夫・伸夫の行動に不審を抱く札幌のイベント会社専務・越川春恵―その原因はプロモーター・白井信吾に…。 春恵の依頼で白井の身辺を探るかつての部下・戸田亘は「やくも…」の言葉を残して失踪。麻薬がらみか。戸田の行方を追い札幌へ飛んだ、名探偵・浅見光彦を待ち受ける北大植物園の絞殺死体。 さらに浅見は、謎の老人・徳永から全天候型競技場建設にまつわる不可解な動きを知らされた。―一人の男の蒸発が、北海道開発を巡る利権の暗闘を暴き出した。北の都・札幌の“闇の素顔”を描破する“旅情ミステリー” 失踪した男を追い札幌に飛んだ浅見光彦は、〔北大植物園〕と〔ひかり公園〕での殺人事件の渦中に…。 新境地を拓いた内田ミステリーの傑作。 光文社文庫(本のカバーから引用) |
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この作品は、かなり綿密な取材の基に書かれたということが分かります。地元の人間としては嬉しいことです。 スパイ小説なみのスケールの大きい作品でした。ヨロイ建設、北発銀行は、それぞれカブト・デコム、北海道拓殖銀行のことでしょうか? ふたつの会社とも、今は清算入っているのは淋しい限りです。確かに拓銀にはおごりがあったと感じていましたが、実際につぶれてしまうとは考えもしなかったことです。 北海道の産業構造が中央に依存していることと汚職がらみのストーリー展開は、すべて事実とは思いませんが、あるいはそういうこともあるかなと考えさせられてしまいました。 そういう殺伐とした中にも、人を見る目の優しさを感じた作品でもありましたね。 最後のシーンの白井の優しさにはジーンとくるものがありました。白井を殺さなくてもいいのではないかと思ってしまったのは、それだけ感情移入していたのでしょうね。 1998.11.3記 |