「暑苦しいのよ熱いのよ イン・ワンボックスカー」

―――あかじそファミリー海に行く―――


<2日目・イルカ飛ぶ飛ぶ、シャチも飛ぶ>




 鴨川シーワールドに到着した。
途中、車の中で、次男と三男が、細かい小突きあいを
5、60回した。
 昨日の朝から累計すると、200回はユウに超えている。
口が達者で、しつこい三男と、すぐ手が出る口下手の次男。
 普段から、寄ると触ると取っ組み合いなのだ。
 母親の私がキレる原因の大半は、
彼らの不毛な戦いにある。
側にいると、必ず喧嘩になるくせに、いっつも側にいる。
 「どっちかヨソにやっちゃうぞ!」
と脅すと、兄弟全員で泣いて謝り、
 「少し、離れてろ!」
と、怒鳴ると、二人で抱き合って「いや!」と言う。

 狭くて暑苦しい、荷物だらけのワンボックスカーの中で、
四六時中の小突きあい。
 そして、運転席と、助手席では、老夫婦が、旅行中ずっと、
どうでもいいような、くっだらない事で、もめている。

 そして、終始、車酔いしている長男。
終始、絶叫しながら、チャイルドシートからの脱出を試みている四男。

 私は、意識が時々飛んだ。

(心穏やかな日々、って、いつかはくるのかしらん?)

 太平洋がキラキラキラキラと、
乱視の私の目に太陽光線を振りかけた。
 太いため息をつくと、車は、荒っぽく、とある駐車場へとなだれこんでいった。

<鴨川シーワールド>

 朝9時半。
入口の人々は、みな、無言で、ダッシュしていた。
じじじそ・ばばじそも、
「9時半だ! 走れ!」
と、般若の形相で、子供達に叫んだ。
 
 「イルカショーが始まっちゃうんだよぅ!!」

 アカンボを抱いて、三男の手を引いていた私を、思いっきり見捨てて、
じじばば長男次男は、振り向きもせずにイルカのプールへと行ってしまった。
 急いで後を追ったが、完全に客席で彼らを見失い、呆然としていると、
三男が、
「あそこにいた!」
と、私の手を振りほどいて駆け出し、
私は、再び、アカンボを小脇に抱いて走った。
 
 走っている最中に、イルカが飛んで飛んで、飛びまくっていた。
やっと、彼らと合流したと思ったら、じじばばが、
ツッ、と席を立った。

 「10時から、シャチのショーが始まるんだよっ!」

 まだ、イルカが飛んでるってのに、失礼じゃないか!
・・・・・・てんで聞いていない。
というか、もう、いない。

 「ちょっと待ってよぅ!」

 もっと見る、とバタバタする四男を抱えて、客席の前をしゃがんで、走る。
遥か前を見ると、じじじそ、ばばじそが、まるで、
徒競走のような、本気の走りをしている。
 その、腕の振り、本気すぎる!
 その、腿の引き上げ方、地面の蹴り、世界陸上か!

 シャチは、デカかった。
怖いくらいドデカいものが、物凄く深くて狭いプールで、
ドッパンドッパン、飛んでいた。

 と、いい加減、じっとしていられなくなっていた四男が、
ショーのいいところで、大声で泣き喚く。

「乳吸わせろ! 今すぐ吸わせろ! さもなくば、騒いでやる!」

と、いう主旨の喚き声をあげている。

 私は、仕方なく、目立たぬ様に、Tシャツの裾をそっとめくり、
片乳をアカンボにくわえさせた。
アカンボは、くわえるだけにとどまらず、
片手でシャツをぐわっ、とたくし上げ、
もう片方の手で、空いている乳首をクリクリといじりだした。
 
 もう、近辺の人たちにとっては、
<シャチ&乳>のショーである。
 てえい! もう、どうにでもなれい!
私は、シャチの迫力のジャンプに、乳丸出しで歓声を上げた。

 飛べ飛べ飛べ〜っ!
なんもかんも、どっかへ、とんでっちまえ〜っ!

 その後、
お土産物屋の商品をいじくりまくるアカンボをひたすら追いかけて3時間、
各種水族館を、意識モウロウのまま回った。

 「さ! 次は、あおじそンち、行くぞ!」

 次の奇襲先は、あかじそ・弟、あおじそ宅である。

 どうなるの?
どうにでもなれ!

 旅行2日目、まだ昼過ぎである。

               (つづく)


4杯一気飲みですか( ̄ー ̄)ニヤリ それともクピクピッと小分け飲み?
次いってみよ〜

♪2日目・チャペルでBBQ