与すると、悪意のあるなしに関らず、データ改ざんは当たり前になる。1兆2千億円を売りあげ、多くの循環器重鎮大学教授が関与したノバルティス製薬のディオバン臨床データ改ざん。年間千五百億円を売り上げる武田製薬のブロプレス宣伝データ改ざん。千億円以上をかけて備蓄し、毎年消費期限切れを廃棄しているタミフルは、ロッシュ製薬の研究費を受けて有効とした論文に対して、未公開データの解析で、インフルエンザに対する解熱効果、重症化予防効果ともほとんどないとする論文が発表され論議を呼んでいる。
 
 私達はいつも騙されているのであろうか。      920
  ねつ造論文:920の独り言(588)



2014/4/18 No.681
  ケアする動物

 
人間とは何か?と聞かれると、「ケアする動物」だそうだ。
ニホンザルは母系社会で、メスは一生血縁仲間と一緒に居るので、老後も孤独にならない。が、オスは交尾を求めて思春期に群れを離れるので、孤独な老後が運命づけられているという。ゴリラは一夫多妻でオスが育児やけんか仲裁をするので、老齢になっても群れから追い出されない。ニホンザルの老齢メスが娘達に一目置かれていても、年老いたゴリラが若者から尊敬されていても、介護されることはない。高崎山のボスザル:ベンツのごとく、自分でエサが取れなくなった時は、自ら死出の旅に出る。

 私達は、出産、育児、介護、看取りなど自分達で行っていた。ところが、出産、医療、看取りなどは医師、教育は先生、もめごとは警察、葬儀は斎場など専門プロに任せてしまうようになり、私達は知らぬ間に「命の世話」をする力を失ってしまった。ケアすることが出来なくなった私達が出来ることは、「クレーマー」になることだけであろう。

 介護すること、されることが出来ないのなら、人間も類人猿の様に、自分から死出の旅に出ることが出来る様になれば良いが。
                                  920
 達老時代へ:横山俊夫編、ウエッジ選書。



2014/4/11 No.680
第ニの敗戦 団塊こそ戦犯だ

 
我が国の高度経済成長を牽引した団塊世代に対する文藝春秋の「第二の敗戦 団塊こそ戦犯だ」と題する特集が面白い。

 バブル崩壊、リーマンショック、東北大震災など相次ぐ我が国の危機に、団塊世代はリーダーシップを発揮出来なかったという。

 政治では、哲学と覚悟がなかった団塊世代首相の鳩山、管。経営では、カリスマ上司に仕えて、景気低迷時に会社を任されたが、護送船団方式で変化に対する決断力に欠けた東芝、ソニー、日立の団塊世代社長。家庭では集団就職、学生運動、アメリカ信仰、マイホーム主義により、草食系、パラサイトの団塊ジュニアを生んだ団塊世代親。

 社会保障を支えてきた団塊世代が前期高齢者になり、支えられる立場になった。団塊世代は元気で健康志向が強く金銭的余裕もあり、健康には金を惜しまず、医療費が高騰するに違いない。団塊世代が後期高齢者となる2025年から、世界に類を見ない超高齢社会を迎える我が国で、私達団塊世代はどうしたら良いのであろう。

 団塊世代は戦犯だ、日本の不良債権などと指摘されているので、上手に勝ち逃げするしかない。             920

 第二の敗戦 団塊こそ戦犯だ:文藝春秋 四月号、2014。
 団塊世代の功罪:週刊ポスト、第2274号、2014。
 団塊世代:920の独り言(39)


2014/4/4 No.679
  胡散臭い

 
人間は「うさん臭いもの」に惑わされ易い生き物だそうだ。
新教宗教の教祖は、たいてい見た目にも怪しく、浅原彰晃の様ないかにもうさん臭さい教祖ほど、多くの信者を集めてしまう。有名医師による健康本、健康食品なども、うさん臭いものほど何故かベストセラーになってしまう。

 インターネットなどで情報が氾濫しているので、人々は興味深い情報を求めるようになる。マスメディアはうさん臭い出来事ほど、ワイドショー的に面白おかしく、時には正義の味方の如く、刺激的で感動的にして報道する。

 佐村河内氏のゴーストライター事件。音楽の良し悪しは関係なく、広島出身の聴覚障害ということに焦点が当てられ、音楽そのものよりも、うさん臭い物語りばかりを感動的に報道した。その結果、多くの人が興味を持ち、大きなニュースに仕立て上げられた。

 小保方晴子さんに関しても、ノーベル賞級の大発見かという驚きもさることながら、ハーバード留学の若干30歳という若い女性の理化学研究所のユニットリーダー、割烹着の可愛いお洒落なリケジョなどと、リケンの組織、小保方さん個人の経歴、キャラクターに焦点が当てられ、すっかり感動した私も惑わされてしまった。  
                                  920
  920の独り言(671):リケジョ


2014/3/28 No.678
  ユマニチュード

 
認知症高齢者の暴言・徘徊など、周辺症状の対応には悩まされる。

高齢者でアリセプトを服用している患者を診た場合には、投与を中止することで周辺症状が軽快することは多い。認知症の研究が進み新薬が次々と開発されているが、薬で解決できるとは思えない。

 フランス生まれの認知症患者とのコミュニケーション改善方法を体系化した”ユマニチュード”が注目されている。「見つめる」「話しかける」「触れる」「立つ」を基本に、病人ではなくて人間として接することで信頼関係が生まれ、周辺症状が劇的に改善するというので、病院で取り入れている。

 人と人が直接触れ合うということを”正法眼蔵”に「眼(まなこ)を開(かい)して、眼に眼授(がんじゅ)し眼受す。面(おもて)をあらわして面に面授(めんじゅ)し面受す」と記されている。

 情報化時代でIT情報は膨大になったが、情報が真実か嘘かの判断が難しい。心の触れ合いがないなど、人間的触れ合いが欠けてくる。スマホや携帯の一日使用時間が、中学生は2時間、高校生男子は4時間、高校生女子は6時間、6時間を超えるものが4割もいるという。
 中高校生にも熟年夫婦にもユマニチュードが必要であろう。
                                     920
 920の独り言(9):面授



2014/3/21 No.677
  スイス・ウイーク

 
日本・スイス国交樹立150周年記念コンサートが「東西鎮魂慰霊のコンサート」と題して広島で開催された。スイスのバーゼルを拠点に活躍しているヴォーカル・アンサンブル、プロフェティ・デッラ・クインタと高野山南山進流声明の僧侶達による声明という異色のコンサートであった。

 150年前、連邦国家としてスタートしたスイスはオランダの軍艦に乗船した代表団を日本に派遣し、1864年日本にとって第8番目の外国との修好通商条約を調印し、以来友好関係が続いている。

 広島とスイスの関係では、スイス人のマルセル・ジュノ―博士がおられる。 赤十字国際委員会代表として来日、原爆被災の惨状を知り、マッカーサー元帥と交渉し、多量の医薬品の提供を引き出し、自らも広島入りして救助活動を行い、日本で初めて使用されたペニシリン、乾燥血漿などで一万人以上といわれる命を救った。原爆投下後、医療活動を行った最初でただ一人の外国人医師として、「ヒロシマの恩人」と呼ばれ、平和記念公園内に記念碑が建立されている。帰国後、英国で麻酔学を学び、ジュネーブ大学病院で麻酔科を開設。1961年麻酔管理中、心筋梗塞で死亡。享年57歳。

 私が35年前お世話になったスイスで最初に麻酔科を開設されたバーゼル大学麻酔科の恩師故W.ヒューギン教授を思い出すコンサートであった。                     920
  920の独り言(228):バーゼル大学


2014/3/14 No.676
 マンジャーレ、カンタ―レ、アモ―レ

 
第4期福山文化大学最初は、経済アナリストの森永卓郎氏が、「今何が起こっているか、世界経済と日本経済」と題して講演された。その中で、イタリアと日本を比較した話が面白かった。

 日本とイタリアは共通点が多い。周囲が海に囲まれ、国土が南北に長く、長い歴史と文化を持つ。中小企業が多い。少子高齢化社会。国が大きな借金を抱えて、首相がコロコロ変わる、などなど。

 一方、異なる点としてイタリア人の明るさと日本人の暗さを指摘。イタリア人の人生観は、お金、学歴、出世など気にせず、仕事の為に人生を犠牲にせず、「マンジャーレ、カンタ―レ、アモ―レ」と、人生を明るくパッピーに過ごすこと。残業せず、長い夏休みに、有給休暇を必ず取るので、日本人と比べ労働時間が大変短い。しかし、効率的な仕事をして、アート感覚を磨きセンスあふれる高付加価値商品で勝負しているので、1人当たりの名目GDPは日本と同じだそうだ。

 人生とは四苦八苦の”苦”を抱えて生きる事。資源のない我が国で勤勉は美徳。少子高齢化で我が国を取り巻く環境はますます悪くなるので、もっとがんばらなければなどと、私達団塊世代には暗い人生観が刷り込まれているので、「食べて、歌って、恋をして」と、人生を明るくハッピーに楽しみたいとは思うが・・・。             920



2014/3/7 No.675
  バザーリア法

 
厚労省は認知症に関する検討会を開催し、認知症患者が精神病院に入院する際の基準を示した。また、抗精神薬の多量服用による救急搬送患者が激増しているので、睡眠薬、抗不安薬、抗鬱薬、抗精神薬の多量投与を保険点数減算という姑息的な手段で規制するという。

 イタリアの医療事情は、人口5600万人で65歳以上の高齢率は18%の高齢社会。看護師より医師の方が多い。医療制度は国民皆保険で、家庭医登録制。1978年に世界初の精神病院の廃止法案(バザーリア法)を発令して、入院医療から地域・外来医療を展開し、20年以上かけて全国すべての精神病院を閉鎖したことで知られる。

 イタリアでは成人後も家族と同居する伝統があり、人と人の繋がりを大切にする。どうせ人間はみんな「おかしな人」だから、少しばかり狂っていようが、物忘れしようが、病気と上手に付き合いながら、社会から疎外、隔離しないで、地域で共に生活すれば良くなるという。イタリア人は学歴など問題にせず、自分自身それぞれの生き方を大切にしているので、首相が買春しようが、国家財政が破綻しようが、あまり気にせず楽しく過ごしている。

 一方、世界一精神病床が多く、抗精神薬が多い我が国は・・・・。
                            920
 大熊一夫:精神病を捨てたイタリア、捨てない日本。岩波書店。


2014/2/28 No.674
  命を守る森づくり

 
今年の第5回京都地球環境殿堂入りは、宮脇昭氏であった。
宮脇昭氏は我が国の鎮守の森を参考に、在来種樹木を密集して植え込み、森を再生する方法を提唱。日本のみならず、マレーシア、ケニア、中国、アマゾン熱帯雨林再生など、その土地に合った森の再生活動に取り組んでいる。

 数年前には、横浜ゴム尾道工場でも宮脇氏を招き、工場の周りに植樹を行った事を思い出す。最近では、東北大地震後の津波対策として、震災ガレキを活用し、そこに在来種を植えて命を守る森の防波堤を作る「森の長城プロジェクト」を提唱し注目されている。

 表彰式には、第1回殿堂入りのノーベル平和賞受賞、故ワンガりマータイさんの娘、ワンジラ・マータイ氏が参加され、母親が始めたグリーンベルト運動を引き継ぎ、アフリカでも宮脇氏の指導のもと植樹を行っていることを熱く語られた。

 地球規模の森林破壊、温暖化に対し、木を植えることは「いのち」を植えること、「明日」を植えること、そして「心」を植えることなどと、遺伝子を守る本当の森を作り続けようと情熱的に訴える話を聞いていると、我が国の消費税とかTPPとかアベノミクスなど、取るに足らないことに思え、心地良い時を味わうことができた。   920

 鎮守の森:920の独り言(381)


2014/2/21 No.673
 コーピング


 金メダル確実と言われていた女子ジャンプ若干15歳の高梨理沙選手がメダルを取れず、涙ながらに「支えてくれた人たちに感謝を伝える為ここに来た。申し訳ない気持ちでいっぱい。これから精神面も磨いてレベルアップしたい」と。男子フィギュア―で金メダルに輝いた羽生結弦選手でさえ、4回転で転倒してしまった。女子フィギュア―選手としての集大成と期待されていた浅田真央選手もメダルに手が届かなかった。

 期待されればされる程メダルの重圧が強くくなるオリンピック選手が、ここ一番で失敗せずに最高の力を発揮するには心身をどの様に鍛えたら良いのであろうか。

 コーピングは学校や企業のメンタルヘルス対策として、ストレスをどのように受け止めて、どう行動するかという認知行動対処方法。オリンピック選手が失敗せずに実力を発揮するには、自分は完ぺきではなくて、競技が始まる直前まで自分の欠点を見つけようとするマイナス思考が良いそうだ?一方ではポジティブ思考が良いとか、あるいは心をニュートラルにするメンタルトレーニングが良いとか。

 心技体。坐禅をいくらしようが、心を鍛えるのは一番難しい。   
                                  920



2014/2/14  No.672
  日の丸


 ソチ冬期オリンピックが佳境を迎えている。各国それぞれ国旗を振りながら応援している中、スノーボードで若干15歳の平野選手が銀メダル、18歳の平岡選手が銅メダルで、日の丸が掲揚された。
金メダル確実と言われていた女子ジャンプの高梨選手はメダルを逃がしたが、会見時の悔し涙は彼女をきっと成長させるに違いない。

 2月11日は、「建国をしのび、国を愛する心を養う」建国記念日。今年は、高橋史郎氏が、「親が変われば、子どもは変わる」と題して講演された。

 「日本人として誇りを持ち、国歌・国旗を大切にして、四季のある美しい国に誇りを持つよう教育することが、戦争賛美に続がり、軍国主義復活になっていくからやめるべきだとの議論がでるのは世界広しといえども我が国だけだ。最近は、日本の精神文化の要であった家庭での礼儀、道徳、食生活、生活習慣などの教育力が低下した親が多くなり、子どもが犠牲になっている。親が育てば子も育つので、親に対する“親学”を普及させるべきだ。」など話された。

 国を代表してオリンピックに出場し、予選落ちしたにもかかわらず、ヘラヘラと「楽しかった」はあり得ないであろう。     920


2014/2/9 No671
  リケジョ

 
若干30歳の小保方晴子さんが、リンパ球を弱酸性につけるという簡単な刺激で、新たな万能細胞である刺激惹起性多能性獲得細胞Stimulus Triggered Acquisition of Pluripotennsy::STAP細胞の作製に成功したというニュースには驚いた。

 iPS細胞の山中教授が吹っ飛んでしまった。これからの我が国は女性の時代になることを予感させる出来事のように思える。

 ワイドショーによると、留学先のハーバード大学バカンティ教授にアイ ニード ハーと言わせた彼女の能力。くじけない強い心、努力家、性格の良さ、感性が鋭いという才能。東大ではなく早稲田が良かった。おしゃれ好きで可愛い、研究室の壁をピンクにした、花柄のソファー、ムーミンのキャラクターシール、亀の飼育、割烹着などリケジョのイメージでないのがオジサン的には嬉しい。

 年功序列、男尊女卑、権威主義で若い女性研究者の活躍が難しいとされる我が国は変わったか。若干30歳、博士号取得後3年という女性若手研究者がリーダーになれて、インパクトある世界的研究が出来る環境になったことは、新しい日本の幕開けであろう。

 少子高齢化で下山の時を迎えている我が国で、これから唯一の救いは、あらゆる面で”女子力”であることは間違いないと思う。
                               920


2014/1/31 No.670
  老老介護


 70歳の元看護婦の妻が、90歳の元病院長の夫の胸を包丁で刺し、無理心中を図ったとして殺人未遂罪に問われ、懲役3年、執行猶予3年の判決を受けた。長年にわたる献身的在宅介護に疲れたのが原因という。

 以前問題となっていた嫁姑の介護戦争は終わった。最近では、核家族化、高齢化により在宅介護から施設介護に移行し、今後は、老老介護、独居介護が問題となってくる。10年後以降の団塊世代である私の介護はどうなるのであろうか。

 老老介護では、お爺さんが先に亡くなると、残ったおばあさんはどんどん元気になっていく。一方、おばあさんが先に亡くなると、お爺さんはみるみる元気がなくなり直ぐに亡くなってしまう。

 独居となると、身の回りの世話をしてくれるのは、子供である娘くらい。息子は金と口は出すが、世話はしない。嫁は見舞いにも来ないし、無論世話などしない。

 超高齢化時代となり、長生きすることが本当に幸せなことなのかどうか分からなくなってきた。長寿が世間から祝福される時代は過ぎようとしている。どう生きるかよりも、「なかなか逝かせてもらえない社会で、どう死ぬか」が問われる時代になってきたように思う。                         920


2014/1/24 No.669
 東京都知事選挙

 
東京都知事選挙の主な立候補者は、舛添氏、宇都宮氏が65歳、田母神氏が67歳、御乱心の殿様細川氏に至っては76歳で、全員いわゆる高齢者。サラリーマンなら、定年退職する年齢。

 脱原発論争の是非はさておいて、何故40代、50代の将来ある働き盛りの人が立候補しないで、老人ばかりが立候補するのであろうか。

 借金財政国家日本で、経済大国から老人大国に突入してゆく大都会東京の介護・医療をどうするか。首都直下型地震、東南海地震の発生がまじかに迫っているが、東京オリンピック開催の時に大地震が発生したらどうするか。

 若者は「明日に夢があるから、今日をがんばろう」と、明るい明日の希望を求めて努力する。一方、老人は「明日はどうなるか分からないから、今日をがんばろう」と、世の無常を感じながら、今日を生きていく。

 急速な経済成長後の少子高齢化で、円熟期に向けて下山の時を迎えている我が国では、「たとえ明日東京が滅亡するとしても、今日リンゴの木を植えよう」という、無常観に基づいたリーダーが求められている。とすると、老人が立候補し、若者が尻込みするのも分からないではない。                      920 



2014/1/17 No.668
 箱根駅伝

 
我が国では冬期になると、毎週あちこちで駅伝が行われている。その昔私が子供の頃、年末に京都で行われる全国高校駅伝大会の中継をラジオで聞いた事を思い出す。伝統的に広島県は強く、第1回は世羅高校が優勝している。箱根駅伝は今年90回目を迎え、富士山が見える東京箱根間という好立地条件、90年という伝統、力を入れた実況テレビ中継などにより、新春恒例のイベント、国民的行事となっている。

 それにしても、正月にあれほど多くの老若男女が笑顔で旗を振りながら沿道で応援している数には驚かされる。

 駅伝競走は、東海道五十三次における伝馬制から考えられた日本発祥の競技で、国際的にもEkidennと呼ばれているそうだ。

 駅伝は一人で走るマラソンと異なり、伝統と汗の染み込んだ一本の襷を自分で途切れさせない様に、自分個人の為ではなく、家族の為、チーム仲間の為、学校の為、国の為に、熱い思いをこめて走る。前を走った者から襷を受け継いで、後に走る者に継ぐ。途中で走る事をやめるわけにはいかない。などと、駅伝は人生にも例えられる。

 駅伝は我が国発祥のスポーツとして、その伝統、人生訓を含めて我が国のソフトパワーであろうと思う。       920



2014/1/10 No.667
日本庭園

 
今年の初詣は島根半島にある美保神社にお参りしてきた。行き帰りに足立美術館と由志園の美しい日本庭園を観賞してきた。

 米国の日本庭園専門誌での国内約900か所の公的な日本庭園から庭園美、調和などを総合的に評価した日本庭園ランキングの第一位に安来市の足立美術館が選ばれた。2003年以来11年連続の第一位だそうだ。第2位は京都の桂離宮。

 足立美術館は横山大観の収集で有名。その日本庭園は、横山大観の水墨画を彷彿させる枯山水庭。赤松と苔の苔庭。白砂青松庭。鶴亀の滝庭が床の間の壁をくりぬき、掛け軸のごとく見えるなど綺麗に手入れされていて素晴らしかった。

 何故か島根県には美しい庭が多く、日本庭園ランキング50位以内に5か所もの庭園が入っていて、京都に次いで多い。由志園は38位であった。広島県では庭園の宿石亭一か所のみ。

 石や砂利、松、苔、池などを使って、四季折々の自然を表現する静けさや落ち着き、建物と風景の融合、伝統的な和の感性、優雅な空間など、日本美の奥深さを有している日本庭園は、自然の中に神を見出す多神教民族の芸術文化であろう.。日本人に生まれて良かった。                      920


2013/12/27 No.666
 パーソン・オブ・ザ・イヤー


 今日は餅つきをして、明日は先日山に入って準備した竹、松、梅を組み立てて門松を飾り、無事一年を終える。

 私の今年の十大ニュースのトップは、65歳となり老人の仲間入りをしたこと。少子高齢化の借金大国で、これからの前期高齢期を団塊世代としてどう過ごすかが大きな問題。

 世界では中国の軍拡、アメリカの退潮、独裁国家北朝鮮、シリアの内戦、アフリカ、アラブ世界の混乱など暗雲が漂っている。我が国は、富士山の世界遺産登録、和食の世界文化遺産登録と、円熟した国家を目指すべきなのに、アベノミクスなどと称して、経済成長を追い求めている。株価上昇などとはしゃいでいて、突然足を救われて転倒しなければ良いが。東京オリンピック招致成功などと、はしゃいでいた猪瀬東京都知事が徳洲会からの金問題で失脚。次を狙う東国原氏の議員辞職により、維新の会近畿比例区の次点であった私の友人である清水鴻一郎君がラッキーにも衆議院議員に返り咲くことができた。

