SHODAの部屋

『テニスと人生の大先輩、920先生のエッセイ』
                         920先生の許可を得て掲載しています。


~920の独り言~No.9
No.860~


2020/10/23 No.1000
 団塊世代の昭和・平成・令和

  昭和23年9月20日、戦後どさくさのベビーブームに生れた団塊世代。いらちで、頑固で、大声、早口、早飯、早糞、早老。

  昭和:もはや戦後ではなく、やっと衣食足りてテレビ放送開始。小学校1クラス60人が10クラス。ガキ大将、3丁目の夕日時代。東京オリンピック、東海道新幹線、東名高速、高度経済成長時代。金の卵として集団就職し大都市一極集中。安保反対、ベトナム戦争反対、インターン反対と学生運動から企業戦士に。何でも見てやろう、時は金なり、24時間戦えますか。男は仕事、女は家庭、ニュータウンに住み仕事中毒、会社人間。セクハラ、パワハラは当たりまえ。エコノミックアニマルと呼ばれ自然破壊し、バブルに踊る。

 平成:バブル崩壊、ベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊。阪神大震災、地下鉄サリン事件、アメリカ多発テロ。リーマンショック、東日本大地震、原発爆発など大事件が勃発。団塊ジュニアの就職氷河期。パソコン、スマホなどITが急速に発達。団塊世代が一斉退職し、ぬれ落ち葉症候群。派遣社員が増え1億総中流から格差社会に。

 令和:中国の台頭、アメリカトランプ劇場。コロナパンデミック。我が国は世界に類を見ない急激な少子高齢人口減少時代を迎える。膨らんだ人口の団塊を形成し、数々の流行、需要を創り出し、経済成長、過当競争、過剰施設を残し、まもなく全員後期高齢者となり、医療、介護、年金など莫大な借金を残し、あわただしく去ってゆく。   920


2020/10/16 No.999
  バチがあたる


 現代日本人は宗教への関心が薄く、自分自身が信心深いと思っている人はわずか十数%で、世界最低。その反面、あの世を信じるとか、先祖の霊、厄年、友引の葬式や仏滅の結婚式を避けるなど、日本人の意識、行動には宗教的なものが色濃く残っているという。

 罪(バチ)とは、神仏が人の悪行を罪(つみ)してこらすこと。悪事のむくい、たたり。非科学的な「バチがあたる」という事を7割以上の日本人が信じているという。私もそうだが、誰しも自分にとってよからぬことが起こった場合、以前行った悪い行いのバチではと心当たりを探す。子供の頃、悪い事をしているとバチがあたり閻魔さんに地獄に落とされると、よく言われたものだ。

  寝たきりになるくらいなら早く死んだ方がましなどと言っているばあさん患者には、命を粗末にする様なことを言っていると、お天道様が天罰を加え長い間寝たきりにされると諭している。脚の悪い患者の親戚に脚の悪い人が何人もいて、先祖が脚に悪さをしたための“たたり”であろうと意見が一致したことがある。

  トランプ大統領がコロナに罹患したのは、コロナウイルスを軽視し、米国でコロナ感染の大流行と多くの死者をだしたトランプ大統領へ“バチがあたった”のであろう。         920



2020/10/9 No.998
  専門医断舎利


 医師になり麻酔専門医、救急専門医、ペインクリニック専門医を取得し、麻酔学会、救急医学会、集中治療学会、ペインクリニック学会、疼痛学会などに所属。毎月の如く旅行がてら学会に参加するのを趣味にしていたが、古希を過ぎたので断舎利しようと思う。

 麻酔専門医は、看護学校で麻酔の講義をしていたが、定年退職したので、麻酔専門医、麻酔科学会、臨床麻酔科学会を断舎利しようと思う。卒業し胸部外科研修後麻酔科に入り、大学院で博士号取得、スイス・バーゼル大学に1年間麻酔留学し、大学の講師も務め惜しい気持ちもあるが、元専門医ということで自己満足しよう。

 救急専門医は、新しくできた三島救命救急センターで試行錯誤の救急救命医療を立ち上げたのが懐かしい。専門医機構の救急専門医希望者が少ないというが、2023年の救急専門医更新までとしよう。

 ペインクリニック専門医は、先日誕生日のお祝いメールが学会から送られてきたし、70歳以上になり学会費が免除されたし、以前「ペインクリニック:臨床から学ぶ痛みの治療」という本を出版しているので、もう少し維持しようと思うが。

 ぼつぼつ医師免許の断舎利も考えなければならない時が・・・。  920 


2020/10/2 No.997
 中秋の名月

 
昨日は中秋の名月であった。月見団子を作りススキを飾る中秋の名月(十五夜)は旧暦の8月15日に最も美しい観月をするならわし。

月見団子は縁起が良く、健康と幸福が訪れる。ススキは月神が降臨する神の依代とされていて、魔よけの効果があり、家の軒につるしておくと1年間病気にならないという。

 新月から満月になるまでの期間が14日であったり15日だったりするので、今年は中秋の名月は10月1日で、今夜10月2日が満月で、雲一つない夜空に満月が美しく輝いている。

 月は現在の位置、法則により、月の満ち欠けのすべてが予測できるが、雲は意外性に満ちていて、直後の形さえ予測が難しい。人間の身体も月と雲の如く、確かなものと不確かなものが混在していて、月の変化の如く予測が出来るものもあれば、雲の如く予想外の病気に突然襲われることもある。

 人体は水でできていて、月の引力による潮の満ち引きの様な現象が人体内でも起こり、満月の日は急患が多い。米国では満月の夜は救急外来が混雑するので、医師やスタッフを増員するという。

 昨日より急患や病気が急変した患者が多かったのも、トランプがコロナに罹患したのも、中秋の名月の影響であったか。 920



2020/9/25 No.996
  趣味と仕事

 
我が国は65歳以上の高齢者が3617万人で、総人口に占める割合は28%と過去最高となり、世界で断トツ1位の高齢化社会。 

  以前は老いると隠居生活で悠々自適の趣味三昧の生活ということであったが、人生100年の高齢化時代になり、元気であれば好むと好まざるとに関わらず、いつまでも仕事を続けたい、続けなければならない高齢者が増えているという。

  趣味は自分のためにやることで、自分が楽しければそれで良し。仕事は他人のためにやることで、誰かのためになること。趣味が仕事という人がいるが、趣味を仕事にしたら、それは趣味でなくなる。仕事はヒトに必要とされてはじめて仕事になる。仕事が趣味と言う人は、ワーカホリックで他に趣味をもっていないということ。

  「好きなこと」「得意なこと」「必要とされていること」「稼げること」のすべてが重なった中心に「生き甲斐」がある。いつまでも生き甲斐を持って仕事が出来れば理想的だが、好きでもなく、得意でもなく、必要とされていなくても、稼げなくても、仕事を続けなければならないのもつらい。         920
  IKIGAI:920の独り言(908)


2020/9/18 No.995
 人生は選択

  人生は「運命」「偶然」「選択」の3つから成り立っているという。この中で自分の意思でコントロールできるのは選択だけ。選択は自分で自分の環境を変える力。人生をよりよく生きようと思えば、選択の質を高めること。選択は生物の命。動物園の動物が野生動物より短命なのは、エサや行動が自分で選択できないから。

 学生期の頃は無限大の可能性と選択肢がある。小さな自己決定を繰り返すことにより自己肯定感が育まれ成長するので、親や先生は「こうしなさい」ではなく「どうしたいの」と選択力を育てること。

  進学、就職は大切な選択肢だが、たくさんの種類のジャムを店に並べるより数種類のジャムに絞った方がたくさん売れるので、選択肢が多ければ多い程良いというわけではない。

 人生で最も大きな選択は結婚。インドでは自分で選択し恋愛結婚した人は時間経過とともに幸福度が下がるが、選択肢のない見合い結婚した人は幸福度が上がるということから、自分のことは何でもすべて自分で選択するのが当たり前で良いということではない。

 歳を取ると可能性も選択肢も少なくなる。医学が進化し寿命が運命任せから選択するようになり、終末期医療の選択が悩ましい。      920

 シーナ・アイエンガ―:選択の科学、文藝春秋。


2020/9/11 No.994
  子供の幸せ

 ユニセフの調査によると、日本の子供たちは身体的には健康だが精神的な幸福度は最下位レベルだそうだ。

 子供たちは自分でやりたいことを自ら選ぶことを望んでいる。が、日本人は「和」を尊重し、相手にどう思われるか、協調性が求められる。親や先生の言うことを聞かなければ怒られるし、言われた通りのことをすれば褒められる。自分は何をしたいのか、自分の本意でないことをしてしまうので、子供の自己肯定感が低くなり、幸福感が感じられなくなっているという。

 子供が幸せと感じている世界一の国はオランダ。オランダの子供たちは、従順さよりも自主性を育むことが重視されている。先生や親からの干渉はほどほどで、色々な事に対し自分で選択し行動する。学校は夏休みの宿題などなく、自分がやりたい事に時間を使い得意なことを伸ばすので、勉強が出来る子は飛び級で進級するし留年者も多いが、自分自身に満足し自己肯定感が養われ幸せを感じるという。

 団塊世代の私が子供の頃、兄弟もクラスの生徒数も非常に多く、親も先生も子供たちの細かいところに目が届かず、結果的に自主性が育まれ、身体的には栄養不足であったが、精神的には明るい希望を持ち、多くの子供たちが幸せだったと思う。     920                    

 
アドラーの教え:920の独り言(783)



2020/9/4 No.993
  神頼み

 
世界中で新型コロナ感染が収まらない。我が国で新型コロナ感染の重症者が少ないのは、コロナ類似ウイルス感染により多くの人が交差免疫を得ているためと考えられている。インフルエンザは毎年1千万人が罹患し2-3千人が亡くなっている。ということで、新型コロナ感染をあまり恐れなくても良いと思うが、恐怖を煽る日々の報道により政府を含め国民すべてがパニックとなり、コロナ不安に陥っていて、風評被害が大きな問題となっている。

  三密、マスク、手洗い、夜の街に行かないなど、確率に基づいた行動をすることにより、コロナ感染と言う「不運」から逃れることが出来るだろうか。注意深く行動し感染する確率は小さいはずなのに運悪くコロナに罹患することがある。偶然と言うのは「不条理」なもので、自分にとって不都合な偶然は「不運」というよりほかない。人は「不運」に遭遇することは避けられない。

  私達はウイルスを撲滅することはできない。インフルエンザにせよコロナにせよ、感染する不運や病院クラスターによる風評被害の不運に合わない為には感染予防以外に神頼みの運も必要であろう。 920

  偶然と必然:920の独り言(972)


2020/8/28 No.992
  一切皆苦

  今日、安倍首相が潰瘍性大腸炎の再発で辞意を表明したが、頭も性格も良く優秀で、家庭円満、社長をする会社も順調で、不安やストレスはないように見えていた親友が心の病に陥ってしまった。

 私達は生きている限りストレスが無い状態はあり得ず、私同様、団塊世代の彼も長い間頑張りすぎでアドレナリンが、我慢しすぎでコーチゾルが分泌され続け、慢性的ストレス状態であったのだろう。

 「人間は考える葦」で、過去から教訓を得て未来を考えることで大きな成長を遂げてきた。が、これら「記憶力」と「想像力」が慢性ストレス反応を増悪させることがある。今起こっている些細な出来事に際し、関係のない別なことを考えてしまう。あの時迷ったけどああしておけば良かったのに、こうしたばかりにこんな大変な人生を送る事になってしまった。これから私はどうしたら良いのだろうか、などと、過去の後悔と未来の不安についてあれこれ考えを巡らせてしまう「心の迷走:マインドワンダリング」が慢性ストレス反応を増悪させキラーストレスとなり身体や脳を蝕ばんでしまう。

 最近、彼が些細なことを色々気にするようになっていたので、心の迷走マインドワンダリングに対し、心の瞑想マインドフルネスを勧めていたのに・・・。            920


2020/8/21 No.991
  仕事ができる人とはどういう人か

  テニス仲間で会社の社長さんにコロナ不景気で会社は大丈夫ですかと聞いたところ、仕事ができる自分がいるから大丈夫とのこと。で、仕事ができるとはどういうことか分るかと問いかけられた。

  あれができる、これができるはスキルのことで、訓練によって培われる能力のこと。スキルアップを伝授する講演会とか本は巷に溢れていて、多くのサラリーマンがスキルを学ぶため、ビジネス書を読みセミナーで勉強する。が、スキルを持った人は「作業」は上手にできる様になるが、「仕事」ができる様にはならないという。

  仕事ができる人とは、「センス」がある人という。仕事センスがある人は、頼りになる人、安心して任せられる人、この人なら大丈夫だと思われる人。この人なら何とかしてくれる人の様な人のこと。

  スキルを持った人は多いが、センスの良い人は少ない。スキルは教えることが出来るが、センスは伝授できない。では、センスを磨くにはどうすれば良いか自分で考えるしかない。仕事のセンスある人の多くは美意識の感性が鍛えられているという。

 以前麻酔をしていて多くの外科医の手術を見てきたが、手術が上手いだけでなく、芸術的センスのある外科の先生を思い出す。 920 


2020/8/14 No.990
  お墓

 
今朝墓参りにいったが、多くの家族連れが墓参りをしていた。我が国の若者の多くは無宗教と思っていて、宗教的帰属意識がないといわれているが、お盆の墓参りには好んで参加しているようだ。

  日本の文化である田舎でのお盆の墓参りが大都会でのコロナ流行により里帰りと伴に難しくなったという。江戸時代にすべての人を寺の檀家に登録させ、戸籍を管理するという政策がとられ、お寺は地域の中心となり、仏教寺院の数は全国で約8万寺もあり、コンビニの5万5千店より多いそうだ。

  日本の仏教は「死者への儀礼」を独自に発展させてきて、葬式の9割は仏式で営まれ、死者を弔い遺骨、墓、先祖を守ってきた。が、核家族化、家父長制の崩壊、檀家制度の崩壊、未婚化、都市化などで住職が居ない寺、檀家なしという寺もあり、仏教寺院の存続が危ぶまれているという。都会では墓は長男が相続するものから、個人が選ぶものに変わり、田舎にある先祖の墓じまいをして合葬式の墓で永代供養する人が増えているという。女性専用共同墓、樹木葬や海への散骨も多くなっているという。

 私は以前墓地を衝動買いしたが、お墓をどうしようか。 920
  脱家現象:920の独り言(358)


2020/8/7 No.989
  18歳と81歳

  誰かが病院の掲示板に貼っていた「18歳と81歳」。

恋に溺れるのが18歳、風呂で溺れるのが81歳
心がもろいのが18歳、骨がもろいのが81歳
恋で胸をつまらせる18歳、餅で喉を詰まらせる81歳
道路を暴走するのが18歳、道路を逆走するのが81歳
偏差値が気になる18歳、血糖値、血圧が気になるのが81歳
まだ何も知らない18歳、もう何も覚えていない81歳
自分探しの旅に出る18歳、出かけたまま分らなくなる81歳
ドキドキが止まらない18歳、動悸が止まらないのが81歳
友達が増えるのが18歳、友達が減るのが81歳
知らないことが多いのが18歳、忘れることが多いのが81歳
人生につまずくのが18歳、小石につまずくのが81歳
ハメをはずすのが18歳、入れ歯をはずすのが81歳
免許証を取れるのが18歳、免許証を返納するのが81歳
社会に旅立つのが18歳、あの世に旅立つのが81歳
犬を引っ張るのが18歳、犬に引っ張られるのが81歳
買いたいものがあるがお金が無いのが18歳、お金はあるが買いたいものが無いのが81歳

920


2020/7/31 No.988
 ニクセン


 その昔、アムステルダム、ロッテルダムに行ったことがあるが、ワーク・ライフ・バランス世界ランキング第一位のオランダからストレス解消に効果的な過ごし方「ニクセン」が注目されている。

  「niksen」はオランダ語で「何もしない」という意味。オランダ発のリラックス法で、仕事のストレス解消に効果的で、ひらめきを生み創造性を高める効果もあるという。子供の幸福度ランキングも首位はオランダで、毎日の宿題や夏休みの宿題がない教育で知られているが、これも「ニクセン」であろうか。

  「ニクセン」とは週末や夏休みなどに予定を詰め込まず、他人の目を気にせず、何もしないことに罪悪感を持たずに、自分にあった時間をつくり、心地よい時間を楽しむこと。周囲からの期待や仕事のことを忘れ、義務感などから自分自身を解放し、何もしない時間を過ごすことで、心身がリラックスしてストレスが軽減するという。我が国の「坐忘」のようなものであろうか。

  夏休みはなく、休みに何もしないことは心身に悪いと思い込み、仕事が趣味のごとくあくせく働きに働き、ストレスまみれの私が、解体新書、飾り窓、合法大麻カフェ、安楽死先進国のオランダの「ニクセン」から考えさせられることは多い。    920 

  坐忘:920の独り言(976)


2020/7/24 No.987
  ブーカの時代

 グローバル化、情報化技術の急速な進展により政治、経済などあらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増して、想定外のマサカな事が次から次に発生するため、将来の予測が困難になることを、経済界では「ブーカの時代」と呼ぶそうだ。

「ブーカ」とはVolatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性。Ambiguity:曖昧性の頭文字、VUCA。

 今回の新型コロナパンデミックはまさにブーカの時代に象徴的な出来事と思う。中国武漢で突然発生してから、またたくまに先進国であるヨーロッパに広がりイタリアでマサカの医療崩壊。その後世界一の大都市ニューヨークで感染爆発に医療危機が起こるとは。大都市のマサカのロックダウン。自然環境には良かったが、観光業をはじめとするサービス業、航空業など大恐慌以来の大不況。我が国では感染拡大の中、分けのわからないgo toキャンペーン。米国、ブラジル、インドでの感染爆発持続。感染拡大も経済不況も予測が立たず。こんな状態がいつまで続くのであろうか。

 「ブーカの時代」の予測不能な変化がどんどん早くなっている。8年後の感染症は、政治は、経済は、環境は、私はどうなっているであろうか。        920


2020/7/17 No.986
  ドイツの医師

  日本とほぼ同じ国土で人口8300万人のドイツは、コロナによる医療崩壊を起さず、死亡者数を低く抑えているが、コロナ対策による癌検診の先送りや約5万件の癌の予定手術が延期になっていて、その影響が懸念されているという。

 ドイツも医師は尊敬される職業の一つで、医学部人気は日本同様に高い。内申点とセンター試験により合格が決まり、真面目な女子の内申点が高いので合格率が高く、最近では医学部入学者の7割が女子という。医師数は38万人で、勤務医26万人、開業医12万人。日本医師との大きな違いは定年制と労働時間と地域枠。勤務医も開業医も65歳の定年制で、労働時間は診療科に関わらず、週42時間労働となっている。地方分散型社会のドイツは、専門医の定員が勤務医も開業医も地域ごとに医師数が決まっていて、専門医地域偏在が解消されている。

 我が国では長時間労働の激務に見合う対価が少ないので、外科医の希望者が減少しているが、ドイツでは女子の出産、育児の問題で外科医の成り手が少なくなっているのが大きな問題だそうだ。 

  その昔スイスバーゼル大学病院にいた時ドイツ人医師Ober Arzt,Gerberのドイツの家に招待された事を思い出した。 920

 森正樹:外科医から観たマクロの社会学、大道学館出版部。


2020/7/10 No.985
  テニスは健康寿命を9.7年も延長する

 
運動は免疫系を賦活して筋肉や骨を強化して、心血管疾患の改善、がんリスク低下、生活習慣病予防、抑うつ改善、ストレス症状改善、認知症予防など健康にとって重要な役割をはたしている。

 デンマークで、さまざまな運動を日常的にする人としない人との比較を行った研究で、最も健康寿命を延ばしたスポーツはテニスで、運動をしない人に比べ驚くことに9.7年も健康寿命が延長していた。
ジムなどで筋トレを行う運動は健康寿命延長に繋がっていなかったという。(サッカー:4,7年、サイクリング:3,7年、水泳3,4年、ジョギング:3,2年)

 テニスは2-4人で楽しく行う理想的なインターバルトレーニングで、有酸素運動と無酸素運動が絶妙に組み合わされているので身体に良いという。さらに定期的に集まるグループに属しテニスを共有し合う人たちがいるという気持ちが安心感、幸福感、ストレス発散に繋がり、精神的にも良く健康寿命を延ばすと考察されている。

 私は中学時代より60年以上テニスをしていて、今でも土曜日は尾道リハビリテニスグループ、日曜はグリーンストンヒルズクラブでテニスをしストレスを発散しているが、古希を超えた私にとって暑い夏の昼間のテニスは間違いなく寿命を縮めていると思う。  920


2020/7/3 No.984
  善悪、常識非常識


  華麗なる夫婦で、法務大臣を務めたこともあろう人が、妻のため、政争とはいえ、多くの地方議員に金をばら撒いて票を集めることなど「悪い」ということは、子供でも分ることなのに。

 検察総長定年問題が国会で問題となり与野党の論争中に、当事者である検察庁の黒川氏が、何と賭け麻雀をしていたとは、あまりにも「非常識」と、誰もが思うことなのに。

  善悪とか常識・非常識というのは他人事として言われること。この世には善人も悪人もいない。どのような善人にも悪が潜んでいるし、どんな悪人にも善な部分が潜んでいる。昔の常識は今の非常識、日本の常識は世界の非常識など、常識は通用しない事が多い。

 私達は感情より理性を重んじ、善悪とか常識で物事を考えがち。ヒトは悲しいから泣くのか、泣くから悲しくなるのか、自分の行動は自分が考えて決めていると思うのは錯覚にすぎない。人の行動は喜び、怒り、悲しみ、恐怖などの「情動」や「忖度」によって強く支配されている。

 論理や科学的思考で理解できないことも、情緒による直観力で正しく理解することが出来るという。河井氏が金をばら撒いて集票したこと、黒川氏が賭け麻雀をしたことが私には良く分る。    920



2020/6/26 No.983
 2020年6月30日にまたここで会おう


 東大法学部卒業、助手からマッキンゼーに転職、独立後京大で「意思決定論」の授業を担当し、人気No1の若手教官として講義室をいつも立ち見にした滝本哲史先生が、去る2012年6月30日、東大のホールに参加資格を29歳以下に限定し全国から集結した10代20代の若者約300人に、若者世代に向けて、未来に向けてと題して行われた「伝説の東大講義」が一冊の本として先日出版された。

  人間40代になると自分の人生が見えてくる、自分の人生は今の延長線上にしかないことが分る。20代の皆さんは無限大の可能性がある。自分のテーマを見つけて何かをやろう。君たちは 自分の力で 世の中を少しかえてゆける 支援はおしまない。等々。

  講義の終わりに、8年後の2020年6月30日に再びここに集結し、今日の宿題である8年間にしたこと、出来たこと、出来なかったこと、成功したこと、失敗したことなど、ここで再び会って話し合おうと提案し、会場からどよめきと賛成の拍手が起こったという。

 その6月30日が間もなく訪れる。優秀な若者たちが再び集い、人生で最も大切な8年間のそれぞれの成果を持ち寄るであろうか。

  残念ながら、講師の滝本哲史先生は2019年、“無念”といって東大病院で亡くなられてしまった。享年47歳。   920

  伝説の東大講義:滝本哲史、星海社新書


2020/6/19 No.982
  カスハラ

 
 顧客の対応で自分の感情をコントロールする必要がある仕事を感情労働と呼ぶそうだ。旅客機の客室乗務員をはじめとして、販売員、接客業など最近では多くのサービス産業で働く人が関係していて、ストレスを伴いやすい。

