「しどいわっ・母編」

私が6歳頃の事である。
母と二人で、混んだ電車に乗っていたとき、私たちが座席の前に立つと、
その前に、明らかにチンピラ風の男が座っていた。
その男は、私をいやらしい目でじろじろ見た後、
「ここに座れっ!」
と、自分の横の10センチほどの隙間に、私を無理矢理座らせた。
私は、慌てて母の顔を見上げると、母は、目で、
(座っとけ!)
と、言った。
私が、カチカチになって座っていると、男は、人目もはばからず、
私のオシリをこねくりまわし、耳元をチュッチュし始めた。
私は、パッと立ち上がり、母を見ると・・・・・・いない!!
母が消えていた。
「おいっ、こらっ! 座れよ、おらぁっ!!」
腕を引っ張られて、私は再び、公衆の面前で、辱めを受け続けた。

「ママッ!」

私は、車両のずっと向こうの方に母の姿を発見し、駆けて行き、
母の腰に抱きついた。

すると、母は、ぎょっとして私を振り払い、
「あっち、座ってなさいっ!」
と、私を押し返した。

しどいわ・・・・・・。

幼い私には、拭っても拭いきれない不信感が芽生えつつあった・・・・・・。

( 【しどいわっ・父編】 につづく )