 世界のパーソン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたフランシスコ・ローマ法王が、金は人間に奉仕すべきで、人間を支配してはならないと、グローバル資本主義、現代の拝金主義を戒めた年であった。
                               920


2013/12/20 No.665
 年寄りの冷や水

 
グリーンストーンテニスクラブの恒例年忘れテニス大会が開催された。若い人は見当たらず、中高年男女ばかり約40人が参加。平均年齢は還暦位であろうか。中高年女子の方が元気は良いしテニスも上手い。

 地域のスポーツ同好会やフィットネスジムに所属している成人の割合は、年齢が上がるほど増えているという。スポーツクラブに所属する割合が最も高いのは、70代前半女性の44%。最も低いのは30代後半女性の19%だったそうだ。時間に余裕のある中高年女性が積極的に運動に取り組んでいる。

 一方、小中学生では体育の授業を除いて、全く運動をしない生徒が大幅に増えていて、中学女子では23%が一週間の運動がゼロという。運動能力も低下していて、ボール投げの低下が目立つ。普段の遊びで投げる動作が減り、腕の筋力が弱っているという。

 若い人が結婚しないため、婚活がすすめられている。高齢者は貧困、孤独、認知、介護などお荷物と思われがちであるが、ところがどっこい、歳をとり枯れるどころではない。何と、「色恋は永遠」と、75歳以上での婚活・婚姻が秘かに増えているそうだ。       920



2013/12/13 No.664
神戸ルミナリエ

 
筋骨格系など運動器疼痛の診療や研究に携わる医療従事者による第6回運動器疼痛学会が神戸で開催された。

 高齢化社会となり、ロコモを含め腰痛、肩こりなど筋骨格系疼痛疾患患者は激増していて、運動器疼痛に要する医療費は年間1,7兆円に達し、対応策が求められている。

 整形外科による治療は形態学、生体力学に基づく治療であり、運動器疼痛は、整形外科的治療のみでコントロールは難しい。運動器疼痛を「機械的モデルから、生物、心理、社会的疼痛症候群モデル」としてとらえ、多面的集学的アプローチが必要とされている。

 痛みの研究も末梢神経、脊髄レベルからやっと”脳”にたどり着いた感がある。慢性運動器疼痛患者の情動変化、脳内での神経可塑性変化などが明らかにされつつあるが、道のりは遠い。

 鎮痛薬はNSAIDs一本やりであったが、病態によりアセトアミノフェン、ブプレノルフィン貼付薬、プレガバリン、トラマドール、強オピオイドなどが使用できる様になり、それらの適応、効果などが討論されていた。

 丁度、第19回神戸ルミナリエが開催されていて見てきた。阪神淡路大震災の鎮魂とか、イルミネーションの美しさよりも、あまりの人の多さと寒さで腰を痛め、運動器疼痛を学ぶことになった。    920


2013/12/6 No.663
 病は気から


 今年のイグノーベル賞は、「オペラで延命」の研究で、新見正則先生が受賞された。心臓移植をしたマウスは7日前後で拒絶反応を起こし死亡するが、オペラ椿姫の曲を一日中聞かせたら、拒絶反応を起こすまでの期間が26日まで延びたという。工事現場の音や、DJの小林克也(私の中学校の担任先生の息子)の流暢な英語のトークでは効果がなかったという。

 「病は気から」と、心の持ちようで病気の経過が変わる事は良く知られている。”気”によって病気に罹りやすくなったり、治ったりする。”気”は生命活動に必要な根本的エネルギーで、元気の元。気が不足した状態を「気虚」、気の流れが滞った状態を「気滞」という。

 「病気は気から」は、メンタルとフィジカルは表裏一体ということでもあり、気合で風邪を治すと同様に、メンタルな心の病は、フィジカルに身体を鍛えることで治すことが必要と思う。

 インフルエンザの流行期となり、インフルエンザ対策として、ワクチン、うがい、手洗い、マスクなどが勧められているが、私は常日頃、「気合を入れる」事の方が大切と、看護婦さんにも患者さんにも言っている。
                               920


2013/11/29 No.662
  神通力


 先日、天気が良かったので石鎚山に登ってきた。紅葉は終わりかけであったが、ロープーウエイを登ると、そこは30Cmを超える積雪で、秋晴れの中、美しい雪山を楽しむ事が出来た。

 石鎚山は日本七霊山の一つで、神通力を身に付けた修験道の開祖”役小角”によって開山された。真言宗開祖である弘法大師:空海も石鎚山で修業し、神通力を会得したと言われている。

 人間に秘められている潜在的超能力に神通力がある。神通力には、思い通りにどこへでも到達できる力“神足通”。遠くの声を聞き分けられる力”天耳通”。遠近大小どんな物でも見ることが出来る力”天眼通”。他人の心を知ることが出来る力”他心通”。自分の前世を知ることが出来る力”宿命通”などがある。

 超自然的な霊力を持つ奥深い霊山で修業を積むと神通力を会得することが出来るであろうか。

 安全でエアコンの効いた快適な都会生活。便利なパソコンやスマホに囲まれた生活をしていると、他人の心を読む力はどんどん劣化してくるし、視力、聴力、嗅覚、味覚、体性感覚などの五感も鈍ってしまう。

 奥深い山々に入ると、神通力とまではいかなくても、五感が蘇って来るように感じる。                        920


2013/11/22 No.661
 東京スカイツリー

 
今年の病院旅行は東京スカイツリーと箱根に行ってきた。今から50年前、映画「三丁目の夕日」の如く、日本は貧しかった。東京タワーに登り、大都会東京を見て、豊かな明日の日本を夢見たことを思い出す。

 あれから50年。日本は高度経済成長に成功し、世界に冠たる経済大国に発展した。物は溢れ豊かに便利になった。東京スカイツリー回廊展望台から広大な大東京が360度見渡たせた。新宿、丸の内あたりの超高層ビル群がかすみの上に廃墟の建造物の様に見える。経済大国の象徴としての大東京は、人間が人間らしく穏やかに過ごすには難しい、自然を破壊しつくしたコンクリート都市であった。

 自然と共生して、私達が真の豊かな良い生活をするために、国民総幸福(GNH)、脱成長、円熟社会などと叫ばれていたのに、アベノミクスにより、「足るを知る」など、どこかに吹き飛んでしまった。東京がバベルの塔にならなければ良いが。

 翌日、箱根山頂から雪に覆われた雄大で美しい富士山をまじかに見ることができ、救われた。                  920


2013/11/15 No.660
 定年


 65歳まで定年を延ばし継続雇用を企業に義務付ける改正高齢者雇用安定法が今年の4月に施行され、希望者は65歳まで働ける様になった。

 アメリカは自由主義社会で、企業による定年制度はなく、退職、再就職などは能力主義で、自分で決めることになっている。教授職などは終身的地位で、本人が辞退しない限り職を継続できる。

 我が国は長寿社会となり、元気な高齢者が多く、経済的にも、長い老後の為にも、働きたい人、働かなければならない人が多くなった。

 医師に何歳で引退したいかを聞いたところ、70歳までに引退を考えているのは勤務医で70%、開業医で50%だったそうだ。約4割の医師は65歳で引退したいと考えているという。開業医には定年制度がないので、いつまで医師として仕事をして良いのか、出来るのか、しなければならないのか、悩ましい。

 六十代、七十代を経済的に働くということだけで考えると、人生を狭くとらえて終わってしまう。医業を離れて、心穏やかに自己をみつめなおし、林住期を過ごしたいとは思うが、世の中思う様にいかず、このまま社会貢献の思いを抱きながら医業を続けていくのであろう。   920



                            
2013/11/8 No.659
  白山スーパー林道


 第33回日本臨床麻酔科学会が金沢で開催された。連休だったので、レンタカーを借りて、白山スーパー林道を走ってきた。

 白山国立公園内にある白山は、古くから修験道の霊山として知られ、富士山、立山と共に日本三大名山と呼ばれている。私は40年前の昭和46年5月の残雪多い春の白山に登っているが、スーパー林道は、昭和42年に着工し昭和52年に開通しているので、当時は工事中だったのであろう。

 白山スーパー林道は、世界遺産白川郷と白山市を結ぶ秘境に造られた山岳林道で、ふくべの大滝をはじめとする多くの滝、峡谷、ブナの原生林、新谷湯温泉、三方岩岳への登山道、白山の展望などが楽しめる。夜間と冬期は閉鎖される。冬期閉鎖直前で、紅葉に山々が真っ赤に染まっていて、つずら折れの山岳道、雄大なブナ林、急峻な岩壁、険しい峡谷や滝などの絶景に圧倒された。

 今回の学会は、九谷焼四代目の徳田八十吉氏による特別講演、金沢の伝統芸能である茶屋街芸子による唄、踊り、座敷太鼓の観賞、世界遺産である白川郷、五箇山の合掌造り集落の散策、紅葉真っ只中の白山スーパー道路のドライブ、白川温泉郷にある一里野温泉の露天風呂など、じつに実り多い学会であった。   920


2013/11/1 No.658
  謝罪


 降圧剤ディオバンの臨床試験データ操作問題で、京都府立医大、慈恵医大に続いて滋賀医大でも問題があったと、学長が頭を下げている謝罪会見が大々的に報道されていた。阪神阪急ホテルズでの料理メニューの偽装による社長の謝罪会見、みずほ銀行による暴力団融資問題での頭取の謝罪会見、たび重なる福島原発に関する東電社長の謝罪会見など、知事とか市長とか学長とか社長とか病院長とか、トップが頭を下げている姿を毎日見せられていると、この国は大丈夫であろうかと心配になってくる。

 半沢直樹の十倍返しで土下座のクライマックスシーンから、土下座が注目されているという。江戸時代に土下座は最大の謝罪を表し、たいていの事は許されていたという。最近では、謝罪というよりなりふり構わぬ自己保身の手段で用いられたり、相手にひざまずかせ服従を求める土下座が行われたりしている。先日はモンスターペアレントが担任の先生に土下座を強要して逮捕されたそうだ。

 謝罪をして許されることは、人の共生、関係維持に必要とは思うが、医療過誤の場で、医師が患者に謝罪するのは難しい。
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2013/10/25 No.657
 救急医療と宇宙医学

 
第41回日本救急医学会と第7回アジア救急医学会が東京で同時期開催された。
救急医療は医の原点であるが、救急医療制度はアジア各国情勢により違ってくる。我が国は、私が大学を卒業した年に救急医学会が創設され、医学の進歩、および経済成長と共に救命救急センターを中心とした、初期二次三次の救急医療制度が整備された。最近は、都市の大病院を中心に救急医によるER救急外来が普及してきて、従来型の救急医療制度が変わりつつある。また、高齢化社会となり、救急搬送高齢患者が激増して、高齢者救急医療が大きなテーマとなり討論されていた。

 中小都市である尾道で、初期救急医療対応が問題となっているが、救急医療制度にユニバーサルモデルはなく、各国、各地域、各病院で其々工夫する必要があり、問題点、対応策などが話し合われていた。

 外科医師で日本初の女性宇宙飛行士、向井千秋氏による特別講演が素晴らしく面白かった。無重力の宇宙から帰還し、重力との再遭遇に感激したこと。無重力で起こる身体現象は、地球上での老化で起こる現象に似ていること、人類の為の宇宙開発に果たす医学研究など、エキサイティングな話は、感動と将来に対する希望を抱かせる講演であった。直後に行われた「ERからセーフティネットを考える」という会長講演がかすんでしまっていた。             920


2013/10/18 No.656
 タコの旬

 
和食が世界文化遺産にwasyokuとして認定されるそうだ。精進料理、懐石京料理、一汁三菜の家庭料理など、和食は季節を取り入れた旬の食材を、旨みをだしにして美味しく、健康食として注目されている。私が子供の頃には冷蔵庫が無かったので、魚、野菜、果物などすべて地産地消の旬の食材であった。

 洋食、ファストフードなどは、一年中同じ食材で、「旬」の概念がない。最近では、養殖とか温室栽培とかで、旬の季節が分からない食材が多くなった。

 我が国では、弥生時代の遺跡からタコつぼの土器が出現していて、タコは和食の食材として古くから食べられていたそうだ。タコは低カロリーで、蛋白質やタウリン、亜鉛などが豊富で、世界のタコ消費の6割を日本が占めているという。

 ところで、タコの旬はいつなのであろうか。タコは6−8月の入荷が多い夏は産卵期で、肉質は柔らかく淡白な味で美味しい。11月ー3月の寒ダコは、身が硬く味が濃くなり美味しい。関西地方では半夏生に夏バテ防止にタコを食べ、関東では正月のおせち料理に酢ダコを食べる風習があるそうだ。

 先日、下津井の元祖タコ料理”保乃家”でタコ料理を食べ、美味しいタコの旬は、身の硬軟、味の濃淡の好みによって異なることを知った。
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2013/10/11 No.655

  医業戦士

 昭和48年に大学を卒業した卒業生の会である”48会”の卒後40年の記念同窓会が開催された。卒業時に男性86名、女性4名で、亡くなった者が9名もいた。多くが65歳を超えた団塊世代で、43名が参加していた。

 開業した者、勤務医になった者、病院を開設した者、大学教授になった者、政治家になった者などさまざま。地域医療の担い手として、医師会の役員として、教育・研究の担い手として、病院の管理者としてなど、それぞれが”医業戦士”として40年間戦ってきた成果が、顔のしわ、白髪、はげ頭などに現れていた。

 癌の手術を受けた、首や腰が痛い、インシュリンを打っているなど満身創痍で、色々問題を抱えながらも、何かの縁で共に学んだ同窓会に参加できるのは恵まれていると思う。老後の過ごし方に話題が集中していた。

 団塊世代の多くは、望むと望まざるとに関らず、高度経済成長を牽引した日本株式会社の担い手として、モーレツに働いてきた”企業戦士”であった。私達団塊世代の同窓生は、自らの身体や家族を顧みず、昼夜を問わず燃え尽き症候群や過労死に耐えながら懸命に働いてきた”医業戦士”といえるであろう。

 翌日ゴルフ48会にも参加し、ひさしぶりに瀬田カントリークラブで、若いつもりでカートに乗らずラウンドてし疲れてしまった。 
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2013/10/4 No.654
 シニアライフ・クライシス


 若者は老人と対照的に、斬新な発想力で新しい事が出来ると思われているが、実は将来の長い人生のことを考えて、案外保守的で世の中に合わせる志向が強いそうだ。それに対して、先の短い老人は自由でこわい物は何もないが、幸いにもうエネルギーが失われているので、爆発せずにすんでいた。ところが、寿命が急激に延びて元気な老人が増え、世の中変わった。

 その昔、自転車や車で日本一周、世界一周何でも見てやろうなどは、若者の特権、憧れであった。時代は変わり、ゲームセンター、カラオケなどは老人で溢れ、百名山は中高年山ガールで占領され、劇場や昼間のレストラン、冒険的な世界旅行などは中高年の女性ばかり。

 自分の人生はこれで良いのか、このままで悔いは無いのかと悩み、具体的行動にでる中年は、「中年の危機:ミッドライフ・クライシス」と呼ばれている。

 寿命が延び今では、多くの中年女性が、ぬれ落ち葉の夫と熟年離婚し、じじの介護から解放され、このまま死んでは悔いが残ると羽ばたき、元気になり、シニアライフを謳歌している。
 ぬれ落ち葉の男はどうしたら良いのであろうか。      920



2013/9/27 No.653
 大相撲はスポーツか?

 テレビが無い子供の頃の遊びに、メンコがあった。当時、大相撲力士メンコをたくさん集めるのが、男の子の誇りであった。大学時代、教授が大相撲力士の膝の痛みの研究をしていて、大阪場所千秋楽観戦後、ちゃんこに招待され御馳走になり、大相撲が好きになった。

 先日の福山文化大学の講師は、舞の海秀平氏であった。高校教師内定をけって、大相撲に入門したいきさつ。頭にシリコンを入れて新弟子検査に合格した裏話。「平成の牛若丸」と呼ばれ、曙、小錦などと戦った時の裏話などを巧みな話術で、面白く話された。

 大相撲はスポーツ的要素をもった神事の興行。ガチンコ勝負ばかりでは、身体を壊す。千秋楽を迎え、7勝7敗の力士の給金相撲の勝負は、「人情相撲」と呼ぶ。対戦する力士同士が阿吽の呼吸で、勝負の行方を決めるのを、「出来山」という。「気負け」して負けた力士には、負けた後に稽古をつけたり、小遣いを与えたり飯をおごったりする。

 阿吽の呼吸で行う「人情相撲」、「出来山」、「気負け」などを八百長などと批判するのは、野暮で無粋なこと。江戸時代から続き、唯一髷を許された力士による「情」、「阿吽の呼吸」、「気」は、日本文化の神髄であり、日本人として、私は豊真将を応援している。
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2013/9/20 No.652
  オレって老人?
 

 団塊世代の私は、今日9月20日に65歳の誕生日を迎えた。何と、高齢者になったということで、年金受給者となった。

 戦後のどさくさ時代に生まれ、小中60人学級でも学級崩壊せず、白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機の三種の神器を得て、70年安保デモを体験し、右肩上がりの高度経済成長で24時間働き、カラーテレビ、カー、クーラーの三種の神器を得て、家を建て子どもを育て、若干の医療貢献をし、バブル崩壊後も何とか生き延びて、とうとう高齢者の仲間入りをした。

 昭和30年にWHOが65歳以上を高齢者とした時の、我が国の平均寿命は男性63歳、女性67歳であった。あれから50年、今では男性79歳、女性87歳と驚異的に延びた。そして65歳以上は、3186万人、4人に1人が高齢者ということになった。日本老年学会では高齢者の定義を検証し、高齢者年齢を変えたいそうだ。

 団塊世代の50%は自分を老人と思っていない。あとの50%が自分を老婆と思うはずがない。歳をとって歳相応にと、頭ではそう思っているが、本音のところはまだまだ「お若い」。

 前期高齢者になっても孫がいない者は、負け組だそうだ。負け組の私は、まだまだ年寄り扱いされたくないので、65歳の誕生祝いに、思い切って、天童よしみコンサートに行ってきた。   
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 南しんぼう:オレって老人?、みやび出版。


2013/9/13 No.651
  東京オリンピック

 
 7年後のオリンピック開催が東京に決まった。団塊世代の私は東京オリンピックを2回観ることが、ギリギリ出来るであろうか。

 50年前の東京オリンピックは、中学3年生の時で、秋晴れの開会式で自衛隊のジェット機が五輪のマークを描いたのを白黒テレビで感動して観たことを思い出す。

 オリンピックを契機に、新幹線や高速道路が出来て、高度経済成長真っ只中。大学時代には大阪万博。24時間働けますかとか、大きい事は良い事だなどと、日本の高度経済成長が実感出来ていた。そして、世界第2位の経済大国になった。その後、バブルがはじけ、リーマンショック、政治経済の凋落、超借金財政、少子高齢化、中国の台頭などに追い打ちをかけた東北大震災に福島原発爆発。暗い話ばかりとなり、溢れる物が幸せをもたらすという50年前の夢から目覚めさせられた。

 オリンピック開催決定の日、私は周防大島で30年ぶりの水上スキーを楽しんだ。今では、ウエイクボードと言うそうだ。まだまだ若いと思っていたら、私が今までで最高齢者だと教えられた。

 我が国は円熟期に入るべきなのに、さらなる経済成長などと、オリンピックを契機に元気を出し過ぎて、私のウエイクボードのごとく、浮き上がった途端、大きな波で転倒し、沈んでしまわなければ良いが。
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2013/9/6 No.650
 嫉妬


 私達が持つ共通した最も普遍的で強い情念は、「嫉妬」だそうだ。人間性の本質は「嫉妬」であり、この世を動かしている根本に「嫉妬」があるという。

 私達は他人と比較するから、劣等感で妬んだり、ひがんだりして、気分が沈む。妬みは心の痛みを伴う。心の痛みを伴う様な心理は、淘汰されれば良いのに、もっとも強い情念として、私達を悩ますのは何故であろうか。

 「嫉妬」は、それがあることで競争心が生まれ、向上につながっている。嫉妬心が強い人ほど、高い技能を持ち、生存競争に勝ち、子孫を多く残すことになった。そのため、嫉妬心の強い遺伝子が代々受け継がれていき、「嫉妬」は、なくならないそうだ。

 他人と比較することなく、自分が自分であること、それだけでいい。何もつけたさなくても、自分が自分であることに感謝して、目の前にあることを片づけてゆく。それを”悟り”という。そうだが・・・

 東大を出て官僚になるような優秀な人は、特に競争心、嫉妬心が強いのであろう。「ライバルが出世すると、腹が立つ」。妬みの対象に不幸が起きると、自分の相対的な劣等感が軽減され、心の痛みが緩和して、心地良い気持ちになるという。

 坐禅などで人間性の本質を変えるのは難しい。「他人の不幸は蜜の味」などと思っていると。”倍返し”にあうかも。      920


2013/8/30 No.649 
 昇る男の条件 沈む男の傾向


 世話になった私の先輩である飯田稔先生が開設された東和会病院の30周年記念誌が送られてきた。

 昭和57年、65床の小さな救急病院を開設され、私も麻酔の手助けに行ったことがあるが、その後瞬く間にどんどん大きくされ、内視鏡外科のパイオニアである著名な先生と弟子の先生を三顧の礼で迎えられ、現在では日本有数の内視鏡外科センターになりつつあるという。介護施設、乳幼児施設なども開設され、職員の和を大切にする理念で、現在では職員数1300人を超える一大医療施設を築かれている。

 先生には、お宅での食事会、テニスクラブでのパーティー、琵琶湖での水上スキー、栂池でのスキー、サイパン島でのダイビングなどの他、大阪の北新地、京都の祇園での粋な遊びなど、田舎者の私には、別世界の楽しい経験をたくさんさせていただいた。

 京都花街での教え:元芸子が語る「昇る男の条件 沈む男の傾向」によると、昇る男は、見返りを求めず粋に遊ぶ、無邪気に楽しむ、自分は運が良いと思う、人付き合いを好む、周囲の人を楽しくさせる、好ましく思われる、情報感度が高い、不義理しない、曖昧さを認める、情熱をこめて語る、愚痴をこぼさない、手を抜かない、などなど。

 飯田先生は、昇る男の条件を備えておられた様に思う。一方、沈む男の傾向をみると、まるで私の様で・・・。    920
 竹田喜美子:昇る男の条件 沈む男の傾向、すばる舎リンケージ



2013/8/23 No.648
  敗戦処理


 第95回夏の高校野球大会が前橋育英高校の初優勝で終わった。
前橋育英高校以外の参加約4千校の全てが、涙の敗戦を経験した。敗戦を経験することが次につながる教育になるという。

 柔道の受け身は、投げ飛ばされて負ける練習だが、最も基本で大切とされている。世の中の多くは最終的に負けて終わるので、敗戦処理をどうするかが重要になってくる。ヒトは必ず死ぬので、大多数の医師の仕事の相当部分は敗戦処理ということになる。

 外科医はがんを治す先発投手で、再発がんを抗がん剤で治す腫瘍内科医は中継ぎで、ホスピス緩和医は、敗戦処理投手であろうか。がんの場合は比較的勝負がはっきりしているが、高齢者の誤嚥性肺炎の治療においては、どこから先発で、どこからが中継ぎで、どこからが敗戦処理となるのかが良く分からない。

 ところで、誰がエースになるのであろうか。
上手に逝かせてあげる敗戦処理投手になるには、患者や家族に正面からしっかり向き合い、対処できるプロの医師としてのエースでなければ務まらない。
患者さまとか、セカンドオピニオンとか、インフォームドコンセントとか、エビデンスとか、エースでない医師が行っている偽善的医療ではなく、私に任せなさいというパターナリズム医師が本当のエースであろう。
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 里見精一:衆愚の病理。新潮新書。




2013/8/16 No.647
  霊場吉野山

 
吉野山は奈良県中央部、大峰山を経て熊野三山に続く、山岳霊場修行道である「大峰奥駈道」の入り口にあたる。日本古来の山岳宗教である修験道の総本山、役行者が建立した金峰山寺を中心とする社寺が点在する山稜の総称。吉野山ー高野山ー熊野にかけての「紀伊山地の霊場と参拝道」は、世界遺産に登録されている。

 豊臣秀吉が花見の宴の際宿泊したと言われる宿坊、竹林寺群芳園に宿泊して、世界遺産に登録されている金峰山寺、吉水神社、吉野水分神社などのパワースポット霊場聖地を歩き、お盆のお参りをしてきた。

 この世あの世に霊魂は存在するであろうか?スピリチュアル:魂とは一体何であろうか?