 セクハラ、パワハラなどに加えて、感情労働に携わる人に対する利用者、顧客による悪質クレームや暴言などカスハラ(カスタマーハラスメント)の被害が増えているという。

 最近学校の先生は、この子供にこの親と思われる親のクレームを超えた暴言などによるカスハラ対応に苦慮することが多いそうだ。「お客様は神様です」という三波春夫の名文句があったが、「患者さま」などと言うようになり、医療職に対するカスハラも増え、患者対応に加えて患者の家族対応にも神経を使うことが多くなった。

 入院中の高齢母親の息子が看護師に対してクレームを言うので、一生懸命看護しているのにクレームを言われると萎えて良い看護ができなくなる、文句があるなら私に言って、看護師には感謝の気持ちを伝えるようにと諭したところ、翌日大きな菓子箱をもってきて、看護師にありがとうと。このような人ばかりならうまくいくのに。   920


2020/6/12 No.981
 インフォデミック
 
インフォデミック(Information Epidemic)とは、多量の情報がSNSやネットで人々の不安や恐怖をあおりパニックとなり、社会

が混乱すること。新型コロナパンデミックでは、マスク不足やトイレットペーパ不足に加えて政府が混乱し、国民全員にアベノマスク配布とか10万円の配布とかECMO増産とかがもたらされた。

ウイズコロナ時代にインフォデミックと上手に向き合うためにはリテラシーが必要になるが、私の様な高齢者に新型コロナパンデ ミックのカタカナ新語を理解するのは難しい。

 新型コロナウイルスのオーバーシュートで医療崩壊。大都市ニューヨークのロックダウン。病院、介護施設、昼カラでのクラスター、小中高大学の閉鎖。大阪の小中校生徒全員にフェイスシールド配布。大都市一極集中での三密(密集、密閉、密接)、濃厚接触対策に新次元の分散型国土。アフターコロナ時代はテレワーク、モバイルワーク、サテライトオフィス、オンライン授業、オンライン診療、オンライン飲み会。東京アラート、Go Toキャンペーンなどなど。

マスクをした小学生がソーシャルディスタンスを保ちながら登校しますと。    920 

ヘルスリテラシー:920の独り言(934)


2020/6/5 No.980
  コロナ鬱

 新型コロナパンデミックに関し、日々恐怖をあおる様な異常報道に、日ごろのストレスによる気持ちの落ち込みに加えて不安と焦りで「コロナ鬱」の人が激増しているという。 

  「鬱」のそもそもの意味は草木の茂るさま、物事の盛んなさまという生命力が盛んなことを示す言葉。と、盛んなエネルギーが何らかの原因で阻害されて気のふさぐこと、うつうつたる気分という意味がある。ので、「鬱は力なり」と言う人がいる。

  コロナ不況対策にと、トーフでもあるまいし、一丁、二丁どころか10兆、100兆の借金を、国民全員にマスクとか10万円配布とか観光・サービス業に借金をばらまくという。莫大な借金財政に加えてこの借金を誰がいつどうやって返すのであろうか。

  少子高齢化人口減少の下り坂の我が国で、東京オリンピックとか大阪万博、リニア新幹線、カジノ誘致など、昭和的経済成長を期待している様だが、人生の終盤を迎えている団塊世代の私には明るい未来が想像できない。「鬱は力なり」と、絶望の中の小さな幸せ、明日日本が滅亡しようとも、今日私はリンゴの木を植えようと思いたいが・・・。               920

  非常事態宣言:920の独り言(973)
  不安:920の独り言(975)


2020/5/29 No.979
 賭け麻雀


 検察のナンバー2である黒川氏が賭け麻雀をしていたのが何故か訳ありにスクープされ辞任した。

 私が大学生の頃は麻雀が盛んで、大学の周りには何軒かの雀荘があり、朝から夜遅くまで多くの学生で賑わっていた。アパートで徹マンと称し徹夜で麻雀したのを思い出すし、休みに帰郷した際、4人兄弟で点ピンの賭け麻雀をしたことも懐かしい。そういえば、尾道医師会で賭け麻雀をしたこともある。時代は変わり、最近の若い先生は友人のアパートでの徹マンなどは無論、三密である麻雀などやらないという。

 黒川氏は孤独であったと思う。一生懸命勉強し東大を出て、激務の仕事と出世街道を勝ち抜いてゆくストレスは相当なものであろう。趣味の雀卓を囲んで麻雀をしている時は、日々の苦悩、ストレス、不安、嫌なことを忘れるひと時となり、病み付きになったと思う。

  最悪のタイミングで賭け麻雀をして晩節を汚した黒川氏よりも、人間の善悪の本質を理解できていないワイドショーのコメンテータが、賭け麻雀が犯罪だとか、大蔵官僚のノ-パンしゃぶしゃぶが悪いとか、国民を煽るほうが見苦しい。     920

 賭博依存症:920の独り言(562)
  ギャンブル依存症:920の独り言(842)
  オピオイド・クライシス:920の独り言(909)


2020/5/22 No.978
  新サルの惑星

 
コロナパンデミックにより外出が制限された結果、テレワークが急速に広まり、テレワークによる在宅勤務など、今後働き方に大きな変化がもたらされる。オンライン診療、オンライン授業なども行われる様になり、医療と教育の在り方も大きな変化を迎えるという。

  中世のペストパンデミックでは、宗教改革からルネサンスという大きな社会変革がもたらされたが、今回のコロナパンデミックは情報伝達技術による大きな社会変革の歴史的転換点になるそうだ。

  先生はパソコンのデータばかり見ているので患者である私の方を見て手当てしてほしい。仏教で重要な教えを師から弟子に伝えるには、対面して直接伝授する「面授」。学校の先生と生徒の信頼関係で重要なのは、先生は私のことを見てくれているという「響き技法」、などは、古い過去の人間関係と言われるようになるのであろうか。

  人間の基本は、お互い接触しながら対面で色々な事をすること。人間が動物と異なるのは、対面して目と目で心が通じ合うこと。効率や便利を追求した情報伝達技術革命により人類が情報ロボット化して、“新サルの惑星”にならなければ良いが。 920

 ユマニチュード:920の独り言(678)
  信頼関係:920の独り言(728)


2020.5.15 No.977
 近代都市文明

  産業革命後に集団の人間の数が指数関数的に増加した。森林を伐採し農地にして、表面をコンクリートで固め、便利さと効率を追求した都市の人口が増えすぎた。集団の人数が増えすぎた近代都市文明は密集、密接、密閉の3密と、人間にとって異常になった。

  コロナパンデミックにより私達の日常生活は一変した。世界各地の大都市でロックダウン、経済活動の制限、移動の制限により、大都市、観光地から人が消えた。その結果、ベニスでは運河が見違えるように綺麗になり、インドでは大気汚染が改善しヒマラヤが拝めるようになり、ニューヨークでは一酸化炭素濃度が半減し、中国ではPM2.5が減り大気がきれいになり、地球環境が劇的に改善した。

  経済を優先し自然環境を破壊して都市化し、人間の生態環境を変えた結果、コロナパンデミックが出現した。気候変動による新興感染症の発生は必然的で、今回のパンデミックは序章に過ぎない。

  豊かで幸せな生活を目指してあれほど勤勉に働いてきたのに、外出できない、自由に移動できない、学校に行けない、遊びに行けない、旅行できない、スポーツ観戦ができない、テニスもできない。私達は今まで、汗水たらして一生懸命何をしてきたのであろうか。 920

 非常事態宣言:920の独り言(973)
  新型コロナウイルス:920の独り言(963)


2020/5/8 No.976
  坐忘


  コロナパンデミックの緊急事態宣言で、我が国の観光地、飛行場、高速道路など、連休中溢れていた人々が今年は居なくなり、景色が一変した。豊かさの象徴であった外食、観光・旅行、航空会社などサービス業界が一気に瀕死の状態に陥っているという。

  外出の自粛が求められ、ステイホーム。在宅での時間を強制された人々は連休中、家に留まり何をしていたのであろうか。

  無の時間を自主的・創造的に求める禅僧は作務、精進料理、坐禅で無の時間を過ごす。無の時間とは呼吸を整え、沈思熟考する時間。静かに無我の時間に浸る。ここでは、カネ、モノは少ない方が幸せ。余計なモノが周りにない方が無の時間を大切に過ごせるという。

   「坐忘」とは、悟りを求める厳しい坐禅と違い、ごく自然に手足を楽にし、ゆっくりした呼吸で知識を空にし、自然と一体化する感じで、すべてを忘れた恍惚の時間を過ごすこと。

  身体の健康のためには身体を動かすのが望ましいが、心の健康のためには動かず無為自然が良いと、理屈で分かったとしても、実際は至難の業であると、連休中在宅で坐忘を試みながら悟った。 920

  禅的生活:920の独り言(300)
  ホセ・ムヒカの言葉:920の独り言(776)


2020.5.1 No.975
  不安


  私達は日常生活において怒り、恐怖、悲しみなどの不快な感覚を避けて通ることはできない。中でも厄介なのが「不安」。

 不安は多様な感情や感覚が複雑に関与するために言語化しづらく発散しにくいので溜まり易い。溜まった不安は他者に向かう攻撃となることもあるし、多くは悲しみや落胆から抑うつをもたらす。

 新型コロナは見えないウイルスの感染から先が見えない状況に加えて、マスコミによる情報過多も悪い事ばかりを想像させて不安をあおり、コロナ不安、コロナうつに陥っても不思議ではない。

 外来で治療していた心不全の患者を市民病院に紹介したところ、コロナ関連肺炎が疑われるのでPCR検査をするとの連絡があり、濃厚接触者は?院内感染は?病院でクラスターが発生したらなど、不安が噴出してきた。翌日、陰性との連絡を得てほっとしたが。

  色々な原因で大きな不安に押しつぶされそうな場合、それは敗北でも恥じでもなく、不安こそ正常な反応ととらえ、私は坐禅して一休宗純禅師曰く「だいじょうぶ 心配するな なんとかなる」で不安解消を試みているが・・・。
(コロナで亡くなった志村けんのダイジョウブダーはここから?)     920

 マインドフルネス:920の独り言(904)


2020/4/24 No.974
  悲哀排除症候群

 
戦後のおびただしい悲哀のどん底から立ち直った私達は高度経済成長の中で、いつのまにか悲しむことへの困惑を出来るだけ避ける様になり、楽しい人生を過ごそうとして悲しむことを生活から排除するようになった。老病死による悲しみを煩わしいもの、関わり合いたくないもの、迷惑なものとして、これらの現象を排除し過ごそうとしているという。悲しむことを知らないために、老病死などに対しいたずらに困惑し、不安に怯え、絶望に打ちひしがれて、ひいては自分自身を喪失してしまう精神病態を「悲哀排除症候群」と呼ぶそうだ。

  最近、患者も家族も医療スタッフにも欠けているのが、悲しんだり苦しんだりする能力という。かつては苦しむ病人も臨終の際まで家にいて、家族もその苦しみを苦しみ、悲しみに泣いた。医師も又死の床に臨んで患者や家族とともにその悲哀の仕事を営むのを天職としていた。臨床とは「死人の床に臨む」という意味であった。

  先日入院中のおじいさんが亡くなった時、毎日熱心に看病していた明るいおばあさんが長い間泣き崩れているのを見て、きっと早々に立ち直り明るく元気になられるに違いないと思った。 920
対象喪失―悲しむということ:920の独り言(968)


2020/4/17 No.973
  非常事態宣言


 グローバル資本主義社会の豊かさの象徴と思われる有名大都市がロックダウンされ、人で溢れていた都市がまるで廃墟の様に思える。日本も非常事態宣言が出され、当たり前と思われていた世界への移動、旅行、外食、スポーツ、娯楽、学会・集会などが禁止された。

 経済危機は戦後最悪で世界的に大恐慌規模になるという。オリンピック、その後2025年は私達団塊世代が後期高齢者となり、少子高齢人口減少社会が本格化し、東南海地震が近づき、膨大な借金を抱え、難問が一揆に噴出してくるに違いない。

アベノミクスによる経済成長がすべての問題を解決してくれるという昭和時代的な「拡大・成長」を目指す社会から、自然の摂理に反する人類に対するコロナウイルスの警告を受け入れて、「持続可能社会」への転換が正念場になる。

 50年後、日本は持続可能社会であろうか?借金財政、格差拡大、人口減少、雇用不安、環境破壊、大都市集中、地方衰退など多くの社会的要因から日本社会が取りうる約2万通りのシナリオをAIで分析した結果、日本が持続可能な社会になるには、地方分散型社会が望ましいとの結果が得られたという。
  東京は50年後どうなっているだろうか。     920
  ポスト資本主義:920の独り言(924)


2020/4/10 No.972
  偶然と必然

 
 毎年咲いている病院前の桜が今年も綺麗に満開となったが、例年行っている新人歓迎花見の宴は、偶然発生した新型コロナウイルスパンデミックにより中止となった。

  今日は昨日と同じ様に過ぎ、明日も今日と同じ様に過ぎてゆくという当たり前の日常生活は必然ではなく、多くの要素が関与して万事が上手く動いていた偶然の産物、奇跡という。東北大震災では、津波により一瞬の間に街がすべて流され、当たり前の日常生活が奪われてしまった。災害、事故、病気など不慮の出来事は偶然の事情に左右され、運悪く災難にあう。偶然は神意?因縁?運命?自分にとって好都合な偶然は「幸運」で、不都合な偶然が「不運」になる。

  武漢、ニューヨーク、パリ、ロンドン、東京など不自然な高層ビルが林立し、日々当たり前のごとく多くの人々で溢れていた有名大都市から人影が消えたのは偶然で不運な出来事であろうか、それとも起り得るべくして必然的に起こった出来事であろうか。 

  「生は偶然、死は必然」だが、志村けんや豪華クルーズ船に乗って楽しい日々を過ごし、偶然に新型コロナに感染し亡くなった人は、「生は必然、死は偶然」であろうか。       920


2020/4/3 No.971
 病者の塗油


  私達にとって生は偶然、死は必然なので、医学の限界の先に必要なのは宗教と言われる。カトリック教では、死は敗北でも苦痛でもなく、神の国に旅立つ祝福されるべきものとされている。

  カトリック教信者が重篤になると聖職者が呼ばれ「病者の塗油」が行われる。現代のターミナルケア、スピリチュアルケアの伝統的方法で、神父は信者の心身の回復を願い、また死に臨んでは罪の許しと神の恵みを願って祈りを授け、額と両手に香油を塗る。終油の秘跡は、臨終を迎えんとする信者の魂を救うとされる。 

  その昔ペストによるパンデミックは欧州人口の3分の1を失い、黒死病による人々の恐怖の救いとならなかった中世ローマ教会の権威が失墜し、宗教改革という社会的大変革をもたらした。

  新型コロナウイルスパンデミックにより、特にイタリアでは医療崩壊も起き、10万人以上が罹患し1万人以上が死亡している。ローマ教皇はコロナパンデミックという試練に対し祈りと思いやりで対峙しよう、病気になった人々に会いにゆく勇気を持とうと呼びかけ、多くの司教がウイルス感染した信者の元に行き、病者の塗油を行った際に感染し、70名近くの神父が次々と命を落としているという。メメント・モリ。            920

 臨床宗教師:920の独り言(965)
  鞭打ち苦行:920の独り言(46)


2020/3/27 No.970
  パリのスリ


  その昔、今から40年前にスイス留学中、欧州麻酔学会でパリに行き、観光客であふれるシャンゼリゼ通りを歩いていたところ、子供のジプシーが金をねだりに寄ってきたので直ぐに追い払ったが、バッグからパスポートと財布を盗まれているではないか。ほんの数秒の出来事。少額のお金はまだしも、パスポートを盗まれたのには閉口した。宿泊ホテル近くの警察で盗まれた証明書を書いてもらいパリの日本大使館で1週間後にパスポートを再発行してもらった。次の日にそのジプシーが街にいるではないか。近くのおまわりさんに言ったが、現行犯でなければ逮捕できないと。常習犯であった。

 あれから40年、相変わらず日本人はいいカモで、パリのシャンゼリゼ通りで、高級腕時計強奪事件が頻発しているという。高級ホテルから出た日本人が男にタバコをせがまれた際に時計を強奪された。盗まれたスイスの高級腕時計の値段が何と9000万円という。 

 パリ、ロンドン、ニューヨークなど大都市が新型コロナ対策のロックダウンによりゴーストタウン化し、人が途絶え、観光業をはじめとして大恐慌以来の経済危機、リーマンショック以来の世界金融危機が心配されているが、ジプシーは困っているだろうか。 
920


2020/3/20 No.969
  パンデミック


  新型コロナウイルスによるパンデミックは、中国武漢から韓国、日本、欧米、尾道など全世界に急速に広がり、人々の健康問題のみならず日常生活、政治、経済活動へ大きな混乱をもたらしている。 

  古代エジプトで「神の罰」として恐れられた突然変異のバッタの大群が数十年に1度という規模で異常発生し、東アフリカから南西アジア、中国に国境を越えて広がり、農作物や緑を食い尽くし、貧しい人々の食糧不足により多くの命が危険にさらされているという。

 日本史上最悪の災難は、ペリーが黒船でやってきて開国をせまる幕末の多難なときに、「安政の大地震」という、東海、南海、江戸直下型の大地震に加えて、コレラのパンデミックが日本に上陸するというトリプルパンチを受け、多くの人命が失われる大混乱を経て新しい時代を迎えることが出来た。

 新型コロナによる経済ショックに対し、先進各国の首脳は右往左往し、金をばら撒くなどしようとしているが、新型コロナウイルスは地球の環境破壊を顧みず経済至上主義に陥り、限りない経済成長、消費を目指す人々へのバッタの大群「神の罰」であろう。 920

 新型コロナウイルス:920の独り言(963)
  ホセムヒカの言葉:920の独り言(776)


2020/3/13 No.968
  対象喪失―悲しむということ


  東日本大震災から9年。震災後関連死の方が3700人もいる。

  私達が受ける変化に対応するストレスで最も大きいのは、依存対象の喪失である配偶者の死が最大で、離婚、会社の倒産、親族の死、失職などいずれも、「対象喪失の悲哀」が大きなストレスとなる。震災により家族を失い、家が流され、会社が無くなり、友人が亡くなり、地域が無くなるなど、慣れ親しんだ環境の喪失、所有物の喪失など日常生活のすべてが突然喪失した被災者の「魂の苦しみ」ストレスたるや想像を絶するものであろう。

  対象喪失による悲哀がキラーストレスになり死の原因となる。震災後1年間の間に震災関連死の75%の方が亡くなっている。我が国で1年間「喪に服す」と言う習慣は、対象喪失悲哀は多くが1年間の悲しみの期間を経て癒されてくるからだそうだ。

  対象を失った後、私達はその悲しみにどう耐えるのであろうか。フロイトによる「悲哀(喪)の仕事」は喪失体験の悲しみを受け入れていく心理過程を経て、私達は立ち直ることができるという。現代社会は悲しむことを排除する風潮にあるが、悲しむこと自体が悲哀の回復には必要で、私は歳を取り涙腺が緩くなってきたの良い事なのであろうか。             920

 対象喪失:小此木啓吾、中央新書。

2020/3/6 No.967
  ありがとう寺

 
町田宗鳳氏は大徳寺で雲水となった後に渡米し比較宗教学を学ばれ、帰国後東京外大の教授を経て広大の教授になられ、みろくの里の永照院で坐禅会を開催された。そこで私は「ありがとう坐禅」や「断食坐禅」を教えてもらった。現在は、御殿場の時之栖に「ありがとう寺」を建立され、禅の新たなあり方を発信されている。

 私達が幸せになるには、常に感謝の念と利他の心で生きることが大切と。自分の人生で起る現象は、良きにつけ悪しきにつけ自分にとって必然のことと思い常に感謝していると、どんな苦難も乗り越えることができるという。困難に遭遇した時、嘆いたり、恨んだり、愚痴をこぼしたりせずに、前向きにとらえて成長する機会を与えてくれてありがとうと感謝する気持ちを持つ。何か良いことに対し、他者を思いやり、笑顔で「ありがとう」と言ってみると、言った方も言われた方も穏やかな気分になれる。

  「ありがとう」の言霊が感謝の念を通じて「無意識の光」となり、心身を健康にして“魂の浄化”が得られ、自分も周囲も幸せにし、運命が明るく開いてくれるという。

 私は毎朝坐禅をしているが、過去を悔いたり、将来が不安になったりして、なかなか感謝の念が持てないでいる。   920

  アドラーの教え:920の独り言(783)


2020/2/28 No.966
  ゾーンに入る

  テニスで大きな声を出すことで有名であったシャラポアが引退を表明した。大きな声を出し脳が刺激されるとアドレナリンが放出されて馬鹿力がでることをシャウティング効果と言う。アドレナリンにより身体能力、筋力、集中力を瞬間的に高めることが出来る。

  剣道、空手、陸上では槍投げなどの選手が大きな声をだす。多くのスポーツで白熱してくると大きな声を出し集中する選手は多い。私もテニスの試合で大きな声を出して相手に嫌がられている。

  集中力が極限まで高まり感覚が研ぎ澄まされ没頭している状態を「ゾーンに入る」という。一流の選手はゾーンに入る体験をする ことがある。ゾーンに入るとボールが止まって見えたりするという。極限の集中力が発揮され無我の境地となり、心と身体が一体化して自然に身体が動くようになる。アドレナリンにβエンドルフィンが分泌され、痛みが快感に変わる。「ゾーン」に入るには日々の激しい練習のルーチンに加えて、常に集中力を高め心身一体の流れるような感覚「フロー」を習得することが重要という。

  私は坐禅で、今に集中するフロー状態を習得し、シャウティング効果によりゾーンに入ろうと思うが、なかなかうまくいかない。     920

  ピョンチャンオリンピック:920の独り言(867)



2020/2/21 No.965
  臨床宗教師


   欧米では人間の老病死による苦悩に対し医療と宗教の協力関係が基礎文化として制度化されていて、キリスト教の聖職者たちがチャップレン制度のもと病院で活動している。

 人間の苦悩をどう救うか、医療と仏教は「生老病死」の苦を共通の課題としていた。が、戦後の宗教性を排除する我が国の公教育によって国民の多くは無宗教化し死後を信じなくなり、医学の急激な進歩もあり、今では仏教は葬儀などで死後の儀式に立ち会うだけの葬式仏教になっている。 

 医学、心理学、社会学により健康問題は学ばれているが、魂学が我が国にはなかった。東北大地震の際に、家も家族も地域も流され失った被災者の魂の痛みを医師もカウンセラーも癒すことが出来ず、東北大学で魂学を学ぶ臨床宗教師の養成講座が始まった。

 医師、看護師では患者の死への恐怖に対応できていなくて、臨床宗教師が患者の老病死の苦、過去の悔い、将来の不安などを傾聴し寄り添う。多死時代を迎え延命から緩和へ、キリスト教、イスラム教などの一神教と違い、死後を信じない無宗教国民に対する専門家による魂の癒しの可能性が試されている。     920

