信州毎朝新聞・牧田の絞殺死体が水内ダムで発見され、部下の中島が疑われた。だが恵那山トンネル、長楽寺、寝覚の床でも次々と絞殺死体が発見され、それが長野県歌「信濃の国」に歌われる名勝であることに、中島の妻・洋子は気が付いたが…。 信濃のコロンボ、こと竹村警部登場の長編傑作旅情ミステリー。 講談社文庫(本のカバーから引用) |
5月1日に軽井沢、浅見光彦倶楽部で慰霊祭が行われます。これは、内田先生が自らのペンにより作品で殺してしまった霊を慰霊するというものです。 その慰霊祭用のリストは、内田メーリングリストのメンバーで作成したものですが、私も10作品ほど手がけました。だから私も慰霊祭に出席します。 既に航空券の手配も1か月前に済まし、後は出発のことだけを考える毎日でしたが...あっ!そうか!?イヤー失敗しました。 長野県を舞台にした内田作品があるではないか!? せっかくの機会に関連作品を読まなくては!そのことに気がついたのが昨日(4月24日)でした。それで、慌てて再読したのがこの作品です。(^^;) 長野県を舞台にした作品は、そのほかには、平家伝説殺人事件、小樽殺人事件、琥珀の道殺人事件、軽井沢殺人事件、記憶の中の殺人、菊池伝説殺人事件、沃野の伝説、戸隠伝説殺人事件、北国街道殺人事件、追分殺人事件があります。 こんなにたくさんあったら、全然間に合いませんね。(^^; 内田先生がプロットをたてないで作品を書き進めていくのは、よく知られていますが、そのことが逆におもしろいという側面ももっています。 20世紀初頭に活躍したイギリスのミステリー研究家ロナルド・ノックスが書いた「探偵小説十戒」によると、およそこの作品は次の項目に少なからず違反していると考えます。(^^; 1 犯人は小説の初めから登場していなければならない。また、読者が疑うことができない人物であってはならない。 この本を読み終えて、まず感じたことは、これらの点ですが、それにも関わらず、さわやかな読後感はどう表現したらいいのでしょうか? やはり、独特の作風なんですよね!情緒的で旅情溢れるとでも表現しておきましょうか。(^^)気持ちは早くも信州にあります。内田作品というのはそんな不思議な心持ちにさせるのです。 1999.4.28記 |
20世紀初頭に活躍したイギリスのミステリー研究家ロナルド・ノックスが書いた「探偵小説十戒」を紹介します。 1 犯人は小説の初めから登場していなければならない。また、読者が疑うことができない人物であってはならない。 2 犯人追及の方法に、超自然の力を用いてはならない。 3 秘密の通路や秘密の部屋を用いてはならない。 4 科学的に未確定の薬物や著しく特異な薬物を使ってはならない。 5 中国人を登場させてはならない。 6 偶然の発見や探偵のヤマカンによって事件を解決してはならない。 7 探偵自身が犯人であってはならない。 8 読者の知らない手がかりによって事件を解決してはならない。 9 ワトソン役は、彼自身の判断を包み隠さず読者に知らせねばならない。 10 双生児や変装による二人役は、あらかじめ、それを匂わせておかなければならない。 このうち、5の中国人は正体がよくわからないと思われていた時代の偏見ですが、その後はまあまあと思われます。 7の探偵自身が犯人だったというのは、最近読んだ「悪魔の紋章」(江戸川乱歩)がまさしくそうでした。 4の薬物に関しては、これも最近読んだ「ミステリーを科学したら」(由良三郎)によると間違いがずいぶんあるようです。 よく青酸カリが使われるのですが、これがどうやって人を殺すかについては、案外知られていないようです。青酸化合物が嚥下によって劇薬となるメカニズムは、これが胃に入ると、胃液の酸性にあって瞬間的に加水分解が行われ、青酸ガスが発生し、そのガスを胃壁粘膜がよく吸収し、血中に入るから呼吸中毒となり、急激に死に至らせるということです。つまり、注射して体内に入れても人間の血液は弱アルカリ性なので死には至らないということです。 6の偶然の発見や探偵のヤマカンによって事件を解決するというのは、よく見られるような気がしています。 それと、つけ加えると証人がよく観察して覚えていると感心することがあります。顔立ちから服装、持ち物など実によく覚えている。実際そんなに詳しく覚えているだろうか?と疑問を感ずるときがあります。 [参考図書] 1998.12.16記 |