諸行無常の理(ことわり)を表わすという鐘の音。浅見家代々の菩提寺、聖林寺の梵鐘から血が滴るという怪事件があってまもなく、顔にその鐘の模様痕をつけた男の変死体が隅田川に浮かんだ。四国高松、越中高岡と、被害者の美しい妹とともに鐘の謎を追いかける浅見光彦の旅が始まる。 期待の文芸4部作第2弾、遂に登場。 講談社文庫(本のカバーから引用) |
この作品では警察不信の記述が随所に見受けられました。 もっとも、当初「後鳥羽伝説殺人事件」で素人探偵としてデビューした光彦も、数々の名探偵ぶりを発揮して事件を解決した実績から、小説の上では警察と極めて協調的にやっていますね。 でも、光彦のような発想と警察の画一的なマニュアル通りの捜査は比較するべくもありませんが、内田作品を読んでいると、「自殺」で終結したものも、実は他殺ではなかったか?いろいろ考えさせられるものがあります。 つい最近読んだ本に「ミステリーファンのための警察学入門」というのがありました。その本を読むと、内田作品のように、所轄の刑事から事件のことについて聞き出すなんていうことは、まずありえないことですね! だいたい、警察官が結婚するときには上司に届け出なければならないのだそうです。そして、彼女(彼)の前科、家族の素行などを調査するということです。 だから、警察官は職場結婚が無難なのだそうです。 そう言えば、警察官はタイムカードも出勤簿に自ら押印することもないのですよね!管理職が出勤簿に「出勤」というゴム印を押すのです。 退庁後に飲みに行くにしても、上司に報告しなければならないのだそうです。 おー!ぞっとしますね。徹底的に管理されています。 この作品の「鐘」にまつわる話、それを複雑怪異な事件に仕上げる手法は、相変わらず見事なものです。新聞小説に若干の手直しを加えたものだそうですが、プロットを作らないで書き進めているとはとても思えません。 ただ、終わりにさしかかった頃、いままでまったく出てこない人間が事件の重要な役割を担っているというのは、読者の推理に水を差して、ちょっとこじつけかな?と感じてしまいました。 1998.11.6記 |