  ビハーラ:920の独り言(712)
  魂は存在するか:920の独り言(724)


2020/2/14 No.964
  白髪


 ストレスは生物が生き延びる為に必要と考えられているが、頑張りすぎのストレスや我慢しすぎのストレスによってもたらされるキラーストレスは身体と心に大きな障害をもたらす。 

  強いストレスと白髪は関係が深いと言われている。私もそうだが、オバマ元米国大統領も小泉元首相も強いストレスの元で仕事をしてきたことにより白髪になっている。

 ストレスで白髪になるメカニズムをハーバード大学研究グループが明らかにした。毛根付近にある幹細胞は通常では髪が生える過程で徐々に色素細胞に変化して髪の色素を生成している。ストレスにより分泌されたノルアドレナリンが毛根付近の幹細胞を過度に活性化し、急速に色素細胞へと変化することにより色素幹細胞が永続的に枯渇してしまい白髪になるという。

 オバマ元大統領が学生集会で、政権の座に就いたときは無かったが今では白髪だらけになってしまった。それでもほかの多くの首脳のように私は白髪を染めたりはしない。が、あなたがた若い人は私を年寄りと呼ばないでほしいと言ったそうだ。

 私はキラーストレス対策に、マインドフルネスとしての座禅と運動としてのテニスをしているが、白髪は増えてくるばかり。

          920


2020/2/7 No.963
 新型コロナウイルス


  中国武漢発生の新型コロナウイルス感染がパンデミックの様相を呈してパニックになっている。

 感染拡大による中国の経済減速に伴う世界経済への悪影響が懸念されている。オイルショック時のトイレットペーパー騒動と同様のマスク不足が問題となり店頭からマスクが消えた。マスクの感染予防効果はほとんどなく限定的であるのに。

 コロナウイルス感染防止に中国からの入国を禁止したアメリカではインフルエンザが大流行していて、千五百万人以上が罹患し、14万人が入院、1万人近くが死亡しているという。中国ではコロナに加えてインフルエンザの流行はどうなっているのであろうか。

  抗生物質により細菌感染症は制圧したと思われていたが、耐性菌による猛反撃が始まっている。コロナウイルスもどんどん変異し、SARS、MERSそして今回の新型コロナウイルスが襲っている。インフルエンザウイルスも、10年程前の豚インフルエンザ流行によるパニックを思い出すし、次は強毒性鳥インフルエンザのパンデミックの可能性が指摘されていて、目に見えない耐性菌、ウイルスと人類の戦いは終わりなき戦い。    920


2020/1/31 No.962
 してくれない症候群


 冷暖房の車や家の中でごろごろしていて自然と触れ合わず、日本の素晴らしい四季を味わうことをしない日本人が増えたと思う。

 その結果、自分の思うように事が運ばない時、何々が悪い、何々「してくれない」と何でも人のせいにする人が多くなった。子供の成績が悪いのは先生のせい、病気が治らないのは医者のせい、誰も私を理解してくれない、政治家が悪い、日本が悪い・・・と。

 仏教では他者を思いやる心、他者の為にと願う心を「利他の心」と言い、人から何かをしてもらうよりもしてあげることを心がけるよう勧めている。聖書は「受けるよりも与える方が幸いである」と教える。人は他人に尽くそうとした時に幸せを感じ、自分のことだけを考えていると孤独になり、してくれない症候群になるという。

 してくれない症候群と思われる患者に対し、一年を通し自転車で、しまなみ海道を走ることを勧めている。暑い夏に走ると、秋の空気の美味しさを感じることが出来る。寒い冬に走ると、春の温かさを感じることが出来るようになる。そして四季のある日本に生れて良かったと思える様になると自分自身が変わり、してくれない症候群は改善するに違いないと思うが、誰も実行“してくれない”。

       920


2020/1/25 No.961
  五右衛門風呂

  日本人は風呂好きなので、介護施設には立派な浴槽があり、外国では考えられない訪問入浴という介護サービスも行われている。

  その昔、団塊世代の私が子供の頃、家庭の風呂は五右衛門風呂であった。五右衛風呂は鋳鉄で作った大きな釜が据え付けられ、お湯を沸かすのは子供の仕事であった。庭で切った薪の下に新聞紙を丸めて入れ火をつける。丁度良い温度にくべるのは難しい。鉄だから直接触れると熱い。そこで入浴の際には、湯の表面に浮いている木の底板を足で沈めて、その上に体を乗せて入ったことを思い出す。

 最近の風呂は温度もお湯の量も自由に調節でき本当に便利になった。風呂好きな私は、温まりすぎた後にふらつくことがあるが、夕食を食べた後、ほろ酔い加減で少し熱めの湯につかるのを至福の時としている。

  湯船で死亡する高齢者が年間5千人もいるという。先日も元気に通院していた高齢患者さんが自宅の風呂で亡くなったと、家族の方が報告にこられた。時が過ぎるとピンピンころりで良いお参りだったと思うようになると話したが、私も気を付けよう。   920


2020/1/17 No960
  ナッジ


 アムステルダム空港で男性トイレの小便器内側に一匹のハエの絵を描いたところ、トイレ清掃費が8割も削減されたという。

  人を動かすには、してはいけない事、しなくてはならない事などの「規則」。した方が良いと自ら行動するようにする「教育」。行動することによる報酬、しなかった場合の罰金など「経済的インセンティブ」に加えて、ある行動を自らするようにしむける誘導方法、「ナッジ」がある。

 正しい情報を得られた人は合理的な意思行動すると思うのは間違いで、同じ情報でも表現の仕方次第で違った行動するという。改善策を一方的に押し付けて無理やり行動を変えさせようとするのではなく、改善に向けて行動を変えたくなる様、強制せずに選択の自由を残しつつ、するように仕向けるきっかけ。そっと背を押す様な仕掛けが「ナッジ」。

  医師が患者に正しい情報を提示さえすれば、患者は合理的な意思決定行動をすると思うのは間違い。私は強制的に導こうとする医師のパターナリズムを重要視してきたが、若者の喫煙に対して何か良い禁煙ナッジはないものであろうか。     920


2020/1/10 No.959
  人口減少令和社会


 令和時代の我が国最大の課題は、トランプでもゴーンでもなく、世界に類を見ない急激な人口減少社会を迎えることであろう。昨年の出生数は86万人(一昨年は91万人)と年々減少している。死亡者数は137万人(一昨年は136万人)と年々増加している。死亡数が出生数を上回る「自然減」が51万人に達し、想定以上のスピードで日本の人口が減少しているという。鳥取県の人口が55万人なので、鳥取県が毎年無くなると考えると、すごい感じがする。

 私の持論は、この小さな火山列島に人口1億人は多すぎる。同じ位の国土で幸福度、教育度、経済力など世界一成熟している国家のフィンランドは人口600万人。我が国もそれ位でも良いと思うが、問題は1億人の人口を維持することでなく、これからの少子高齢化による急激な人口減少に賢い日本人がどう対応するかであろう。

 私が生まれた昭和23年の団塊世代は、明るい明日を目指し生めよ増やせよと、出生数は280万人であった。人口は急激に増え、うさぎ小屋に住み働き蜂のごとく24時間働き驚異的な経済成長を牽引したが、2025年問題など多くの課題を残し現在に至っている。

 人口減少するこれからの令和30年間が成熟した日本になるには、去りゆく私たち団塊世代はどうしたら良いであろうか。 920

 成長から円熟:920の独り言(923)
  明るい未来: 920の独り言(922)
  元号が変わる:920の独り言(921)


2020/1/3 No.958
  ネズミ歳男


 今年はネズミ歳。私は昭和23年のネズミ歳生まれで6回目の歳男。ネズミ歳生まれの2020年の運勢は、「粘り強さ」が成功をつかみ取るための重要なポイントで、人生の絶頂期ともいえる1年になるという。

  団塊世代の歳男で誠之館高校同窓生の藤田君こと人形浄瑠璃太夫の竹本津駒太夫が六代目竹本しころ太夫(五代目しころ太夫は明治から昭和初期にかけて活躍した名人)を襲名する。襲名披露公演が1月3日の新春初公演として大阪国立文楽劇場で行われるというので、同窓生有志でお祝い観劇に行ってきた。

  披露演目は、土佐の名前を継ぎたいと願う絵師の又平とその妻・おとくの夫婦愛の物語である「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)、土佐の将釼閑居(とさのしょうげんかんきょ)の段。

 大阪国立文楽劇場にはじめて行ったが、新春初公演ということで、劇場前でしころ太夫らによる鏡開きが行われ、升酒が皆に振舞われた。正月らしく鯛の飾りがあり、絶頂期のしころ大夫の義太夫に感動させてもらった。2月7日NHKで放送される。私も映るかも。

  今年が人生の絶頂期ともいえる1年になれば良いが。  920

   文楽:920の独り言(850)


2019/12/27 No.957
  ジャネーの法則

  「光陰矢のごとし」平成から令和へ世界は激動の1年であった。歳を取るほど時間の経つのが早く感じられる。今日は病院で餅つきをして、明日門松を作り、今年はもう終わる。

  時間の過ぎる心理的速さは年齢に比例して加速するので、人生80年とすると、20歳で人生の7割が終わり、50歳で9割が終わり70歳以上ではもう人生は終わったと感じるようになる。

 歳を取り人生の残り時間が少なくなってくると時間が大切になる。さらに時間を短く感じるようになるので、同じ時間待たされた場合、若い時に比べ2-3倍長く感じられる。だから私は待たされるのが嫌いで、ついイライラしてしまう。

 私が還暦を過ぎゴルフを止めたのは、同伴者がグリーン上でピン近くのボールをマークするのにイラついて、私はマークせずお先にとパターし上手く入らず3パターばかりする様になったから。私の様なイラチが高齢になってゴルフをすると、ストレスが貯まるので、今では日々のストレスが発散できるテニスをしている。

 少しでも心穏やかに過ごそうと毎朝坐禅をしているが、歳を取るにつれて直ぐイラついて怒りっぽくなってくる。残り少ないのでもういいか。 駆け抜けたつもりはないが、はや晩年。 920


2019/12/21 No.956
  パーソン・オブ・ザ・イヤー 2019


 今年のパーソン・オブ・ザ・イヤーはトランプ米大統領ではなく、環境活動家グレタ・トゥンベリさんが選ばれた。

  欧州で熱波が襲い、パリでは観測史上最高の42、6度を記録し、アマゾンや豪州をはじめ森林火災が多発し、地球環境は悪化した。

 スエーデンの若干16歳のグレタ・トゥンベリさんが国連で地球環境問題を訴え、経済成長を追求する資本主義、富裕層、政治家に対する「階級闘争」を一人で始め、「未来の為の金曜日」9月20日には、世界中で400万人以上の若者が私達の明日の地球を守ろう と、授業をボイコットしてデモに参加した。世界の若者が自分達の未来の地球を守ろうと本能的に立ち上がった意義は大きいと思う。

  一方、アメリカトランプ大統領は、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明。COP25では、それぞれの国の利害が絡み地球環境対策は進展せず。自然災害が少ない瀬戸内に住んでいると、地球環境悪化は感じ難い。今年も庭の小さな畑で、夏はトマト、キュウリ、スイカ、冬は白菜、キャベツ、大根を作り、先日は庭になっている沢山の甘柿を吊るし柿にして、少し鳥に食べられたが、上手に美味しくできた。こんなささやかな幸せをいつまで味わうことが出来るであろうか。

                        920     
  地球温暖化:920の独り言(945)


2019/12/13 No.955
人は見た目

 リチウム電池の開発で今年のノーベル化学賞、文化勲章を受賞された吉野彰氏を最初にテレビで見た時、髪が薄く高齢な方だなどと話をしていたら、何と私と同じ71歳であった。先日凶弾に倒れた中村哲氏は一昨年京都環境殿堂でホセムヒカ氏と伴に殿堂入りされた際に講演を聞きながら若い方と思っていたら、何と私と同じ昭和48年大学卒業の団塊世代で1歳年上であった。

 以前「人は見た目が9割」という本がベストセラーになった。人前で話しをする際、聞き手の第一印象に影響を与えるのは、話の内容そのものはわずか10%で、非言語コミュニケーションである顔つきや表情、身だしなみなどの視覚が50%、声の質、大きさ、速さなどの聴覚が40%の影響を与えているという。

  男も女も見た目で歳を当てるのは難しい。「見た目より中身だ」といっても、人は見た目で左右され、外見が良いと内面も良いと感じてしまう。歳を取ると、見た目とは容姿ということではなく、その人の性格や人生がにじみ出る「らしい顔」だろう。私は白髪で古希を超えたので、それらしく振舞おうと思うが、つい若ぶって・・・。

       920
 人間にとって顔とは何か:920の独り言(17)(58)


2019/12/6 No.954
  処方オピオイド中毒


 我が国は慢性痛患者が2千万人を超え、高齢化と伴に増えている。それと伴に慢性疼痛薬の市場も拡大し、神経障害性疼痛薬リリカや弱オピオイドのトラマドールなどが慢性疼痛薬として売り上げを伸ばし、製薬会社は強オピオイドであるオキシコンチンの非癌性慢性疼痛への保険適応を申請しているという。

 米国では繰り返された戦争、医療制度、経済格差、痛みの10年法案などで処方オピオイド中毒患者の激増が国家問題となっている。 オキシコンチン製薬会社の米国バーディファーマとそのオーナーで富豪のサックス一族がオピオイド中毒拡大関与に巡る多数の訴訟に対し、1兆円を超える和解金で破産法適用申請するという。その影響で米国疼痛学会が突如解散したそうだ。オキシコンチンは長時間作用性で乱用性、依存性は少ないと、学会や医師は無論、一般のマーケッティングで「私も使っています」などと詐欺的な過大宣伝で大々的なキャンペーンを行い、怪我、歯痛、変形性関節症痛、腰痛などの慢性痛患者への処方を勧め、安全性より依存による製薬企業の利益を優先し、オピオイド中毒を広めたという。

私は慢性腰痛があるが、慢性疼痛は脳内感作が原因なので、運動と座禅で痛みをコントロールしている。       920

人は何故薬物依存になるのか:920の独り言(916)

2019/11/29 No.953
  松下村塾


 先日病院旅行で、開港180周年記念祭の門司港を見学した後、安倍総理とプーチンロシア大統領会談が行われた長門湯本温泉大谷山荘に泊まり、翌日萩市の世界文化遺産である松下村塾、松陰神社、伊藤博文旧宅、東光寺などをサイクリングで散策してきた。

  初代内閣総理大臣の伊藤博文から90代57人目の安倍総理まで、山口から9人もの総理大臣が誕生している。本州の西端である山口から多くの総理が輩出されているのは、徳川幕府が黒船来航などで終焉を迎え、江戸から明治に移行するという大激変期に現れた長州藩士で思想家の吉田松陰によるところが大きい。安政の大獄により若干30歳で刑死したが、松下村塾を主宰し明治維新後に重要な働きをする伊藤博文、山県有朋、高杉晋作、久坂玄瑞など多くの逸材を育て思想的影響を与えたから。

  安倍総理は尊敬する人物として吉田松陰を挙げ「至誠にして動かざる者は未だこれ有らざるなり」を座右の銘としているそうで、吉田松陰没後160年を経て今なお影響力が発揮されている。 松陰神社は「志」を成し遂げる御利益があるというので、しっかりお参りしてきた。「夢なき者は理想なし 理想なき者は計画なし 計画なき者は実行なし 実行なき者は成功なし 故に夢なき者は成功なし」と。                920



2019/11/22 No.952
  大麻


 元オリンピックスノボーダや有名芸能人が麻薬取締法違反で逮捕されたとワイドショーが大々的に詳しく報道している。

 カナダは昨年、嗜好品としての大麻を合法化した。大麻が悪くないということではなく、非合法では乱用されている大麻をコントロール出来ないから。合法化により非合法で使用されていた大麻の生産、精製、流通、消費などに関する厳密な法で監視し秩序をもたらすという。

 以前カナダは、世界有数の喫煙国家であったが、禁煙政策として子供への教育、予防、規制、監視などの施策により、現在では世界有数の禁煙国家になった自負があるという。

 かつてアメリカでは大麻よりアルコールの方が身体的にも、精神的にも社会的にも悪影響を及ぼすということで禁酒法が制定されたが、アルカポネを代表とする地下犯罪組織のギャング団が密造酒や秘密の酒場で暗躍し、禁酒法が破棄されたという歴史がある。ヒトは自分のことだけを考えていると孤独に陥る。女優沢尻エリカは孤独で、大麻とアルコールとパーティに、刹那的癒しを求めていたのであろう。            920

  オピオイドクライシス:920の独り言(909)



2019/11/15 No.951
  ベルリンの壁崩壊30年後


 ベルリンの壁が崩壊して30年が経過した先日の11月9日に東西ベルリンの分断と統一の両方を象徴するブランデンブルグ門前で記念式典が開催された。

 30年前、テレビでベルリンの壁の上に多くの東西ドイツ人の若者が登りハンマーで壁を壊す姿が映し出されていたのを鮮明に覚えている。また一昨年にはベルリンを訪れてブランデンブルグ門近くの高級ホテルに泊まり、市内のベルナウアー通りに残る東西の壁跡や国境監視塔など見て回ったのを思い出した。

  米ソの冷戦が終わり、ソ連の鉄のカーテン崩壊により社会主義が没落し、自由民主主義の勝利により世界が自由で平和で豊かになると皆が思ったが、30年後予想は大きく裏切られた。

  自由資本主義のグローバリゼイションにより貧富の格差が増大し、中間層が没落し各地で紛争がぼっ発している。統一ドイツ国内の混乱は無論、いわゆる先進国で民主主義の雄である英国がEU離脱で混乱しているし、資本主義の雄である米国ではトランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作り、中国が台頭するなど、自由民主主義、資本主義が危機と終焉を迎えようとしているという。

  今後令和30年の間、世界は日本は私はどうなるであろうか。     920

  920の独り言(828):ベルリンの壁
  920の独り言(922):明るい未来
  920の独り言(924):ポスト資本主義



2019/11/10 No.950
 浅間山


  第39回日本臨床麻酔科学会が日本有数のリゾート地軽井沢で開催され、浅間山に登ってみたいと思っていたので参加してきた。

  浅間山は長野県と群馬県との境にあり、山頂はカルデラが形成されている標高2568mの活火山。今年の8月7日、前兆なく突然噴火して火山活動が活発化しているので、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)となっていて登れない。快晴だったので学会を抜け出し、1783年の浅間山噴火で流れ出た溶岩台の鬼押出し園から噴煙をあげる雄大な浅間山を間近で見てきた。

 最近、日本列島のあらゆる火山活動が活発化している。昨年1月に群馬県の白根山が前兆なく突然噴火し、白根山、浅間山と繋がる富士山の前兆なき令和噴火も近づいているという。1707年南海トラフによる宝永大地震と同時に富士山が宝永大噴火しているが、火山活動と連動して周期的に発生している南海トラフ地震の今後30年以内の発生確率は80%と言われている。

 私は前兆なく噴火した新燃岳、木曽の御嶽山のどちらにも噴火の前年に登っていた。今回、噴火男の私が浅間山に登らなかったので富士山噴火、南海トラフ地震の発生が先送りされたなら良いが。

                         920


2019/11/1 No.949
牛の骨粗鬆症

  テニス仲間であった農学博士で広島大学名誉教授の吉田繁さんから「乳から血液へ、そして骨へ:骨粗鬆症100年の謎」と題する著書が送られてきた。

 大学のみゆき牧場で乳牛から搾乳した乳が低酸度二等乳となり、その原因を調べていたところ、サイロに詰めていた生草のMgが低下していて、乳牛の血液が慢性的な低Mg血症を呈していた。さらに低酸度二等乳で低Mg血症を呈していた乳牛の下顎骨を調べたところ、骨粗鬆症をきたしていたという。

 骨の主成分はCaなので、骨粗鬆症の原因はCaが主役のように見えるが、実はCaは脇役でMgが主役。骨からの脱灰の主な原因はCaではなくMgが大きな役割をはたしている。摂取するMgが

減ると血清Mgが低下してこの時血清Caが増加する。増加したCaは乳にでて低酸度二等乳になり骨粗鬆症をきたす。多量のCa摂取は結果としてMg不足から骨粗鬆症になるというカルシウム・パラドックスをきたすことなどを考察されている。

 骨吸収抑制薬であるビスフォスネートは炭素原子Cに直接2個のリン酸原子Pが結合した化合物なので、血清中のCaやMgと結合し低下させ、骨の脱灰に影響を及ぼすことなども指摘されている。
      920


2019/10/25 No948
  即位礼正殿の儀

 
世界最古の王朝である日本で新しい天皇陛下が即位され「令和」時代となった。令和の日本はどのような世の中になるであろうか。

 令和2年には東京オリンピックが開催される。前回は昭和39年、私は中学生で、戦後復興高度経済成長真っ只中。東海道新幹線開業、開会式、東洋の魔女によるバレーボールや今ではハイテクシューズが問題となっているが、はだしで有名であったマラソンのアベベなどを小さな白黒テレビで感動しながら見たことを思い出す。

 三波春夫の「世界の国からこんにちは」で盛り上がった昭和45年の大阪万博には国民の半数以上の約6400万人が入場。国は豊かになったが、私は貧しい大学生であった。再び大阪で万博が開催される予定の令和7年はいわゆる“2025年問題”を迎える。戦後の貧しい時代に生まれ、激動の「昭和」を過ごし、バブル崩壊、大災害などに見舞われた「平成」を生きてきた私達団塊世代が令和7年には全員75歳以上の後期高齢者となり、「令和」は世界に類を見ない超高齢化社会になることは間違いないであろう。

 国民の叡智とたゆみない努力により我が国がより一層の発展を遂げることを切に希望しますと。天皇陛下万歳!           920


2019/10/18 No.947
  正常性バイアス


  100年に一度の大型台風19号による豪雨で多くの河川が想定外の氾濫をきたし、各地で甚大な被害が発生した。

  テレビでは毎度のことながら台風が日本に上陸する前から、超大型なので強風、豪雨の詳しい情報が流され、命を守るために最善の行動をとる様に繰り返し放送され、何と約1000万人に避難勧告が、460万人に避難指示が発令された。

  災害列島の我が国では、自然災害に対してしばしば広域に避難勧告が発令されるが、実際に避難する人は毎回1%未満と言われる。

  人間の心は予期せぬ大変な出来事に対して、心が過剰に反応して疲弊しないために、鈍感になるようにできているという。自然災害など詳しい情報が流され、自分にとって被害が及ぶことが予想される状況下にあっても、「今は大丈夫」、「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」などと思い込む心理が避難しない原因となっているそうだ。

  正常性バイアスは恵まれた国の問題で、貧しい国では自然災害や危険に対して自分の命を自分で守るのは当たり前で、自分の命を守る「知恵」を持っているという。比較的自然災害の少ない恵まれた瀬戸内に住んでいる私はマサカの避難指示に際しても正常性バイアスが働き避難しないと思う。           920           


2019/10/11 No.946
  スポーツの力


 第47回日本救急医学会総会が東京フォーラムで開催された。鈴木大地スポーツ庁長官が「スポーツが変える、未来を創る」と題して特別講演された。スポーツをすることにより健康寿命を延ばし人生を変える。スポーツを見る、支えることにより地域の活性化を図り、社会を変える。スポーツで世界とつながり平和な未来を創る。などの話をされた。

