●用意シュ〜ト〜・サッカー3
「守備総論」
今回は守備について考える。
ここでの守備はディフェンダーを指すのではなく
広義の守備、つまり自分たちチームが
ボールを保持していないことを想定している。
サッカーにおいて守備とは
どういう理論で成り立っているのか。
大原則から考える。
サッカーで勝利を得るためには、
自己のチームが、失点よりも多くの得点をすることである。
そして、失点を防ぐためにはどうしたらよいか。
それには、まず、得点を容易に取れる状況を
極端に考えることが有益であろう。
そこで考えると、
得点を取るための必要かつ十分条件としては、
@より相手ゴールに近い位置へ行き(ゴールライン)
A可能な限りゴールの枠内へ行き(ゴール中央)
B可能な限り静止した状態で
C可能な限り静止したボールを
Dシュートすること
といえる。
つまり、シュートを打ち、ボールが
ゴールへと運ばれる空間がある
という広義のスペースがあることである。
このことから、守備は以下の2種類の対策を
持つことが考えられる。
1つ目は、@〜Dをさせないことであろう。
つまり、
@可能な限りゴールに近い位置へ行かせないこと
A可能な限りゴールの枠内へ行かせないこと
B可能な限り静止させない状態にすること
C可能な限り静止したボールを持たせないこと
Dシュートをさせないこと
これが原則となろう。
2つ目は、@〜Cをあえてさせて
罠をはるということも考えられる。
つまり、
@ゴールに近い位置へ来させる
Aゴールの枠内へ来させる
B静止させた状態にさせる
C静止したボールを持たせる
といった状況下を作ってボールを
奪うということである。
(Dシュートを打たせるということは、
極論からは@〜Cとは整合しない。)
これは特殊的例外的といえる。
両者には、それぞれのメリット、デメリットがある。
まず前者は、
相手にスペースを与えないということである。
これを逆にいえば自分の後ろにスペースを与えることになる。
つまり後ろを取られ抜かれてしまえば相当の不利益をこうむる。
また、体力があれば容易であるが、
疲労が生じやすい。
一方後者は
自分の後ろのスペースは使われないが、
相手にスペースを与えることになる。
また、体力はあまり使わないが、
常に予測をして動かなければならず
予測がはずれた場合の不利益は大きい。
したがって、両者のそれぞれの短所を消し
長所を生かすことが重要である。
今日のサッカーでは
この両者を調和させるために
2種類の方法がとられているといえる。
まずは、マンツーマン・システムである。
これは、一人が相手にチャージし
もう一人がそのケアに当たるということである。
前者がいわゆるストッパーにあたり、
後者がいわゆるスイーパーにあたる。
この場合は、相手とボールを奪い合う場合
原則としてストッパーが競い、
もうスイーパーがカバーをする。
ただ例外として2人ともに競う場合もある。
次に、ゾーン・システムである。
これは、一人一人個々の選手が
前者と後者、ストッパーとスイーパーの仕事を
行うのである。
自分のゾーンに来たものがストッパーの役目をこなし
それ以外のものがスイーパーの役目をこなすのである。
この場合は、相手とボールを奪い合うとき
原則として自己のゾーンの者が競い
隣のゾーンの者がカバーをすることになる。
ただ例外として2人ともに競う場合もある。
歴史的には、4バックで
マンツーマン・システムが行われていた。
これは、相手3トップをサイドバックとストッパーと3人がマークし、
残りの一人がスイーパーを行ったのである。
しかし、攻撃が2トップに変容していったことにともない
以下のように変容していった。
まず、マンツーマン・システムを維持して機能化したのが
3バックである。
また、これを修正してゾーン・システムを機能化したのが
4バックである。
さらに、今日では、これらが発展して
3バックでもストッパーはゾーン・システムであったり
いわゆるフラット3(3人のゾーン・システム)であったり
するものが登場している。
しかし、これらいずれのフォーメーションも
基本として、ストッパーの職務と
スイーパーの職務の結合にすぎないのである。
以上から言えば、
サッカーにおける守備は、
まず先述のストッパーとスイーパーの
性質の区別を意識した上で、
この両者の対立利益の中で
監督の理論、選手の能力、試合の状況
マッチアップの相手選手などに応じて
どのように調和させるかを考えなくてはならない。
そしてそれこそが守備の醍醐味である。