 人間の命とは? 現代医学的には「遺伝子DNA]。分子生物学的には「動的平行状態にある流れ」。仏教的には「色即是空 空即是色」。神の力によって創られた私達の命・身体は地球からの借り物だそうだ。死ぬと身体は消滅するが、魂は無くならない。人間の霊魂は永遠で、人智を超えた「縁」によって動かされている。魂こそ本当にの自分だから、霊魂を大切にしなければいけない、そうだ。

 神仏習合の修験道総本山金峰寺に祀られている金剛蔵王権現は、前世、現世、来世の三世にわたる救済を誓願して出現されたという。熱心にお祈りしたので、私の魂も少しは救われたであろうか。 
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 五木寛之、鎌田東一:霊の発見。学研文庫
 矢作直樹、村上和雄:神(サムシンググレイト)と見えない世界。



2013/8/9 No.646
  崩食

 
我が国で、”飽食”によるメタボが話題となっているが、食生活の崩壊にともなう”崩食”による心の崩壊も指摘されている。

 直ぐキレる、気分が沈む、不安障害、パニック、国民病と言われる鬱病など心の異常は、冷凍食品、ジャンクフード、ファーストフード、菓子、カップめんばかりの偏食、過食などによってもたらされるという。

 必須アミノ酸、亜鉛、鉄などの微量ミネラルの不足、ビタミンB不足に加えて、お菓子などの糖分過剰摂取による血糖変動を伴う低血糖、小腸内細菌巣の異常による脳内代謝異常がもたらされ、心が乱れる。

 私は、心が病んでいると思われる人に対しては、昨日何を食べたかを必ず聞くようにしている。毎日、ジャンクフード、カップラーメンだけの偏食、駄菓子の過食などには驚かされる。

 先日、集団暴行殺人事件を犯した少女達は、家庭環境に問題があると思うが、彼女達の”崩食”がどんなものであったかは想像に難くない。崩食の日々という、異常な食習慣から発症した心身の異常が、薬などで良くなるはずがない。まずは「食い改める」ことが必要と思う。

 季節の食材による地産地消の一汁三菜の和食を感謝して食べていれば、私達日本人は心身ともに健康を保てるに違いないのだが・・
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 生田哲:心の病は食事で治す。PHP新書



2013/8/2 No.645
  風立ちぬ

 
福山での病院脳神経外科学会の後、映画「風立ちぬ」を観てきた。5年前の「崖の上のポニョ」以来の話題作で、スタジオジブリ宮崎駿監督の集大成となる映画だそうだ。

 実在したゼロ式戦闘機設計者、堀越二郎の伝記的アニメ映画。堀越二郎と同時代を生きた作家、堀辰雄を掛け合わせた主人公の物語りとなっている。大正から昭和にかけての激動の時代を一生懸命生きようとする人物を描いたファンタジー映画。

 映画の興行宣伝とはいえ、あの立花隆氏が新聞紙上で、この映画の”うんちく”を純愛・戦争の傷、余韻十色、と題して寄稿していたのには驚いた。平和を希求する意思が表れた映像美がジブリらしいとか、自分の夢に向かってまっすぐに進んだ人物像が素晴らしいとか、メロドラマのところが泣けるとか、歴史の過酷さを観て泣けるとか。

 宮崎駿監督が、完成した自分の作品を観て、「不覚にも自分の作品で初めて泣いてしまった」という。私は歳をとり、涙腺が緩み、涙もろくなっているが、感性が鈍ったのか、泣くことはなかった。超高齢化時代の医療・介護など、難しいテーマを考えさせられた学会の後であったので、私にとって子供のころを思い出す様な美しい景色が描かれていて、一服の清涼剤の様な映画であった。    920




2013/7/26 No.644
 学会


 先日第16回病院脳神経外科学会が、寺岡暉先生会長のもと福山で開催されたので参加後、映画「風立ちぬ」を観てきた。先週は、第16回日本臨床救急医学会が東京で開催され、翌日は大宮での第47回日本ペインクリニック学会後、日光白根山に登ってきた。

 その昔、学会と言えば、当時プロパーと呼んでいた製薬会社の人が交通、宿泊などを手配、さらに学会後の一次会から二次会までセッティングしてくれ、それを楽しみに?学会発表していた。

 ツムラの後援で中国の針麻酔見学、台湾での学会後の観光など、教授のカバン持ちで参加したした学会も懐かしい。エジプト麻酔学会後、留学生宅に泊まったことや、シアトルでの世界疼痛学会後のラスベガス観光、パリの学会でパスポートを盗まれたこと、スイスのチェルマットで、1週間の間、早朝と夜間のみ講演会が開催され、昼間はマッターホルンでのスキーを楽しんだ欧州麻酔研究会も懐かしく思い出される。

 最近は、新しい知識を入れても直ぐに忘れるし、呆け防止のつもり(実際は無意味)で参加している。それよりも学会を兼ねた旅行はただ単なる観光旅行に比べ、充実度が倍増する様なので、学会を絡めた旅行を楽しもうと思う。          920



2013/7/19 No.643
 日光白根山


 第47回日本ペインクリニック学会が大宮で開催された。連休だったので、足をのばして日光白根山に登ってきた。

 日光白根山は群馬県と栃木県にまたがる標高2578m、関東地方以北で最高峰の山。日光国立公園内の日光火山群に属する火山で、男体山とともに、深田久弥の日本百名山の一つになっている。日光白根山には湯元温泉や菅沼などから古くよりの登山道があるが、丸沼公園からロープウエイで、標高2000mまで一気に上がることが出来る様になり、登り易くなっている。

 中禅寺湖金谷ホテルに泊まり、早朝レンタカーで丸沼公園まで走り、7時30分の始発ゴンドラに乗った。二荒山神社に参拝し、登り始める。樹林帯の登山道は整備されているが、急登で息が切れる。森林限界を超えると、高山植物が咲くお花畑。その上はザレ場の火山道となり、登り難い。天気が良ければ、以前登ったことがある尾瀬の至仏山や北アルプスが展望されるはずであるが、強風と濃い霧の為、早々に下山した。山ガールファッションに身を包んだ若いカップルが多いのに驚いた。自然の中での癒しと、しんどさを共にしての一体感の愛を感じるからであろうか。

 中高年登山の私は、一人で標高2000mにある“天空の足湯”と丸沼公園にある”座禅温泉”で疲れを癒してきた。    920




2013/7/12 No.642
  老眼

 
人間は眼の動物と言われる如く、私達は視覚で80%以上の情報を得ている。老化は歳と共に現れてくるが、視覚に頼った生活をしているので、一番早く目に老化が現れる。幸いにも、目の老化は老眼鏡、白内障手術などで矯正出来やすい。私は、若年性白内障とかで、50歳前に白内障の手術を受けて良く見える様になった。

 見えない真実を心の目によって見抜く力を「心眼」という。視覚で認識できない事項を、経験と想像力で推論することにより、見えない物の本質を理解する。武術において、柳生心眼流は、相手の挙動
を予測することにより、相手を制した。私はテニスの試合で、心眼により相手の返球を読むことを心懸けている。

 人は肉眼に頼り過ぎると、真に見るべきものを見逃してしまう。最近のエビデンスに基づく医療は、検査データや画像異常など、臓器の異常ばかりに眼が行きすぎて、真に見るべきものが見えなくなっている様に思う。

 私は最近、老眼により画像やデータが見難くなってきたので、心眼による診断や治療を心懸けている。      920


2013/7/5 No.641
  ワクチン

 
子宮頸癌予防ワクチンによる副作用で、今年4月から定期摂取となっていたHPVワクチン摂取を、「定期摂取は継続するが、積極的な勧奨を控える」と、何とも奇妙な通達が出されて、混乱している。

 ワクチン後進国と言われる我が国で、風疹が大流行している。妊婦の感染予防の為に、若い男性にも摂取が勧められ、ワクチンが不足。若い女性への摂取が出来なくなる恐れが出てきて、何と個人輸入して摂取する病院が出現したそうだ。

 ワクチン接種の是非に関し、多くの論争がある。ワクチンといっても其々の疾患に対し、有効性、必要性、安全性、副作用の重篤度、社会防衛性、経済性、政府官僚の責任問題、個人や親の責任、製薬会社の思惑など、多くの問題が指摘されている。

 インフルエンザワクチンは、その昔、集団免疫による社会防衛を目的として学童集団摂取が行われたが、その効果は否定された。当時高齢者には禁忌であった。その後、老人ホームで百歳の老人がインフルエンザに罹患後死亡したことから、高齢者重篤化防止目的で摂取が勧められている。インフルエンザに対する感染予防効果への疑問、流行防止効果への疑問。さらには新しい治療薬の登場による重篤化防止効果への疑問も指摘されている。

 私は、今までインフルエンザワクチンを接種したことがない。開発中の認知症予防ワクチンも接種しようと思わない。 920



2013/6/30 No.640
  リビング・ウイル

 
厚労省による終末期医療に関する意識調査で、自分で治療方針を判断できなくなった場合に備えて、事前にこんな治療は受けたくないなどを記載した「事前指示書」を作製することに賛成する人が、7割にも達しているそうだ。

 先日、市民病院の日曜救急当番医を受け持った。高齢救急患者の多いこと。入院した患者は、いずれも施設に入所中に具合が悪くなったと救急車来院した高齢患者。最高は103歳の吐血患者と、90歳を超えた誤嚥患者、肺炎患者であった。ICUでは重症患者が、人工呼吸、人工透析などを受けていたが、高齢者が多い。元気に退院し、日常生活が出来るようになれば良いが。

 高齢者の延命処置中止を家族が同意するのは難しい。胃瘻など、自分はしてほしくないが、父母の命を絶つ判断をするのは難しく、出来るだけのことをしてほしいということになる。

 これから高齢化する団塊世代は、脳死臓器提供カードではなく、積極的延命治療や胃瘻造設を希望しない、人間らしく安らかに自然な死を遂げるべく、意思表示の書類作製を勧めたい。

 私も終末期医療についての意思表明書を作製しておこうと思う。
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2013/6/21 No.639
  アベノミクス


 経済成長なくして財政再建なしと、大胆な金融政策、財政政策、経済成長戦略の3本の矢が放たれた。規制緩和や、減税による経済成長促進と、教育、農業、医療などに関してさえ、すべて金に換算して兆単位の数字目標が踊っている。政治が株や為替に右往左往し、市場経済に振り回されているようで、うまくいくとは思えない。

 キリスト教カトリックのフランシスコ新ローマ法王が、現代社会の「拝金主義」を戒め、倫理に基づく金融市場改革をするように、世界各国の指導者に呼びかけたという。カネの崇拝、市場の独立と金融投機の自由を絶対視する経済の独裁を”神”への拒絶だと批判した。カネは人間に奉仕すべきであり、人間を支配してはならない、とも語ったそうだ。

 仏教では、「よりどころを転じる」ことの大切さが説かれている。金は生きてゆく為に必要だが、金だけでは幸せになれない。金もうけばかりが人生ではない。幸せに生きる為には、考え方を変えることが大事、ということ。

 小銭を持った800万人の団塊世代が完全リタイアしてからのセカンドライフ消費は100兆円規模になるという。日本経済をけん引し、わが国を経済大国にした団塊世代が、幸せのために、お金を上手に楽しく使い切れば、うまくいくかも。         920




2013/6/14 No.638
  2030年世界はこう変わる

 
先日、オバマ米大統領と習中国主席の会談が行われた。「新型の大国関係」を築くと。世界は今までにないスピードで変化している。今後、二大大国関係や日本、世界はどうなっていくのであろうか。

 米国国家情報会議がまとめた「2030年 世界はこう変わる」が、17年後の近未来のシナリオを描いている。

 世界の今後を占ううえで大きな流れを決める構造変化は、発展途上国で増加する新中間所得者層と呼ばれる個人の力の台頭だそうだ。アジアを中心に世界中で約二十億人の中間層が台頭する。人類はより健康になり、先進国では高齢化がすすむ。欧米先進国の衰退により、世界は「アジアの時代」に移って行くという。

 米国は2年後、中国は12年後にピークを過ぎる。2030年の世界経済の牽引役はインドになると予想されている。米国は覇権国家から陥落するが、まだトップ集団の一位にとどまる。中国の経済成長は止まり、覇権国家ゼロの時代になるそうだ。

 我が国は、国力の低下は避けがたく、世界一の高齢者大国として、高齢化と伴に衰えてゆく。 日本経済を牽引してきた団塊世代である私は、生きていれば82歳。日本没落から逃げ切れるであろうか。
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2013/6/8  No.637
  生きがい

 
三浦雄一郎氏が80歳で3度目のエヴェレスト登頂に成功し、「三浦雄一郎記念冒険大賞」が創設されることになったようだ。

 3年前、博多で開催された日本麻酔科学会での三浦雄一郎氏の特別講演を思い出した。スキーで転倒して大腿骨を骨折したが、手術せずに保存的に治し、3年かけてリハビリをして、80歳で3度目のエヴェレスト登頂を目指している。エヴェレスト登頂という夢を持った途端に、”生きがい”が生まれ、メタボや心房細動などの病気が克服できて健康になった。挑戦には限界はない、などと話されていた。

その時は多分無理と思っていたが、多くのサポートがあったとはいえ、希望どおりに80歳で登頂に成功されたのには驚いた。

 102歳の日野原重明氏は、昨年胸椎圧迫骨折の手術を受けて、今年の4月に五島列島の小山の上にある20の教会を歩いて回られたそうだ。75歳で自立して生きる老人を「新老人」と名付けて、世界一長寿となった我が国の高齢者が健やかで”生きがい”を感じる生き方をするための具体的提案をされ、実践されている。

”新老人の生きがい”三原則は、「愛し愛されること」、「創めること」、「耐えること」。

 団塊世代である私は、65歳のいわゆる老人の仲間入りをする。新老人生きがい三原則を参考に、新しい事を創めようと思う。
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 920の独り言(485):挑戦



2013/5/31 No636
 フード・マイレージ

 
日本文化を海外に広めるクールジャパン戦略の一つに「和食」を取り入れるという。

 京の懐石料理を代表とする「和食」は、地産地消、季節の旬の食材を使用。海のもの山のものなど食材の多さ、季節を取り入れた見た目の美しさを競う盛り付け。味付けは低カロリーの「うまみ」で美味しく。精進料理と伴に、健康食として世界中から注目されている。日本の「和食」を世界文化遺産に登録すべく申請しているという。

 ハンバーグ、マクドナルドなどのファーストフードは、同じ輸入食材で同じ調理方法、一年中同じ味。我が国の人口一人当たりの輸入食糧の総重量と輸送距離を掛け算して出したフード・マイレージは、世界ダントツ1位。食糧自給率40%で、多くの食料を遠方から輸入して、その多くを賞味期限とかで廃棄している。

 その昔、私が子供のころ冷蔵庫はなかった。食材は毎日八百屋、魚屋などから地域でとれたものを買って食べていた。我が国の食生活を、高カロリーな輸入ファーストフードを止めて、日本人に合った和食にすると、製薬企業は困るであろうが、メタボ関連疾患は激減し、医療費も激減すると思う。私は、地球環境保全のためにも、私の畑で採れた路地の無農薬の新鮮な旬の野菜で、一汁三菜の和食を美味しく食べようと思う。             920


2013/5/24 No.635
  奥出雲ごごち

 
60年ぶりの出雲大社の平成大遷宮が行われた出雲で、第29回日本救急医学中国四国地方会が開催された。

 奉祝行事が続く出雲大社はすごい人出であった。みんな長い行列をおとなしく並び、拝殿に向かって通常は二礼二拍手一礼のところ、出雲大社特別作法に習い、二礼四拍手一礼し、熱心にお参りしていた。

 家内安全、縁結び、合格祈願、厄払いなどの神頼み。苦しい時の神頼み。人事を尽くして天命を待つ時の神頼み。など、無宗教と言われる日本人の多くが神社で神頼みするのは、現世の御利益を求めてのことであろうが、真面目にお祈りするのは悪くない。

 帰りに、中国山地の山々に囲まれた里山の町。自然と昔ながらの暮らしが残る神話の町、奥出雲を訪れた。都会の暮らしに疲れて、ほっと一息つきたくなる。駆け足で進む毎日にちょっと立ち止まり、ゆったりとのんびり心豊かになる。「奥出雲ごごち」というそうだ。

 「鬼の舌震:おにのしたぶるい」と呼ばれる、ヤマタノオロチ伝説の息づく斐伊川支流の大峡谷を散策した後、佐白温泉長者の湯の露天風呂で、ほっと一息ついてゆったりと疲れを癒してきた。
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2013/5/17 No.634
 舎利

 
夏の風物詩といわれる薪能が、5月11日に尾道浄土寺の国宝阿弥陀堂で開催された。今年の薪能題目は「舎利」であった。「舎利」とは、仏の遺骨のこと。足疾鬼(そくしっき)がお寺から盗んだ仏舎利を足の速い韋駄天(いだてん)が取り返すという物語。

 かがり火に揺れる荘厳な衣装をつけた能舞いと、地謡、笛、小鼓、大鼓、太鼓の囃子が夜空に響き、日本の幽玄な伝統文化を味わった。

 すし飯のことをシャリと言うが、サンスクリット語で米を意味する[sari]を語源とするという説。火葬にした後に残る米状の骨に似ていることからシャリと呼ばれるという説もあるそうだ。

 我が国には一年を4等分した春夏秋冬という四季に加えて、二十四の「節気」と七十二の「候」という季節の区分けがある。旧暦の時代、人々は季節の移ろいを細かく感じながら、旬の物を食し、季節の風物詩を味わいながら生活していた。

 歳をとると季節感が薄れてきて、食べ物は一年中手に入るので、旬の食べ物が分からなくなってしまう。四季の国に生まれたことに感謝して、自然に寄りそう生活を大切にしようと思う。“立夏”の風物詩として薪能を味わおう。夏野菜を植えていると、みみずがでてきた。「蚯蚓いずる」節気。旬の果物は苺。庭の畑の片隅に植えていた一株の路地苺が赤い実をつけていた。     920

臼井明大:日本の七十二候を楽しむー旧暦のある暮らし、東邦出版



2013/5/10 No.633
 仁井の棚田


 広島県で唯一棚田百選に選ばれている、安芸大田町筒賀村の仁井の棚田を訪れてきた。山奥の狭いトンネルを抜けた山間に、美しい棚田が作られている。丁度田植えの時期で、狭い段々畑の水田に家族総出で田植えが行われていた。

