傷心を抱いて京都・大覚寺を訪れた美術書編集者の美果−−−。その前に娘の行方を訪ねる男があらわれ、数日後、美果は若い女性の他殺体が奈良ホトケ谷で発見されたことを知る。古都を舞台にくりひろげる浅見光彦と美果の推理行。やがて行方不明の新薬師寺秘仏をめぐり彼らと意外な関連性が浮上するが...。美しい女よ、古都への旅は愛の遍歴か。 内田・リリカルミステリーの極北。古都を舞台に名探偵浅見光彦の推理が冴える。 講談社文庫(本のカバーから引用) |
「平城山を越えた女」を読みました。 う〜ん、この作品の感想は書けないな。というのが読み終えた時点での実感です。 どうもこの終わり方には納得がいかないですね。 ストーリーとしてはよくできているし、舞台設定も申し分はないのですが、テーマがよく解らないのです。 先生は殺人事件がなくても十分におもしろい作品と言っていますけど、そうなんでしょうか? 殺人事件が添え物で、謎解きが中途半端で終わっているというのは、どう考えても納得がいきませんね。 贔屓目に見ると、あばたもえくぼというのでしょうか? 情緒的には十分なのですが論理的には欠けています! そう、優れた面ばかり見ていると見過ごされてしまうのかもしれませんが、ミステリーとして見る限り欲求不満で気が狂いそうなほど悩ましい作品でした。 1999.4.11記
誤解されるような感想を書いていますが、この作品が悪いということでは決してありません。この作品を大切にしているファンの方も大勢いらっしゃいますし、作品の舞台となった土地を探索され、想いを馳せている方もたくさん知っています。 内田先生がこの作品の結末をあえてぼかしてしまったのは、せっかくの雰囲気を陰惨な事件の真相を暴くことで壊したくない。それ以上書くことが忍びなかったのだと思っています。 この作品は結末を除けば名作だと思いますし、次に読むときには、また違った印象をもつかもしれません。 1999.4.11記 |