 この度ノーベル化学賞を受賞された吉野彰氏は、毎週テニスをして心身の健康を保っているとのことだが、私も週末にテニスをすることで日々の貯まりに貯まったストレスを発散している。

 スポーツの秋となり、ラクビ―ワールドカップが盛り上がっているし、バレーボールワールドカップ、世界陸上などの国際スポーツ大会に加え、国民体育大会、プロ野球CS戦、男女プロゴルフ大会、サッカーなどスポーツ競技が目白押しで目が離せない。

 東京オリンピックでメインテニス会場となる有明コロシアムで、楽天オープンテニス大会が開催されていたので、救急医学会を抜け出し会場を訪れたが満席で当日券は無いとのこと。何とかダフ屋を探し当て、高いお金でチケットをゲットし世界ナンバーワンであるジョコビッチの試合を観戦し、充実した学会となった。スポーツの力はすごい。              920

920の独り言(855):スポーツ庁長官


2019/10/4 No.945
  地球温暖化


  地球温暖化を避けるために先進国の温室効果ガス削減義務を課した京都議定書を記念して、地球環境の保全に貢献した方を顕彰する「京都環境殿堂」表彰式に私は毎年参加しているが10回を迎えた。

  その後パリ協定など地球環境の議論はされているが、米国の離脱、中国、ブラジルなど地球環境は悪化をたどっていて、我が国では今年も猛暑、台風、大雨などの自然災害で甚大な被害が発生している。世界各地でも氷河消失、海水上昇や猛暑が深刻化していて、パリでは今年の夏、観測史上最高の42,6度を観測したという。

 国連気候行動サミットで、16歳のスエーデン人グレタ・トウンベリさんが「人々は困窮しているし、生態系は壊れている。私達は絶滅を前にしている。なのにあなた方大人はお金と経済成長というおとぎ話を語る。何ということだ。」と各国の首脳に訴えた。

 地球を救えと訴える若者の先頭に立ち、私達の未来を奪わないでと世界中で400万人以上の若者が学校を休み抗議行動したという。

 ニューヨーク市教育局は趣旨に賛同し、親の同意があれば授業を休んで抗議行動に参加することを許可したという。我が国の若者は何故、抗議行動に立ち上がらないのであろうか。若さは、よりよき将来を誰にも気兼ねなしに要求できる特権を持っているのに。

                  920


2019/9/27 No.944
  日本紅班熱


 先日福山でマダニよる日本紅班熱で70歳代の女性が亡くなったことが報道されていたが、最近2例の日本紅班熱患者を経験した。

(1)90歳代女性。尾道市西藤町

 毎日草刈、畑仕事をしている。6月24日早朝発熱、意識障害で市民病院受診。脳CT、血液所見大きな異常なく帰宅。翌日40度の発熱悪寒で当院受診。胸腹部四肢に小さな発疹。高度炎症反応。入院。翌日も高熱続き、肝障害、血小板減少5万。紅班熱を疑い保険所に連絡し検体提出。ミノマイシン投与。28日に日本紅班熱リケッチア陽性の連絡。発熱続きミノマイに加えシプロキサシン投与。速やかに解熱し7月1日には血小板13万に上昇。7月6日には炎症反応陰性化。7月10日後遺症なく元気に退院。

(2)60歳代女性:尾道市木ノ庄町

  9月21日家の周りの草刈。9月22日身体がだるく腹痛。9月24日朝発熱、両大腿、背中、両腕に発疹。食思不振で9月25日来院。37,9度の発熱、軽度炎症反応、肝障害、背中に虫刺され様な刺し口あり。日本紅班熱を疑い検体を保険所に提出すると同時にミノマイシン投与開始。翌日痂疲より日本紅班熱陽性との連絡あり。今日も微熱、両大腿、両腕、背中に発疹あり加療中。2年前近所の人がマダニによる同様の病気に罹患していたとのことで、木ノ床町の住民に危険を周知するよう保健所に申し入れした。 

 920


2019/9/20 No.943
 年寄りの冷や水

 
年寄りとは何歳から?国連が1956年に65歳以上を高齢者と定めたために、我が国も65歳以上を高齢者としてきた。しかし、最近の高齢者の加齢に伴う身体的機能変化の出現は10年程遅くなっているので、日本老年学会は、高齢者の定義を従来の65歳ではなくて、75歳以上に変更することを提言している。65歳から75歳は心身の健康が保たれていて、社会的活動も活発に行うことが可能なので、75-89歳を高齢者、90歳以上を超高齢者とするらしい。

 今年の夏は暑かった。高齢者には熱中症にならないように、外出は控えるよう話していたが、24時間戦えますかを過ごしてきた団塊世代の性であろうか、私は土曜・日曜の夏の暑いさなか真昼に屋外でテニスをしていた。年寄りの冷や水であろうか、屋外でテニスをしている仲間は何とほとんどが古希を超えた男性ばかりである。

 白髪に禿げ、顔はシワ、シミだらけ、難聴、視力低下、体力低下記憶力低下、スコア―間違い、いらち、頑固、ひがみ、同じ話の繰り返し、疲れやすく疲れがなかなか取れないくせに。

 私は今日71歳の誕生日を迎えた。まだ若いのであろうか?老性自覚がないのであろうか?            920

 920の独り言(731)老性自覚

 歳を取ったという自覚のことを「老性自覚」と言うそうだ。歳を取ったという感覚は高齢者だけのものではなく、若者でも自分より若い人と比較して、歳を取ったと感じることもある。
 私が生まれた頃の平均寿命が60歳時代の老性自覚と、現在の高齢社会での老性自覚では状況が異なるが、視力の低下、疲れ易い、疲れの回復が遅い、物忘れなどが老性自覚の契機となっていて、最近では70歳代で歳を取ったと感じる人が最も多いという。
 老いを自覚する年齢は人それぞれだが、身体は確実に老いてゆく。人間の細胞は数週間で全て入れ替わっていて、心も身体も日々変化している。歳を取るにつれて、若い時に取れていた身体的、精神的なバランスが崩れ自覚症状がでてくる。それが私達が「歳取った」という感覚の正体だという。
 渋谷昌三:老いを愉しむ:老境の心理学。角川新書。


2019/9/13 No.942
 宇宙の果て

  今夜は中秋の名月。名月を見ながら宇宙に思いを馳せる。日米欧の国際共同研究グループが、世界の8つの電波望遠鏡を連動させ、銀河の中心にある強烈な重力で周りの光や物質を飲み込む宇宙の暗黒の天体ブラックホールの撮影に成功したという。

  先日は、日本の研究チームが宇宙観測史上で最古となる135億年前に誕生した銀河を観測したと発表。

 私達の世界は縦、横、高さの3次元空間に二次元の時間軸を加えた4次元空間である「時空」とその中に存在する物質とによって成り立っている。宇宙は空間だけではなく、過去未来の時間方向に向かって広がっている。「宇宙の果て」は遠方、過去にさかのぼること今から138億年前のビッグバンに始まり、宇宙は138億歳ということになっているそうだ。

 より性能のいい望遠鏡を作りより遠く(遠いことは昔のこと)を観測していけば、銀河や宇宙がどのように進化してきたかをタイムマシンのようにさかのぼって直接宇宙の過去を見ることができて、宇宙の果てを明らかにすることができるという。

  Cosmic Eyeによる宇宙と体内の核に至るUチューブの動画が面白い。       920


2019/9/6 No.941
  ロード・レイジ


 車のあおり運転によるトラブルが大きな社会的問題となっている。運転中に切れる人間は若者かチンピラやくざかなどと思っていたが、最近では中高年のごく普通の人が運転中にキレて、あおり運転や暴力をふるうという。

 先日は61歳の僧侶が法衣を着て運転中、パッシングを受けた事にキレて、あおり運転に加えて赤信号で停車した車から降りてきて、後続車の運転手に向かって悪態を浴びせながら胸ぐらをつかんだので書類送検されたという。

  現代人の多くはセロトニンを産生している腸内細菌叢の弱体化によりセロトニンが不足した状態になっている。セロトニンが不足すると精神のバランスが崩れやすくなり、暴力的になり直ぐにキレたり、うつ病の原因になっている。

  坐禅、臍下丹田呼吸、読経、規則正しい運動などはセロトニン神経を活性化し、心を落ち着かせるというのに、このくそ坊主は、ろくに坐禅、読経、作務などしていないからセロトニン神経が衰え、キレやすくなっていたのであろう。僧侶にあるまじきことで、書類送検ではなくて、出家させ精進料理と千日回峰行を課さなければならない。                920



2019/8/23 No.940
  サブスクリプション


  江戸の長屋は狭くて家具や道具を置く場所がないので、布団、鍋などの日用品や衣装などを貸しだす業者が繁盛していたという。

  戦後の何もない時代から高度経済成長時代を過ごした団塊世代は物を持つのが豊かさの象徴と思い、多くの物を持ってきたが、物があふれる社会になると、若者は物質的充足より心の充足を求める様になってきているという。

  最近の若者は物を持つ「所有」よりはシェア「共有」を求める為にシェアビジネスが、さらに「利用」する消費行動にシフトしてきたので、高級車、ブランド品などを定額制で貸し出すサブスクリプションビジネスも江戸時代の様に流行っているそうだ。若い看護師が薄給にも関わらずBMWの高級車に乗ってくるし、高級ベンツに乗ってくる職員もいるし。

  生き方過ごし方も成長志向から安定志向となり、仕事も結果を出すよりは経過を重視するという。将来のために辛い仕事を頑張るのではなく、能力より徳を重視する人と一緒に働くことを望み、物を沢山所有するのではなく、良いものを共有、利用して「今、ここ」を味わうことを重視するという。

  江戸時代式現代版禅的生活の再現であろうか。    920


2019/8/16 No.936
  死線を越えて


  四国八十八箇所霊場一番札所「霊山寺」近くに、第一次世界大戦「日独戦争」で捕虜となったドイツ兵のうち約1000名が収容されていた坂東捕虜収容所跡地があり、ドイツとの国際交流を深めるための立派な鳴門市ドイツ館が建てられている。

 そのドイツ館の隣に、ガンジー、シュバイツアーと並んで、世界の三大偉人と呼ばれる賀川豊彦の小さな記念館があり、その生い立ち、生涯と功績などが展示してある。

 幼くして両親を失った賀川豊彦は父の故郷である徳島に引き取られ、中学時代に非暴力・反戦・平和主義の著書を耽読し、洗礼を受ける。肺結核など数度死の淵をさまようが、病苦による絶望の中、神戸のスラムに住み込み救済活動に没頭、奇跡的に健康を回復する。救貧から防貧を学ぶためにプリンストン大学に留学。帰国後、労働運動、農民運動、生活協同組合運動などの先頭に立つ。関東大震災時にはいち早く救援活動に駆けつけ、ボランティア活動の創始となる。戦争時に反ファシズムにて拘留されるが、戦後は世界平和運動のため、世界中で講演活動しガンジー、シュバイツアーとも交流。

  友愛・互助・平和のために生涯をささげ、ノーベル平和賞に4度、ノーベル文学賞に2回もノミネートされたという。       920


2019/8/9 No.938
  ペインクリニック

 
第53回日本ペインクリニック学会が熊本で開催された。私が最初にペインクリニック学会に参加したのは、確か50年前の昭和49年、当時は「痛みの研究会」と呼ばれていて、痛みに興味ある麻酔科医が集まり、難治性神経痛の症例検討会の様であった。

 その後、三叉神経痛に対するブロック治療、交感神経節ブロック、鞭打ち損傷に対するトータルスパイナールブロック。癌性疼痛に対する腹腔神経叢ブロック、くも膜下フェノールブロック、下垂体ブロック。田中角栄総理の顔面神経麻痺に対して行われ、一世を風靡した星状神経節ブロックの基礎的、臨床的研究。ハリ刺激、硬膜外刺激などの刺激鎮痛。癌性疼痛に対する硬膜外、くも膜下モルヒネ投与、エコーガイド下末梢神経ブロックなど痛みの臨床治療研究が検討されてきた。

 今回の学会では、星状神経節ブロックは影をひそめ、高齢化社会になり高齢者の慢性疼痛対策、神経因性疼痛の病態、治療法に加えて、担癌患者の増加による化学療法誘発末梢神経障害対策、緩和医療における痛み対策、麻酔科医の関与などが話し合われていた。

  50年間毎年出席してきた痛みの臨床研究会がこんな大きな学会になるとは。50年後はどうなっているか想像だにできない。  
920


2019/8/2 No.937
  災害医療

 阪神大震災の時、クラッシュシンドロームによる死者が多く出て、医師が現場で治療するDMATの創設、災害医療学会の創設、災害拠点病院の創設に加えてEMISの必要性が指摘された。

 東北大震災では多くが溺死し、避難所での慢性疾患治療が求められJMATが創設され、原子力災害対策、広域医療搬送などが問題となった。家族を失った人に対する魂学の必要性が指摘された。熊本地震では前震、本震、余震などで、車での生活によるエコノミークラス症候群による災害関連死が話題となり、病院崩壊による入院患者の移送が問題になった。

 自然災害、テロなどに対する大規模災害医療では限られた医療資源で“防ぎ得る死”を救うことが重要で、トリアージによる選別救命が必要となる。30年以内に85%の確率で発生する東南海地震ではライフラインである水、電気、食糧をどう確保するか、病院のBCPが必要になる。

 来年の東京オリンピック開催中のテロなど救急災害医療に係る学術連合体が結成され対応策が図られているが、火山列島に住む我々にとって大規模自然災害は運命として覚悟をきめることも必要であろう。    920
  第9回病院家族会講演


2019/7/26 No.936
  高齢者の筋トレ


  高齢者の健康志向は高く、歳を取り筋肉が衰えてくるサルコペニア予防、フレイル予防にストレッチによる有酸素運動が勧められている。歳を取ってもしっかり肉を食べ筋トレを行い、いつまでも若々しい肉体を維持しようと、アンチエイジングにまい進する高齢者の何と多い事か。

  福山文化大学で、あの三浦雄一郎氏の次男である三浦剛太氏が「三浦家の元気の秘密」と題して講演された。

  祖父の敬三が100歳で子・孫・ひ孫の4世代でスキー滑降を行ったこと。舌出し顔面筋運動により、顔の血行が改善し90歳を超えた祖父の顔のシミが消えたこと。父の雄一郎が80歳で3回目のエベレスト登頂の映像とその裏話。目標を持つと年齢に関係なく人は成長できる。年齢を重ねるごとに心身ともに強くなれる。歩けば歩くほど人は若返る、などなどと。

  たとえ明日世界が滅亡しようとも、今日私はリンゴの木を植えるという気持ちを持つ事は大切であるが、古稀を迎えた樹齢70年の老木に、肥料をたっぷり与えて元気にしようとしても栄養を吸い上げる力がなくなった老木には害にしかならないであろう。   
 920

2019/7/12 No.935
  アイドルグループ

  若い男性アイドルグループを次から次にと芸能界に送り出してきたジャニー喜多川氏が亡くなったという。

  “若い”ということに価値があるのは女性だけで、男性の若いは、「幼い、幼稚、青い、未熟、経験が足りない」などと称され、あまり価値がないと思われているのに。

 私の友人が「私の娘は自分のことが良く分っているようで、唯一の魅力である“若さ”を武器にして、早々に良い男をゲットして結婚した」と話していたことを思い出した。

  学芸会の様な女性のアイドルグループは「若さ」を最大の売りとしているため、少女に見られなくなった時点で、若さに限定された女性アイドルは賞味期限が切れ、卒業と称して脱退するという。

  一方、男性アイドルグループは、SMAP,TOKIO,嵐など未熟な若さを乗り越えて、40歳を超え成熟したアイドルグル―プとして長く活躍できたのはジャニー氏の功績であろうか。

  世界に類を見ない我が国特有な若い男性アイドルグループも歴史とともに変わってくるのであろうか。  920


2019/7/5 No.934
  ヘルスリテラシー  

 
溢れる情報の中から自分にあった適切な情報を「入手」し、その情報を正しく「理解」し、その情報が信頼できるか「評価」し、信頼できる情報を「活用」することを情報リテラシーと呼ぶ。
高齢者がテレビを見る時間は長く、一番の関心ごとは健康なので、最近のテレビ番組を見ると、情報リテラシーを持たない高齢者に対し、おれおれ詐欺に近い健康サプリの宣伝、健康食品、偏った健康番組の氾濫にはあきれてしまう。

  歳をとるとサルコペニア予防に肉を食べよとか、肉を食べると大腸がんになりやすいので肉は控えた方が良いとか、血圧があがるので塩分を控えよとか、減塩は高齢者は低ナトリウム血症になり危険なので梅干しを食べよとか、血糖があがるので糖質は控えよとか、いや炭水化物などの糖質は積極的に摂取する方が良いとか。ある食材が健康に良いと放送されると、次の日にスーパーでその食材が売り切れになるそうだ。サバ缶が動脈硬化予防、美肌、認知 予防効果があるというので品不足になったという。

  高血圧症の人は果物によるカリウム摂取によって血圧が下がると放送されたので、バナナ、アボガド、リンゴジュースを毎日飲み続け、高カリウム血症による不整脈をきたした患者がいた。 920

 632:フードファディズム


2019/6/28 No933
  ドラム タオ

 
太鼓は日本古来の楽器で、ばちで叩くものを太鼓と呼び、手で叩くものを鼓(つづみ)と呼ぶ。つづみは能楽や歌舞伎で用いられているが、太鼓の鼓動は人間の心臓の鼓動にシンクロし、自らを鼓舞することができるので、戦国時代に戦いの際の陣太鼓として用いられていた。

  以前、浄土時で世界的な大和大太鼓奏者林瑛鉄氏による太鼓演奏と僧侶の声明とのコラボに感動したことがある。昨年は病院の駐車場で尾道べっちゃー太鼓による病魔退散のお祓いの太鼓演奏をしてもらったし、毎年行われる尾道薪能ではつづみを聞くのを楽しみにしている。 

  近年、鬼太鼓座、鼓童など和太鼓演奏集団が褌姿の太鼓演奏で人気を博し、日本の伝統芸能として国内は無論世界中で公演しているが、世界が絶賛すると言われている和太鼓演奏集団ドラム タオの公演が福山で開催された。大中小さまざまな太鼓に、笛、琴なども加え、総勢30人位の団員がコシノジュンコによる筋骨隆々の肌が開けた衣装を着て、息をつく暇もなく次から次へと、工夫を凝らした演出でさまざまな太鼓演奏を行い、観客の多くが立って一緒に手拍子で盛り上がる太鼓のエンターテイメントショーであった。      920
  920の独り言(799)芸術の秋の夜
  920の独り言(902):ベッチャー太鼓


2019/6/22 No.932
  高齢者バブル

  
先日第66回日本麻酔科学会が神戸で開催され、約1万人もの若い麻酔科医、多くの女医さんで溢れていて、40数年前の麻酔学会を思い出すと隔世の感であった。

  2025年に大阪万博が開催される頃には、私達団塊世代約1千万人が後期高齢者となり、人類史上類をみない老人大国となる。年金問題が議論されているが、介護、医療は無論、さまざまな問題が発生してくる。

  高齢病人が増えて手術件数が増えるので、急性期病院は手術場を増やし麻酔科医を増やし、いかに効率よく手術件数を増やすかが経営上重要方針となってくるそうだ。老人施設が増え、若い介護職員が足りなくて東南アジアから職業移民の移入を進めるが、独居高齢女性が溢れてくる。多死時代となり、火葬場が足りなくなり焼却温度を上げて火葬時間を短縮し多くの火葬が出来る様にするが、火葬待ちの冷凍保存施設が繁盛するという。

  あれから30年、私達団塊世代1千万人がすべてこの世から消え去ってしまった後は手術室、老人施設、火葬場が、がら空きになる。麻酔科医があぶれて、麻酔専門の免許証を持ったタクシー運転手にならなければ良いが。           920

2019/6/14 No.631
  研修医当直御法度

  先日、日本救急医学会中国四国地方会で、寺澤秀一先生による「次代につなぐ救急教育」と題する素晴らしい講演を聞いた。寺澤先生は長い間苦労して日本に北米式ERを導入された先生で、経験した興味深いER症例、研修医の失敗症例、教育症例など、さまざまなER事例集をまとめた「研修医当直御法度」は20年間で15万部も売れるロングセラーとなっていて、救急や当直をする研修医にとって必須の本になっているという。
 
 日本各地で出張講演をされていて、40年間にわたって経験したER症例、患者との感動秘話、研修医への実体験に基づく教訓など、数分に一度ジョークを入れて笑いを誘うとか、事例紹介に関するメディカル川柳を詠むなど、プロ技の講演であった。

  「病名を 言わずに伝える 言葉技」。「嘘をつく 患者家族の 心汲み」。「昏睡の 患者に優しく 声をかけ」。「責めるより ほめて育てる 門下生」。「ケガをした 理由に怖い 病気あり」。「救急の 紹介状は 筆乱れ。返書には 必ず一行 褒め言葉」。「今よりも 最初の症状 聞き出して」。「怖いのは 救急車より ウオークイン」。などなど。           920

 寺澤秀一:話すことあり 聞くことあり、研修医当直御法度外伝 シービーアール。


2019/6/7 No.930
  チーム医療におけるコミュニケーション術

  医療の高度化、複雑化によりチーム医療が必須となっている。チーム医療にはコミュニケーションが重要なので、先日神戸で開催された日本麻酔科学会で、「笑いの現場から学ぶ医療安全向上委員会」という会長企画があり、日本初の笑いを活用した漫才式セミナー講師の“Wまこと”が、お笑い芸人のプロのコミュニケーション術を面白く解説した。

 笑福亭つるべ式笑顔術:笑顔一つでポジティブな空間が実現し、コミュニケーションを循環させる。口角をあげる、声を出して笑う、手を打って笑うなど色々な笑い方で、自分の機嫌をつくる。看護婦の笑顔は天使の笑顔となりコミュニケーションがはかどる。

 明石家さんま式相槌術:・・・ですか、と相槌を打つことにより相手の心をやわらげ会話がすすむ。相槌一つでエラーを防ぐ確認ができ、医療現場ではダブルチェックとなり医療安全につながる。

 松本人志式承認術:褒める、認める会話で繋がりをつくる。人は関係性のなかで成長し、良いコミュニケーションが図れる様になる。

 西川きよし式あいさつ術:先に挨拶をする、皆に挨拶を続けることによりコミュニケーションが取りやすくなる。

古希を過ぎた私は口角が下がり、笑顔でなく眉間にしわで、出来てないことばかりで勉強にはなったが・・・。     920


2019/6/1 No.629
  厠

  団塊世代の私が子供の頃は、汲み取り式の便所で、厠とも呼ばれていた。薄暗い臭い場所で、夏の小学校での肝試しなど、子供にとってお化けがでてくるような怖いところでもあった。

  時代が変わり最近は水洗化が当たり前となり、西洋式便器は自動化し便器に触れないで水が流れ清潔で使用しやすくなった。便器は良くなったが、排便、排尿障害で悩んでいる高齢者が激増している。高齢者の慢性便秘、便通異常、頻尿、残尿、失禁など症状を持っている人は、60歳以上で男女とも約80%もいると言われている。