 我が国の様な稲作国家では、水田でコメを作ることを通して、生物多様性、生態系の保全などに加えて、伝統文化を継承する機能をも持っている。何年も変わらない里山の自然、棚田、田植えなど、日本の原風景の中に居ると、心が和む。

 アベノミクスとやらで、何故か株価が上昇した。株を持っている人達は金持ちになり、大変喜んでいるようだ。私は株を持っていないので、羨ましい限りだ。貴金属、高級車が飛ぶように売れているという。

 「金は人間の奴隷であるべきで、人間が金の奴隷になるのは本末転倒」。ということで、短期的利益を求める資本主義、市場主義のグローバル化に対して、自然を相手に手間暇かけて、自然から恵みを得る里山資本主義が世界的に注目を集めているそうだ。

 高速道路は車で溢れていたが、仁井の棚田、頭龍峡、深入山など日本の自然が一杯の里山は、寂しい位人がいなかった。高級車に乗った人達は金を手にして、急いでどこへ走っているのであろうか。
                              920



2013/4/27 No.632
  フードファディズム


 健康情報娯楽番組などで、健康に関する食の情報が氾濫している。

「血液サラサラ脳梗塞を予防するので、宝水として、寝る前に水を飲むべき。水毒や頻尿となるので飲み過ぎは良くない。」「牛乳は骨粗しょう症を予防するので沢山飲むべき。動脈硬化や腸に悪いので、飲まない方が良い。」「食事は一日三食より、一日一食の方が良い。」「白砂糖は身体に悪く、黒砂糖は身体に良い。」「運動は食前が良い。食後が良い。」「長生きしたければ、肉は食べるな。肉を食べる人は長生きする。」などなど。

 ダイエット健康効果を煽る情報で、店から品物が無くなった、寒天、納豆、バナナなどはその後どうなったのであろうか。最近は、雑穀、ごぼう茶、天然酵母、ポリフェノールなどが健康に良くて、白米、砂糖、マーガリン、牛乳、肉などが悪者にされているようだ。

 コラーゲン、コンドロイチンなどのサプリメント宣伝に至っては、小金を持っている高齢者をだますオレオレ健康詐欺に近いと思う。

 日本人の食事は、主体は和食。季節の旬の食材で一汁三菜、バランス良く、腹八分、良く噛んで、美味しく、感謝して食べましょう。休腸日として、時にはプチ断食をして宿便を出すと、腸内細菌が活性化されて、心も身体も元気になると、患者には話している。  920


2013/4/19 No.631
 富める都市、貧しい農村


 人口減少を迎える我が国で、「富める都市、貧しい農村」という高度経済成長以来の構図が崩れるのは時間の問題という。

 人口減少は、狭い国土の我が国にとって今の人口は多すぎるので、自然現象として、今後団塊世代の高齢化が大きな問題となってくる。

 高度経済成長を担い、地方から集団就職し都市を豊かにしてきた団塊世代が都市で老いてくる。地方のしがらみから逃れ都会に出て自由を謳歌した人々は他人に無関心で、高齢者は孤立する。地域での頼り合い、支え合いが全くないので、すべて公的医療、福祉に依存する。高齢者で病院は機能不全となる。地価が高いので、老人施設の建設は難しく、後期高齢団塊世代が介護難民になるという。団塊世代高齢者の激増に対し、大都市は対応がおぼつかず、財政負担は加速度的に増えて、富める大都市が衰退していく。

 一方、すでに高齢化のピークを越えた地方の農村は、相対的に安定するそうだ。農村での生活は、高齢者が何とか食べていける古き日本の支え合いのシステムが不十分ながら存在しているから。

 高齢化がすでにすすんでいる尾道は、何とかなりそうか。団塊世代である私は、自然と共生する田舎の里山に行き老後を過ごしたいと思っているが、家族はついてこいないと。  920

 里山資本主義シリーズ:NHK広島。
 松谷明彦:人口減少社会の設計:幸福な未来への経済学。中央新書


2013/4/12 No.630
  ピグマリオン効果


 新年度となり、病院には新たに9人の看護師、介護師、学生が加わり、恒例となった千光寺の夜桜の下での歓迎会が行われた。立派に成長してほしいと思う。

 新学期が始まった学校では、教師期待効果(ピグマリオン効果)という教育心理学における心理行動というのがあるそうだ。

 小学生に知能テストをした後、その結果に関係なくランダムに、将来延びるであろう生徒の名前を先生に教えたところ、1年後にその生徒達の成績が明らかに伸びていた。教師が期待をかけた生徒とそうでない生徒では、成績の伸びに明らかな違いがみられたという。「豚もおだてりゃ木に登る」如く、学校の教育に限らず、人は期待されほめられる程、意欲が引き出され成績が向上するということ。ピグマリン王が、自分が彫った象牙の乙女像を愛し続けた結果、象牙の乙女が本当の人間になったというギリシャ神話から「ピグマリオン効果」と名付けられたという。

 期待されるから成長するのか、成長する人に期待するのか。期待されないと成績が下がることを「ゴーレム効果」というそうだが、成長しない人に対しては、期待をかけにくい。職員それぞれに期待をかけて成長してほしいと思う。       920



2013/4/5 No.629
  2025年問題


 超高齢化社会を迎え、20年後には年間死亡者が167万人と、現在より40万人も増える。今まで病院での看取りを増やすことにより対応されていたが、病院が満床状態となり対応できなくなる。

 内閣府の高齢者白書によると、介護を受けたい場所、最後を迎えたい場所のいずれも、自宅を希望する人が最も多いという。

 大きな立派な一軒家に住み、愛し愛されている連れ合いと、優しい子供や嫁による献身的な下の世話などの介護を受け、笑い声が絶えない孫たちや、飼い慣れた犬猫に囲まれ、心身とも穏やかに看取られたいと思うのであろうが・・・。

 少子高齢化、核家族化、老老痴呆化、単身引きこもり化、熟年離婚化、借家化、格差社会化、経済斜陽化などをどうしよう。

 多死時代を迎えるにあたり、多くの結婚式場は斎場に変わり、行政は火葬場を増やすなどの対応策を急いでいる。一方、介護施設、グループホーム、老人ホームなど多死を看取らなければならない施設での医療体制の不備が指摘されている。

 医学は進歩するも、多死を迎えなければならない私達団塊世代はどこでどのように看取られるのであろうか悩ましい。    920


2013/3/29 No.628
 愛少女ポリアンナ


 野球のワールドカップが終わったと思ったら、春の高校野球が始まり熱戦を繰り広げている。今夜は、プロ野球も開幕した。

 高校野球のヒーローで、早稲田大学を経て、鳴り物入りで日ハムに入ったハンカチ王子、齋藤祐樹選手はどうしているだろう。

 人が物事の否定的な評価より、肯定的な見通しに影響され易いことを「ポリアンナ効果」と呼ぶ。30年ほど前、”よかった探しで、逆境の中、明るく元気に生きる愛少女ポリアンナのテレビアニメを子供たちと一緒に見たことを思い出す。ポリアンナ効果とは、ポジテイブ思考のこと。

 一方、「ポリアンナ症候群」というのがあることを知った。自分の悪いところは目をつむり、良い部分だけをみる歪んだポジテイブ思考で、現実を逃避して問題解決が出来ない心の状態を言うらしい。齋藤選手は、現在2軍で調整中、アマチュアとの練習試合でKOされたが、ショックを受けてなくて、自分の良かった部分をプラス思考に発言し、「ポリアンナ症候群」ではないかと噂されているそうだ。

 五体不満足でも、逆境にも、噂にも負けずに明るく生きてゆくには、自己肯定感、自分を愛する力、ポジテイブ思考が必要と言われる。
”持っている”ハンカチ王子はどうなのだろう。     920


2013/3/23 No.627
 アース・アワー

 福山文化大学の今年のトップバッター講師は、猪瀬直樹東京都知事であった。副知事時代からの予約であったので、超多忙の中実現した。

 健康のためジョギングとテニスをしていて、昨年の東京マラソンでは完走したこと。知事になり最初の仕事は、東京都全ての局に、ツイッターアカウントを設置したこと。障害者テニスのグランドスラム達成世界チャンピオンの国枝信吾さんとの対戦を含めたオリンピック招致活動の裏話。東北大震災時の救助活動の裏話など、面白く話された。

 東京都は直木賞の青島幸雄、芥川賞の石原慎太郎、そしてノンフィクション作家の猪瀬直樹と、三代にわたり作家が知事になっている。

 猪瀬知事は、副知事時代から、若者の読書時間の減少、活字離れ問題の解決に向けた取り組みとして、都立高校生による言葉の祭典とか、知的書評合戦であるビブリオバトル首都決定戦など、「言葉の力」再生プロジェクトを展開していて、「作家の視点」で国をつくるという。期待したい。

 今日3月23日は、世界中の人々が現地時間の午後8時30分から9時30分の1時間の間、照明を消す、世界最大の地球温暖化防止キャンペーンの日。我が家も消灯しようと思う。    920




2013/3/15 No.626

新専門医制度

 
2017年から専門医制度が大きく変わるという。
各学会認定により乱立していた専門医制度を無くし、中立的な第3者機関が認定することになる。19の基本領域専門医と17のサブスぺシャリティ専門医に分かれる。基本領域専門医に総合診療科が加えられたのが、今後にとって大きな変化になると思う。

 将来的には、自由標榜制度が改められて、総合診療専門医がいわゆる開業医の主体となる。現在の様な小児科内科とか、手術をしない外科、整形外科などの開業医は、いなくなるのであろう。

 基本領域専門医資格は一人一つが原則になり、例えば、救急科と麻酔科両方の専門医を持つことはなくなる。集中治療専門医は、基本診療科である麻酔科か救急科のサブスぺシャリティに位置づけられるという。ペインクリニック専門医はどうなるのであろう。

 先日、大学の麻酔科50周年記念祝賀会が盛大に行われた。私が入局した時代は、集中治療医学会や日本救急医学会の創設の時であった。あれから40年。麻酔、集中治療、ペイン、救急、総合診療とやってきた。せっかく取得した専門医資格なのと、若干の自負心を保ちたい為、毎年学会に出て、麻酔科、救急科、ペインの専門医資格を維持してきたが、ぼつぼつ終わりにしようと思う。
                              920



2013/3/8 No.625
 ワーク・エンゲイジメント

 
産業医更新の点数を得るため、広島での日本産業衛生学会:第54回産業精神衛生研究会に初めて参加した。「広い視野で考えるメンタルヘルス:一次予防」がテーマであった。メンタルヘルスに、三次、ニ次、一次予防があることを知った。

 職場の過労、人間関係などで、心が不調になってから鬱の治療と再発予防を行うのが三次予防。ストレスチェックなどで心の不調の早期発見、高ストレス群への助言や支援を行うのが二次予防。心の健康を増進して、心が不調になること自体を未然に防止することを一次予防と呼ぶそうだ。

 メンタルヘルスの一次予防では、従業員の心の健康度を示す「ワーク・エンゲイジメント」が、最近話題となっていることを初めて知った。仕事をやらされている、働かされているのではなくて、人間関係、能力、自律性などが満たされ、誇りや、やりがいなど、意欲を持って、自主的に仕事に取り組み、活き活きとしている心の状態を「ワーク・エンゲイジメント」というそうだ。

 職員の「ワーク・エンゲイジメント」を高めるべく、守りから攻めのメンタルヘルスを行い、病院を活性化したいと思うが、まずは、バーンアウト気味の私のメンタルヘルス一次予防が必要の様だ。
                              920


2013/3/1 No624
 腸脳相関:脳はバカで腸はかしこいか?

 
動物の進化は腸から始まり、その後に脳が作られていて、脳が腸を支配しているのではなくて、腸が脳を支配していたという。泣くから悲しくなる、笑うから楽しくなる様に、身体の変化が心、精神
に影響することがある。吐き気がする「むかつく」という内臓感覚は、”癪に障る”という心を表す言葉にもなっている。

 ストレスにより腹痛、下痢便秘をきたす過敏性大腸症候群の患者は、大腸の知覚過敏が、抑うつ、パニックなどの情動変化に影響している。糖尿病の患者は、うつ病が多い。ファーストフードやジャンクフードばかり食べている子供は、直ぐに“キレる”し”むかつく”。

 その原因は腸内細菌巣の乱れであった。偏食、過食が腸に負担をかけ、腸内細菌巣が乱れて、免疫力の低下、セロトニン、ドーパミンの減少をきたし、うつ病や不安神経症など心の異常をもたらしていた。

 脳を良くするには、腸内細菌を良くすること。心を綺麗にしたければ、腹黒い腸(はらわた)を綺麗にすれば良い。坐禅と小食、プチ断食で宿便をだして腸を綺麗にすれば、心だけでなく、顔まで見違える様に綺麗になり。“運”が向いてくるという。

 私は、毎朝臍下丹田肛門締め呼吸による坐禅を行い、”いいうんこ”を出しているが・・・。                               920
 福士豪:内臓感覚:脳と腸の不思議な関係、NHKブックス。
 藤田紘一郎:脳はバカ、腸はかしこい、三五館。
 町田宗鳳:人の運は「小食」にあり、講談社α新書。



2013/2/22 No.623
  第4回京都環境殿堂


 京都議定書締結以降、温暖化防止を世界中に訴えている我が国で、原子力発電は、地球温暖化防止対策の一つとして推進されていたが、福島原発爆発により状況は一変した。ドイツは原発を廃止し、再生可能エネルギー転換を決めた。中国はPM2,5汚染大気を撒き散らしている。日本はどうしたら良いであろうか。

 地球環境に貢献した人を表彰する第4回京都環境殿堂が開催され、今回も参加させてもらった。ロッキーマウンティン研究所理事長のエイモリーBロビンス氏とインド環境哲学者ヴァンダナ・シバ女史が殿堂入りされた。

ロビンス氏は、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換およびエネルギー利用の効率化に関する学術的研究で、地球環境に貢献。シバ女史は、農業・食糧の市場経済化、グローバル化に警鐘を鳴らし、地域での伝統に根ざした環境と共生する農業の普及に貢献。

 メタン輩出の3分の1は、羊や牛のゲップに含まれるメタンだそうだ、メタンはCO2の2倍の温室効果がある。私は、輸入牛肉や乳製品を控えて、自宅で私が作った無農薬の季節野菜を主とした和食を食べることで、地球温暖化防止に貢献している。       920
 エイモリー・B・ロビンス:新しい火の創造。ダイヤモンド社。
 ヴァンダナ・シバ:アースデモクラシー。朝日書店。



2013/2/15 No.622
  皇紀2673年


 2月11日は建国記念の日。一昨年は、現在総理大臣の安部晋三氏による「誇りある国創り」と題する講演を聞いた。今年は、東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏による「国際社会の潮流を乗り切るために:今こそ建国の理念の再構築を」と題する講演を聞いた。

 建国記念の日は、日本書紀にある我が国初代の天皇である神武天皇が、主権国家としての大和の国を興し、我が国の紀年の開始とされたことを記念する日。その後二千年以上にわたり、一度として国家が断絶することなく、継承し守り続けてきた歴史の末に、現在の我々が在るという事実の重みが、建国という事の意味ということを話された。

 市民として権利の主張ばかりを優先する教育よりも、義務を尊ぶ教育をしなければならないこと。日本人として誇りを持つこと。自然の脅威や他国からの脅威に対抗するためには、国家が強い事が大切なことの重要性を話された。

 アラブの春以降の中東、北アフリカ諸国の混乱ぶりを見ていると、建国をしのび、国に誇りを持つ心を養うことが大切と思う。若い看護婦さんに、2月11日の紀元節は何の日かと尋ねてみたが、知らないと。 
                                  920


2013/2/8 No.621
  総合診療専門医


 厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」で、総合的な診療能力を持つ医師を「総合診療医」として、その専門医を「総合診療専門医」と呼ぶことに決められた。

 名称などはどうでもよさそうだが、学会、医師会、行政の様々な思惑が交錯し、議論が戦わされてきたようである。

 高齢化、医療の高度化、専門化、借金財政の我が国で、世界に誇る国民皆保険制度を維持するには、病院内や地域での医療の無駄を省き、効率的な医療制度に変えることが求められている。そのためには、総合診療専門医の育成が必要と指摘された。

 国民も医師も、フリーアクセスで専門医による治療に慣れ切っている我が国で、総合診療専門医はどの様な医師像になるであろうか。

 へき地での総合診療専門医、大きな病院内での総合診療専門医と、後期高齢者医療制度、かかりつけ医としての総合診療専門医とでは、その医師像が違ってくる。現在開業医と呼ばれている各科専門医と総合診療専門医の専門性、サブスぺシャリティ関係はどうなるのか。将来的に、イギリス医療制度での家庭医を目指すのであろうか。

 私は、麻酔科専門医、ペインクリニック専門医、救急科専門医を経て、総合診療医の様な仕事をしているが、これもありであろうか。
                            920




2013/2/1 No.620
  せこい

 
3月末に定年退職を迎える教職員で、1月に早期駆け込み退職する先生がいて問題となった。

 地方公務員の退職金引き下げ法が施行される3月の定年退職より、1月に早期退職すると、退職金の減額を免れるのがその理由という。多くの先生は定年まで職務を全うされるが、学級担任にもかかわらず、早期退職する先生がいるという。子供達から、「私達を見捨てた”せこい”先生」などと、一生後ろ指を指されなければいいが。

 民間より退職金が多いとはいえ、3月末まで働いたほうが、金銭的に損をするという行政の不手際は別にして、35年間先生として働いた誇りとの葛藤をどうするか。

 ”せこい”とは、細かくてケチ、ずるい、浅ましい、卑しいこと。日本国民の地震の際における道徳的な行いは、世界中から称賛されている。一方、老人医療費が無料になると、病院に行かないと損をするとか、介護保険料を払っているので、介護を受けなければ損をするとか、”せこい”ところがある。

 私は団塊世代で、戦後の貧しい時を鼠歳としてあくせく生きてきたので仕方がないとして、教師、医師、政治家など、先生と呼ばれる人は、ノブレス・オブリージュは無理としても、”せこい”ことはしない様に願いたい。                        920



2013/1/25 No.619
  レ・ミゼラブルと東京家族


 罪の文化を意識させる洋画レ・ミゼラブルと、恥の文化を意識させる邦画東京家族を見た。

 レ・ミゼラブルは、ビクトル・ユーゴによるああ無情のオペラを映画化したもの。自由、平等、博愛を旗印にしたフランス革命の混乱の時代を描いた愛と正義の感動物語。罪を償い、罪を意識することにより善行を行う。自分を守るか、他人を守るか。正義か善か。重い内容であるが、俳優の歌唱力に迫力があり、退屈せずに見ることが出来た。

 東京家族は、60年前の尾道を舞台にした東京物語をモチーフとしたもの。老夫婦が東京で暮らす子供たちに会いに上京する設定は同じ。戦後の経済成長の犠牲とされた日本の家族の絆、夫婦と子供たちを描く。正しいかどうかではなくて、世間がどう見ているかで行動を決める。父親が言う、「どっか間違うてしもうたんじゃ、この国は」と。日本の繊細な感情の描写は、レ・ミゼラブルとはまた違った涙を誘われた。

 少子高齢化、核家族化、単身化のすすむ我が国の、60年後の東京物語ではどのように家族が描かれるのであろうか、見てみたい。

 話題性が高く、封切り日は一杯の観客かと思っていたが、どちらの映画もガラガラであった。            920



2013/1/18 No.618
  警策

 
陰湿ないじめ暴力による自殺や、教師による暴力で運動クラブの主将が自殺するという悲惨な事件があった。

 団塊世代である私は、中学校時代の軟式テニスクラブが伝統的に厳しく、3年生は天皇、2年生は平民、1年生は奴隷などと、”しごき”で鍛えられた。当時、学校で先生による体罰は、日常的に行われていた。多くは、悪ガキ矯正の為であったが、理不尽に体罰を加える先生も居たように思う。学校で体罰を受けたことを家で話すと、お前が悪いからだと、母親から先生よりきつい”仕置き”を受けたことを思いだす。

 「警策」は、曹洞宗ではキョウサク、臨済宗ではケイサクと呼ばれる“喝”を入れる棒のこと。馬を鞭打ち走らせる、自覚を呼び起こす、という意味もある。禅宗の僧堂で、坐禅中に心が乱れてきた修行僧に指導僧が喝をいれ励ますこと。「しっかりしろ」「ありがとうございます」と、打つ方も打たれる方も、両者の心の繋がりが棒にこめられ、お互い感謝し合うもの。無の道を生きる禅僧の世界でも、修行僧への体罰や陰湿ないじめとして、警策棒が折れる程打たれることもあるという。

 子供の教育やスポーツの指導に、文殊菩薩の手の代わりとも言われる”警策”は必要と思う。                  920



2013/1/11 No.617
  医宗同源

 
医学の進歩と医療倫理を考える会が広島で開催された。高野山真言宗、百萬枚護摩行者、池口恵観大僧正が、「宗教は医療と連携ができるか?ー宗教と医療倫理ー」と題して講演された。

 古来、医療と宗教は一体のものであった。現在は葬式仏教となってしまったが、仏教は、生老病死の四苦八苦に苦しむ人々を救済することから始まった。祇園精舎は、仏教の修行場であると共に、死を目前にした病人がいて、僧医の施しや読経の声に癒されながら旅立っていった。病人が旅立つと、鐘が鳴らされ、諸行無常の響きとなった。祇園精舎は古代インドのホスピスであった。

 諸行無常は、肉体には限りがあるということ。私達は肉体が生きているのではなく、大宇宙から与えられた命があって、それを生きている。自分の生命と宇宙の生命とは通じ合っている事を話された。無心に「真言」を唱えていると、宇宙と共鳴して、”気”により、生命力、治癒力を引き出すことが出来るという。

