浅見家のお手伝い・吉田須美子が警察に連行された!群馬県吾妻町で起きた、焼死事件の殺人容疑者としてである。事件の被害者・大戸美智夫は、政界に触手を伸ばす金融会社の専務で、妻・世志子とともに失踪中だった。さらに、日本舞踊桃陰流の幹部でもある世志子が、伊香保町ロープウエイの崖下へ転落死した。桃陰流の後継者争い、選挙資金をめぐる葛藤・伊香保で晩年を過ごした竹久夢二の不可解な過去―三つ巴の謎に挑む浅見光彦の前に、若き名取りが現われて…。名湯・伊香保を舞台に、戦慄と殺意が奔る。人気爆発の“ミステリーの名手”が、満を持して放つ“旅情ミステリー”の白眉。
光文社文庫(本のカバーから引用) |
この作品では、お手伝いの須美子嬢が登場しますが、単なる先生のファンサービスで作品に占めるものはさほどありません。 導入部に我々の好奇心を少しだけ抱かせてくれるだけの存在にしか過ぎません。もっとも、浅見家の人々がいかに須美子嬢を愛しているかということは分かります。 しかし、この本は不思議な設定ですね。二人か三人は確実に死んでいるのですが、生前の姿はすべて回りの語り口から想像できる程度で、まったく実体がありません。 雲台寺炎上で焼死した大戸美智夫、毒を盛られて死んだ大戸の妻・世志子。当初、心中かと思われた事件なのですが、実はまったく別の事件だった...。 竹久夢二の忘れ形見の二人の女の確執。 三之宮由佳の出生の秘密と母・志乃の役割。 昭和9年に生まれた3人の女たちの生き様。そう言えば内田先生も昭和9年生まれでしたね。 由佳の父親の死の真相。 老女イネは死の旅路に赴いたのか? 最後に死んだはずの大戸美智夫の出現と、それを予想していた光彦。 さらに犯人を見逃す光彦。 読み終わって、なんだか不思議な感じがしました。どう解釈していいのか分からない...。 1998.10.24記 |