  新しく開発された便秘薬、過敏性膀胱改善薬、前立腺の薬などが出回っているが悩んでいる高齢者は多い。先日福山文化大学で講演された順天堂大学の小林弘幸教授の便秘専門外来は数年の予約待ちだそうだ。

 頻尿がつらいと思いつつ、それでも自分で用が足せるうちはまだ恵まれていて、高齢者が最も心配なことは、下の世話が自分で出来なくなってしまうことであろう。

 手が動く 足で歩ける 目が見える 耳が聞こえる 尿が出る 便が出る この当たり前のことの中に ただ事でない幸せがあるという。                   920                             

  920の独り言(755):尿臭
  920の独り言(538):コンティネス医学 


2019/5/24 No.928
 医は人術

 医療の高度化、多様化に対し、医師は「医は仁術」のみでなく、チーム医療のリーダーとしてマネジメント力である「医は人術」も求められる時代になった。

 マネジメント力とは意思決定とコミュニケーション技術とのことで、そのノウハウの講演を聞いた。

  「名選手は名監督にあらず」で、自分でしてしまう、全部言ってしまう、私ならこうする、では良い医療リーダーにはなれない。権威支配では部下が何も言えないので、平時には非権威で、しかし非常時には権威支配のコミュニケーションが必要。彼らには無理と思わない、彼らには出来ると思う、など教師期待効果で皆を成長させる。MBWA(management by walking around)三現主義:現場、現物、現実を重視すべし。QST(quick win, small win,triple win)で医療チームの勝ち癖をつける。組織にはnoisyminolityと silent majolity)の2種類の人種がいるので、賛成者をつくる改革、反対者を作らない変革を行うなど、医師のマネジメント力次第でチーム組織は変わり始め、令和の時代に生き残れる医療チームになれるという。大変な時代になったものだ。 920

 裵英洙:医療職が知っておきたいチーム・組織マネジメント。
第6回日本区域麻酔学会、専門医講習。 



2019/5/17 No927
  中国四国医師テニス大会

 
 いじめでは加害者と被害者の間に必ず力の差があるので、力を争うスポーツの世界では、いじめやハラスメントが起り易い。ということでスポーツではルールを定めて、スポーツマンシップにのっとり正々堂々と戦うことが望まれている。

  高校野球で相手のサインを盗む行為に批判が出ていた。対戦相手の捕手のサインを巡る攻防は、以前は駆け引きの一つであったが、フェアプレーに反する行為として禁じられた。武士道を著した新渡戸稲造は野球害毒論を述べている。「野球と言う遊戯は悪く言えば巾着切りの遊戯。相手を常にペテンに掛けよう、計略に陥れよう、ベースを盗もうなどと、目を四方八方に配り、神経を鋭くしてやる遊びである。ゆえに米人には適するが、英人や独逸人にはできない。野球は賎技なり。剛勇の気なし」と。

  テニスは紳士のスポーツと言われるが、相手が嫌がり取れないところに狙い打ちして勝とうとするので、ルールに従ったいじめとも考えられる。幼い頃いじめっ子であった私も歳を取ったので、相手が嫌がらないような打ち易いところに返球する剛勇なテニスをするようになり、勝てなくなった、と思う。   920

 いじめ:920の独り言(854)


2019/5/10 No.926
  第30回日本医学会総会

 
4年に一度の我が国最大の医学会である第30回日本医学会総会が120周年記念として平成最後の年に名古屋で開催された。医学と医療の深化と広がり~健康長寿社会の実現をめざして~をテーマに、基礎から臨床まで100を超える分科会のトップクラスの人によるすべての領域を網羅した最新情報から令和時代への展望などが議論された。木を見て森を見ない医療人にならないようにと、3万人を超える医師や医学生が参加したという。

  特別講演は天野浩、本庶佑、山中伸弥の3人のノーベル賞受賞者をはじめ、豪華絢爛な著名人の講演が目白押しであった。

  天野浩氏の講演を聞いたが、長寿社会を支えるトランスフォーマティブエレクトニクスという未来を拓くエネルギーの研究と開発の話で、名古屋発の成果が期待される。京大総長の山極壽一氏による「野生の思考と人材育成―ゴリラに学ぶ」。JAXAの川口淳一郎氏の「やれる理由こそが着想を産むーはやぶさ式思考法」など異業種の人の講演も面白く、これだけでも参加した価値があった。

 さらに専門医共通講習として、「我が国の薬剤耐性菌対策最前線」、「医療の質向上と患者安全」。産業医講習として「メンタルヘルス」など、多くの専門医単位が得られるてんこもりの学会であった。  920



2019/5/3 No.925
  10連休

   昭和の高度経済成長時代に、私達団塊世代がワーカホリックの如く一生懸命働いていた頃、欧州から日本人はウサギ小屋に住み、働き蜂の様に働き、エコノミックアニマルで、人生何が楽しいのであろうかと言われていた。

  欧州では伝統的に長いバカンスを自然の中で楽しく過ごす為に働くのが当たり前で、スイスの病院で年齢により年間休日が4-6週間あり、自分の裁量で自由に休暇を取っていたことを思い出す。

 ドイツは世界で最も労働時間が短いうえに、有給休暇の消化率が100%は常識。平均労働時間は我が国より400時間も短い。

  我が国は非効率的な過剰サービス競争社会となり、医業を代表としてサービス業界は過労死する程働かなければならなくなっている。ドイツは過剰なサービスを期待しない社会なので、日祝日は店が閉まり、24時間営業のコンビニがないのは無論、宅急便の再配達、時間指定などあり得ないという。

 我が国は国民の祝日として一斉に10連休となっているが、ある種のサービス業は忙しくて休むどころではないという。自分の裁量で自由に長い休暇を取れれば良いが、日本人で団塊世代の私は、連休中も働いてしまった。     920

 熊谷徹:ドイツ人は何故1年に150日も休んでも仕事が回るのか。青春出版社。



2019/4/26 No.924
  ポスト資本主義

  団塊世代の私が戦後の何もない時に生まれ、昭和の時代に求めたのはアメリカの豊かさ、個人の自由、経済成長であった。アメリカに追いつき追い越せと経済成長が幸せの基準であった。

 平成になり、成長しなければ幸せになれないという思い込みから、市場原理に基づくグローバル競争に勝たねば成長出来ないと、経済成長追求が争われた。企業は共生といった伝統的な価値観を失い、従業員より株主の重視、利益追求、派遣社員依存、勝ち組負け組、中間層没落、富の一極集中、日産ゴーン会長逮捕など、さまざまな問題が発生してきた。

  世界ではトランプの米国第一主義、英国のEU離脱、フランス、ドイツ、イタリアの混乱、米中貿易戦争など、資本主義先進国における市場原理主義が行き詰まりを迎えているという。

  モノは幸せにしてくれないと気づいた平成の時代も終わりを迎えた。時代遅れの経済成長戦略を政策の柱とするアベノミクスも行き詰まりを迎えている。人類が経験したことがない私達団塊世代による超高齢化と少子社会を迎えるこれからの令和時代、我が国はどうなり、どうすれば良いのであろうか。     920

 広井良典:ポスト資本主義―科学・人間・社会の未来、岩波新書。
  佐伯啓志:さらば資本主義、新潮新書。
  水野和夫:資本主義の終焉、集英社新書。

2019/4/20 No.923
  成長から円熟

 
戦後の何もない昭和時代に生れた私達団塊世代の価値観の基礎に「競争」「成長」があるという。

  団塊世代の私達は豊かな未来を目指して、オーモーレツ、24時間働けますかと高度経済成長を担ってきた。三種の神器といわれる白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機から新三種の神器であるカラーテレビ、クーラ―、カーと、豊かな物が溢れる国民総中流社会と車社会など、経済成長を続けるべく競ってきた。

  平成時代にバブルがはじけ、自然災害、原発爆発、環境破壊など、限りない経済成長に疑問が生じた。ゆとり教育が広がり、運動会では徒競走の順位決めがなくなり、ナンバーワンにならなくても誰もがオンリーワンという曲が流行り、競争に勝つより自分らしくあることが大切との認識が広がった。物が溢れる豊かな社会で、若者は多くの物を所有することを望まず、シンプルライフのミニマリスト、シェア化を求めるようになっているという。

  団塊世代の私は「成長」を価値観として昭和、平成と駆け抜けてきたつもりはないが、はや晩年となってしまった。令和の時代は、私も国も価値観も「成長」から「安定」そして「円熟」へと変われるだろうか。。                 920


2019/4/12 No.922
  明るい未来


  爆発的なヒットをもたらした映画「ALWAYS-三丁目の夕日」は、私が10歳のとき、昭和58年の高度経済成長始動期の東京を舞台としていた。人々が明るい未来を信じていた時代。豊かな時代が来ると皆が信じていた。団塊世代の私も、豊かで明るい未来を信じて、何もない時代から豊かになっていった。しかし、平成時代のいつ頃からであろうか、明日が今日より良くなると思えなくなったのは。私が歳を取った為だけではなさそうで、現在我が国で昭和のあの時の私のように「明るい未来」を信じる若者は少ないという。

 世界でもベルリンの壁が崩壊し、自由資本主義陣営が東西冷戦に勝利し平和な世界が訪れると思われた。しかしグローバル資本主義による激しい経済競争社会となり、貧富の格差、テロ、ポピュリズム、移民問題、環境破壊など、先進諸国の多くの若者も「未来は明るくなく現在より悪くなる」との考えに傾いているという。

  明るい未来が見えない先進国の人口は減少しているが、開発途上国の人口は増えていて、地球上の人口は爆発的に増えている。農業革命、産業革命、情報革命と私達は便利で豊かな社会を築いてきた。令和時代の若者は明るい未来を信じるようになれるであろうか。

                  920

920の独り言(253):ALWAYS


2019/4/5 No.921
 元号が変わる

 元号が変わり、平成の時代から「令和」の時代を迎える。昭和の戦後何もない時に生れ、高度経済成長時代を生きてきた団塊世代の私は「成長」を大切な価値観とし、末は博士か大臣かなどと「学歴」「資格」「地位」「財産」などを目標に競ってきた。

 新しい令和の時代は、想像を絶する少子高齢化社会になるが、高齢社会の中心を担う私は何を目標に過ごしたら良いであろうか。この世には「目に見えるもの」と「目に見えないもの」があって、大切なものは目に見えない。目に見えるものは目に見えない大切なものに支えられている。本物と偽物は、目に見えないあり方で決まり、本物はあり方を気にし、偽物は見え方を気にするという。

  「学歴」「資格」「地位」「財産」など目に見えるものと違い、目に見えないものに「徳」があるという。自分が幸せになるためには自分以外の周りの人を幸せにすること。自分の為にではなく人の為に良いことを行っていると「徳」が積まれる。それをお天道様が見ていて、幸せな人生が送れるようにして下さるそうだ。元号が令和に変わり、老いた私は、目に見える物の断舎利を行い、目に見えない「徳」を積めるであろうか。      920

 吉川秀樹:幸せに生きる秘訣。福山医療センターだより。
920の独り言(361):陰徳


2019/3/29 No.920
  920の独り言920回

 
私は男ばかり4人兄弟の末っ子として、戦後のどさくさの昭和23年9月20日に生れたので、920「くにお」と名付けられた。

  出生数280万人と今の約3倍もの多人数で、小中学校は一クラス60人で10クラスもあり、名付け親の堺屋太一氏は亡くなったが「団塊世代」と呼ばれ、声が大きく、押しが強く、幼くして民主主義教育を受け、学生として乱を起こし、家族を顧みず、自己中心的でわがままで、早飯早糞など、いらちで独善的と言われ、学級崩壊とか就職危機とか定年後危機とかを乗り越え、戦後の高度経済成長を担ってきた。私を含め団塊世代1千万人が75歳を超える2025年には、世界に類を見ない想像を絶する超高齢と少子社会となり、年金医療介護をはじめとするさまざまな問題が危惧されている。

 尾道医師会OIOIネットに920の独り言として毎週金曜日に配信を始めたのが平成12年。話題の出来事や新聞の切り抜き、新書、学会報告、講演会、趣味のテニス、登山、人生哲学など、自分のことは棚にあげ好き勝手なうんちくを団塊世代として書いてきた。

 あれから20年。読み返してみると色々なことがあったが、継続は力で920回を迎えることができた。これから私は、団塊世代は、日本は、世界は、どうなるであろうか。      920



2019/3/22 No.919
  マサカ


 阪神大震災、東北大震災、木曾御嶽山噴火などの自然災害は予知できず想定外でマサカの出来事であったが、予知できないという事は、いつでも起こり得るということ。富士山は必ず噴火するという。

 経済で専門家の予想は当たったためしがないが、専門家の知識で予測不能なマサカなことが発生し、世の中に多大な影響を与える事をブラックスワンというそうだ。我が国のバブル崩壊、山一證券倒産、リーマンショック、米中貿易戦争、日産の倒産危機とその後のゴーン会長逮捕など、マサカな出来事であった。

  政治の世界ではトランプ大統領当選とその後の行動、北朝鮮問題、イギリスのEU離脱、フランスの混乱など想定外のマサカなことで、世界が今後どう混乱するか予測できない。

  私達は自分の周りにおいても想定外のマサカに遭遇する危険性が必ずある。突然の大変なマサカな出来事に遭遇した時、それを乗り越える為には何が必要であろうか。「人事を尽くして天命を待つ」、「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候。死ぬ時節は死ぬがよく候。是は災難をのがれる妙法にて候」などと、我が国特有の“覚悟”が必要とはいわれるが・・・。920 

  マサカの時代:五木寛之。新潮新書。
  920の独り言(602):想定外
  920の独り言(746):ブラックスワン


2019/3/15 No.918
  家庭の食卓

  家庭の食卓が人間に与える影響は大きい。

  団塊世代の私が子供の頃は、薪でたいたご飯をちゃぶ台という丸い食卓の周りに4人兄弟と家族が集まり、テレビが無い時代なので、ワイワイ言いながら楽しく食べていた。時々停電したが、電気釜、冷蔵庫など電化製品はないので、不自由なく食べたことを思い出す。

  最近は核家族化、夫婦共働きなどで、テレビやスマホを見ながら一人ぼっちの食事に慣れた若者は、大学などの食堂で皆と一緒に食べることが出来なくて、ボッチ席でスマホを見ながら一人で食べるとかトイレで一人食べるという、嘘.の様な本当のことがあるという。

  平凡な日々を共に生き、日々のご飯を一緒に食べることが人を生かす基本的なことで、一人で食事をする人の寿命は短くなる。

  我が国では昔の様に子供や孫たちと毎日一緒に食事をする二世代家庭は少なくなり、高齢夫婦だけで食事をする家が多くなっている。独居高齢者が激増しているが、多くの独居婆さんは自分にあったご飯を美味しく食べ元気に過ごしている。一方、爺さんが一人になり寂しい孤食になると、早々に心身共に健康を害してお参りすることになるので、幸い家族と一緒に食べる日々の食事に感謝している。 920

 920の独り言(700):ぼっち。


2019/3/8 No.917
  マスク


  今年のインフルエンザもやっと下火になったようだ。あれほどワクチン、手洗い、うがい、マスクと言われながら、毎年大流行するのは何故であろうか。

  ワクチン、手洗いには予防効果があるようだが、うがい、マスクに予防効果は認められていない。特にマスクに関しては、インフルエンザに罹患した人が周りにウイルスを飛散するのは防げるが、感染予防効果のエビデンスはない。

  当院の感染症対策委員会で、個室入院患者がインフルエンザに罹患したので、その原因、対策などが話し合われた。

  インフルエンザは飛沫感染と言われるが、院内感染の場合は接触感染の確率が高い。介護看護師がマスクに付着したウイルスを手で触り、その手についたウイルスが患者に伝播したと考えられた。介護看護師のマスクは自分に対する予防効果がないばかりか、マスクを介して患者への接触感染の確率を増大すると考えられる。病院内でのスタッフのマスクは感染予防どころか感染防止対策として悪い影響を及ぼしているので、マスクをしない様に提言しているが、何故か聞き入れられず、私以外全員がマスクをしている。

  ちなみに私はいつもマスクせずに診察しているが、今まで患者からインフルエンザをうつされたことはない。      920

 920の独り言(863):インフルエンザ
  920の独り言(912):ゾフルーザ       


2019/3/1 No.916
  人は何故薬物依存になるのか


 第48回日本慢性疼痛学会が岐阜で開催された。喫煙による健康被害としての慢性疼痛のメカニズムが明らかになりつつあり、慢性疼痛治療には運動療法と禁煙が必須となっている。米国で慢性疼痛に対する不正オピオイド使用による依存症が大きな社会的問題となっているので、慢性疼痛治療へのオピオイド使用の是非が話合われた。

 癌性疼痛に対してオピオイドが使用されているが、癌治療の進歩により長期のガンサバイバーが増え、オピオイドが長期に使用されるケースが増えている。長期オピオイドによる鎮痛耐性、痛覚過敏となるオピオイド誘発痛が注目されていた。

 「人は何故薬物依存になるのか?」と題して、長い間薬物依存に陥った依存者の胸に迫る話と松本俊彦氏の講演が素晴らしかった。以前は「意志薄弱な性格」、「自己破壊的な性格」などがその原因と言われていた、が最近では孤独・孤立がヒトを依存症にするという。長時間にわたる心身の痛みがヒトを孤立させ、孤立が依存症を生み出し、さらに孤立を悪化させる。人は他人に尽くした時に喜びを感じ、自分の事だけを考えている時に孤独に陥るので、依存症の人は仲間が必要で、「ダルク」にて仲間の為に尽くすことが薬物依存からの回復につながるという。           920 

920の独り言(909):オピオイド・クライシス


2019/2/22 No.915
  医師の働き方改革


 若い研修医のメンタルヘルスに関する調査で、過労により4割程が抑うつ状態にあるという。厚労省は医師の過重労働是正の為に、勤務医の長時間残業の指針を発表したが、地方都市の病院医師不足や、専門医制度の診療科別需給、開業医の労働など意見が噴出している。私は毎日過労死を超える長時間労働に加えて、今夜は夜間救急診療所に出務し夜遅く先ほどまで働いてきた。

私が研修医の頃は毎晩病院に泊まり込み患者を診るのは当たり前であった。最近は成績が良いから医学部を受験する者が多いというが、少なくとも若い時は無医村でも都会でも365日24時間、臨床であろうが研究であろうが医師の仕事は厳しいという覚悟が必要で、それに耐えられない人は医師になるのを諦めるべきであろう。

 厚労省の統計処理の不手際が大きな政治問題となっているが、先日、何故か2036年時点での各都道府県で必要とされる医師数の推計が発表され、地方では5千人から3万人も不足するので、都市部に集中する医師の診療科を含め偏在問題解消を目指すという。

 これから私達団塊世代により手術件数が増加するので病院は手術室を増設して麻酔科医の不足が叫ばれているが、団塊世代がこの世を去った後は、手術は激減し麻酔科医の多くが職を失うだろう。    920


2019/2/16 No.914
 持続可能社会


 毎回参加している「KYOTO地球環境の殿堂」表彰式が第10回を迎えた。今回は前国連気候変動枠組条約事務局長を務めた気候変動問題のリーダーでコスタリカ出身のクリスティアナ・フィゲレス女史。環境と共生する日本人の「無常」思想を提唱されている哲学者山折哲雄氏。10周年記念特別賞として東チモールの環境保全活動家で国民的歌手のエゴ・レモス氏の3人が選ばれた。

  オープニング・アトラクション、表彰式、殿堂入り者記念講演の後、京大総長山極壽一氏のコーディネートによる「気候変動に立ち向かう」と題して、殿堂入り者と国際シンポジウムが行われた。

  農業革命、産業革命後の急激な地球温暖化の進行や環境破壊など地球規模での環境問題にどう対応すべきか。地球という限りあるシステムの中で、環境と社会・経済のバランスの取れた社会つくりが話し合われた。未来の子供達に良い環境の地球を残す為に、私達大人は今何をすべきであるか。持続可能な社会にするために自然を大切にする経済発展と幸せの価値観の転換が指摘された。

 トランプ米大統領、米中覇権争い、中東など各地で政治・経済が混乱しているが、自然を大切にし軍隊を持たなくなったコスタリカがブータン同様に幸福度指数が世界一であるという。  
920

 920の独り言(520):ブータン国民総幸福
 920の独り言(572):崖っぶち
 920の独り言(674):命を守る森づくり
 920の独り言(767):デビット・タカヨシ・スズキ
 920の独り言(818):第8回京都環境殿堂



2019/2/8 No.913
  ブスの25箇条


 笑顔は美しい。笑顔は心身を健康にする。和顔布施は美しく微笑むことで人々を幸せにする。さわやかな笑顔に会うと、すさんだ気持ちが癒される。呆けた笑顔のばあさんは周りを明るくする。

 宝塚音楽学校の廊下に作者不詳の「ブスの25箇条」というのが掲げられていたそうだ。その第1番は笑顔がない事。

  1:笑顔がない、2:お礼を言わない、3:おいしいと言わない、4:目が輝いていない、5:精気がない、6:への字口をしている、7:自信がない、8:希望や信念がない、9:自分がブスであることを知らない、10:声が小さくいじけている、11:自分が最も正しいと思っている、12:愚痴をこぼす、13:他人をうらむ、14:責任転嫁がうまい、15:いつも周囲が悪いと思っている、16:他人を嫉妬する、17:他人につくさない、18:他人を信じない、19:謙虚さがなく傲慢である、20:人の忠告を受け入れない、21:何でもないことにキズつく、22:悲観的に物事を考える、23:問題意識を持っていない、24:存在自体が周りを暗くする25:仕事において意欲がない。  

 男の私にも思い当たる節がある。私は眉間にしわができ口角が下がっているので、いつも笑顔でいたいとは思うが・・・。 920



2019/2/1 No.912
  ゾフルーザ


 今年もインフルエンザが大流行し、先日の7時のNHKニュースで、新しい抗インフルエンザ薬であるゾフルーザの小児への投与で耐性ウイルスが検出されたと、詳しく報道していたのには驚いた。

  高額にも関わらず1回の内服投与で良いのが魅力で、爆発的に投薬されていて、24時間体制で生産していた塩野義製薬にとっては大ダメージであろう。

 インフルエンザは、熱を下げて水分を取り寝ていれば治る病気。タミフルも有症状期間をわずかに短縮するだけで、ささやかな治療効果しかない。世界保健機構も必須薬から補足薬に格下げしている。欧米ではタミフル投与は高リスク患者に限られ、元気な成人には投薬しないのが常識となっている。我が国は世界中のタミフルの75%も消費していることを皆知らない。

  例年のことだが、老人施設での集団発生で超高齢者が亡くなったとか、タミフル予防投与がされなかったとか不安を煽る報道でなく、インフルエンザに関する世界の常識、毎年何百万人もの罹患者に高価な薬ではなく気合で治す様に報道すればいいのに。それより薬の使い過ぎによる日本発耐性ウイルス問題が発生しなければ良いが。