 健康とは、身体的、精神的、社会的に良い状態に加えて、霊的にも良い状態が望まれている。霊的なことは仏教であれ、キリスト教であれ、イスラム教であれ、宗教の関与が必要と思う。

 私は毎朝、真向法腹式呼吸坐禅の荒行を行い、患者に”920気”を注入して、癒しを引き出そうと試みている。が・・・     920



2013/1/4 No.616
  思修館

 
今年から、日本を牽引してきた団塊世代が、高齢者の仲間入りをする。
高齢化する団塊世代を支える為、経済再生が叫ばれているが、我が国には、グロ−バル化の世界で、変化を見通して対応出来る経営者が、いなくなったそうだ。一流企業ほど、挫折や失敗をした事がない人が昇進するので、6割以上の企業にリーダシップを発揮できる後継者がいないという。

 短期的視点で、現状を受け入れ、維持管理する有能なマネージャー人材は多いが、長期的視点で、現状を変えて、改革に挑戦する決断力を持つリーダー人材がいないそうだ。

 今春、京都大学が、国際社会で活躍できるリーダーの育成を目標に掲げる大学院を新設する。全寮制で理系文系は問わず、人類が生存し続けるために不可欠な食糧、水、環境と経済成長の問題の解決を探る人材を育成するという。その名も「総合生存学館(思修館)」。

 この小さな国土に1億以上の人口は多すぎる。少子化は自然の成り行きとして、経済成長が望めない中、これから高齢化する私達団塊世代の医療、介護、福祉をどうするか、思修館の若いリーダーは良い知恵を出してくれるであろうか。               920



2012/12/28 No.615
  パーソン・オブ・ザ・イヤー

 
米タイムス誌による「今年の人」は、オバマ米大統領であった。私が選んだ、我が国の今年の人は、ips細胞でノーベル生理医学賞を受賞された山中伸弥先生と、天皇陛下の冠動脈バイパス手術をされた天野篤先生。

 天野先生は、三浪という挫折を経て医学部に入学。この挫折が、臨床医師としてやるべき事を強く自覚させられ、昼夜を問わない臨床技術の努力に繋がったと言われる。技術革新の運も重なり、オフポンプによる冠動脈バイパス術の権威になられた。手術中はあまり頭を使わないそうだ。ピアニストの如く、指が勝手に動くまで、訓練と臨床を重ねて、今があるという。

 山中先生は、整形外科医になるべく、臨床の道に進まれたが、ジャマナカと呼ばれたごとく不器用で、臨床外科医としての挫折が基礎の道に向かわせることになる。基礎においても成果がでず、くじけそうになりながらも、失敗が成功に繋がると、努力した事に運が重なり、成熟した細胞の初期化の成功に繋がったという。

 ヒトは挫折を経験することにより、成長することが出来るという。潰瘍性大腸炎で挫折を味わった安倍首相は成長しただろうか。私が成長できないのは、挫折を経験していないからであろうか。
                              920
 山中伸弥:山中先生に人生とips細胞について聞いてみた:講談社。




2012/12/21 No.614
  人類滅亡の日

 
今年は世界で多くの大統領選挙があった。リーダー達は、自国のみならず、世の中を良くしてくれるだろうか。

 韓国では、初の女性である朴大統領が誕生。台湾では、馬英九総統が再選。アメリカでは、オバマ大統領が再選。ロシアではプーチンが復活。フランスではサルコジが敗れ、オランド新大統領。中国では、胡錦涛から習近平総書記に。北朝鮮では金正恩が総書記に。経済破綻のギリシャ、ムバラク後のエジプト、フィンランド、メキシコ、インド、イエメン、ベネズエラなどでも大統領選挙が行われた。我が国では、民主党が惨敗し、野田首相から安倍前首相に、また首相が変わる。

 オバマには財政の崖、プーチンには国内汚職、オランドにはEU財政危機、習近平には内部抗争などの問題を抱え、リーダシップが発揮できないという。

 西洋の没落により、主要8カ国首脳会議G8の力はなくなり、「Gゼロ」の世界になりつつあるという。リーダー無き「Gゼロ」の世界では、水、食糧、環境など地球上の問題が解決出来なくなる。

 マヤ暦の予言による2012年12月21日の今日、人類は滅亡しなくても、破滅に向かっていることは間違いないと思う。  920



2012/12/14 No.613
  女性が日本を救うことができるか

 
日本は、先進国の中で、最も男女格差が大きい国と言われている。
働く女性は増えたが、結婚・出産後、多くが離職し、議員や企業幹部に女性は少ない。我が国の女性は、教育レベルが高いにも関わらず、うまく活用されていない。女性の労働参加率を欧米並みに引き上げ、女性管理職が増えれば、日本の衰退は止めることが出来るという。

 膨大な財政赤字と高失業率を克服して、EUの優等生と言われる様になったオランダの奇跡をもたらしたのは、女性だった。オランダ政府がパートであっても安心して働ける均等政策というのを実施し、女性の就業率が上昇した。結婚・出産後も、家庭と仕事が両立できる様になり、女性管理職、女性リーダーが激増して、企業の業績が向上。奇跡的な経済回復をきたしたという。

 東京都の医師1300人の調査で、診療時間は男性医師が週50時間、女医が40時間。家事労働は女医が30時間に対して男性医師は、わずか3時間だった。総労働時間は女医が、20時間も長かった。女性医師の離職の大きな原因は仕事と家事のニ重負担で、男性が家事に参加しないことにあると、指摘された。

 女性が日本を救うには、男性が家事を手伝う必要があるという事。イクメンなどしなくていい時代を過ごせて良かった。    920



2012/12/7 No.612
  中年の危機

 
人間の幸福度は万国共通でU字型を描き、中年の時期に幸福度が最も下がることが知られている。
 「類人猿にも中年の危機」と題する論文が発表された。社交性、日常生活への積極性、目的を遂行する、彼らだったら自分は幸せと思うか、などから算出された数値を「幸福度」と定義して、日本をはじめ各国のチンパンジー飼育員にアンケートを実施。その結果、寿命が50年前後とされるチンパンジーで、中年にあたる30歳前後の幸福度が最も低かった。中年で幸福度が最も下がるのは、ヒト科共通の現象ではないかと論じている。

 42歳の厄年、思秋期、人生の午後などといわれる中年の危機。老いを意識し始めて焦りを感じ、人生を大きく変えようとすることを、米国では、「ミッドライフ・クライシス」と言うそうだ。

 自分の人生はこれで良いのか。このままで悔いはないのかと悩み、具体的な行動に出る。身体を鍛え、若作りをしだす。ライフスタイルを変える。ボランティアをしだす。仕事を変える。趣味に生きる。一人で長い旅に出る。農業や牧畜など田舎に移住する。若い不倫相手を探す。アルコールに依存する。離婚する。などなど。

 長寿となった為であろうか、団塊世代である私は、還暦を過ぎて、熟年クライシスに襲われようとしている。       920



2011/11/30 No.611
  ブルーライト

 
青色光は、可視光線の中で紫外線に最も近く、エネルギーが高くて、眼の角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで達するので、眼精疲労や網膜変性症に関与することが指摘されている。パソコンやスマートホンを長く見ていると、画面に使われているLED照明に多く含まれている青色光に長時間暴露されることになり、メラトニンの分泌が抑制され、睡眠リズムが乱されるという。夜パソコンを見ていると不眠症になる。

 一方、青色はヒトの気持ちを落ち着かせる鎮静効果、ヒトを冷静にさせる心理作用があるので、青色燈による情緒障害の治療、季節性うつ病の治療、青色防犯燈による犯罪の抑制などへの応用が期されている。

 駅や踏切での飛び込み自殺は、各国で大きな社会問題となっている。この度、首都圏の駅ホームに青色燈を設置したところ、列車飛び込み自殺が80%以上抑制され、自殺予防効果があることが確かめられた。11月14日の世界糖尿病デーでは、世界の有名建造物がブルーにライトアップされる。その日、世界中で犯罪、自殺が減れば良いが。

 ブルーライトというと、団塊世代の私は、ブルーライトヨコハマを思い浮かべるが、今年、ブルーライト研究会というのが発足して、青色光の人体に対する影響を医学的に検証するという。     920


2012/11/23 No.610
  最低でも県外

 一大年間行事である病院旅行で、今年は沖縄に行ってきた。出発時は寒くて車に暖房が必要であったが、沖縄ではバスに冷房がはいっていた。我が国最大の美ら海(ちゅらうみ)水族館での、巨大なジンベイサメの餌付け、パインアップルパーク、忠考酒造工場での泡盛の試飲、世界遺産の守礼の門、首里城、ガンガーラの谷、国際通りの沖縄料理など、異国情緒な観光をさせてもらった。

 沖縄には、普天間移設問題、オスプレイ配置問題、アメリカ兵による暴行問題などの基地問題がある。若いバスガイドさんの観光案内の言葉の端々に、基地問題が語られていた。観光と基地で成り立っている沖縄の現状を是非見ておきたいと思い、無理を言って普天間基地に寄ってもらった。

 激戦地であった宜野湾市嘉数高台(ぎのわんし かかずたかだい)から、市街地に囲まれた普天間基地が一望できた。オスプレイが並んでいて、試験運転していた。翌日の沖縄新聞の一面に、オスプレイが極東最大の空軍基地である嘉手納基地に初飛行したと報じていた。

 中国は、尖閣諸島どころか、琉球王国と呼ばれていた沖縄の所有権も主張している。最低でも県外、トラストミーなどと、無能な政治を続けている間に、沖縄が占領されなければいいが。      

920



2012/11/16 No.609
  京都古事の森

 
第40回日本救急医学会総会が京都国際会館で開催された。
iPS細胞の山中伸弥先生の特別講演が企画されていたので、無理をして参加した。ところが、ノーベル賞受賞により超多忙となり、ビデオメッセージとなったので、紅葉が見ごろの貴船山から鞍馬山までの京都古事の森を歩いてきた。

 鎮守の森である貴船山、鞍馬山は、神が宿る山として、鞍馬天狗や義経伝説などが伝わる。天候が小雨や霧などに変化して、古事の森は一層神秘的であった。森林浴によるセラピー効果に加えて、貴船神社や鞍馬寺などのパワースポットで心を高めてきた。

 木や森に畏敬の念を抱き、森を切るとバチがあたるとの宗教的、たたり意識がある。人間最古の文明が誕生したメソポタミア文明は、今は岩山だが、その昔は深い森であった。ギリシャ文明が滅びたのは、森を破壊しつくした結果と言われている。

 森に囲まれた鞍馬温泉に浸かりながら、iPS細胞による長寿社会の行く末に思いを巡らせた。政治の堕落、経済の凋落により下山の時を迎えている我が国は、鎮守の森を大切にしているので、生き残れるであろう。                         920



2012/11/9 No.608
  セラピーロード


 森林セラピーは、森林浴を前進させたもの。日々のストレスに疲れた時、森の中に入り、五感を研ぎ澄まして、歩行、運動、自然食、温泉などで疲れを癒して、心身の健康維持、疾病の予防を目指す。

 スイス、ドイツなどでは、古くより病気の治療として取り入れられている。我が国も、森の香り、空気の清浄さ、美しい森の色彩、景観、自然食などによる森林浴の癒し効果が、唾液中のストレスホルモンであるコーチゾールの低下、血圧・心拍数の低下、血中抗ガン蛋白の増加、NK活性の増強など、医学的に検証された森が「森林セラピー基地」として、全国48か所に設定されている。

 広島県で第一号となる森林セラピー基地に、安芸高田町が認定され、深入山、三段峡、恐羅漢山麓、龍頭峡山道が、「セラピーロード」として来年度オープンするという。

 オープンに先立ち、深入山と龍頭峡のセラピーロードを歩いてきた。紅葉まっ盛りで、落ち葉に敷き詰められたセラピーロードを歩いていると、日々の積りに積もったストレスが忘れられる。温泉にも浸かり、免疫力が高められた様に思う。

 これでインフルエンザにもガンにも罹らないであろう。   920



2012/11/2 No607
 割礼


 ドイツのケルン裁判所が宗教儀礼としての割礼に対し傷害罪の判決を下したところ、ユダヤ教徒などが、「ナチス以来のユダヤ人弾圧」と、激しく対立。ベルリンでは、宗教的な割礼手術を法的に保護する制度が導入されるなど、男児に宗教的割礼を行うことの是非が、大きな話題となっている。

 ユダヤ教では、旧約聖書に生後8日目に男子は割礼を行うべきと書かれていて、「神との契約のしるし」として、ユダヤ教、イスラム教では、現在も多くの男児が割礼手術を受けている。

 米国でも、宗教と関係なく男児の割礼の習慣があり、出産後直ぐ無痛で割礼を受けている。南アフリカでは、性病、エイズ感染予防のために、政府が男子の割礼を奨励しているという。

 女子の割礼は、北アフリカを中心に現在でも200万人に行われている。男児の割礼と異なり、大人の女性への通過儀礼の性風習として、クリトリスを含む女性器の切除が行われていて、悪しき性に関する女性虐待として非難されている。

 我が国では、花岡青洲が坊主の包茎を手術して喜ばれたとの記述がある。現在、真性包茎は病気として保険適応されるが、仮性包茎は病気ではないので、一部の敏感な母親の男児、包茎に悩む若者が自費で美容整形外科などで割礼手術を受けている。

 ペニス、割礼の歴史、文化史は奥が深く興味深い。  920




2012/10/26 No.606
  痛くない針


 ペインクリニックでは、ブロック針を刺入する時には、脊髄でのゲートコントロール機序を応用して、刺入部を圧迫しながら素早く刺入する。抜針の際はゆっくり抜く。鍼灸治療では、針管を押しつけながら針頭を軽く叩き刺入する。など、痛くない針の刺し方を工夫してきた。

 糖尿病患者が、血糖測定する為の採血に際し、痛くない採血針が望まれている。2005年に、直径が0,2mmに細めた世界一細い先端の針が我が国で開発され、グッドデザイン大賞を受賞している。

 私達は蚊(血を吸うのはメスだけ)に刺されても、ほとんど痛みを感じない。何故?蚊の針が細いだけの為であろうか?

 何と、蚊の針は3本で構成されている。さらに2本はギザギザとなっている。我々の常識からは考えつかない構成で、蚊は痛みを与えずに針を刺し、血を吸っていた。のこぎり状のギザギザの歯のある小顎を細かく振動させて皮膚に穴をあけ、針状の上唇を刺し込み、血を吸う。先端部分をギザギザにすることで、皮下組織との摩擦が減少するという。さらに複合針が協調運動することにより、痛みを与えずに血を吸っていることが明らかにされた。

 蚊の口器を模倣したマイクロニードルの作製が研究されているが、実用化には数年かかるそうだ。自然の不思議から学ぶことは多い。   
                               920




2012/10/19 No.605
  10万年


 30年後には原発稼働をゼロにするという、民主党政権によるエネルギー戦略がもめている。地球温暖化、再生可能エネルギー、節電、経済成長など、どうなるであろうか。見通せない将来について、確定的なことを決めるのは、難しい。原子力発電所から出る、核のゴミである高レベル放射性廃棄物の最終処分が、もめている。岩盤で囲んでいると、10万年後には害がないレベルまで低下するので、地下300mにガラス個体化して保存する予定であった。ところが、日本学術会議が待ったを
かけた。10万年間、地震が発生しない場所を確定出来ず、安全が保障できないので、永久保存方法の変更を指示したそうだ。

 10万年前は氷河期、瀬戸内海は陸地であった。断崖トラフに囲まれ、いつ崩落するかわからない日本列島に、文明国家が
栄え続けている事自体が、奇跡という学者がいる。

 先日、病院45周年を無事迎える事が出来た。5年後の50周年に向けての展望は。見通せない将来について、確定的なことを決めるのは、難しい。           920


2012/10/12 No.604
  高齢ガン健診


 英国のガン患者の4人に1人が、病状が悪化してから、救急部で初めてガンと診断され、うち大半は数週間以内に死亡しているとの調査報告を英研究機関が発表した。

 調査は、2006年ー08年までのガン患者75万人について調べられた。高齢者では、救急で初めてガンと診断されたケースが、高齢者ガン患者の3分の1をも占めていたという。

 患者が医者に行きたがらないのが一因とみられている。英国では、定期健診はなく、専門病院を受診するには、登録した家庭医の紹介が必要とされている。家庭医のガン健診の推進が指摘されたが、英国民の9割は家庭医を信頼し評価しているという。

 英国の老人は、さまざまな疾患を抱えていても、症状がないと、自分は健康と思い、毎日を元気に過ごしている。一方、我が国の老人は英国の老人より、はるかに健康であるにも関わらず、健診により、多くの病気を持っている病人と思い毎日を過ごしている。

 高齢者にとって、「健診は病気つくりになっても、健康つくりにはならない」、繁殖を終え賞味期限の切れた高齢者のガンは、「早期発見の不幸、手遅れの幸せ」などということを、英国の老人は実践しているのであろう。         920
  中村仁ニ:自然死のすすめ。幻冬舎新書。


2012/10/5 No.603
  医療介護関連肺炎

 日本呼吸器学会が、医療介護関連肺炎(NHCAP: Nursing and Helthcare  Associated Pneumonia) という奇妙な名前の肺炎に対するガイドラインを発表した。米国版を参考にしたとはいえ、もっとましな名前を考えられないものであろうか。

 日本の三大死因は、悪性新生物、心疾患、脳血管障害が上位を占めていた。高齢化社会となり、三大死因に変化が起きている。肺炎死が増加し、脳血管死を上回った。90歳代の死因では、肺炎死が第1位となったそうだ。

 肺炎に対して、市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)を分類して、それぞれガイドラインが作成され、肺炎治療の向上に繋がった。ところが、高齢者の寝たきり患者の誤嚥性肺炎は、治療効果が上がらない。欧米では、寝たきり高齢者の誤嚥性肺炎は老衰と考えて治療しないので、治療概念はないそうだ。 

 我が国で増え続けている高齢者の肺炎死亡率を減少させる為には、肺炎ワクチン接種などよりも、脳梗塞後遺症、痴呆、胃瘻、寝たきりなどの高齢者の死亡診断書に、肺炎と書かずに老衰と書けば、高齢者の肺炎死亡率は減少すると思うが・・・・。920



2012/9/28 No.602 
 想定外

 
津波による福島原発爆発で、「想定外」が話題となった。
想定外とはどういうことであろうか。想定には、人の思いが反映され、見たくないものは見えないし、考えたくないことは考えられないという。

 的川泰宜JAXA名誉教授による「はやぶさから未来へ:いま日本で生きること」と題する講演会が、久井文化センターで行われた。終戦後、日本の未来を元気にする為、ロケット開発を担ってきた歴史の裏話。「はやぶさ」が、幾多の危機を乗り越えた内輪話など、人生哲学を加えながら面白く話された。「はやぶさ」開発は、、すべて未知の分野で、想定できないことばかり。想定外ばかりを考えて、人事を尽くして天命を待ったそうだ。

 勉強ばかりした子供は、答えのある試験問題を解く能力は発達するが、何でも分かっていると思いこむ様になる。そういう人は、想定外を想定出来なくなる。子供の時には、自然の中でしっかり遊び、自然の不思議を多く体験して、宇宙は分からないことだらけ、ということを知る大切さを指摘された。

 想定外ばかりで、領土も、政治も経済も教育も、凋落傾向にある我が国に、元気と自信をもたらすために、「はやぶさ2」を2年後に打ち上げるそうだ。                   920



2012/9/24 No.601
 苦と楽


 福山文化大学で、ロバート・キャンベル氏の講演が大変面白かった。
「苦と楽」をテーマに、流暢な日本語で、幸福哲学、日本人の絶妙なバランス感覚、江戸時代の文献などを分かりやすく解説された。

 私達は、苦しい事ばかりでは辛いし、楽しい事ばかりでは、生きている実感が伴わない。楽しいと感じている時よりも、苦境に立たされた時、それを乗り越えようとしている時、乗り越えた時が、生きていると、実感できる。

 欧米人は、苦と楽は、相反する二律背反的なものと考えている。一方、日本人は「苦あれば楽あり」、「楽は苦の種、苦は楽の種」と、苦楽は表裏一体。苦と楽は連続していて、切り離されないという日本独特の文化思想を持っていることを指摘された。なるほど。

 臨済宗禅僧である沢庵和尚が「苦楽」について書き残している事を紹介された。「寝るほどに楽はなし」とはいうものの、朝から晩まで寝ていろと言われると、「すなわち苦なり」。寝てばかりいる事が、苦と思った瞬間に「起きるは楽」となる。

 私は髪の毛が白くなる程、沢山の苦労をしてきた。昨日64歳の誕生日を迎え、早く隠居して楽をしようと思っている。楽をすることが、苦にならなければいいが・・・。           920



2012/9/14 No.600
  ホエールウオッチング


 近々起こる南海トラフ地震の被害想定が、内閣府から発表された。
南海トラフは、駿河湾沖から四国の南の海底にある水深4千mの深い溝のこと。二つの溝が衝突して海洋溝が沈み込んでいる為、活発で大規模な活断層となっている。南海トラフでは、南海、東南海、東海地震が周期的に発生している。首都直下型地震、富士山爆発などと連動して発生してきた。南海トラフ地震が連動して発生すると、その被害は、想定をはるかに超えるものとなるに違いない。

