良寛と一茶を卒論に選んだ田尻風見子と野村良樹の二人は、信越路に調査旅行に出る。その途中、長野県野尻湖で良樹がフィルムを盗まれ、そこで人骨で発見されたH大の畑野教授の事件を捜査していた信濃のコロンボ・竹村警部と知り合う。さらに竹村は二人の話から畑野が発見された同じ日に良寛ゆかりの地・五合庵で良寛研究家の大沢助教授が殺されたことを知り、事件の奇妙な繋りに気付いた。長篇推理。 徳間文庫(本のカバーから引用) |
この本を読むのは3回目です。先月にも読んだのですが、感想を書きそびれているうちに忘れてしまいました。(^o^) 名探偵は竹村警部です。先生の処女作「死者の木霊」で2階級特進しましたね。作中にもそのことを回想する場面がありました。 ひとことに2階級特進といっても、殉職以外で特進するのは異例のことです。 警察官の階級は、巡査、巡査部長、警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監の順です。浅見刑事局長は警視監です。 ノンキャリアの場合、たいていは警部補止まりです。最高に出世して警視正というわけです。だから巡査部長から警部というとたいへんな出世ですね。しかも、竹村警部は34歳です。 役職は県警本部で課長補佐、大きな警察署の課長といったところでしょうか?この本では県警捜一課の花形捜査主任クラスという表現になっていました。 昇進するには試験に合格しなければならないのですが、巡査の場合競争率は100倍から200倍といわれています。合格したら警察学校で6か月勉強しなければなりません。 これが、キャリアになると入庁した時点で警部補、警察大学校で3か月の講習を受け、現場の実務を9か月、そして再び警察大学校に1か月の補習を受け、警察庁に行くことになりますが、もうこの時点で警部です。そして警察庁で2年ほど勤務した後、またも警察大学校に1か月。これが終わると警視になります。 なんとも驚きますね!ノンキャリアから見るとキャリアというのは雲の上の人です。 竹村警部は、信濃のコロンボと言われているのですが、この本を読むと『刑事に憧れて、ことにテレビの「刑事コロンボ」のような刑事になりたかった。』と書いてありました。 最後に犯人を追いつめるシーンは、まさしくコロンボそのものでしたね。 内田先生の原点は「死者の木霊」なのですが、この本を読んで竹村警部や岡部警部を主人公にした本を書きたかったのだなと、あらためて思いました。 印象に残った言葉。 「人間が本質的に悪だとは、竹村はどうしても思いたくない。しかし、いくら努力しても、まともにやっていてはどうにもならなくて、あこぎなこしをやる者が繁栄するのが現実だ。そういう事実を何度も見せつけられていると、ごくふつうの市民が、ふとしたはずみで悪の道に踏み入りたくなるかもしれない。そうやって犯罪を犯したとしても、どうしてその者だけを責めることができようか。」 1998.11.8記 |