                        920

 920の独り言(863):インフルエンザ



2019/1/25 No.911
  絶体絶命


  白鳳が3連敗、大阪なおみ、ナダルとジョコビッチが決勝戦にと大相撲と全豪オープンテニスが佳境を迎え面白い。天皇皇后両陛下が平成最後の観戦をされた大相撲初場所で、中学から厳しい相撲の世界に入り、久々の日本出身横綱力士として私を含め相撲ファンの期待を集めていた稀勢の里が、けがを押しての出場と休場を繰り返し、このたび絶体絶命の初場所で、屈辱の3連敗をきして引退した。が、引退に際し「土俵人生に一片の悔いなし」、「絶対に逃げない気持ちで一生懸命相撲を取ってきた」と、屈辱連敗のピンチをチャンスに変えるような素晴らしい気持ちを語った。

 全豪テニスも錦織圭が素晴らしい逆転勝利を見せてくれた。カレノブスタ戦は2ゲーム先取され、だめかと思いながら廿日会に出席、美味しい樽酒と伊勢海老を食べて帰宅すると、何とまだ試合が続いているではないか。それも2対2の最後のゲーム6-6で、10ポイントタイブレーク。5-8と絶体絶命のピンチから、5ポイント連取し手に汗握る逆転勝利を飾った。

  勝っても負けても絶体絶命のピンチを乗り越える力、自分の心を立て直す力、絶対逃げない気持ちなど、数秒で決着がつく相撲も、5時間を超えるテニスも、1対1の勝負が面白い。          920

  920の独り言(653):大相撲はスポーツ?
      920の独り言(843):流れ



2019/1/18 No.910
  死の多重基準


 脳死を死とすることに反対していた梅原猛氏が亡くなった。医師は呼吸停止、心停止、瞳孔散大など臨床的死を確認して、死の宣告をしていたが、脳死臓器移植が行われるようになり、集中治療室でまず脳死状態が判断され、呼吸循環管理後に脳死判定が行われた後に法的な死亡診断書が作成され、それから臓器摘出後に臨床的・社会的な死となっている。

  病院での看取り現場において、患者は心電図をつけられていて、死が近づくと患者家族も看護師も患者を診ずにモニターばかりを見ているので、私が現場にいるときは早々にモニターを外し家族には患者の手を握ってもらい、呼吸が徐々に弱くなり止まり、しばらくして死の宣告をするようにしている。

  最近の在宅看取りにおいては、医師がその瞬間にそばにいなくても、家族がそばに寄り添い死を見届けてから医師に連絡し、その後医師が訪れて死亡診断書を作成することが多くなったという。

 最近、高齢患者、末期患者などでDNAR希望の患者が増え、在宅で突然の心肺停止時に救急救命士による心肺蘇生を行わない死亡患者の搬送後の死亡診断など「死の多重基準」が救急医学会で問題となっている。                920



2019/1/11 No.909
  オピオイド・クライシス


 仙台の病院の女子更衣室で一人の女性麻酔科医が死んでいた。そばにフェンタニールのアンプルと腕に注射痕が認められたという私の知り合い麻酔科医も麻酔薬の自己注射の常習で亡くなっている。

 今、米国においてオピオイド・クライシスが深刻な社会問題となっていて、トランプ大統領が公衆衛生上の非常事態宣言を出すまでに至っている。米国におけるオピオイド・クライシスには処方オピオイドの氾濫、さびれた工業地帯での企業衰退、経済格差、若者の社会からの孤立など多くの原因が絡んでいるという。

  人は孤独感から依存症となる。孤独で寂しさを感じると、人はアルコール、ギャンブル、薬物などで気を紛らわせようとして、依存に陥る。社会的孤立が薬物依存に陥る最も大きな原因となっている。薬物による一時的快楽を得る為だけではなく、自分自身で何とか自分の寂しさ・苦しみを紛らわそうとする。孤独な世界が広がっていて、自分の苦しみ寂しさを他人に頼らずに自ら対処しようとして依存に陥る人が激増しているという。

 亡くなった女性麻酔科医も自分の寂しさを自分一人で紛らわそうと、誰にも相談できず孤独だったのであろう。
                         920

 920の独り言(804):トランプ・ショック 
  920の独り言(873)孤独伝染病
  920の独り言(890)コドクシ


2019/1/5 No.908
  IKIGAI


 私達団塊世代は、豊かさを求め仕事や子育てを生き甲斐として、がむしゃらに働いてきた。生き甲斐とは生きる喜び、人生に価値や意義を与える日本独特の価値観と言われている。今、古希を迎えた団塊世代が老後の生き甲斐を考えさせられている。

欧米には人生の目的という言葉はあるが、生き甲斐と言う概念の言葉はない。欧州でIkigaiという日本文化の中で育まれた人生観が注目を浴びているという。 

世界一の長寿社会で、高齢者が仲良く伴に働きながら、笑顔あふれる幸せな毎日を送っている沖縄の長寿村の農村を観察し、外国人が考えた日本人の長寿な人生の秘訣であるIkigaiとは。

 「好きなこと、得意なこと、必要とされていること、稼げること」のすべてが 重なり合った中心にIkigaiがあるという。

 仕事はIkigaiの4分の1を占めるに過ぎず、定年後の老後におけるIkigaiは、小さなものに喜びを感じ、夢中になれ、人生を楽しむために、「朝元気に目を覚ます理由」ともいわれる。

定年がない私はIkigaiを探しながら、とりあえず今日も朝何とか起きて病院の仕事に行かねばならない。       920

 エクトル・ガルシア:外国人が見つけた長寿国ニッポン幸せの秘密。
Ken Mogi:IKIGAI、新潮社。


2018/12/28 No.907
  前立腺物語


 私は20年前の50歳にして前立腺肥大証を発症した。男は50歳で50%、70歳で70%、90歳で90%と前立腺肥大は男性高齢者にとって必然的なものとして諦めていた。ところがPSAが10を超え、前立腺癌が疑われ生検を受けたが肥大のみであった。前立腺肥大は徐々に進行し3倍くらいの大きさになったが、内服薬で症状をコントロールしていた。運動後一度尿閉になり驚いたことがあったがアボルブにより改善。ユリーフによる起立性低血圧で、起床時に転倒し臀部を強打して前立腺炎と思われる高熱に見舞われたこともある。その後もPSAが20-30と高値を示し、何回かの生検やMRIの検査結果に一喜一憂していた。

 最近PSAが40を超え、MRIでも異常所見が認められ、癌に違いないと覚悟。生命予後は悪くないが、合併症など治療法が多岐に渡るので、ダビンチロボット手術か、放射線治療(内照射、外照射)か、内分泌療法か情報を集め思案しながら、生検を受けたが癌は認められずほっとした。

 米国で前立腺癌の治療群と何もしなかった群では何もしなかった群の方が生命予後、合併症も少なく、PSA検査無用論が出ているようだが、古稀を迎え、もう来年からは前立腺がん疑いに惑わされ不安にならないように、PSA検査はしないで過ごそうと思う。 920

 920の独り言(604):高齢ガン健診。


2018/12/21 No.906
 晩節を汚す


 カルロス・ゴーンが突然逮捕されたのには驚いた。

  日本人には出来ない日産を立て直した剛腕経営が賞賛され、給与10億円と高額なのにも驚いていたが、日産からの役員報酬を少なく記載し、毎年倍以上のお金を得るべくひそかに画策していたとは。無罪になろうが有罪になろうが大企業内での争いということで、私の価値観からすると、晩節を汚した“せこい”人間と思う。

  せこいといえば、学校の先生が制度変更により退職金が減るので、1か月早く担任を止めて退職したことが話題になったことがある。舛添元東京都知事が数ドルのマンガ本などを政治資金で購入してSekoi人間と米国で報道され、晩節を汚していた。

  丸が35億円で巨人に買われた。巨人に大金で買われた多くの有名選手の晩節がどうなったかを良く知っていると思うのに。

 武田製薬のクリストフ・ウエーバー社長が投資会社でもあるまいに、7兆円ものギャンブル的大金でアイルランドの製薬会社を独断で買収したのには驚いた。グローバル拝金資本主義社会になったとはいえ、ヘッドハンティングされ高額で日本に買われた外国人社長は、日本的価値観からして晩節を汚さぬ様にしてもらいたいものだ。  920

  920の独り言(785):sekoi
  920の独り言(620)せこい




2018/12/14 No.904
 泣かせのテクニック

 
麻酔・救急・集中治療など急性期医療を行っていた時は、患者の生活背景に思いをはせることはなく、臓器障害を客観的に診断し、「疾患」に対する科学的根拠に沿った治療・延命に集中していた。

 一方、かかりつけ医として診る慢性期医療、看取りを含めた緩和医療に際しては、「疾患」を診るのではなく、患者一人一人の生活背景から人生観を含めた「病む人」を診ることが重要になってきた。医師は病気になって始めて患者の気持ちが分るようになると言われるのは、病気に対する医師と患者の理解の仕方が根本的に違っているからと言われる。医師は病気を科学的にとらえた臓器の異常を「疾患」として診断・治療するが、患者は病気を自分が体験する苦しみとしての「病む人」と考えるからと言われている。

 最近、AIが医療現場で応用されているが、急性期医療では疾患臓器を科学的、客観的、統計的に分析するので、その診断、治療法にAIが利用できる。一方、患者一人一人の背景を知り、問診ではなく対話を通して患者の体験・物語を聴き、関心をもって共感して病む人を診ることはAIにはできない。

 私は患者との対話の中で傾聴や説得に加えて、AIには出来ない笑いや泣かせのテクニックを用い治療している。 920



2018/12/8 No.904
  マインドフルネス


 テニスの世界ナンバーワン、ジョコビッチがマインドフルネストレーニングにより集中力が高まり、より強くなったという。

自分の呼吸に意識を向け、今この瞬間の心に集中する。自分の内面に起っている不安、どうにもならない過去のことに気づき、見つめなおす事で心を落ち着かせる。ストレスが解消し集中力が高まるので、うつ病、パニック障害、慢性疼痛などの治療以外に、米国ではビジネスマンやスポーツ選手などにマインドフルネストレーニングが急速に広まっているという。

「ヒトは悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しくなる」ということに気づき、無意識に調整されている自律神経と“情動”を意識的に調節することで身体と心を整えることが出来る。 

マインドフルネスによる瞑想と坐禅による瞑想は似ている様で、本質は異なっている。第3世代の認知行動療法であるマインドフルネスによる瞑想は心の内面に生じる雑念に囚われていることに気づき、心を整えるために行うが、坐禅の瞑想は腹式呼吸による腹腔神経叢刺激と無我の境地の結果として身体と心が調うという。  

私は20年来毎朝坐禅を行っているが、今だ効果が現れてこない。
                    920

 920の独り言(867):ピョンチャンオリンピック
山下良道:マインドフルネス X 禅、集英社。


2018/12/1 No.903
人生会議


 人生の最終段階に本人が希望する終末期医療やケアについて、あらかじめ家族やかかりつけ医などと繰り返し話し合うアドバンスケア プラニング(ACP)が欧米で行われていて、厚労省は超高齢化の我が国もACPをすすめようとしたが、ACPなどと英語で、多くの人が理解できずに普及せず、日本語の愛称を募集していた。

 昨日の11月30日に1073件の応募の中から「人生会議」という愛称に決定されたという。11月30日(いい看取り)を「人生会議の日」と定め、ACPを普及させるという。

「人生会議」?何それ。子供達が進学、就職、結婚、育児などについて話し合うこと?ACP同様、高齢者にとっても多くの国民にとっても、何のことか分からず普及しないであろう。 

古代インド仏教に自分の人生を「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」の四つの季節に当てはめて人生を考える思想がある。 ACPは「遊行期」である人生の終末期に関して考えようとする高齢者にとって微妙で難しい問題なので、分かり易い流行語を入れて私が応募した「私の終活」を愛称として、高齢者に「終活ノート」を配布すれば普及したと思うのに。       920

  920の独り言(893):ACPの愛称



2018/11/23 No.902
  ベッチャー太鼓


 病院でベッチャ―太鼓演奏会が開催された。

10年ほど前に、室内でべッチャー太鼓の演奏会をしたことがあるが、今回は病院の看護婦さんがベッチッャー太鼓の団員として活躍していることもあり企画された。天気予報は雨の予報であったが、当日は幸いに晴れて、病院の駐車場に大小20個の太鼓が並べられ、総勢20人ほどの団員により腹に響く勇壮な太鼓演奏が披露された。

ベッチャー太鼓は200年ほど前の江戸後期に、尾道地域に疫病が流行し、吉備津彦神社で病魔退散のお祓いのために行われたのが始まりという。鬼神「ソバ」「ベタ」「ショーキ」による太鼓演奏もあり、外来患者さんや近所の人達も無病を祈願する祝棒で突いてもらっていた。

 太鼓演奏の最後は団員が一列に並び、アカペラによる「心合わせ力合わせ 生きていくんだ」と「生命の詩」の熱唱があった。病院の入院患者さんは、病室の窓際で演奏を見聞きしていて、ガン末期の患者さんは、感激して涙が出たと言われていた。

 勇壮で腹に響くべッチャー太鼓により患者さんの病魔のお祓いのみならず、病院に取りついている悪霊もお祓いできたと思う。

                      920



2018/11/16 No.901
 飛騨高山


  病院旅行で飛騨高山に行ってきた。
名古屋で熱田神社を参拝し、名物ひつまぶしを食べ、美濃紙すき体験をして、飛騨高山では立派な温泉ホテルで豪華飛騨牛をふんだんに使用した美味しい懐石料理を食べ、高山陣屋や古い町並みを見学、白川郷散策、高価飛騨牛ステーキを食べてきた。

病院旅行は一人旅、家族旅行などと違って、親睦、慰労を目的とし観光地を巡る旅行となっている。毎年病院旅行を行っているので、今回は51回目となり、北は北海道から南は沖縄まで、有名な観光地と言われる所にはほとんど行ったことになり、新しい旅行先を探すのが難しくなってきた。

 観光立国を目指す我が国は2020年までに外国人観光客4千万人を目標にして観光立国の実現を目指すという。海外の日本観光紹介パンフレットで、飛騨高山は飛騨の小京都、日本の原風景を残す街で、日本で必見の観光地と紹介されている。

11月の観光旅行日和とはいえ、飛騨高山市街、ホテル、白川郷など、多くのアジアをはじめ欧米からの外国人観光客であふれていたのには驚いた。            920


2018/11/9 No.900
  森鴎外

 
最近の若者に森鴎外を知っているかと聞くと、知らない人が多く、それは何の貝ですかと問う輩もいるという。

 昨年は舞姫の舞台となったベルリンを訪れたし、今年は森鴎外の孫である小堀鷗太郎氏による「死を生きる人々」という本を読んでいたので、先日の日本臨床麻酔科学会で森鴎外のひ孫である千葉大学教授、森千里氏の「租曾父 森鴎外と予防医学」と題する記念講演を興味深く聞くことが出来た。

 130年前、22歳の若き森鴎外がドイツに4年間留学し、欧州文学・芸術を吸収し、また軍医として衛生学や兵食について学び、「ビールの利尿作用の研究」「西洋の穀物に含まれる毒の実の無毒化の研究」「ベルリンの下水のバクテリア研究」「日本の家屋に関する研究」などドイツで4編の論文を発表しているという。

近代西洋医学を学び、それまでの我が国の和漢薬中心の日本医学を西洋医学に向かわせる流れを作り、「衛生新編」など日本医学の羅針盤となる日本語の教科書を作った功績も大きい。小説「高瀬舟」に麻酔薬の単語がでていて、安楽死の問題をも提起している。

 当時厚生省はなく、軍医総監は厚生大臣のようなもので、役人、医師、小説家と知識人としての才能には驚かされるし、多才遺伝子が、孫、ひ孫にまで受け継がれているのにも驚かされる。

 920


2018/10/26 No.899
  米寿のお祝い


 長い間、心房細動・心不全などで診ているおばあさんが88歳を迎え、自分で発案して子供3人、孫10人、ひ孫10人とそれぞれの伴侶を含め合計36人が集まり米寿のお祝いをしたと、その時の集合写真を持ってきてうれしそうに話された。

 この時の集まりがあまりにも楽しく、幸せいっぱいであったので、これから毎年、自分が音頭をとり皆が集まることを生きがいにしたいと言われるので、大賛成した。

 「それは素晴らしい事。あなたがこの世に居るから、子供、孫、ひ孫がこの世に存在し毎日を幸せに過ごせ、集まることが出来ることを皆に伝えなさい。そして、あなたが幸せな時を過ごせたのは、ご主人が早く逝ってくれたから。ご主人が今も生きていると、多分呆けていて、その介護が大変で、こんな幸せな集まりの時を過ごす事は出来なかったでしょう。早く逝ってくれたご主人に感謝しなければいけないよ」と話すと、主人の13回忌もすませ、私もそう思うと、大笑いされた。

 じいさんが先に逝くと、ばあさんはどんどん元気で幸せになる。ばあさんが先に逝くと、じいさんは直ぐに後追い死するが、一番不幸なのは、間違ってじいさんが長生きしてしまうこと。

  920


  男はつらいよ:920の独り言(816) 
2018/10/19No.898
 多死時代の看取り


 昨年度の出生数94万人(私の時280万人)に対し死亡者数は134万人。これから私達団塊世代800万人が後期高齢者となり死亡者数は激増し年間約180万人が亡くなるという。多死時代を迎え、病院での看取りが難しく、在宅での看取りが勧められている。

 先日は福山文化大学で、日本在宅ホスピス協会長の小笠原文雄氏の「何とめでたいご臨終」と題する講演を聞いた。在宅で1000人以上を看取った経験から、症例をスライドで解説。入院中苦しみを訴えていた患者が帰宅すると苦しみが消える。在宅で亡くなると、家族も患者もハッピーになるという話であった。

 東大を出て食道外科医として治療と延命に専心した小堀鷗一郎氏は退職後在宅医療を実践され、疾患として診ていた患者を病いに悩む人間として診るようになり、在宅で看取った355人の一人一人を本人の希望、家族の思い、問題点など詳しく考察し出版された。最後の日々をどう生き、いかに終えるか。森鴎外の孫ということもあり,文学的な文章と「死を生きた人びと」という題名の深い意味に気づかされる。

 私も1000人を超える死亡診断書を書いてきた。多くの老病死症例を診て、考えさせられることは多い。     920

 小笠原文雄:なんとめでたいご臨終、小学館。
小堀鷗一郎:死を生きた人々、みすず書房。


2018/10/12 No.897
  S基金


 今年ノーベル生理医学賞を受賞された本庄祐氏が、賞金を元手に若手基礎研究者支援の基金を創設するそうだ。オプジーボの特許料を加えて、ゆくゆくは1千億円規模の基金にして、20人ほどの若手研究者にそれぞれ年間約1億円を支援し、我が国の基礎研究を推進するという。

 パーキンソン病で長い間入院している女性の御主人S氏は毎日見舞にこられ、何回も感謝と記した封筒に入った大金を届けられ、相当額になったのでS基金を設立させてもらった。独居で質素な生活をされているにも関わらず大金を拠出され続け、多職種チームの研究費に加え若い看護婦さんが大学で学びたいとのことで奨学金の給付もしている。天文学の教授をされている息子さんにS基金の話をすると、父の資金提供の思いに納得、感心されていた。

 そのS氏が見舞に来られなくなり、心・腎不全の増悪で動くこともできなくなっておられ入院を薦めたが、在宅を強く希望され、在宅看取りを視野に訪問診療を行っている。呼吸苦が強いある日、S基金により奥さんを看護していた若い看護婦さんが大学に進学し、感謝しながら勉強をしていることを伝えると、「それは良かった」と幸せそうに素晴らしい笑みを浮かべられた。        920


2018/10/6 No.896
  医師の勘


  快進撃を続けマスコミを賑わしている棋士、藤井聡太の「読み」はすごいらしい。将棋に際し大切なことは「読み」と「直感力」と「大局観」という。「読み」は論理的に考える力。若い頃は基本的に「読み」を中心に考えるが、経験を積むにつれて、多く読むことよりは、感覚的に捉える「直感力」と「大局観」の比重が高くなるという。

  「直感力」には論理的思考である「読み」の蓄積が必要で、対局経験を多く積んで磨くことが出来る。対局経験が豊富であるほど大きな力となり、自信を持って戦うことが出来るようになる。また、直感を磨くには多様な価値観をもつことも大切という。藤井聡太七段も経験を積んで、より強くなるのであろう。

 医療においても知識に元づいた論理的思考「読み」による診断、治療が行われるが、多くの臨床経験を積むことにより、「医師の勘」が養われる。「医師の勘」は将棋の「直感力」と同じであろう。

 古稀を迎えた私は麻酔、ペイン、集中・救急医療、慢性期医療など多くの臨床経験を積み、最近では「読み」の力は衰えたが、高齢患者には「大局観」を重視した医療が行えるようになったと思う。

                920

  直感力:羽生善治。PHP新書


2018/9/28 No.895
  綜合的品質管理(TQM)

  第12回院内研究会が開催され、嚥下障害の対応、口腔機能向上対策、緩和ケア報告、身体拘束防止対策、オリーブオイル効果、インシデント報告、濃厚注入食、褥瘡マットに関する研究や西日本豪雨災害援助隊に参加した報告などが発表された。

  企業は良い製品を提供するため、製造部門のみならず営業、組織すべてにおいて品質改善・向上をすすめる、総合的品質管理TQM(Total Quality Management)という経営管理手法を行っている。

 最近では病院にも総合的品質管理なるものが必要とされ、高度で良い医療に加え、安全でミスのない医療、快適で効率的な医療なども求められている。そのためにはチーム医療が不可欠で、それぞれのチーム部門の質向上が必須となっている。品質管理の基本はPDCA(Plan Do Check Act)という。たとえば、よくある入院患者の転倒に関しては、P:どう予防するか。D:それを実行する。C:定期的にチェック。A:改善する、などなど。

 医師が良い医療を行っていれば良い時代ではなくなり、多職種のチーム職員がさまざまな問題に対しての対策を検討発表し、病院の総合的品質管理である“質の向上”を図っている。  920

920の独り言(849):チーム医療。


2018/9/21 No.894
  抗生物質と肥満

 
肥満は家系に加えて飽食、運動不足によるものと思っていたが、幼少時に抗生物質を投与されたことも関与しているという。

私もそうだが、団塊世代に肥満が少ないのは、幼少時は皆貧しく青鼻を垂らしても医者にかからず、抗生剤も服用せず過ごしていたから。肥満が増えてきたのは団塊世代後の人で、豊かになり幼少時に抗生剤が多用されるようになってから。帝王切開で生まれた子供は、自然分娩で生まれた子供より肥満者が多い。先進国での肥満は食糧事情に加えて、腸内細菌叢の種類の減少が関与しているという。

家畜の飼料の中に抗生剤を混じているのは成長をはやめて大きくするためで、人間が使用する倍以上の抗生剤が飼料と伴に投与されている。生後早く抗生剤を投与すると成長が促進されるが、大きくなってからでは成長促進効果は認められないという。

幼少時の抗生剤による腸内細菌叢の変化は、耐性菌の問題以外に、肥満、アレルギー、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、引きこもり、うつなどにも影響を与えているという。

 幼少時の抗生剤投与が、腸内細菌叢の種類の減少により肥満にまで関与しているとは・・・。         920                        

 三瀬勝利、山内一也:ガンより怖い薬剤耐性菌。集英社新書。
920の独り言(840):細菌の逆襲



2018/9/14 No.893
 ACPの愛称

 
 超高齢化社会における終末期医療の患者自身の意思決定支援に役立つACP(Advance Care Planning)が欧米で実施されているが、世界一高齢化がすすんでいる我が国もACPの普及を厚労省と医師会かかりつけ医がすすめようとしている。