 先日、高知での日本麻酔科学会中国四国地方会の翌日、土佐市宇佐漁港からホエールウオッチングに行ってきた。小さな漁船で出発。途中、イルカの大群に遭遇して歓声を上げる。水平線が丸く見える太平洋の大海原に向かって、この葉の様に揺れながら船は進んでゆく。2時間あまり走ったであろうか、数隻の漁船が現れたその傍で、突然大きなニタリクジラが出現して、感動した。

 クジラもさることながら、小さな漁船で、水平線以外何も見えない太平洋の大海原の真っ只中に居ることが、心地良かった。

 この大海原の下に南海トラフがあり、エネルギーをためて、地震、津波を発生させていることを思うと、自然の巨大な力に対して、人間など何とちっぽけで無力な存在かを思い知るホエールウオッチングであった。                          920



2012/9/7 No.599
  釜石の奇跡


 東北大震災で、釜石の海岸付近の小中学校の生徒が全員助かったという「釜石の奇跡」が話題となった。地震直後、中学生が個人個人の判断で、教師の指示を待たずに高台に向かって走り出した。小学校の屋上に逃げていた小学生はそれを見て、中学生の後を追って走りだした。途中助け合いながら、より高い高台に逃げて、祖母を助けようと家に帰った少女を除いて、間一髪で全員が助かった。

 「想定にとらわれない。最善を尽くす。率先して逃げる。」という避難三原則の授業を、子供たちが忠実に守ったことが奏功したという。

 東北地方には、「津波てんでんこ」という教えがあるそうだ。津波が来たら、各自てんでに逃げて率先避難者になれ。家族も必ず逃げるという信頼のもと、自分の命は自分で守れ、という教えの事。自分自身は助かり、他人を助けられなかったとしても、それを非難しないという不文律にもなっているそうだ。

 住民に避難放送を続けた市職員の女性、警察、消防など職務を全うしたが為に死亡した人、家族を助けに家に帰って死亡した人々は、死んでも仕方がなかったで、済ませていいであろうか。病院が津波に襲われた時、医師は率先して逃げることができるであろうか。

 明日、高知で麻酔科学会が開催され、参加しようと思っている。南海トラフ大地震津波が襲ってきたら、私はどうしよう。  920


2012/8/31 No.598
  IPPNW


 IPPNW(International Physycians for the Prevention of Nuclear War) の第20回、核戦争防止国際医師会議が、「ヒロシマから未来の世代へ」をテーマに、28年ぶりに広島で開催された。

 IPPNWは、直流除細動器の開発者である、バーナード・ラウン、ハーバード大学名誉教授が、医師として医学的立場から、全人類を破滅の危機に追いやる核戦争を防止するために、1980年に創設。東西冷戦で、差し迫っていた核戦争の危機を未然に防いだ貢献で1985年、IPPNWの共同会長として、ノーベル平和賞を受賞している。

 被爆都市広島で開催されるということで、広島県人の医師として、無関心はどうかと思い、マツダ球場でのカープ対阪神タイガースのナイター観戦前に、広島国際会議場をのぞいてみた。

 先進国から途上国への武器輸出問題、福島原発爆発問題、原発廃止の是非などが討論されていた。原発、核廃棄物、核兵器など全ての核の連鎖は、健康と環境への危険に満ちている。二度と新たな被爆者を出してはならないとの,「ヒロシマ平和アピール」の発表を聞かせてもらった。

 医師が医学的立場から「最後の疫病」と呼ばれる「核」を封じ込めるのは、エイズ、インフルエンザが封じ込められない様に難しい。
                              920
  バーナード・ラウン:生存のための処方箋。


2012/8/24 No.597
 ピース・アーチ・ひろしま

 
 広島から世界に国際平和のメッセージを伝えるプロジェクト「ピース・アーチ・ひろしま」の一貫として、来年8月に開催される「ワールド・ピース・コンサート」のプレイベント・コンサートが、広島国際会議場で開催された。

 広島交響楽団と伴に、若手美人アーチスト、フルートの新村理理愛、ヴァイオリンの宮本笑里。ソプラノの幸田浩子の美しい歌声。千の風になってのテノール歌手、秋川雅史。アメリカから、天使の歌声と称される声を持つ天才少女ジャッキー・エヴァンコ、グラミー賞受賞クリストファー・クロスなど色々なジャンルの演奏が素晴らしく感動した。

 メインは、盲目のピアニスト辻井伸行によるチャイコフスキー・ピアノ協奏曲第1番。生まれながらの全盲で、楽譜を見る事が出来ず、神から授かった才能とはいえ、幼い頃から周りのささえと本人の努力で、これほどの演奏ができるとは、奇跡としか言いようがない。演奏後のコメントで、「眼は見えなくても原爆ドームの前では、戦争の悲惨さが感じられた。平和を念じながら演奏しました」と。

 内戦が泥沼化しているシリアでは味わえないであろう平和で、贅沢な時を過ごさせてもらった。            920
  神山典士:奇跡のピアニスト辻井伸行の奇跡。講談社。





2012/8/17 No.596
 サバティカル休暇

 毎年夏には約1カ月の休暇を、自然に囲まれた質素な別荘で過ごすフィンランドの医師に、日本の医師は長い夏休暇がないことを話すと、あなたは何の為に仕事をしているのかと、問われたことがある。

 資本主義活動のことを英語でビジネスというが、それは「暇がない」という意味。我が国は、国民が一斉に休む休日、祭日はあっても、休暇の概念がないという。休暇の無い働き蜂人間には、文化的な創造力が生まれてこないそうだ。

 お盆休みに高野山に登ってきた。世界遺産となった聖域高野山で、非日常的体験をさせてもらった。宿坊での修行僧からの接待、精進料理、早朝の勤行。写経、阿息観、無明の間での授戒などが体験できる。千年杉の木立に覆われた一体に、戦国大名をはじめとする無数の墓石群が広がっている「奥の院」への参道をローソクの光で埋め尽くし、先祖をはじめ、奥の院に眠るすべての慰霊を供養する幽玄なお盆の行事も体験することができた。

 忙しい日常を離れ、歴史的宗教的遺産に触れ、これからの人生、ワークライフバランスをどうするかを、ゆっくり考え、明日へのエネルギーを補充しようと思っていたら、病院から携帯電話が鳴ってきた。
                                920


2012/8/10 No.595 
 甲子園で泣く様な選手はプロで大成しないは本当か


 ロンドンオリンピックで、トップアスリートが、負けて流す悔し涙、メダルを取っての嬉し涙には、感動させられる。

 甲子園で泣く様な軟弱な選手は、プロで大成しないというジンクスがあるそうだ。5打席連続して敬遠されて敗れた星陵の松井。PLの福留などは負けても悔し涙を流していない。苫小牧の田中は、早実との決勝戦で、斎藤の直球に空ぶり三振して敗れたが、打席の中で笑っていた。東北のエースダルビッシュは、3年の夏、最後の打者で三振したとき、笑みを浮かべていた。

 一方、広島カープのプリンス堂林は、優勝したが完投出来ず、御立ち台で号泣したそうだ。甲子園で全国優勝したにもかかわらず、泣いて謝った選手は堂林が唯一だそうだ。堂林は、練習試合でも負けて悔し涙を流すことで、スカウトには有名だったという。あのハンカチ王子齋藤選手は、全国優勝し、嬉し涙を流している。

 甲子園の高校球児は、負けた時、青春の悔し涙を流してほしい。悔し涙は、軟弱ではない。その青春の純朴さが美しく、大切と思う。  
                              920



2012/8/3 No.594
 アスリート

 
ロンドンオリンピックでのトップアスリート達は、皆立派な体格をしている。水泳選手の逆三角形のナイスボディは素晴らしい。

 アスリートは身体を鍛えているので、健康と思っていた。ところが、トップアスリートはジュニア時代から競技に参加していて、慢性障害をかかえていることが多いという。

 使いすぎ症候群の整形外科的疾患、女子長距離選手の拒食症などの精神疾患以外にも、多くの内科的疾患を抱えている。エポジンのドーピングは有名だが、以前、アスリート貧血と呼ばれる鉄欠乏性貧血が、トップアスリートの1割以上にも認められていた。運動誘発喘息は知られているが、一般成人の喘息有病率5%に比して、トップアスリートは12%もの喘息有病率と報告されている。我が国では、スケートの清水宏保、プロ野球の藤川球児が、喘息であった。テニスの世界ナンバーワン、ジョコビッチは、試合中の苦しそうな息使いを見た、面識のない医師の指摘で、好物のピザやパスタに含まれているグルテンアレルギーが判明したそうだ。

 スポーツは健康に良いといわれる。団塊世代である中高年の私は、この暑い真夏の日中、テニスを一生懸命楽しんでいるが、間違いなく寿命を縮めていると思う。         920


2012/7/27 No.593
  絆(その2)

 
「絆」は、平安時代には「ほだし」と読まれていたそうだ。それは、馬の脚にからませて動けないようにする綱を意味していた。出家して仏門に帰依したいときに、親子の情などの「ほだし」が邪魔になる、という意味で用いられていたそうだ。

 「絆」は結びつけるという意味。その結びつきを肯定的にとらえるか、否定的にとらえるかで、その意味は大きく違ってくる。「きずな」と読むと、人と人の強いつながりとなり、「ほだし」と読むと、人の心や行動の自由を縛るという意味になる。

 しがらみとしての「ほだし」は、個人を束縛、支配して、自由を奪うことになる。嫁と姑の確執、嫁の介護地獄などは、典型的なしがらみとしての「ほだし」であろう。核家族化。無縁社会、孤独死などは、複雑な人と人との関係である「絆:ほだし」から解放されて、自由を求めた結果だと思う。

 断つことのできない親子関係は、「きずな」と「ほだし」の微妙なバランスで、子供は成長、自立していく。親子の情など気にせずに、娘たちには早く嫁に行って自立してもらいたいものだ。

 元は他人である熟年夫婦の「絆」は、「きずな」であろうか、それとも「ほだし」であろうか?          920
 河合隼雄:「老いる」とはどういうことか。講談社+α文庫




2012/7/20 No.592
  天気痛

 
九州に豪雨をもたらした梅雨が明けたようだ。
天気が悪いと気分が晴れない。低気圧が近づき雨の降る前には古傷、関節痛、頭痛など慢性痛が増悪する。何故であろうか。

 ヒトの慢性痛が低気圧により悪化する現象が、動物実験で確かめられた。ラットの慢性痛モデルを減圧環境に暴露する実験が行われた。その結果は、自発痛行動の増大、痛覚過敏、アロディ二アの増強が観察された。低気圧では血圧上昇、心拍数が増加した。気圧低下は交感神経を興奮させることが明らかにされた。さらに、内耳を破壊したラットでは、気圧低下時にも痛覚過敏現象が現れないことも分かった。内耳にある気圧センサーで低気圧を感知し、交感神経が興奮して、慢性痛が増悪するという機序が動物実験で明らかにされた。

 天気が悪くなるとひどくなる痛みは「天気痛」と呼ばれる。以前「むちうち」と呼ばれた追突交通事故後の痛みは、気候の変化で増悪し、天気痛の代表であった。最近は脳脊髄圧減少症と診断されブラッドパッチ治療が行われている。その昔、硬膜外ブロックのドラポン後頭痛に膜外ブラッドパッチを行い、学会のシンポジウムで発表したことを思い出した。       920



2012/7/13 No.591
  痛みと痒み

 
第46回日本ペインクリニック学会が松江で開催された。「痒み」が大きなテーマとなっていた。
 痛みは、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛に分類される。痒みも、ヒスタミンが関与する末梢性掻痒、腎不全、肝不全などの中枢性掻痒、帯状疱疹後掻痒などの神経障害性掻痒、うつ病による心因性掻痒に分類される。

 オピオイドμ作動薬のモルヒネは、最強の鎮痛薬であるが、麻薬で依存性がある。身体依存性のないオピオイドκ作動性鎮痛薬の開発が行われ、東レが世界に先駆けて化合物の合成に成功した。開発段階で、モルヒネの副作用である痒みがない事、さらには、止掻痒効果があることが分かり、開発目標が鎮痛薬から止掻痒薬に変えられた。モルヒネは脊髄にあるμ受容体に作用して痒みを誘発する。κ受容体はヒスタミンとは異なる機序で痒みを抑制するなどの研究成果により、κ作動薬が世界初のオピオイド系止掻痒薬として、臨床開発から15年、日本で薬事承認を得た。当初鎮痛薬として合成されたナルフラフィンの止掻痒作用の発見と作用機序の解明、開発の推進は、大学での基礎、臨床研究と企業との産学連携の成果であった。

 痒みと痛みの違いは、C線維での伝達量の違いによって生じるなどと、議論していた頃を思い出すと、隔世の感がある。     920


2012/6/29 No.590
 お迎え現象とは何か


 自宅で看取られた患者の約4割が、亡くなる前に、すでにいない親の姿などを見たと、家族に語っていた。お迎えを体験した患者は、ほとんど例外なく穏やかな最後を迎えていた。との調査研究を宮城県で在宅医療を行っている医師チームが報告した。

 終末期の患者が自らの死に臨んで、すでに亡くなっている人物を見る体験「お迎え現象」とは、何を意味するのであろうか。

 「お迎え現象」は、蘇生にて生き返った人が経験する「臨死体験」とは異なる。死の前の脱水、脳機能障害に伴う、せん妄、幻覚などの医学的解釈からも捉えられない意味を持っているという。

 あの世と繋がっているという感覚は、死への恐怖、不安感を和らげてくれる。生物学的死である臨終に近づく過程で、身内の人とのスピりチュアルな関係を保ち、最後の時を穏やかに過ごす為の、神からの贈り物と考えられている。

 これから多死してゆく団塊世代は、無宗教、核家族化、病院死により、看取りの文化が無くなり、霊魂もお迎えもなくて、死の恐怖とどう向き合い往生していくのであろうか。     920
 奥野修二:死の床で見える「お迎え現象」調査報告。文藝春秋7月号
 矢作直樹:人は死なない。パジリコ。 920の独り言(556)。


2012/6/22 No.589
  プロ育成

 第15回日本臨床救急医学会が熊本で開催された。
救急救命士制度が出来て20年。メディカルコントロール下に気管挿管、点滴、ボスミン注などの医療行為を行っても、蘇生率の向上が得られていないことが明らかにされた。今後の救命士の拡大医療行為、教育、育成などについて、白熱した討論が行われた。
 
前日に小児の脳死心臓移植を執刀した澤芳樹阪大教授による、若い医師を育てる10年後を見据えた心臓血管外科の近未来を解説した特別講演は内容が濃く、聞きごたえがあった。
 
女子プロゴルフ界にあって、永久シードの不動祐理、賞金王の古関美穂、上田桃子、大山志保、昨年ブレークした笠りつ子らの有名女子プロは皆、熊本出身だそうだ。熊本ジュニア監督の岩本泰作公認プロインストラクターによる「熊本ではどのようにして強いジュニアゴルファーを育てているのか」と題する教育講演が面白かった。
今年の日本女子プロは、国内で優勝出来ず、屈辱的な7連敗。韓国美女ゴルファーは、何故強いのですかと、質問してみた。練習量、向上心、熾烈な競争と挑戦心などのいわゆるハングリー精神に加えて国家戦略システムがあるからだ、とのことであった。
 医学会で異分野の話を聞くのも面白い。           920



2012/6/15 No.588
 ねつ造論文

 第59回日本麻酔科学会が神戸で開催された。
1000題近い一般演題に加えて、招待講演、シンポジウムなどが56題。ワークショップ、セミナーなどが20題。その他、周術期セミナー、リフレッシャーコース、蘇生科学シンポジウムなど盛り沢山で、私が医師になった40年前と比べると隔世の感がある。

 学会はねつ造論文問題にて大騒動で、調査委員会が設置された。大学准教授の麻酔科医師が、1991年から2011年の間に発表した193の論文に対して、英国の研究者がこの医師の論文の患者などを統計的に分析し、データに捏造の疑いがあることを指摘した。横隔膜機能と各種薬剤との相互関係の基礎研究から、術後悪心、嘔吐の予防に関する臨床研究の論文を欧米誌に数多く発表している。学会では、術後悪心、嘔吐に関する教育講演を行っていた。

 苦労して研究した自分の論文が学術誌に掲載された時の快感は何とも言えないものである。快感、地位、名誉、金、野心などの誘惑に負けるのであろう。ねつ造論文疑惑は無くならない。
薬の治験に関する論文などは、いい加減で信用していないが、一人で193ものねつ造論文が一流誌に発表できたとは驚きだ。  
                                  920


2012/6/8 No.587
  魚は痛みを感じるか

 
痛みとは主観的なもので、不快な感覚性、情動性体験と定義されている。自分に痛みがあることは分かるが、他人の痛みは分からない。胎児は痛みを感じるであろうか?アメリカでは妊娠20週以降は、中絶に際して、胎児が痛みで苦しまない様に、鎮痛剤を投与するように
提言する人がいる。

 ところで、魚は痛みを感じるであろうか?
マウスの熱反射や猫、犬などを用いて行われてきた痛みに関する電気生理学的、生科学的研究が、ニジマスを用いて行われた。組織学的に、魚にも人と同じ様な痛みの神経線維が存在する。魚は侵害刺激を受けると、脈拍や呼吸数が増加し、ストレスホルモンを産生する。注意力が散漫になり、食欲が減退する。これらの反応は、モルヒネ投与により抑制されることが明らかにされた。実験結果から魚は、感情や情動を持っていて、魚には苦しむ能力があり、何らかの痛みを感じていると結論された。

 人間の食糧となる家畜の屠殺に際しては、動物が痛みで苦しまない様に配慮がなされている。とすると、魚の捕獲や針で釣り上げる魚釣りでは、魚が苦しまない様に何らかの配慮が必要だろうか。
                                920
 ビクトリア・ブレイスウエイト:魚は痛みを感じるか?高橋洋訳。
 紀伊国屋書店。



2012/6/1 No.586
  サーチュイン遺伝子

 
がん、脳卒中、虚血性心疾患、認知症の最大の危険因子は老化。飽食による糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満は、動脈硬化を介して老化を促進する。

 若返り、長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子が注目されている。サーチュイン遺伝子が活性化されると、血圧が下がり、血糖が低下し、動脈硬化が予防できる。記憶が良くなり、痴呆が予防できる。がんが予防でき、しみがとれる。白髪が黒くなり、見た目も若々しくなる。

 小食、断食によりサーチュイン遺伝子は活性化される。腹八分は健康の元。一日一食、青汁、ごぼう茶、酵素などが健康に良いと、小食による健康本が巷にあふれている。イスラム教のラマダーン、坐禅と共に行う断食には抗老化作用がある。少食の日野原重明先生は、100歳を超えても活躍。石原東京都知事は、プチ断食により、若づくりをしている。脊髄小脳変性症を断食で治した森美智代さんは、10年来青汁60キロカロリーだけで、若々しく元気に活躍している。腸内細菌が草食動物の様に変化したのであろうか。

 小食、断食により黒い髪の毛で、見た目も若々しく歳をとるか、美味しい物を腹いっぱい食べて、白髪を我慢するか、それが問題だ。
                           920


2012/5/25 No.585
南海トラフ

 
第28回日本救急医学会中国四国地方会が、松山で開催された。
災害医療をテーマに、東北大震災の検証と、DMATの受け入れ体制、そして今後起こりうる南海トラフ大地震に対する対策が、救急医、消防、自衛隊を加えて話し合われた。

 南海トラフで発生する東南海、南海連動地震は、周期的に発生している。887年の貞観大地震、1707年の宝永大地震では、富士山の噴火が連動して発生している。今後30年以内に、東海地震は87%、南海地震は50%、東南海地震は60%、首都直下型地震は70%の確率で発生する。私達が今後30年で交通事故で亡くなる確率は0,2%、ひったくり被害にあう確率は1,2%という。

 矢田部隆一愛媛大学防災情報研究センタ長の特別講演で、東南海、南海地震に加えて首都直下型地震が連動して発生した場合、凋落傾向にある我が国の経済は、破綻する。防災対策は必要だが、連動大地震と津波で、陸路、海路、空路が遮断され、四国は陸の孤島となり、救助が難しくなる。小分けの地震発生を祈るだけとの話であった。

 団塊世代である私は、南海トラフ大地震に遭わずにすむかもしれないが、今の子供達は、可哀想だが大人になるまでには、間違いなく発生する大地震に遭遇する試練を覚悟しなければならない。   920


2012/5/18 No.584
 尾道薪能

 
尾道薪能が、浄土寺阿弥陀堂で開催された。日本伝統芸能である「能」は、世界最古の舞台演劇と言われている。亡霊、神、鬼など、本来目に見えないあの世の超自然的な存在が、能面で出現して、主役のシテとなり、この世の人間がワキとなり物語が進行する。

 今回の演目は、「春日龍神」。インドに修業に行くことを願う明恵上人を、春日龍神が思いとどまらせる話。

 戦乱、大地震、飢餓など末法思想の鎌倉時代に、「人はいかにすれば救われるか」が問われ、法然、親鸞、道元、明恵など、多くの優秀な宗教家が現れた。

 明恵上人は、コッホと同様に自分の耳を切るなど、厳しい修業による悟りを求め、他力本願の法然を激しく批判したことで知られる。法然上人が性悪説、他力本願、現実主義、死後の極楽浄土を求めたのに対して、明恵上人は、性善説、自力本願、理想主義、現世の厳しい修業による悟りを求めたと言われている。

 重要文化財である浄土寺の阿弥陀堂の荘厳な舞台。薪の炎。きらびやかな衣装と龍神のお面。笛、太鼓、大鼓、小鼓、謡の響き。日本古来の幽玄を味わせていただいた。     920
  町田宗鳳:法然対明恵。講談社選書メチエ。



