気仙沼市の北端、岩手県との県境一帯は言わずと知れた化石の宝庫である。その研究史は
明治18年の神保小虎博士にまでさかのぼり、博士は「化石を夥しく産し、山全体が化石といえるほどだ。」
と記している。
上八瀬一帯は国有林内にあり、化石自体も保護されているため許可なしに立ち入ることは出来ないが、
それ故盗掘も跡を絶たなかった。トン単位で盗掘された事例もあり、立ち入りが制限されるのは残念だが
やむを得ないことと思う。
【三葉虫】
日本最初の三葉虫産出の報告は神保博士(1891年)によって宮城県登米郡東和町米谷と桃生郡
雄勝町からもたらされたPhillipsia の尾部だった。これは今日のPseudophillipsia と思われていたが、
神保博士の残したスケッチによれば、むしろ Neoproetus に似た形状を呈しているようである。
Pseudophillipsia は、その後北上山地の数地点で発見されたが種まで特定されたのは
神保博士報告から実に70年を経た1961年のこと。荒木英夫氏によって
上八瀬茂路入から発見された完全体によるものだった。
以後、上八瀬からは多くの三葉虫が見出された。そのほとんどは叶倉層からの
Pseudophillipsia spatulifera だが、近年 叶倉層下部などからも荒木氏と
地元有志によって新たに数種の三葉虫が発見されている。
【化石】
上八瀬は蛇体石と呼ばれる床板珊瑚が産出することでも知られているが、特筆すべき物として
日本に於いて80年ぶりの第2標本となったHelicoprion属の発見がある。
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