 日頃から人生観とか死生観を家族やかかりつけ医と話し合うことは望ましいが、元気な時に自分の終末期医療をどうするかなどに関して、宗教のない我が国では高齢になると家族に迷惑をかけるので、「ぴんぴんころり」が良い位のことしか答えられない人が多い。

 ACPなどと国民は無論、多くの医師さえ知らない横文字で普及しようとする官僚の常識を疑っていたが、さすがにまずいと思ったのか、ACPの愛称を募集していて、今日9月14日締め切られた。

 終末期患者を多く診ているので、終末期医療をどうするか悩む事が多く、「~さいごまで あなたらしく いられるために~」との冊子を看護師が作成していたこともあり、職員全員にそれぞれが考えて、例えば「私の終活ノート」などと、ACPの愛称募集に応募するようにと言っておいたが、皆応募しただろうか。

  結果は11月に発表されるそうだ。         920

 920の独り言(888):ACP
  920の独り言(790):DNAR


2018/9/7 No.892
  キュリオス

  世界が認め進化を続けるサーカスエンターテイメント集団であるシルク・ドゥ・ソレイユの30周年集大成としての「キュリオス」大阪公演を病院職員子供達とともに見てきた。「キュリオス」とは「好奇心」、「骨董品」と言う意味を持つ言葉らしい。

  欧米では4つの1が並ぶ「11:11」と言う時間は偶然が重なり合う幸運な時間といわれ、11時11分になると「make a wish」
とつぶやくと不思議な体験が出来るといわれているそうだ。

 キュリオスは、舞台後方の壁にかかっている時計が11時11分になると、好奇心あふれる不思議な世界へと開演。産業革命時代を彷彿させる骨董品に囲まれた舞台装置で、独自に進化させた凄い技が音楽や歌と伴に次から次へと繰り広げられた。空中人間ブランコ、巨大トランポリン、双子によるリボンぶら下がり、空中自転車、ヨーヨー、人間ピラミッド、空中イスアクロバットなどなど。

 サーカスといえば子供の頃見たことがある木下大サーカスでのライオン、像などの動物ショー、空中ブランコ、ピエロなどを思い出すが、キュリオスは値段も高いが、芸術的で究極な人間技のエンターテイメントショーで大人が楽しむサーカスであった。

                920


2018/8/24 No.891
  女性医師


 東京医科大学の入学試験で、女性入学者を制限するために女性受験者は一律に減点されていたのには驚いた。女性医師は結婚出産育児などによる離職での医師不足、特にハードな仕事となる救急・外科系医師の不足など様々な問題があり、必要悪とは思うが・・・。

  米国の研究で、女性医師はコミュニケーション力により、内科入院患者の死亡率が男性医師より優位に低いという有名な報告がある。最近の報告でも、救急外来での女性心筋梗塞患者の死亡率は女性医師よりも男性医師が担当すると有意に悪くなる。心臓発作の死亡率が女性は男性より高いという男女差があるのは、救急医の殆どが男性医師であるためと考察。救急科の女性医師を増やすことを提言している。

 ソ連は女性医師が多いと聞いていたが、現在でもバルト三国では女性医師が7割を超えているという。私が医大に入学した時は男性80人に対し女性4人であった。当時我が国では大学を卒業した女性は多くが見合い結婚し専業主婦になっていたが、今では皆が働く時代となった。仕事における男女差には向き不向きがあるが、看護婦は男性が増えてきて看護師になったし、優秀で美しい女性医師が程々に増えるのは悪い事ではないと思う。      920

 920の独り言(821):死にたくなければ女医を選べ。


2018/8/17 No.890
  コドクシ

 
孤独死とは人知れず死亡し発見されることで、都会のアパートでの高齢独居男性の孤独死が増えている。孤独男性の特別な集合場所である大阪釜ヶ崎では年間600人が孤独死し、我が国では約3万人が孤独死しているという。他の先進国でも孤独による死亡は社会問題化していて、英国では今年1月、孤独担当大臣が新設された。 

 目と目を合わすことが出来ないサルをはじめとする動物は、ボスザルのごとく孤独死する。ゴリラ、人間は目と目を合わせる絆ホルモンを分泌するので孤独死しない。絆は、“ほだし”とも読む。ほだしとは家畜が逃げないようにする綱のこと。“ほだし”と引き換えに都会に出て自由を得た男性は“きずな”を失い孤独になる。

  最近の若者はスマホなど目と目を合わすことをせず、男性は女性と異なりコミュニケーション能力がなく、男らしさが一人ぼっちとなり、結婚せず、都会のアパート一人暮らしで地域の繋がりもなく、パートで会社の繋がりもなく、気楽で孤独な男が増えている。定年後夫源病となった妻から離婚される高齢孤独男性、高齢親元で中年の引きこもり孤独男性などもコドクシ予備軍となっていて、世界一孤独な日本の中高年オジサンの生きづらさ、無縁社会での絶望的な不幸感の先にあるコドクシの激増が危惧される。   920 

 920の独り言(816):男はつらいよ

 920の独り言(873):孤独伝染病 

  920の独り言(885):定年引退後


2018/8/10 No.889
 8050問題


 札幌のアパートで82歳の母親と引きこもりの52歳の子が餓えと寒さで孤独死していたのが発見されたというニュースがあった。

 10代から不登校、ニートなどと呼ばれて引きこもっていた子供たちが中高年となり、または仕事がうまいこと行かず40代、50代でも引きこもりとなり、仕事をせず収入のない中高年の孤独な息子を80代の高齢の母親が面倒を見ている「8050問題」と呼ばれるケースが増えているという。

 8050問題は中高年引きこもり男性の家庭内暴力、中高年男性の孤独、孤独死問題。長い間の引きこもり、孤独によるアルコール依存、パチンコ依存、ゲーム依存など心身の障害。高齢の親が亡くなった後の独居に伴う生活保護・介護など多くの問題を抱えている。

 当院でも、母子家庭で60歳の無職の息子がパチンコ依存となり  90歳の母親が悩んでいるケース。母子家庭で長い間自宅に引きこもっていた息子の相談を受けた後、自殺したケース。親子で年金生活していた老いた父が亡くなり、自宅で一人生活をしている栄養失調の60歳孤独男性患者のケース。家庭環境を聞いていくうちに、いやいや長い間自宅に引きこもっている子供の悩みを打ち明ける老いた母親など、8050問題を抱えた家族を診る機会は多い。

どうしたら良いのであろうか。          920


2018/8/3 No.888
 ACP(Advance Care Planning)


 団塊世代の私が後期高齢者となる2025年以降、激増する高齢者の終末期医療をどうするか?自分が望む人生最終段階における医療・ケアについて前もって自ら考え、かかりつけ医や家族と日々話し合い、人生観、死生観を共有しておくACPについて厚労省医政局地域医療計画課がガイドラインを発表している。

 誰に介護してもらうか、どこで死ぬか、家か施設か病院か、どういう治療をして死ぬか、せずに死ぬか等々。そういうことをしっかり決められるのは西部邁氏くらいであろうに。ACPなどと、何故一般国民が分らない横文字を使うのか理解できない。私の病院でも外来患者用、入院患者用にACP書類を作成はしたが・・・。

 団塊世代に関する官僚の予測は今までことごとく外れてきた。小中学校時代は1クラス60名、10クラス。こんな多数の生徒を一人の教師が教えることはできず学力低下、学級崩壊につながると。

ところがそうはならなかった。高校・大学時代は、こんな多数が一度に社会にでると無職者があふれ社会が混乱すると。ところがそうはならなかった。定年時も予想に反して上手くいった。

 今回は2025年以降、団塊高齢障害者が激増して介護・医療制度が混乱崩壊すると。ところがそうはならないだろう。私達団塊世代の多くは、介護医療負担をかけることなく上手に逝くと思う。
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2018/7/27 No.887
  神経可塑性疼痛

  第52回日本ペインクリニック学会が品川で開催された。

  「ニューロパシックペインへの挑戦」、「帯状疱疹関連痛の治療」「術後痛の臨床:急性痛から慢性痛まで」、「ガン疼痛治療:多様性を求めて」、などのシンポジウム。「基礎と臨床の統合:痛みの長期化が脳を変化させる」「周術期におけるオピオイド使用を科学する」「痛み感受性は環境で変化する」「慢性疼痛に対する心理療法や運動療法の限界」「難治性疼痛の解明と治療」などのジョイント討論。「パーキンソン病:最近の知見と疼痛」。「脊椎インターベンション治療のさらなる技術」、「「進化を遂げる電気刺激療法」など数多くの討論が行われた。

  慢性頭痛、慢性腰痛、繊維筋痛症、神経障害性疼痛などの慢性疼痛の原因に痛み神経回路における神経可塑性が関与していて神経可塑性疼痛と呼ばれる。扁桃体のシナプス可塑性変化は痛みと情動認知が関連していて、慢性疼痛を「痛み脳」としてとらえての治療法の開発が望まれる。扁桃体と海馬の関係から認知症の患者が慢性痛を訴えなくなるのを研究すると面白いと思う。

 今年より70歳を超えた私は年会費が免除されるようになった。

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2018/7/19 No.886
  断水


 尾道の取水場が川の氾濫により水没して断水となった。水道管の破裂による断水は通常1-2日で復旧するが、今回は断水が想定外の長期になるとのことで大混乱した。BCPに伴い食糧、水の備蓄、非常時電源など準備しているが、いずれも1-3日間を想定した非常時対策で、1週間を超える想定外のライフライン断絶に対する対応はできない。

 病院にはトイレ用の井戸水があり助かったが、飲食用の水確保、清拭、消毒、洗濯など病院内生活用水の確保。入浴制限、紙食器などさまざまな節水対策。内視鏡検査の延期などに加えて、佐賀市からの緊急災害援助給水車や自衛隊の給水車による貯蔵タンクへの給水により、何とか外来入院診療が継続できた。

 自宅では小便は庭でし、洗濯できないので同じ寝間着を着、水を使わない食べ物をラップの上で食べ、ペットボトル水で歯を磨き、風呂に貯めた水で洗顔、福山の風呂屋で1時間並んで入浴洗髪するなど、蛇口をひねればいつでも出る水の有難さを再認識した。

その昔私が子供の頃はテレビも冷蔵庫も電気釜もエアコンもないので、停電時にもあわてずにローソク1本と井戸水で生活したことを思い出す。豊かで便利になった今では電気、水が途絶えると生きてゆくことができなくなってしまった。     920



2018/7/6 No.885
  定年引退後

  男性サラリーマンの定年引退後の最大の問題は何であろうか。健康?お金?趣味?そうではなくて「孤独」だそうだ。

 人生60年時代には定年引退後には早々にお迎えがきていたが、人生100年時代となり、引退後の長い時をいかに過ごすかが大きな問題となってきた。定年後は第二の人生で、好きなことが出来て良いというが、悠々自適に過ごしている男性は少ない。趣味を楽しむというが、毎日ゴルフ、テニス、書、絵画、釣り、農作業、サイクリング、旅行などとなると、いずれも難行苦行になってくる。

  家庭を顧みず仕事に打ち込んできた旦那が定年後一日中家にいると、妻は主人在宅ストレス症候群に陥り、妻が定年後熟年離婚を言いだす。毎日することがない定年引退後オジサンの行先は、図書館、スポーツジム、高級喫茶店などで、朝からそれらしき男性であふれているという。それぞれの場所でそれとおぼしき中高年オジサンの特徴は、誰もが“独りぼっち”ということ。

 定年後男たちの孤独感は一層高まり、女性と異なり、おしゃべりできない日本のオジサンは世界一孤独になっているという。病気になって来院する中高年オジサンを診察していると、その共通病理が「孤独」と思われる患者が多いことが分かる。     920

 世界一孤独な日本のオジサン:岡本純子、角川新書。
定年後:楠木新、中公新書。


2018/6/29 No.884
  日本経済のゆくえ

  廃墟から世界第2位の経済大国となり豊かで物が溢れる我が国は、1千兆円を超える借金をかかえ、経済を牽引してきた私達団塊世代が後期高齢者となり医療介護年金の激増、少子高齢化で政治は3流、経済は一流と呼ばれていた日本経済は今後どうなるのであろうか。伊藤元重東大名誉教授による「日本経済:その課題と可能性」と題する講演を聞いた。

  経済を考えるのに大切なことは、高いところから広い視野で全体を見る「鳥の目」でマクロ経済を見、現場で直面している課題をあらゆる角度から掘り下げる「虫の目」でミクロ経済を見、さらに潮目を見る「魚の目」で時代の変化、経済の流れを読むことの重要さを話された。これからの日本経済は、二酸化炭素排出規制の環境問題に応じる電気自動車、自動運転システムなどへの投資。東南アジアで豊かになった10億人に達する人々による消費経済効果。人工頭脳をはじめとする技術革新の急速な進歩による我が国の労働環境の変化など、決して悲観することはないという。

  学者・専門家による経済に関する予想は当たったためしがないが、アランの幸福論「悲観は感情から生まれるものだが、楽観は意思で生み出すもの」は経済にも当てはまるとの指摘は当っていると思う。 

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2018/6/22 No.883
 BCP

 
20年近く住んでいた大阪府高槻市を中心にしたマグニチュード6の地震が発生し甚大な被害が出たことに驚いた。国立循環器病センターでは停電、ガス遮断、屋上の貯水槽の破壊により病棟が水浸しになり、人工透析は自衛隊の給水、停電による人工呼吸器、人工補助心臓は非常用電源で何とかしのいだが、手術の中止、重症入院患者63人の他病院への移送、軽症入院患者142人の一時退院など大変だったようだ。

 BCP(Business Continuity Plan)とは災害が発生した時、特定の重要業務を中断せずに事業を継続すること。万が一事業が中断しても重要な機能を早く復旧し損害を最小化するための対策のこと。

 先日の日本臨床救急医学会のシンポジウムで、医療界におけるHealth Care BCP共同事業体が設立され、一般企業と異なり、災害時にすでに行っている入院医療を休むことなくきちんと維持した上で、災害時の非常事態の医療をも確保できるような病院機能強靭化を図る他業種とのBCPを作成することの重要性が話し合われた。

 首都直下型から東南海地震の発生がまじかに迫っているので、地震、火災などで水源、電源が切れた時の入院患者の人工呼吸器対応などBCPを小さな病院なりに作成したが・・・。 920


2018/6/15 No.882
 阿部正弘


 キムジョンウンとトランプの歴史的米朝会談がシンガポールで行われた。昨年には米朝戦争は避けられない状態でイラク、リビア、シリアなどの様に戦争が勃発するものと思っていたが・・・。

 昨年ベルリンの壁の跡を見てきたが、あれほど敵対して、まさに東西戦争勃発の危機の中、思いもかけないソ連邦崩壊、ベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一などその劇的な変化の歴史には驚かされる。

 先日は福山誠之館高校の創立164周年同窓会があり、同級生の島田壮司君が記念講演をした。

 「阿部正弘は江戸時代末期、備後福山藩第7代藩主で、若くして江戸幕府の老中首座を務め、幕末の混乱期にあって安政の改革を断行。能力主義による人材登用。人材育成のため「誠之館」を設立。日米通商条約を締結し鎖国政策に終わりを告げた。日の丸を日本国旗と策定。幕府の民主化政策と開国政策を推し進めていたが、若干39歳の若さで死亡。その後幕府は混乱の中崩壊してゆく。“もし”、阿部正弘がもっと長生きしていたならば、日本の歴史は大きく代わっていただろう。歴史はその後の時代によってとらえ方が大きく変わってくる。」との島田君の講演は非常に面白かった。

 キム独裁王朝は今後どのような崩壊を迎えるであろうか。

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2018/6/8 No.881
 葛飾北斎


 最近立て続けに葛飾北斎の絵を見る機会があった。先日広島で「北斎展:師と弟子たち」のテーマで開催されていて、有名な波富士や赤富士、風景画から東海道五十三次、奇想天外な妖怪像、忠臣蔵、役者絵、北斎漫画など面白い絵を多く見てきた。

  先日の福山文化大学では、ブライダル・ファッションデザイナーの桂由美氏が「日本の伝統技術を生かしたファッション、YUMIYUZEN]と題する講演の中で、フランスパリコレの映像が流され、日本が世界に誇る友禅に葛飾北斎のあの大胆な赤富士や波富士をデザインしたドレスが美しく映し出されていた。

 LIFE誌による、この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人は1位のエジソン、2位のコロンブス、3位はルター、唯一日本人で選ばれたのが86位の葛飾北斎。ゴッホやモネなど印象派の画家に多大な影響を与え、北斎漫画はジャポニスムのきっかけとなり、天才絵師によるUKIYOEは世界共通語となっている。世界一有名な絵は、ダビンチの「モナリザ」と北斎の「大波」ともいわれている。北斎の春画もタコと海女など、その大胆な構図、巧みな線、独創的な画風など面白い。

 来年度の日本のパスポートの基本デザインに北斎の「富嶽三十六景」とすることに決定されたそうだ。      920



2018/5/31 No.880
  インテグリティ

 
日大アメリカンフットボール事件がマスコミを賑わしている。過ちを犯し謝った学生の“真摯”な態度に対して、指導者である部長の“誠実さ、高潔さ”の欠如が際立った。大学運動部組織リーダーとしての部長の“インテグリティ”欠如が組織の崩壊を招くことになったと思う。

  インテグリティは欧米のビジネスの世界では良く使われる言葉だそうで、組織のリーダーやマネージメントに求められる最も重要な資質とされている。適切な日本語がないが、真摯とか誠実とか高潔などの概念を含有する言葉で、指導者が元来持っていなければらない必須の資質は才能とか力ではなくインテグリティという。インテグリティに欠ける指導者の組織はいかに仕事ができようが、業績を上げようが、そのうち組織を腐敗させるという。

  スポーツにおいてもドーピング、八百長、ハラスメントなど、スポーツ・インテグリティの重要性が指摘されている。

  今回の日大アメリカンフットボール部と正反対で、脱体育会系と誠実さを求める指導方針で、前人未到の8連覇を続けている帝京大学ラグビー部の岩出監督の講演を思い出した。 920
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  脱体育会系 :920の独り言(632)

 その昔、私の中学校の軟式テニス部は名門で伝統的に強かったが、その練習は厳しく、1年生は奴隷で毎日球拾い、2年生が平民、3年生は天皇と、典型的な体育会系の組織であった。その様な環境で育ったので、私はスポーツチームが強くなるには、体育会系による縦の関係が大切と思ってきた。 

ところが、前人未到の8連覇を達成した帝京大学ラクビー部監督、岩出雅之氏の講演を聞いて驚いた。

 体育会系で育った監督自らが脱体育会系に変わり、運動部特有の上下関係を無くした。他人からでは人は変えられず、自ら成長する人、その集まりが強い組織を作る。その為には脱体育会系が必要と。上級生は率先して練習後の片づけを行い、3年生は1年生の話を聞きながら皆で自らの練習方法を考えるという。監督は学生に教えるのではなく自分達で考えさせる。練習を押し付けるのではなく自分で考え行動するようにさせる。誠実な人として成長するための自覚を促す。誠実は束になれる力で、束になったエネルギーは大きな力を発揮し、ここ一番で勝利に導く、などなど。

 監督が寮で掃除をしていると、1年生は知らん顔をし、2年生は気まずさそうな顔をして立ち去り、3年生は代わってやりますと言い、4年生はすでに掃除をしているようになると・・・。

 岩出雅之:常にさらなる進化を目指して:組織つくりとリーダーシップ。 第20回日本臨床救急医学会総会特別講演。


2018/5/25 No.879
  古代エジプト医療


第65回日本麻酔科学会が横浜で開催され、約1万人の麻酔科医が参加し、数多くのシンポジウム、セミナー、教育講演などがあり、私が入会した45年前を思い出すと隔世の感がある。

 特別講演は考古学者の吉村作治氏が「古代エジプト文明と医療」と題して講演された。ピラミッドは王の墓ではない。精神と肉体、あの世とこの世、死の復活とミイラの作り方、古代エジプトの医療自分の病気のことなど、話し上手で面白かった。

 古代エジプトの平均寿命は30-36歳。15歳で成人となり、理想的な寿命は110歳と考えられていた。古代エジプト医療は高度で国際的。国民医療費は無料であったが、国外からの患者から高額の医療費を得ていたという。医師は眼の医師、頭の医師、歯の医師、腹の医師、心の医師、“患部不明の病気の医師”など医師が専門別に分化していた。出産前兆の調べ方、避妊方法、はげの治療、頭部外傷の治療、最古の義足、義眼などについても解説された。

 40年前、エジプト麻酔科学会に招待された教授のかばん持ちで日本に留学していた女医の自宅に泊まり、カイロからアレキサンドリアまで砂漠の中の道路を車で走ったり、ルクソールなど観光したことがあるので、懐かしく興味深く講演を聞かせてもらった。

                   920

2018/5/12 No.878
  救急専門医

  
昨日、第34回日本救急医学会中四国地方会が「EVOLUTION進化する救急」をテーマに広島県医師会館で開催された。

 救急医学会は、私が大学を卒業した昭和48年に設立された。当初麻酔学会と救急医学会の上層部が救急専門医、指導医に関してもめたことがあったが、現在は5千名近い救急専門医がいる。ところが、新しい専門医機構の基本19領域の中で救急専門医希望者が、総合診療専門医と伴に予想外に少なくて苦慮しているそうだ。

 私が麻酔専門医の立場で救命センターに勤務し、救急専門医も取得した際にも、救急専門医とは救命センターで働く専門医師か、ERで働く一次二次救急専門医師か、サブスペシャリティとの関係など救急専門医のアイデンティティについて議論したものだ。

 特別講演はフジテレビのコードブループロデユーサー増本淳氏が、今までの一般受けするスーパードクターのドラマではなく「リアル医療ドラマ」というジャンルを切り開いたドクターヘリのドラマ「コード・ブルー」を手掛けた思いとか、裏話をされ面白かった。今年の7月に、「コード・ブルー」10年の集大成として劇場版の映画がロードショウされるそうだ。

 学会での学びの後は、対阪神戦大勝したカープを観戦し、充実した週末を過ごすことが出来た。          920

   920の独り言(130):救急医療
      920の独り言(232):コード・ブルー


2018/5/4 No.877
  杞憂

 
前の東京オリンピックは、経済成長と先進国への仲間入りが出来るとの夢と希望にあふれていたが、2年後の東京オリンピックの宴の後に何が待っているか、皆薄々気づいている。

  少子高齢化が進行して人口が減り、国力の衰えは無論、尾道市は独居ばばあばかりとなり存在が危うくなる。2025年以降は、団塊世代が後期高齢者となり認知症の激増、生活保護の激増、年金の破綻、医療、介護制度の破綻など、我が国の財政は危うくなる。30年以内に東南海地震の発生確率は80%以上で、巨大な津波により四国は陸の孤島となり、日本国家の存続も危うくなる。