2012/5/11 No.583
  雲仙普賢岳

 
雲仙岳は島原半島中央部にある火山。一つの山の様に見えるが、普賢岳、国見岳、妙見岳などの溶岩円錐丘により形成された複合火山。昭和2年の日本新八景山岳の部で1位となり、雲仙は昭和9年に我が国で最初の国立公園に指定されている。

 かつては普賢岳が1359mと最も高かったが、平成7年の火砕流で、多くの犠牲者を出した溶岩ドームにより出来た平成新山が、1486mと最も高くなった。平成10年からは、普賢岳登山が再許可された。

 昨年夏、普賢岳に登るべく雲仙を訪れたが、豪雨の為登山口に行けなかったので、この度のじじばば普賢岳登山に同行させてもらった。

 強い風の中、普賢岳頂上に登ったが、濃い霧の為に何も見ることができなく、翌日の経ヶ岳に登る予定を変えて、再度普賢岳に登ることになった。幸い翌日は快晴となり 、三度目の正直で、普賢岳頂上から壮大な溶岩ドームとなっている平成新山を目の前に見ることができた。

 学生時代に同じルートで登った事がある春の白馬岳で、多くの医師が遭難した事をニュースで知り、山の天気の恐ろしさを改めて知らされた。 私達は、天気に恵まれた普賢岳登山と、雲仙温泉、大崎温泉孔雀荘の露天風呂で命の洗濯をさせてもらった。     920



2012/4/27 No.582
 脳死麻酔

 
第16回日本神経麻酔・集中治療研究会が岡山で開催された。
脳外科手術の麻酔管理、低体温による脳保護、麻酔薬による脳発達障害、周術期の高次脳機能障害、脳蘇生、神経再生などの研究成果が発表された。脳死に関しては、家族の同意のみで脳死臓器移植が可能となり、ニュースにならなくなった。研究会でも話題にならなかったが、脳死体からの臓器摘出の麻酔管理はどうしているのであろうか。

 我が国第一例目の脳死臓器摘出では、脳死患者にメスが入ると、血圧上昇、体動がみられたので、吸入麻酔剤と筋弛緩薬の投与により管理したと報告されている。

 欧米では、臓器提供脳死患者に麻酔をかける必要はないと、移植臓器ガイドラインにあるようだが、良い状態での臓器摘出には呼吸、循環、代謝管理が必要とされる。手術による侵害刺激に対する血圧上昇は脊椎反射と思われても、麻薬、吸入麻酔薬の投与、体動には筋弛緩薬の投与を行う麻酔科医がいるそうである。

 30年ほど前に、スイスのバーゼル大学病院で、脳死患者から両腎摘出の麻酔を担当した時の不快(解)な思いは忘れられない。
                           920



2012/4/20 No.581
  ダイバァシティ

 
実物大ガンダムが立ち、ショッピング、食べる、遊ぶなど多様な商業施設を備えた「ダイバーシティ東京」が、新しい観光施設として、お台場にオープンした。ダイバーシティとはDiversityとCityをかけた造語だそうだ。

 近年,ダイバァシティという言葉が注目されているという。
多国籍国家アメリカでの、黒人、女性、マイノリティへの差別、人権問題など、道徳や倫理観から生まれた言葉で、「多様性を受け入れる」という意味になる。

 経済界では、ダイバァシティ・マネージメントが、企業の重要なキーワードになっているという国内外の多様な要求に応じて、多様な人材と人材の多様性を生かすことで、組織の活性化や創造性を高めるという。医学部の教授は、一定数他大学出身者起用が義務ずけられたこと、新臨床研修制度も、多様な考え方、手技で医療、医学教育の活性化をもたらすダイバァシティと思う。

 40億年にわたる生命の進化の結果誕生した”生物多様性”(Bio-Diversity)が、地球温暖化により失われつつあるという。

 私達には多様性が大切で、国連は 5月22日を国際生物多様性の日に制定した。
                           920
山口一男:ダイバーシティ:生きる力を学ぶ物語、東洋経済新報社


2012/4/13 No.580
  リジリエンス

 
東北大震災以降、リジリエンス(Rejiliens)という言葉が、注目を集めているという。強風にたわむ柳をイメージした、回復力、復元力、しなやかさ、などと訳されている。心のリジリエンスは、うつ病や不安障害を予防することが知られているが、大震災による恐怖、悲劇、トラウマなど、困難な状況に打ち勝ち、逆境から回復する心の力として注目された。

 復興を含めた防災力としてのリジリエンスも注目されている。金融危機、新型インフルエンザ、テロ、大震災など、社会生活が破綻するような大災害に対しては、復興を視野に入れた防災力が重要となる。組織として致命傷を防ぎ、被害を最小化し、早く復興する為には、平時には無駄と思える強い国土、社会、産業構造を備えておくことが大切という。

 働きアリの7割は働かずに休んでいるそうだ。皆が働き過ぎて疲れる組織は長く続かない。アリには指揮命令はなくて、突然の仕事が生じたときに、働くという。効率の悪いシステムが結果的には生き残るということ。

 効率ばかりを追求してきた我が国の国民、社会、産業構造は、脆弱化している。災害時の生き残り策をアリさんから学ぶ。 
                               920
 長谷川英祐:働かないアリに意義がある、メディアファクトリー。


2012/4/6 No.579
   病気自慢

 
税や医療・介護などの社会保障情報をまとめて管理する国民総番号制度(マイナンバー)が検討されているようだ。便利で効率的になるとは思うが、個人情報の保護、個人の国家管理が気になる。

 老人が集まると病気の話になる。医者の話、薬の話、自分の病気の話などなど。病気は一番の個人情報なのに、自分の病気自慢をする人さえいる。何故であろうか。

 病気自慢は、「自己開示」だそうだ。自己開示とは、自分に関する個人的なことを相手に話す事を言う。自己開示をすると、人は親密になれる。病気は究極の個人情報。それを仲間に話すということは、究極の自己開示となる。開示を受けた方の人も、自分の病気を開示し返すことで、相手の思いに応える。病気というネガティブなことを、ポジティブに開示するから、お互いに弱みを見せあったという親密感がわく。ということらしい。

 欧米の老人と比較して、自覚症状はなく、健康な生活を送っているのに、健診や人間ドックで病気つくりをして、血液さらさらの薬とか、骨の薬とか、メタボの薬とか、世田谷グルコサミンとか、皇潤とかを服用し、自慢しあっているばあさんの何と多いことか。   920
   佐藤眞一:ご老人は謎だらけ。光文社新書。


2012/3/30 No.578
  自然死のすすめ

 我が国は超高齢化社会となり、国民の2人に1人ががんに罹り、3人に1人が、がんで亡くなっている。

 がん死をなくすために、がん対策推進基本法で、がんの予防、がん検診による早期発見、がん治療研究、がん治療の均てん化の推進が謳われている。今年4月に改正されるがん対策基本では、働く世代と小児のがん対策の充実が重点課題となるようだ。

 胃瘻造設に疑問を投げかけた「平穏死のすすめ」に続いて、高齢者医療への問題点を提起した「自然死のすすめ:大往生したけりゃ医療とかかわるな」が、ベストセラーとなっている。

 がんの最大の危険因子は老化だから、超高齢化社会になると、皆ががんに罹患する。年寄りには、健診、人間ドックは、「病人つくり」になっても「健康つくり」には役立たない。繁殖を終え賞味期限の切れた年寄りには、がん死が一番のお勧め。「早期発見の不幸、手遅れの幸せ」。高齢者のがんは、治療しなければ苦しくなく、痛まない。「自然死は餓死」。ヒトは食べないから死ぬのではなく、死ぬ時がきたから食べないのだ。「良き逝き方は、良き生き方」などなど。

 終末期に栄養、水分補給などの延命処置をとらなくても、医師は免責されるという尊厳死の法制化案が、国会に提出される予定という。早く法制化してもらいたいものだ。      920

 中村仁二:大往生したけりゃ 医療とかかわるな。幻冬舎新書
 石飛幸三:平穏死のすすめ。講談社



2012/3/23 No.577

明るい社会の未来像

 
我が国は、急激な少子高齢化、若者の家畜化、格差、借金財政、年金破綻、政治の堕落、経済の凋落などに加えて、東北大震災が発生し、暗雲垂れこめる暗い未来となっている。下山の時とはいえ、何か明るい話題は、ないものであろうか。

 京都大学附置研究所が、「明るい社会の未来像」をテーマに、21世紀の日本を考える:京都からの提言を開催することを知り、神戸国際会議場まで聞きに行ってきた。

 地球温暖化対対策の切り札である「バイオリファイナリーの展望」、「生命誕生の設計図:再生の仕組みを解くカギ」、「スーパーコンピューターが拓く未来」、「夢を現実にするナノ空間材料」など、有名教授による未来像の話を聞かせてもらった。

 優秀な我が国の頭脳集団による高い技術力の開発には、明るい未来が感じられた。高い技術力の開発に加えて、豊かで憂いのない明るい未来社会を形成するためには、それぞれの個人が、豊かな創造力と、高い判断力を持つことの重要性なども話合われた。

 京都からの提言を聞き、混沌の時代に一筋の光明を味わせてもらおうと、美味い神戸牛を食べたところ、何と腹を壊してしまった。
                                920


2012/3/16 No.576  
 おばあさん仮説


 観光地、劇場など、どこに行っても元気なおばあさんだらけだ。
生物の最大の目的は、子孫を残すこと。生殖期を過ぎ、生物としての役目を終えた後生殖期は、生物にとって不要な期間。自然界では後生殖期になっても長く生き延びる生物はいない。

 男性は、死ぬまで精子の製造能力があるので、後生殖期はない?女性は閉経して卵が無くなると、生殖と関係なくなる。それなのに日本女性が世界一長寿なのは何故。賞味期限の切れた後生殖期のおばあさんは、ヒトの繁殖にとってどんな意味があるのだろうか。
 
 ヒトは他の動物に比べて、未熟な状態で生まれる。一人前になるのに長い年月がかかる。生後1年くらいは助けが必要。進化したことで、養育に膨大な手間がかかり、親だけでは子育てが難しくなった。そこで、子育ての社会化が起こり、おばあさんが子育てに参加する様になった。おばあさんの協力で、子供の死亡率が下がり、種としての繁殖に役立っている。ということらしい。

 おひとり様の老後などと、孫の面倒もみずに、自分の健康のことばかり気にしている、賞味期限の切れた後生殖期のおばあさんは、生物進化論からすれば、淘汰されなければならないだろう。     920
 上野千鶴子:おひとり様の老後、法研。
 佐藤眞一:ご老人は謎だらけ、光文社新書。



2012/3/9 No.575
 人間改造(2)

 
安佐医師会で、医学の進歩と医療倫理を考える講演会が開かれた。
講師は島薗進 東大教授。「人間改造は望ましいか?生命の科学・人間の学問」と題して講演された。
 宗教学者の第一人者らしく、宗教的背景を踏まえて、ES細胞による「ヒトのいのちを作る」ということから話が始まった。中絶は、米国では政治を二分する程の大問題。我が国では、間引き、水子供養などと、中絶が行われてきた倫理観と、宗教的・歴史的背景を解説された。

 本人の意思で臓器提供がなされる移植医療に関しては、容認するが、世界的に、脳死はヒトの死ではないという方向に向かっていること。家族の同意のみで脳死臓器移植が行われることには疑問を呈された。

 先端医療は、おごりの領域で、病気を治すところまでは許されるが、そこから外れない様にすることを指摘された。子供の産み分け、デザイナーベビーなど、より良い子供を得ようとする医療。優れた能力を発揮するためのドーピング医療。老化防止医療。幸せな魂を得るための記憶、気分の操作医療などにも言及された。

 胃瘻に関する質問に、老年学会の指針、厚労省は、終末期医療として消極的になりつつある。”穏当に”という意見であった。
先月出版された「日本人の死生観を読む」も面白い。   920
 島薗進:日本人の死生観を読む、朝日新聞出版。
 町田宗鳳・島薗進編:人間改造論、新曜社。




2012/3/6 No.574
  ミドルクラス

 
今年の世界経済フォーラムが発表した報告書「グローバル・リスク」によると、今後起きるであろうグローバルなリスクは、資源不足でも核問題でもなく、”深刻な所得格差”だという。

 2位は金融崩壊、3位は温室ガス増加、4位はサイバー攻撃、5位は、水の供給危機、食糧危機。

 多くの先進国で、中間層の疲弊が社会の不安を脅かしているという。頑張った者が報われるアメリカンドリームの国でさえ、あまりの格差にウオールストリートが占拠された。英国では、「搾り取られる中間層」が、今年の言葉に選ばれたそうだ。

 日本の「一億総中流」は、昔話となった。バブルが弾けて、中流が崩壊して以来、深刻な所得格差、格差の固定化、世代間格差などが問題となっている。下流社会、ワーキングプア、非正規雇用、年金破綻、生活保護、希望格差社会など、負け組の絶望感が、自殺、孤独死、家庭崩壊、教育崩壊、少子化と、日本を引き裂いてゆく。

 仕事があり、家族を養え、ささやかな貯金と家があり、老後の心配が少ない人々を、ミドルクラスと呼ぶそうだ。

 我が国では一億総中流が崩壊し、仕事がない、家が持てない、家族を養えない、老後が心配な人々が少子化、社会不安をもたらす。ミドルクラスであった私達団塊世代が何とかせねばなるまい。 920


2012/2/24 No.573
 慢性痛


 第41回慢性疼痛学会が開催された。日本人の慢性痛保有率は、18歳以上の約15%。1700万人が慢性痛に悩んでいる。

 痛みに関する学会は、3年おきに開催される世界疼痛学会。(今年は横浜で開催される予定であったが、震災で急遽イタリアに変更された。)国内では、基礎と臨床医が合同で開催する日本疼痛学会。麻酔科医が主体の日本ペインクリニック学会などがある。いずれの学会も、私が医師になった頃、研究会として発足した。症例検討の小さな集まりであった当時と比べると、隔世の感がある。

 慢性痛の定義に関しても、当時は、長く続く難治性の痛み程度の理解であった。現在では、急性痛との違い、神経障害性疼痛、身体表現性疼痛障害、線維筋痛症など、その原因が明らかにされつつある。

 セロトニン神経で有名な有田秀穂教授の特別講演が面白かった。ガムを咬む、坐禅による丹田呼吸、太陽の下での規則的な歩行などにより、セロトニン神経が活性化する。セロトニン神経の活性により、下行性疼痛抑制系が活性化され、鎮痛効果に加えて情動系にも作用し、うつ状態の改善、元気が出て慢性痛が軽減する。慢性痛は、生活の歪みによる生活習慣病としてとらえて、対応することが大切と思う。

 学会会場が靖国神社のすぐそばにあり、お参りしてきた。  920



2012/2/17 No.572
 崖っぷち

 
自然と共生して1200年もの間栄えている、京都議定書誕生の地で、地球環境に尽力した人を顕彰する京都環境殿堂表彰式が、京都国際会議場で開催され、今年も参加させてもらった。

 今までに、ワンガリ・マータイさん、ブータンのワンチュク国王などが殿堂入りされている。

 今年の殿堂入りは、地球環境問題の国際的な取り組みの基礎を築かれたクラウス・テプファー先端的持続可能性研究所長。ドイツの元環境大臣で、ドイツの原発廃止の国民合意を牽引したそうだ。もう一人は、アースポリシー研究所長のレスター・R・ブラウン氏。ワールドウオッチ研究所長時代、「地球環境白書」を創刊。気候変動に伴うエネルギー不足、水不足、食糧不足など、地球や人類にとって危機である地球温暖化問題を指摘された。

 80億人の人間の生活、開発途上国の人口増加、国家間の争い、グローバルな経済競争などにより、地球環境は崖っぷちにある。

 私達が文明崩壊の崖っぷちから生還する為の、地球環境保全に残された時間は少ない。私は逃げ切れそうだが・・・   920

 レスター・R・ブラウン:World on the Edge(地球に残された時間)
 枝廣淳子訳、ダイヤモンド社。



2012/2/10 No.571
  オーシーハイル

 
今年、2012年は、日本にスキーが伝来して101年目にあたる。レジャー白書によると、バブル時代の象徴といわれたリゾートスキーブームの最盛期には、スキー人口は1860万人に達していた。その後、バブル崩壊とともに、若者のスキー離れにより、ブームは弾け散り、わずか10年で三分の一にまで激減したそうだ。

 先日、病院職員と女鹿平温泉スキー場に行き、久しぶりにスキーを楽しんだ。ガラガラかと思いきや、家族づれ、若い女性のボーダーなど、スキー客の多いのに驚いた。白銀の自然に囲まれてスキーをしていると、若いころを思いだした。

 青春真っ只中の学生時代。八幡平、蔵王、八方尾根、木曾御嶽山、立山、白山など、山スキーで白銀の大自然と触れ合う醍醐味を体験したこと。研修医の頃には、白馬岳の麓にある、鐘の鳴る丘、栂池高原で、スキーシーズンの間、交代で患者の診療をしながらスキーを楽しんだことなど思い出す。あの頃私は若かった。

 あれから40年。年をとり還暦を超えても、冬のスキー、春の花見、夏の海水浴、秋の紅葉など日本の四季が味わえ、何れの季節でも温泉が疲れを癒してくれる。日本に生まれて良かった。  920




2012/2/3 No.570
  Always三丁目の夕日(その3)

 
Always三丁目の夕日。三作目は一作目から5年を経た1964年、昭和39年。私が16歳の時代の物語となっていた。戦後復興を遂げ、経済成長真っ只中。白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機が三種の神器として急速に普及。私も、日本も育ち盛りであった。

 東北大震災後、キーワードとなった”絆”。地域の絆、家族の絆、父親のパターナリズムなど、皆が貧しかった古き良き時代の”絆”が、懐かしく演出されていた。

 東海道新幹線が開通し、国の威信をかけた東京オリンピック。日本晴れの開会式の空に、航空自衛隊のブルーインパルスが五輪マークの飛行機雲を浮かびあがらせた。白黒テレビで興奮しながら見たことを思い出す。マラソンのアベベに円谷選手。鬼の大松監督に率いられた、東洋の魔女の回転レシーブも懐かしい。

 あれから50年、アベベも円谷も大松も亡くなった。高度経済成長を牽引した、私達団塊世代も還暦を過ぎた。日本も、世界第二位の経済大国を経て、少子高齢化、核家族、無縁社会借金財政、人口減少など下り坂を下っている。

 これから50年後、今の子供たちが還暦を迎える頃、三丁目の夕日はどう変わっているのであろうか。           920




2012/1/27 No.569
  ゼロリスク症候群

 
川崎医大でガン治療セミナーが開催された。頭頚部ガンに対する新規粒子線治療、甲状腺ガンに対するヨード放射線治療、前立線癌に対する高線量率組織内照射、放射線副作用などの講演を聞いた。

 福島原発爆発による放射線被ばく問題では、不安が不安を呼んで、放射線がゼロにならないと安心できない事態となっている。

 放射線被ばくにおける発ガンに関して、煙草を吸う人は1000ミリシーベルト、メタボの人は500ミリシーベルト、不安でストレスな生活は、200ミリシーベルトに値するそうだ。

 日本人は、ゼロリスクを求め、安全より安心を重視する国民性があるという。安全性では科学的に無意味でも、膨大な手間と費用をかけて、検査済みという安心感が重要視される。ゼロリスク探求症候群という、実現不可能なものを求める先にあるのは、不安感。安心を裏切らず、不安感を与えないためには、危険性を隠すしかなくなってしまう。

 「先生、この薬は副作用はないのでしょうか。」の問いに、「副作用のない薬などあり得ないでしょう。薬に限らず、この世はリスクだらけなので、リスクバランスを良く考えて、治療を受けてください。」と、答えている。                      920



2012/1/21 No.568
下山の思想

 
その昔、大学の山岳部で山に登っていた時、山頂を極めるとか、景色を楽しむことはなく、ただひたすら登るだけで、苦しい思いばかりであった。当時、登山者は山男と呼ばれる男ばかりで、中高年、女性などは居なかった。今では、何と山ガールばかり。還暦を過ぎた私は、下山後の温泉を楽しみにしている。

 五木寛之氏による、「下山の思想」という本が出版された。
人間も、社会も、国家も、生まれて死んでゆく。登山も同じ。私達は、敗戦の焼け跡から、坂の上を目指して、重い荷物を背負い、必死で登ってきた。戦後の高度成長50年は、幸い天候にも恵まれて、世界第2位という経済大国という峠を極めた。登った山は必ず下らなければならない。バブルが弾けた頃から、我が国は下山に入った。下山をはじめてから、私達はある種のうつ状態になってしまった。目指すは実り多い成熟した下山であるべきなのに。

 人の人生も登山と同じこと。若い時は、後ろを振り返る余裕もない厳しい登りばかり。老いることは、景色を見ながら、怪我をしないように、ゆっくりと下山するということ。いつまでも若いと錯覚して、無理な登りばかり目指していると、遭難してしまう。

 還暦を過ぎ、小さな峠を越えた。
麓が絶望的な景色にならないうちに、はやく下り切りたいと思う。            920
   五木寛之:下山の思想、幻冬舎新書。



2012/1/13 No.567
  市場

 
ギリシャの国家財政危機が、ユーロ圏の金融危機となり、中国の経済に影響して、世界の経済危機をもたらす怖れがあるそうだ。

 経済のグローバル化により、「市場」が国家の力を超えた。国家さえ「市場」のターゲットとなる。放漫財政国家は「市場」の餌食となり、敗れてしまう。

 台湾総統の選挙を手始めに、今年は、凋落傾向にあるアメリカ、軍拡に余念がない中国、南下を狙うソ連、ユーロ危機のフランス、北朝鮮崩壊を見据える韓国などで、大統領選挙が行われる。我が国は、5年間で6人もの首相が代わり、世界から相手にされなくなった。今年また代わるかもしれない。

