美少女棋士今井香子は新幹線の中で、見知らぬ男から一通の封書を預かった。 6日後、男は死体となって発見されたことがニュースで報じられ、数日後、香子もまた何者かに襲われた。彼女の危機を救ったのは、兵庫の山奥から行方知れずの父を探して上京していた江崎秀夫。天才棋士といわれた父の血を引いて、将棋の腕前は、素人とは思えないほど冴えていた。封書の中身は「九段の件―」と書かれ、将棋連盟理事長、北村のサインのある念書だったのだ。そして、将棋界の大物、柾田圭三九段の家で起きた第二の殺人!謎の念書に秘められた驚くべき事実。本格派の偉才が贈る感動の異色サスペンス。 角川文庫(本のカバーから引用) |
将棋推理は大きく二つのタイプに分けることができる。ひとつは、対局や駒などゲームそのものに推理小説的トリックを仕掛けるもの。もうひとつは、棋士の人芸関係や棋戦をめぐっての利権といった、将棋ならではの世界を背景にして事件が起こるものである。 本書は後者のタイプで、政治家の絡んだどす黒い流れと、病気で休養していたユニークな棋士が名人戦に復活する経緯が交錯し、最後の名人戦までスリリングな物語が展開されている。(ミステリー紀行番外編2の107ページ) |