  などなど、漠たる不安に苛まれ、暗愁の気持ちになっていたが、先日、書道家の武田双雲の「誰もが幸せになれる双雲流思考法」 と題する講演を聞いて目からうろこが落ちた。

  最も好きな漢字は「楽」。書くことを楽しめば良い字が書ける。未来を心配しない。今を丁寧に余裕で生きる。楽しいことを探すのではなくて、まずは今を楽しんでみる。自分の捉え方次第で感情はいつでも変えることができる。楽しそうにすれば楽しくなる。美味しそうに食べれば美味しくなる、などなど。

  毎日を楽しく、心を楽にするために毎朝座禅を組んでいるが・・。

                       920


2018/4/26 No.876
  脳死下臓器摘出

  最近、脳死はニュースにもならなくなったが、先日新聞の片隅に名古屋済生会病院で40代の男性が脳死と判定され、家族の承諾により心、肺、肝、腎の摘出、移植が行われたとの記事が載っていた。

  日本人は肉体に霊魂が宿っていると思う人が多く、脳死臓器移植がすすまなかったが、平成22年脳死臓器移植法が改正され、家族の同意で臓器摘出が可能となり、毎月数例脳死臓器移植が行われるようになり、523例目となったという。

  脳死者からの臓器摘出の管理は、2回目の脳死判定の終了時を以て死亡時刻として死亡を宣告する。死亡宣告後、脳死下臓器摘出に際し、呼吸循環を管理する麻酔科医の協力が求められる。死体なので麻酔という言葉は用いない。脊髄反射で動くことがあるので筋弛緩薬を投与するが、麻酔薬は使用しない。臓器血流を維持する為に輸液、5%アルブミン、輸血などを行うので、太い末梢ライン確保が必要となる。大動脈を遮断後に循環管理は終了。肺の摘出がある場合は気管切断まで人工呼吸管理を継続する。

 今から40年近く前、スイスで脳死患者の両腎摘出術の麻酔を担当したことがあるが、臓器摘出のためとはいえ、死体への呼吸循環管理には違和感を覚える。        920


2018/4/17 No.875
 古希同窓会


  大学卒業後45年、団塊世代の現役組が古希となり同窓会が京都で開催された。昭和42年に80名(女子4名)が入学。物故者が十数名となり、39名(女子1名)が出席していた。

  昭和48年の卒業時、老人医療費が無料となる。エコーもCTもない時代で、脳卒中も脳梗塞か脳出血かの判断難しく、心筋梗塞なども安静加療が主体で、脳外科、救急医学講座もなく、大学病院や公的病院では救急患者を扱わない時代であった。

  財務省エリート官僚がセクハラで、Me Tooとかもめているが、当時外科系では体育会指導が当たり前で、パワハラは無論セクハラも許される懐かしき良き時代であった。最近、働き方改革で、医師の長時間勤務が問題になっているが、当時は新人医師が何日も病院泊まり込みは当たり前で、友人が新婚にも関わらず重症患のため家に帰れず、数日後に帰宅すると新妻が家財道具と伴に実家に帰ってしまっていたという、ウソの様な本当の出来事もあった。

  「24時間働けますか」とか「オーモーレツ」の成長時代に、医師として働きに働いて活躍し、約半世紀の期間我が国の医療を担ってきた団塊世代の同志も、国と同様に人生でも下山の時を迎え、どのような終活を迎えるかが話題の中心となっていた。   920 古希:920の独り言(812)



2018/4/17 No.874
  オペラ魔笛


ドイツで有名なベルリン・コーミッシェ・オーパーの映像を中心にした新演出オペラ「魔笛」の広島初公演を鑑賞した。

オペラはイタリア発祥であるが、ドイツに立派な歌劇場が多く造られ、ドイツ語圏が世界一のオペラ大国となり、今ではオペラ市場はドイツ語圏が独占しているそうだ。「魔笛」は天才モーツアルトが亡くなる直前の最後に完成させたオペラで、モーツアルトオペラの中で最も高い人気を誇っているという。 

 モーツアルト楽曲は人間の耳が最も好感に感じとる高周波を多く含み、規則性と不規則性を一つのリズムとして整合し、そよ風や川のせせらぎなど自然界の「ゆらぎ」と同じ1/fのゆらぎが感じられ、癒し効果がある楽曲となっている。副交感神経が活性化され、心拍安定、体温上昇、便秘、冷え症、不眠などの改善のみならず、高血圧、糖尿病などストレス社会の生活習慣病の改善や免疫力の向上、慢性痛の改善、発達障害治療、認知症にも効果がありモーツアルト音楽療法として心身の病気予防・治療に世界中で応用されている。

 中世のヨーロッパ貴族が心身の癒しに聴いたモーツアルトオペラで、現代の私のストレスも癒されて、心地よい睡魔に誘われ極上の眠りを体験させてもらった。          920


2018/4/6 No.873
 孤独伝染病

  今、世界で最も恐れられている伝染病は「孤独伝染病」だそうだ。中高年の男性にとって最大の脅威はタバコや肥満や生活習慣病ではなく「孤独」で、心身の健康リスク、社会的問題となっている。英国はメイ首相が「孤独担当大臣」を新設し対策に乗り出すという。

 日本は無縁社会がすすみ、私達団塊世代が後期高齢者となる頃、男女とも独居率が20%を超え、未婚、離婚による一人暮らしは激増し、日本は世界に冠たる「孤独大国」になるといわれている。孤独を恐れるあまり携帯を離せない若者、大学食堂のボッチ席、繁盛するパチンコ屋、独身派遣社員、中高年うつ、孤独死、東京砂漠など、孤独大国日本はどうしたら良いであろうか。

 孤独が注目される中、我が国では最近「孤独のすすめ」とか「孤独の力」とか「おひとり様」とか、孤独を肯定的に捉える本が溢れている。孤立と孤独は異なる。孤独に生きるのではなく、孤独を生きる、孤独になっても孤立しない様になどと書かれているが・。

 孤独は山にではなく街にある。孤独を恐れる人は群れたがる。プロ野球が始まりカープは絶好調。赤いユニホームを着たファンが真っ赤に染まった球場で異様にそろって応援するのは、連帯感の中で「ひと時の孤独の癒し」を求めているのであろうか。 920               
  横綱は孤独であれ:920の独り言(815)

2017/1/27 No.815
  横綱は孤独であれ

 孤立とは個人と社会との断絶のことで、付き合いがなく困った時に助けてくれる人がいない状態のこと。最近、地縁がなく親戚家族もいない孤立した独居高齢患者を診る機会が多くなった。
 
 無縁社会における孤立死は多くが男性で、高齢男性の孤立についての研究は多いが、若者男子の「ぼっち、孤立」に関しての調査研究は少なく、今後大きな問題になるそうだ。
 
 男性は弱みを見せてはいけない、我慢しなければならないなどの男らしさが友人に相談できない孤立に陥り易い人間にしてしまう。一方、女性は悩みや心配事を聞いて助けるという女性らしさが友人などからサポートを受けやすく孤立しにくい。今後我が正規雇用などで生涯未婚男性が多くなり、家族や会社に頼ることが出来ないうえに、友人にも相談できず、ただでさえ孤立傾向の強い日本男子は、孤立の危機に瀕するという。
 
千秋楽に阿吽の呼吸で白鳳を破った稀勢の里が横綱に昇進した。「横綱は孤独であれ」との亡き師匠の言葉を胸に精進するという。自らを孤独な状態に身をおいてこそ、自己への精進が可能となり他者への理解力も深まり、強くて立派な横綱になれるという。
                         920
 とまどう男たち:伊藤公雄、山中浩司。大阪大学出版会


2018/3/30 No.872
  春愁(しゅんしゅう)

 第8期福山文化大学の最初は五木寛之氏が、「時代の風に吹かれて」のテーマで、人生百年時代の老いの過ごし方を講演された。

 “春愁や 老医に患者のなき日あり”

 大病院の院長を務め、定年退職後自宅に診療所を開き、高名な先生を慕って多くの患者が溢れていたが、年月が過ぎ歳を取り患者が減り、朝から白衣を着て診察室に居るが患者が来なくて、春の日差しが差し込んでくる春爛漫の中で感じた「穏やかな愁い」を詠った高齢医師の句から話が始まった。

 アンチエイジングなどと加齢が悪い事の様だが、老いは悪い事ではない。老いを諦める、「あきらめる」とは自分の老いを受け入れ「明らかに究める」こと。嫌老社会から賢老社会へ。

 人生には青春、朱夏、白秋、玄冬の四季がある。青春から朱夏が登山の時期で、白秋から玄冬が下山の時期になる。人生の下山の時だからこそ見える景色があり、人間の成熟が得られる。玄冬期なのに青春のように前を向く積極的な生き方はしない。前には死の問題が待つだけなので後ろを振り返り穏やかに昔を回想し、孤独を味わうことを勧められた。回想法はボケ防止にもなるので。              
 病院の前の桜が満開。古希となった私も春愁を味わうとしよう。   920

孤独のすすめ:人生後半の生き方:五木寛之。中央新書ラクレ


2018/3/23 No.871
 未踏科学研究

 
京都大学附置研究所が研究成果を社会に還元することを目的に毎年各地で講演会を開いている。今回が13回目で「地球社会の調和ある共存に向けて」をテーマに岡山で開催された。

 「巨大惑星に吹く風」、「チンパンジーの研究から人を知る」、「ナノサイエンスで拓く新しい光科学とエネルギー応用」「聞いて考えて話す・コンピュータ」「マクロ経済学と日本経済」「がんに対する放射線治療の現状と課題」「孔(あな)をエネルギー・環境・医療に役立てる」など様々な分野の最先端の研究成果をノーベル賞級のトップクラスの研究者が分り易く解説された。

 パネルディスカッションでは未来創生学、ヒトと自然の連鎖生命科学、グローバル生存基盤展開、学知創生それぞれのユニット長と山極京大総長が、文系理系の枠を超えた新しい学術分野を創造する「未踏科学研究」における挑戦の意味、失敗の意味を話された。

 日本で最も優秀な頭脳集団と言われるが、過去の政策の失敗を認めない霞が関の官僚とお粗末な政治家の最近のていたらくな話は、日本人として情けない限りだ。一方、様々な分野の秀才と呼ばれる頭脳集団で、試行錯誤の挑戦と失敗から新しい発見をする今回の研究者の話は、知的好奇心に溢れ同じ日本人として誇りを感じさせてもらった。                   920

明るい社会の未来像:920の独り言(577)



2018/3/16 No870
 パラリンピック

 
パラリンピックは、私が生まれた1948年に第二次世界大戦で脊髄損傷した兵士のリハビリの一環として英国の病院内で開かれたアーチェリー競技が始まりとされている。

 オリンピックは、今では商業的にもメダルが最重要視され、3位と4位では天国と地獄程の違いになっている。が、パラリンピックは人生において重要なことは成功することではなく、努力すること。勝つことではなくて、参加することに意義を見出してほしいと思う。

 ALSに罹患し人工呼吸で入院中の高齢女医の患者さんが、介助されながら書かれている日誌のスケッチブックを毎回読ませてもらっている。徐々に力が入らなくなり書くのが難しく、辛いとは思うが、医師の息子さんに対して「ありがとう、頑張るからね」の文字が乱れながらも必ず書かれているので、いつも感心させられている。

パラリンピック選手の小中高生向けの出張講義申し込みが常に満杯だそうだ。五体満足でも日本の四季を味わうことをせず、不平不満ばかりを言う人の何と多いことか。パラリンピック選手は、手脚がなくても、出来ないことではなくて出来ることに目を向け、努力することが自己肯定につながり、頑張って生きていくことの大切さを教えてくれるという。          920


2018/3/9 No.869
  情動の涙

 ピョンチャンオリンピックでは多くの感動の涙を見せてもらった。その後建て続けに情動の涙を見る会があった。

 10数年前の看護学生の卒業謝恩会で卒業生が登壇し、仰げば尊しの歌を涙ながらに歌ったのに感動した思い出がある。最近は新しい歌を笑顔で歌うので、それはそれで良いのだが、感動が薄れていた。が、今年は最後のお礼の挨拶で、卒業生代表が働きながら学んだ大変さ、つらさを感涙にむせびながら話し始めた。最初は、がんばれなどの声が出ていたが、最後には皆静まり返り、私ももらい泣きし、一気に会が引き締まり素晴らしものになった。

 先日は病院の看護師が職場結婚し結婚式があった。100人足らずの職場で、この10年間で8組もの職場カップルが誕生していて、皆幸せに働いている。病院にフェロモンでも出ているのであろうか。結婚式では、最後に花嫁が涙ながらに両親に向かってお礼の言葉を述べるのが感動的で良い。涙が多ければ多いほど会が引き締まる。

 感情で涙を流すのは人間だけ。私は高校球児の負けた時の悔し涙を見るのが好きだが、情動の涙も良い。歳を取り自から情動の涙を流すことは無くなった。今では、緩んだ涙腺でのもらい涙か花粉症での涙が出て困る。               920 
            
  涙:人はなぜ泣くのか:920の独り言(190)
 仰げば尊し:920の独り言(267) 
  甲子園で泣くような選手は:920の独り言(595)


2018/3/2 No868
  小規模農業


 今年は日照不足、寒冷化で白菜、キャベツ、レタスなどの葉物野菜が不作で、値段の高騰が続き主婦が困ったり、中国からの輸入量が過去最高になったという。

 葉物野菜は都市近郊にて高齢の兼業農家が手間暇かけて作っているので、自然環境に左右される。そこで、企業が効率的に多量生産すべく野菜工場を作るのが流行ったが、多くが撤退しているそうだ。そもそも農業に効率化、企業化、工場化などはなじまない。環境的にも蛙、アメンボウ、ゲンゴロウなどの生物多様性を保っているそれぞれの地域の伝統的な小規模農業が大切といわれている。

  地球規模での温暖化と90億人に達する人口増加に対する食糧確保には、肥料、農薬を莫大に使い収穫量を最大限に増大させ環境を破壊する大規模農業ビジネスではなく、昔ながらの限られた水を有効利用し持続可能な方法で行う地域での小規模農業こそ温暖化に対応しながらの食糧安全保障に適していることが指摘されている。

 我が家では私が庭の小さな畑で無農薬で作ったキャベツ、白菜、大根などが立派になり、なべなどにして美味しく食べて世界の環境と食糧安全保障に貢献している。今日、患者のおばあさんからジャガイモの種芋をもらったので植えようと思う。    920



2018/2/23 No.867
  ピョンチャンオリンピック


 平昌冬季オリンピックの熱戦が繰り広げられている時、第47回日本慢性疼痛学会が大阪で開催され、学会会長の森本昌宏先生が私の後輩ということで参加してきた。

 慢性疼痛患者は多く、医療連携が薦められていて、神経ブロック、インターベンショナル治療、オピオイドを含めた薬物療法、運動療法、鍼治療、マインドフルネスなどの治療連携が話し合われていた。

 マインドフルネスとは、「今この瞬間の体験に、価値判断することなく、意図的に気づいている」心の状態をいう。“今”へ集中する坐禅を応用したようなマインドフルネス瞑想を通して、身体的、心理的ストレスの耐性が向上して難治性慢性疼痛が改善するという。運動による多幸感、不安軽減、気分高揚、ストレス軽減、疼痛緩和が引き起こされるランナーズハイを応用した運動による疼痛緩和(exercise-induced hypoalgesia)が慢性疼痛治療の主体になるべく、その基礎的臨床的研究が発表されていた。

 右足を痛めていた羽生結弦選手が金メダルを獲得できたのは、マインドフルネスによる集中力に加えて、運動による鎮痛で痛みを感じることなく演技ができたからであろう。

 私は坐禅と真向法体操で自分の腰痛をコントロールしている。

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2018/2/9 No.865
 三匹のサル
 

 日光東照宮の三匹のサルが両手でそれぞれの目、耳、口を隠している像は世界的にもThree wise monkeysとして知られている。

 子供の時には悪いことを見たり、聞いたり、言ったりしないで、素直に育つことが大切。大人になると、余計なものを見たり、聞いたり言ったりしてはいけないという戒め。

 一方、尾道の御袖天満宮の横にある大山寺には「21世紀の新三猿象」の石像がある。「見ざる、聞かざる、言わざる」とは逆の「見てご猿、聞いてご猿、言うてご猿」で、「世の中の正しいことを良く見よう、良く聞こう、良く言おう」ということ。

 ヘレンケラーは視覚、聴覚、発語の障害があり、一つだけ治すことが出来るとしたら、何も聞こえないのは孤独なので、聴覚を得たいと言ったそうだ。

 テレビのワイドショー、フェイクニュースなど溢れる情報により日本人は自分で物事が考えられない、国民総白痴化、国民総解説者になった。さらに最近のIT社会では、ケータイにより情報を瞬時に見聞き、発信できるようになり、若者は目と目を合わせて対話が出来ない“サル”になってしまったようだ。 
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920の独り言(720):サル化する人間社会


2018/2/2 No.864
  「流しの公務員」市民病院を立て直す


 福山医療センターから毎月立派なたよりが送られてくる。その中で、「流しの公務員、市民病院を立て直す」講演記事が面白かった。

 常滑市民病院は、毎年7億円を超える赤字を垂れ流し多額の累積債務を抱えていた。市は財政再生団体一歩手前で、病床利用率は下がる一方だがスタッフに危機感なく、県医療界は潰しモードに入り、市民からも見放されかけていた。病院を残したい市長に乞われて、流しの公務員山田朝夫氏は病院の存続を話し合う「100人会議」という話し合いの場を企画。

  市民と病院職員と行政が対等な立場で本音をぶっつけあい「市民病院のあり方」の白熱した議論を引き出すうちに思ってもいない変化が起きた。当初市民病院に激しい批判ばかりを言っていた市民代表が医師の激務を知り、「私達が病院をささえていこう」という雰囲気に変わった。

  市役所の一般職員は自らの給料をカットして病院の累積債務を解消する財源をねん出。病院職員は、市民の気持ちの変化や一般職員の犠牲に答えて奮起し、奇跡的な経営改善が実現。めでたく立派な新病院を再建した話。  

 情報を分析し、関係者を巻き込んで、その潜在力を引出しなが問題を解決してゆく。一人の人間が多くの人々をその気にさせ、すべての逆風を順風に変えることが出来たという荒野のガンマンの様な感動物語。               920



2018/1/26 No.863
  インフルエンザ


 今年もインフルエンザが過去最多と猛威をふるっている。毎年のことながら病院でインフルエンザが流行し、高齢末期患者が亡くなったと、フェイクニュースではないが不安を煽る報道がされている。

先週の休日当番医では90人近い患者が来院、半数の約40人がインフルエンザ患者で、カロナールとタミフルを処方した。先日は夜間救急診療所の当番で、高校生が発熱で来院した。臨床的にはインフルエンザであったが、元気な子なのでタミフルは処方せずに、
水分を十分とってゆっくり休み、気合で治すよう指導した。

 世界保健機構がタミフルは元気な大人で症状のある期間を1日短縮するだけで、入院、合併症を減らす効果はなく、最低限必要な必須医薬品から補足的な薬に格下げしたという。

 世界のタミフルの多くを処方してきた我が国は、新型インフルエンザ流行に備え1千億円以上をかけてタミフルの備蓄を行っている。消費期限切れのタミフルの廃棄が毎年300億円。もったいないので、厚生官僚はこっそりと消費期限を3年から7年そして10年と伸ばしてはいるが、何とかならないものか。

多くのインフルエンザ患者をマスクもせずに診たが、私は検査をしないので、坐禅と気合でインフルエンザには罹らない。

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2018/1/19 No.862
  神は、魂は、あるか?

  
今年の初詣は、ご来光を拝んだ後に高須神社、午後からは御調八幡宮に参拝、2日は福山八幡宮、艮神社とお参りをしてきた。どこの神社もたくさんの参拝者が真剣にお参りをしていた。お正月の恒例行事とはいえ、日本人は元来信心深い人種で、多くの人が自分は無神教と答えるが、偉大なる力“神”の存在を思いたいのであろう。

 危篤状態のおばあさんの病室に小学校高学年の孫たちが見舞に来ていたので、“魂”の話をしてあげた。

「人間が死ぬこととはどういうことであろうか。人間の“心”はどこにあると思うか。心臓か?脳か?腹か?人間が死ぬと肉体は無くなり、心臓も脳も腹も無くなるので、心は消え去る事になる。人間は肉体と魂から成り立っている。君たちが今ここに生きているのは、おばあさんがいたからお父さんがいて、そして君たちが居る。おばあさんが亡くなり肉体や心は無くなっても、肉体を超えた何かが君たちに引き継がれている。それが“魂”だ。君たちの命は自分だけのものではない。肉体は無くなっても魂は残る“命”を大切にして毎日を生きていくように」と。

 おばあさんの死をまえに、両親も子供たちも真剣に聞いてうなずいてくれた。       920

渡部昇一:魂は、あるか?「死ぬこと」についての考察。

扶桑社新書。


2018/1/16 No.861
  成人式

  
今年も各地で成人式が行われ、一生に一度の晴れ舞台ということで北九州市ではド派手な衣装が有名となり、東京では貸衣装会社の詐欺により着物が着れないと話題になっていた。50年前私は学生服で成人式に出席したことを思い出した。

  成人式の後二十歳の記念に日本を知る為として日本一周自転車の旅を計画。夏休みを利用して西日本を自転車で旅した。アルバイトで得た金で自転車を購入し、寝袋などを積んで大阪を出発して四国、九州、五島列島、中国地方を回り福山までの約3千キロを野宿、民家、民宿、ユースホステルなどに泊まり、36日間かけて走破した。途中九州で岡山大学理学部1年生の青年と出会い約1週間、霧島、都井岬、鹿児島、佐多岬など、小さな田舎の小学校の講堂に泊めてもらいながら一緒にでこぼこ道を走破したことを思いだした。

  その後毎年彼から年賀状が届いているが、近況が書いてなくて、何をしているのか知らないまま、50年間年賀状のやり取りが続いている。古いアルバムをみると、若かりし頃の二人の写真がある。あれから50年、今年初めて彼が岡山理科大学の環境地球研究室の教授をされているのを知った。      

 今年成人となった若者は50年後どうしているだろうか。

                          920



2018/1/5 No.860
 年賀状

 年末には喪中につき新年のご挨拶をご遠慮申し上げますとの葉書が多くなった。また寄る年波を感じ勝手ながら本年をもちまして、年始のごあいさつをひかえさせていただくとの賀状も増えた。

最近ではメールなどで新年の挨拶を済ませる若者が多くなって、お年玉付き年賀はがきの発行枚数は年ごとに減っているそうだが、今年も多くの年賀状が届いた。

 今年の元旦も、ご来光を拝み、高須神社に初もうでに行き、昨年皆で造った豪華な門松を見、病院で働いている職員にお年玉を渡し、お雑煮とお節を食べながら年賀状を楽しく見ることが出来た。

 年賀状も手書き、毛筆の賀状は少なくなり、パソコンによる作成で美しい戌年の賀状ではあるが、味気なく面白みがない。家族の近況を知らせる写真、旅行先の写真、飼っているいる愛犬の写真も良いが、印刷された賀状にも、手書きで「ぼちぼちやってます」とか「冠動脈CT検査を受けた」とか「手術を受けた」とか「少し呆けてきた」と、ゆがんだ一文が自筆で添えて書いてあると、特に長い間会っていない人では元気な過去が思い出され、懐かしさがわいてきて、いとおかし。             920