 各国のリーダーは、国益を求めて、世界の富の半分が集まるアジア太平洋地域への勢力争いに、しのぎを削る。と同時に、インターネットで強い力を持つ様になった「民衆」と、手なずけ
られない「市場」とも戦わなければならない。

 見えざる手による「市場」、身勝手な「民衆」、そして「覇権国家」のリーダーは、私達に幸せをもたらしてくれるであろうか。ブータンのワンチュク国王に聞いてみたい。      920




2012/1/6 No.566
  鞆の浦

 
今年は鞆の浦にある沼名前(ぬなくま)神社に初詣に行ってきた。
その昔、鞆の浦にある仙酔島には、キャンプに海水浴に、毎年必ず訪れていた。万葉集にも詠まれている鞆の浦の美しい自然の景観は、崖の上のポニョの舞台となり有名になった。歴史あるお寺がたくさんあり、狭い道路に古い街並みが残っている。

 街を散策していると、狭い道路に車が走っていて危ない。20年以上前から橋を作ってバイパス道路にする馬鹿な開発計画と、景観保護との間で論争が続いている。

 マッターホルンで有名なスイスのツェルマットは、自動車乗り入れ禁止で、馬車が移動手段となっている。ヨーロッパの地方都市では、古い街並みを残して、市街地から車を締め出し、信号の無い環境に優しい街作りが行われている。街のはずれに共同駐車場を作り、街中は、路面電車、公共電気自動車、自転車などの乗り物だけで、散策し易い美しい街となる。車の無い街作りによって、人々の憩いの場が形成され、生活の質が向上しているという。

 少子高齢化、人口減少を迎える我が国は、価値観を変える必要がある。街中から車を締め出して、美しい古い街並が残る鞆の浦を世界に誇れる街にしてもらいたいものだ。    920



2011/12/30 No.565
  激動

 
今年は激動の年であった。
我が国では、千年に一度といわれる東北大震災と福島原発爆発。世界一安全、絶対安心といわれていた原発の爆発には驚いた。価値観が見直される出来事となった。”絆”の大切さが指摘され、今年の漢字に選ばれた。絆を大切にする国民総幸福の国ブータンのワンチュク国王が来日された。物の豊かさより、心の豊かさを大切にする幸福の価値観が問われる年となった。

 世界では、中東の民主化運動による独裁政権の崩壊。EUでは、ギリシャの経済破綻を契機としたヨーロッパユーロの危機。ソマリア大干ばつ、タイの大洪水など。政治、経済、自然災害、人的災害など、地球規模の激動であった。アルカイダのビンラーディン殺害、リビアのカダフィ大佐殺害など、激動にふさわしい事件もあった。激動の締めくくりは、キムジョンイルの死亡。

 来年は落ち着くであろうか。 否。
行き過ぎたグローバル資本主義と、それに伴う社会の格差による激動はますます激しくなると思う。団塊世代の私としては、価値観を変えて、平穏に逃げ切りたいと思うが、そうは問屋が卸してくれそうにない。                       920



2011/12/23 No.564
  プロテスター


 今年は、プロテスター(抵抗者)が世界を変えた年であった。米タイム誌は、恒例の今年の人、パーソン・オブ・ザ・イヤーに中東の民主化運動「アラブの春」、反格差社会デモ「ウオール街
を占拠せよ」など、世界各地のデモに参加した若者達の「プロテスター:抵抗者」を選んだ。

 フェイスブックやツイッターなどのITのネット情報の速さと広がりは,社会に不満を持つ若者達に火をつけ、瞬く間に抵抗行動に繋がった。

 チュニジア、エジプト、リビアなど中東で長く続いた独裁政権が、若者のデモから、いとも簡単に崩壊したのには驚かされた。アメリカでは上位1%の富裕層が富を独占するという、行き過ぎた市場主義に対して、”We are the 99%”をスローガンに集まった若者達が、金融の中枢ウオール街を占拠し、瞬く間に世界各都市に広がった。ロシアでは、プーチンの権力たらい回しに対する「ロシアの冬」と呼ばれる抵抗運動が発生。今後は、「中国の夏」とでも呼ばれる、抵抗運動が起こるのも時間の問題と思う。

 今年亡くなった、IT革命児と呼ばれたスティーブ・ジョブズもプロテスターを生んだということで、今年の人であろう。   920


2011/12/16 No.563
 ゆでガエル


 国立環境研究所によると、現在より気温が3度上昇すると、雨雲を発生させる大気の流れが変わり、南米アマゾンの広大な熱帯雨林、ジャングルが水不足となり、消失する恐れがあるという。

 世界各地で異常気象が多発した。地球が少しずつ熱くなっているので、温暖化対策が必要なことは、誰もが分かっている。

 南アフリカで、第17回国連気候変動枠組み条約契約国会議が(COP17)開催された。先進国は豊かで快適な生活を失いたくないし、開発途上国は、これから快適な生活を望みたいし。それには先進国も開発途上国も、経済成長しなければならないので、地球温暖化対策は遅々として進まない。

 我が国は、少子高齢化、右肩上りの経済成長の終焉、借金財政。これから激増する団塊世代の高齢者を、少ない子供達が支えきれないことは、誰もが分かっている。借金財政によるぬるま湯にどっぷり浸かっていると、税金は納めたくないし、社会保障はもっと充実してほしいので、税と社会保障の一体改革は、遅々として進まない。

 お湯が少しだけ熱くなってきたけど、ぬるま湯にどっぷりと浸かり気持ちよくしていると、私達はみんな”ゆでガエル”になってしまう。     920



2011/12/9 No.562
  賭博依存症


 その昔、私はラスベガス、モンテカルロ、ウオーカーヒルなどのカジノで賭博し、心踊らせ興奮したことがあった。大王製紙の元社長が、会社の金を持ち出して、カジノで100億円以上負けて逮捕されたのには驚いた。東大を出た秀才、真面目で、社長として会社を成長させた彼が、ギャンブル依存症とは。金も地位もある彼が、金が欲しくて賭博をしたのではないだろう。彼が賭博による精神的高揚に溺れた原因は、”暇と退屈”と思う。

 1万年前、人間が遊牧から定住生活をする様になり、生きる事は、退屈との戦いとなった。私達は、自由であるがために退屈する。退屈するということは、自由ということ。何をしても良いのに、何もすることがない。だから何かに没頭したい。打ち込みたい・・。

 ”部屋にじっとしていられないから、人は不幸になる。”:パスカル

豊かになった生活で、退屈とどう向き合い、暇な時をいかに幸せに生きるべきか。趣味は、退屈を紛らわす気晴らしとすべき。没頭すると、苦しみとなる。退屈する人は、苦しみや負荷を求め、熱中することで、自分を幸せだとだますことになる。

 人も羨むエリートコースを歩み、、挫折を知らず、欲望がすべて満たされた彼は、きっと”退屈”であったのであろう。  920
 国分功一郎:暇と退屈の倫理学。人間らしい生活とは何か?
         朝日出版社。



2011/12/2 No.561
 壮年パラサイト


 以前、親に依存しながらリッチな生活を楽しむ独身貴族者は、「パラサイトシングル」と呼ばれ、羨ましがられていた。

 時は過ぎ、親と同居している35-45歳の未婚壮年者が激増し、300万人に達するという。失業や非正規雇用者で、独立するお金がなくて、結婚出来ず、親と同居せざるを得ない未婚壮年者は、「壮年パラサイト」と呼ばれる。壮年パラサイトの親は70歳代で、年金生活を送っている。親の年金で食べていた壮年パラサイトが、親の死を隠して年金を受け取るという、年金詐欺が話題となった。

 生活保護受給者が250万人と、戦後混乱期を超えて、最も多くなったそうだ。ワーキングプアとの対比、医療費無料、不正受給など多くの問題点が指摘されている生活保護費は、年間3兆5千億円にも達するという。

 35歳以下の若者達は、自分達が歳をとった時、どうせ年金など貰えないと思っていて、年金保険を払っている者は半数以下になっている。若者達はこれから、壮年パラサイトを含め、勝手に死んでゆく私達団塊高齢者の年金、医療、介護、生活保護をどう支えてくれるのであろうか。そして、そのうち訪れる自分達自身の”おひとりさまの老後”はどうなるのであろう。      920
 古市憲寿:上野先生、勝手に死なれちゃ困ります。
                  僕らの介護不安に答えてください。光文社新書。
 上野千鶴子:おひとりさまの老後。法研。


2011/11/25 No560
  絶望の国の幸福な若者たち


 先日来日した、国民総幸福の国ブータンのワンチュク国王が、慶応大学で講演された。「経済成長による貧富の格差と環境破壊そして人間の幸福という地球規模の難題を、みなさんの若い力と英知で解決してほしい」と。

 世界各地で、民主化、格差是正などと、幸せな生活を求めて、若者がデモを行っている。一方、就職氷河期、ワーキングプア、格差社会、少子高齢化、借金財政、年金破綻など、こんなに不安な社会なのに、我が国の若者は何故立ち上がらないのか。

 その答えは、「私たちは幸せだからです。」という。20歳代の男子の66%、女子の75%が、現在の生活に満足で幸せと答えている。将来に対して不安を感じているが、現在の生活に満足している。「これ以上幸せになれない」と思うから、今に満足する。将来に明るい希望がないからこそ、「今」、「ここ」、「自分」の身近な幸せを感じて生きている、という。なんとまるで”禅”の教えのようではないか。

 豊かで幸せな明日を目指して、“三丁目の夕日”時代から、毎日あくせくと頑張り続けてきた団塊世代の私からみると、”最近の若者”は、家畜化されて内向き志向で、これからのグローバル時代、大変になり、可哀想にと、思っていたのだが・・・・・        920
 古市憲寿:絶望の国の幸福な若者たち、講談社。


2011/11/18 No.559
  仏国土

 
今年の病院旅行は、円高で韓国旅行の希望が多かったが、平泉が世界文化遺産に指定されたこともさることながら、東日本大震災の被災地を訪れ、被災跡を実際に見なければならないとの思いが強く、東北旅行となった。

 絶大な財力と権力を誇った奥州藤原氏が理想郷として作った平泉。現世における仏国土(浄土)の表現を目的として創造された中尊寺。日本固有の自然信仰である神道、および阿弥陀如来の極楽浄土思想と仏教との癒合を表している、として世界文化遺産に指定された。

 夏草や つわものどもが 夢の跡
中尊寺の金色堂など、あれほどの権力と繁栄を誇った藤原氏三代のかつての繁栄や栄華も、むなしい一瞬の夢。平泉の繁栄と歴史を見続けてきた北上川は、石巻湾に流れ出ている。その北上川河口周辺は、津波の爪痕が多く残存していた。更地となったあちこちで、一階部分が津波によって壊された工場、住宅などが無残な姿をさらしている。

被害が大きかった河口付近で、人影のない石巻市民病院の白い鉄筋の建物が痛々しい。うず高く積み上げられたガレキの土手で、すすきが寒々しくゆれていた。          920


2011/11/11 No.558
  成長の限界(2)

 全世界で、今年10月31日に生まれた赤ちゃんに70億人目の証明書が発行され、お祝いされた。が、地球はいったい何人位の人類を養うことができるのだろうか。私が生まれた1948年には約25億人であった。人口増加は鈍化しているとはいえ、今世紀中には100億人を超えるという。

 1972年、ローマクラブによる「成長の限界」が指摘している。人口増加と工業化が、このまま急激な成長を続けるならば、資源の枯渇、食糧不足、環境汚染などにより、2100年までに成長は、“突然”限界点に達し、急激な死亡率の増加で、人口が激減して、悲劇的な破局を迎える、と。

 「成長の限界」の指摘から40年。我が国は人口減少に向かったとはいえ、世界人口は増え続けている。世界は猛烈に成長している。それも極めていびつな形で。先進国の工業化、GDPは指数関数的に成長している。一方、人口増が著しい開発途上国は、貧困増大、水不足、食糧不足、都市化、環境破壊が絶望的に増悪している。

私達はこの「成長の限界」にどう対応したら良いのであろうか。

 私は逃げ切り世代だから良いが、祝福されて生まれた70億人目の赤ちゃん達が、これからこの地球で、無事に成長でき、老後を迎えられる様祈りたい。               920


2011/11/4 No.557
  聖山ー高岳ー三段峡

 
聖山(1113m)、高岳(1054m)は、山々と渓谷美の西中国山地国定公園の山。恐羅漢山、寂地山などの有名な山々に隠れて、山の本などに載ることも少なく、登山者も少ないが、秋には、三段峡と共に、美しい紅葉を味わうことができる。

 麓にある聖湖は、昭和32年に発電の為、中電が樽床ダムを建設して出来た人口湖。周辺の紅葉した山々が湖面に映えて絶景を呈している。

 じじばば登山隊6名で、三段峡の直上流である三ツ滝の駐車場傍の登山口から登る。ブナ林に囲まれた登山道は整備されている。約1時間30分で聖山山頂。頂上は木々に囲まれて展望は得られない。聖山から縦走路の落ち葉を踏みしめながら上り下りをくり返し、2時間程で、高岳に至る。高岳頂上からの展望が素晴らしい。美しい聖湖を眼下に、紅葉で赤く染まった臥龍山、深入山などの山々が一望できる。昼食下山後、樽床ダム直下にある三つ滝から、紅葉が美しい三段峡の渓谷を下った。

 紅葉を満喫した後、ススキと紅葉で赤く染まった深入山の麓にある、いこいの村ひろしまのセラミック温泉で疲れを癒してきた。
                            920



2011/10/28 No.556
 人は死なない

 
世界に類を見ない少子高齢化に突入している我が国で、高齢者の急変時に救命処置をどうするか。治らない小児の延命処置をどうするか、日本救急医学総会で討論された。

 今の日本は、死が日常から切り離され、昔と比べて死に関する感覚が変わり、死を受け入れ難くなっている。死に直面した時、本人も家族もうろたえてしまう。この死生観の喪失が、医療の進歩と共に、臨床現場での混乱をもたらしている。

 生命とは何か。
東京大学集中治療部・救急部の矢作直樹教授は、単独冬山登山で、二度も滑落遭難するが、奇跡的に助かる。麻酔科、外科、内科、精密工学など特異な経歴を持つ。矢作教授によると、人の生命には、肉体的生命と、霊魂の命がある。死ぬと肉体は無くなるが、生きている時の魂は、霊となって生き続ける。そういう意味で、”人は死なない”という。

 宇宙のあらゆることは、人間の知恵を超えた巨大な力「摂理」で動いている。人間を含むすべての生物は、この摂理によって生かされている。摂理は「神」、「サムシング・グレイト」とも言える。人間の一生は、長い宇宙の歴史からみれば、一瞬の夢の様なもの。摂理に従い、魂は生き続けると思うと、人生を有意義に過ごすことができ、穏やかに肉体的死を迎えることができる。と、いわれる。       920
 矢作直樹;人は死なない、バジリコ。



2011/10/21 No.555

 ニッポンの底力

 
第39回日本救急医学会が東京で開催された。東日本震災時の救急医療に関しても多く討論された。学会は盛況であったが、明かりと人が溢れるエネルギー沸騰都市、大東京に居ると、息が詰まってくる。あの節電騒動はどこにいったのであろうか。

 少子高齢化が進む我が国で、従来の経済成長追及は限界がきていた。私達の生き方、価値観の転換が迫られていた。東日本大震災以降、多くの識者が、私達の生き方、価値観の転換を提言している。物が豊かで、便利な時代は終わるべくして終わった。少々不便でも、幸せに溢れ成熟した社会を目指せと。

 我が国の「文化の祖型」には、「追放と復活の祖型」があるという。スサノウ物語、神武東征伝、小栗判官などは、追放と復活の物語。一度どん底を味わった人は、復活すると立派な人に生まれ変わる。その時には必ず大きな痛みを伴う試練が必要とされている。戦後の復興と高度経済成長は、敗戦という大きな試練後の復活であった。

 日本人の価値観が本当に大きく変わるには、富士山大爆発か日本経済破綻の様な、東日本大震災よりもっと大きな試練が必要なのであろう。                     920
  町田宗鳳:ニッポンの底力、講談社α新書。


2011/10/14 No.554
 尾瀬ヶ原と至仏山

 
仏に至る山、至仏山(2228m)は、国立公園尾瀬の西側に聳え、尾瀬ヶ原を一望できる山で、日本百名山に挙げられている。

 尾瀬への代表的入山口である鳩待峠から、紅葉真っただ中のブナ林を下り、湿原を経て山の鼻登山口から登る。森林帯を登り、真っ赤に染まった紅葉帯を過ぎると森林限界に至る。登山道は蛇紋岩で滑りやすく、下りは禁止されている。振り返ると、正面に燧ヶ岳と左右の鬱蒼とした森に囲まれた尾瀬ヶ原が、黄金に輝いて見える。写真では味わえない自然の雄大美が五感に響いてくる。頂上からは、谷川連峰、越後、会津の山々が望まれる。稜線を経て、小至仏山に至る。小さな湿原を経て、山深い森林の中に遠く小さく見える今夜の宿、鳩待峠小屋まで下る。

 尾瀬はその昔、東電がダムを作ろうと買い占めたが、住民の反対で頓挫した経緯があり、尾瀬の半分くらいは東電の所有地となっている。原発で潤った東電は尾瀬の自然を守る為、木道補修など毎年大金を出していた。福島原発爆発で、金が出せなくなり、尾瀬の自然保護が心配されている。

 早朝、尾瀬ヶ原の木道散策による自然を満喫した後、利根川本流の渓谷沿いにある宝川温泉の、巨大な源泉かけ流しの混浴露天風呂で、痛めた腰、膝と疲れを癒してきた。 920


2011/10/7 No.553
アラブの春

 
チュニジアのジャスミン革命に始まった、抑圧された若者達による独裁政治打倒の民主化運動は、”アラブの春”となった。

 議会民主主義国家であるイギリスでは、ロンドンなど各都市で、格差社会により希望を失った若者達がギャング化して、暴動が頻発しているそうだ。

 自由主義国家アメリカでは、行き過ぎた市場経済に抗議する若者達によって、金融の中枢ウオール街が占拠された。

 世界の若者達が未来が暗いと感じて、明るい未来、幸福を求めて行動を起こしている。

 独裁政権国家では、民主化を求めて、民主主義国家では、格差社会の是正を求めて、自由主義国家では、行き過ぎた市場経済の是正を求めて、若者達が行動を起こしている。

 経済大国、長寿大国となった我が国でも、若者達は未来に対して、明るい希望が持てなくなっている。が、我が国の若者達は、家畜化、草食系、内向き志向となってしまったからであろうか、行動を起こさない。私達団塊世代が、安保反対、インターン反対とデモをしたのが最後であった。                   920


2011/9/30
  パワースポット

 
古事記に残る比婆山御陵に通じる熊野神社には、広島県下の巨大杉の半数以上を占める巨大杉群があり、県の天然記念物に指定されている。樹齢1000年を超え、「天狗の休み木」と呼ばれる県下第2位の巨大老杉もある。厳粛な巨大杉群の参道は、“気”がみなぎっていて、神霊のパワーを感じる。熊野神社から巨大杉に囲まれた一の宮、三の宮など竜王山の登山道を進むと、鳥尾の滝と呼ばれる那智の滝がある。壮大で美しい滝からの冷たい水しぶきに癒される。

 その後、吾妻山ロッジに宿泊して吾妻山の自然を堪能した。秋晴れであったので、夕方、誰もいない中腹まで一人登る。秋風に揺れる笹とススキに囲まれ、真っ赤に染まる夕日を味わった。早朝には、眼下に広がる雲海と御来光を拝む。極め付きは、夜、一人で懐中電灯を頼りに草原を登った。そこは暗黒の暗闇。聞こえるのは小さな虫の声だけ。肌に冷たく感じる風。目が慣れて、夜空を見上げると、満天の星であった。感動のあまり、たたずんでいると、動物本来の五感が、びりびりと呼び起されてくるのを感じ、恐怖心がわき出てきた。

 巨大老杉群からの神霊パワーと共に、五感を呼び起こし、森羅万象の断片に入り込む大変気持ち良い体験をした。       920



2011/9/23 No.551
  大三島一周サイクリング


 愛媛県最大の島である大三島には、立派な大山ずみ神社があり、神の島と言われている。福山山岳会中高年有志による大三島一周サイクリングに誘われ参加させてもらった。

 当日は、しまなみアイランドライド2011という、しまなみ海道を自転車で駆け抜けるイベントが開催されていた。水軍、くるしま、伯方、多々良の4コースに、全国から足自慢の2千人のライダーが集まったそうだ。水軍コースは、尾道から今治まで、しまなみ海道往復に、大三島南半分を加えた190Kmに及ぶ健脚用コース。11時間の制限時間以内に、約500人が完走したそうだ。

 大三島の南を走っていると、健脚ライダーがすごいスピードで追い抜いて行く。まるで競技の様であった。急カーブで転倒し、動けなくなった人がいて、救助するというハプニングがあった。

 私は、20歳の時、寝袋を自転車に積み、約1か月をかけて西日本一周した時を思い出しながらマイペースで走る。自然を味わい、自分の足で走っていると、しんどさが心地良い。途中、大山ずみ神社で秋祭りを見学。美味しいヒラメコースの昼食を食べ、終点の多々良温泉で疲れを癒してきた。               920