私、本当は死にたくはなかった。恐かったからじゃないの。
もっともっときみとお話をしたかった。戦いが終わってからゆっくりお話がしたかったの。
私、きみの事がもっともっと知りたかった。きみにも私の事もっともっと知って欲しかった。
召還士は恋をしてはならない・・・必ず悲しい別れが待っているのだから・・・だからいつも心を強くしていなくてはならないと思ってた。
召還士としての定めを全うする事だけを考えなくてはならない。私はそうしてきたつもりだった。
でも、本当は私の心は揺れ動いていた。
私を見守ってくれているガードの人達の心の葛藤、そして純粋にシンを倒そうというきみの想い。
誰も私の犠牲を望んでいない事が分かっていたから。
そして私自身、別れを望んでいなかったから...。
私、本当はそんなに強くないよ。
それでも、私が出来るのなら、みんなの為に私が出来る事があるなら、その為に戦おうと決めていた。
みんながいてくれたから私は引かれた道を歩いていけたんだよ。
でも、本当に強かったのは・・・きみだったね。
きみは運命をすんなりと受け容れた。
それがどんな結果になるのかを知りながら、それでもきみは笑って拳を握りしめた。
本当なら自分の運命を呪っても良かったのに。きみが逃げ出したって誰もきみを責めたり出来ないもの。
なのに、きみは私に『戦おう』って言ってくれた。
どうしてそんなに強いの? どうしてそんなに強くなれるの?
私の覚悟? ・・・私の覚悟はそんなに強いものじゃない。
生まれてから運命づけられた事をただ実行に移すだけ。長い時間を掛けて自分に納得させた事を実戦するだけなのよ。
きみは本当のガード・・・私の生命を一番に考えていてくれた・・・。
でも、きみは間違っているよ。
私の心の空白はいつまでも埋まらないよ。
きみが夢だったなんて、納得出来る筈が無いじゃない!
だからいつだって私はきみが帰ってくるのを待っている。
帰って・・・帰って来るよね・・・
ルールーはそんな私の事を気に病んでいるみたい。いつまでも手の届かない存在に想いを寄せているって。
ルールーの心配は分かるの。だって彼女は誰よりもその悲しさを知っているのだもの。
そうなのかもしれない。
『ひとつだけお願いがあります。
いなくなってしまった人達の事・・・時々でいいから想い出してください』
私、きみの事、そういう風に考えてしまっていたのかもしれないの。
・・・ううん、そうじゃない。私にとってきみは夢なんかじゃない。いなくなってしまった人でもないもの。
きみの温もり、きみの唇、きみの腕、みんな本当の感覚。
きみは確かに私達と一緒にいたんだもの。
もし夢だったとしても・・・みんなの想いがきみを呼び戻してくれると思うの。
だってルールーもワッカもキマリも、そして私もきみに逢いたいと願っているんだもの。
きっときみは帰ってくるよね。
草笛は吹き続けるよ。
きっときみは何処かの世界で迷子になっている筈なんだもの。
だから草笛を吹き続けていれば・・・きみはちゃんと此処に帰ってこれるんだもの。
ティーダ・・・きみにもっともっと話したい事があるの。
きみに逢いたいの。
だから・・・草笛の音を聞き逃さないでね。私はいつまでも吹き続けると決めたから。
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【あとがき】
FF10のラストは何処か寂し気でしたね。ティーダは復活したような印象もあるんですけど、いろいろ解釈がありそうですね。
ユウナの草笛がとても印象的で、この小説はそんなユウナの想いを書いてみました。
僕は絶対二人が再会出来たと信じたいですね。新たな物語の始まりとして...。