薔薇の殺人 感想リストへ 
本の紹介リストへ 
浅見光彦の遠縁の大学生・緒方聡が女子高生誘拐の嫌疑をかけられた。何でも一目惚れして、のこのこと家まで後をつけていたらしい。あきれる浅見ではあったが、聡の濡れ衣を晴らそうと、行方不明になった浜田文絵の家を訪れる。そこに届けられていた一通の脅迫状。文面には文絵の出生の秘密をばらすといった内容が…。文絵は人気俳優・三神洋と「宝塚」出身の女優・鳥越美春との十七年前の秘めやかな愛の結晶だったのだ。数日後、文絵が遺体で発見された。浅見は悲劇の真相を追って、乙女の都「宝塚」へと向かう。

角川文庫(本のカバーから引用)

薔薇の殺人
 宝塚のことは、まったく分かりません。と言うより興味がないんですね。

 ただ、この作品を読むに当たって、そのような知識がなくとも一向にかまわないようです。先生は、この作品のおかげで鳳蘭さんから電話があったというようなことをどこかで書いていましたね。

それで作品を読みながら探していたのですが、ほんとに名前だけの出演でした。(^.^)先生が うらやましい限りです。

 事件との関わりは、親戚の聡が訪ねて来るところから始まります。誰でも一度や二度経験する甘酸っぱくほろ苦い恋というのでしょうか。

でも、よそ様の家に無断で立ち入ってはいけませんね。しかも、相手の娘が失踪し、容疑者にされるなんてことは、やはり小説の世界だけでしょうか。(^.^)

 この本の中での光彦は、意外な一面を見せます。それは、新聞の記事の中から「娘」という文字を探し出すことです。15日かけて17年前までの新聞に目を通すというのは、正直並みの根気ではありません。しかも、その記事を手掛かりに真相に迫るのです。

いつもは、閃きにより事件を解決するのですから、このような地道な作業は新鮮な驚きでした。

 それにしても、悲惨な結末です。言葉もありません。

 殺人事件を書いているのだから、事件も結末も悲惨なのはやむを得ないということもありますが、こんなに重いテーマがあることに気づいたのは、やはり再読のおかげですね。

1998.10.21