八幡神社への巡歴に秘められた謎。浅見光彦が愛と悲しみの軌跡をたどる。 平穏な日々との決別。残されたわずかな時間。非業の死を遂げた老人は、旅路の果てに何を希求したのか。50年の歳月を経ていま示される。この国のありかた。ひたむきに生きた人々の姿が、心に深く刻まれていく−−−。 「旅と歴史」編集部の依頼で、フリーカメラマン・小内美由紀は、長野県中野市を訪れる。彼女は取材途中、各地の八幡神社を巡礼する老人と出会った。美由紀は老人の話に興味を惹かれるが、その後、彼のしたいが秋田県の竹島潟で発見された。姪が被害者の息子の教え子であったことから、浅見光彦はこの文部官僚の足跡をたどっていくが....。 筆者が壮大な想いをこめて紡ぎ上げた大河巨編(上巻) 浅見光彦と若者たちに託された戦後半世紀の誓いとは? 八幡神社巡りの謎を追って、浅見光彦は秋田、広島、兵庫、そして熊本へと向かう。そのなかで浮かび上がる戦争の傷痕と老人の閉ざされた半世紀。一方、高知県庁生涯学習課に赴任した美由紀の婚約者・松浦勇樹の周囲にも不可解な事件が連続して発生する。真相はますます混迷をきわめ、浅見光彦はさらなる悲劇の渦中へ−−−。 やさしさと尊さを全編にちりばめた感動の大河巨編(下巻) 角川書店HC (本のカバーから引用) |
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この本のテーマは戦争と日本人、戦後教育に対する疑問。そしてサッカーくじ法案に対する激しい怒りです。これは「藍色回廊殺人事件」で吉野川の第十堰を可動堰にすることに対する怒りを彷彿とさせます。 内田康夫は「藍色回廊殺人事件」以来、作風を変えてきているように思えます。いままでは、どちらかというと読者に考えさせるという面をもっていたように思えるのです。どういうことかというと、読み終えた後、なんとなく尾を引くような感じがありませんでしたか? でも、ここに来てはっきり、社会の理不尽に対する激しい怒りを前面に押し出し、主張するようになったと感じます。 この本は女性の間から、作品に入っていけないという声が聞かれます。テーマが重すぎるのでしょうか? 奥様に突撃インタビュー!! ところで、この本がいままでと違うという印象をもった点がまだあります。 ひとつは、前半の早い時期に犯人も動機も分かっていこと。 ひとつは、光彦がいままでのように坊ちゃんらしくなく、強い意志により事件に介入していくこと。 みなさんはどのように感じたでしょうか? 1999.5.3記 |