浅見雪江の絵画教室仲間である池沢英二が再婚することになった。ところが結婚式当日、定刻を過ぎても花嫁の津田隆子は現れなかった。隅田川の水上バスで式場へと向かう途中、船内から彼女の姿が消えたのだ。数日後、築地の掘割で隆子らしき女性の死体が発見された。雪江の依頼で、光彦は調査に乗り出すも、死体は別人。しかし、被害者の口に銜えられたバッジが池沢の物とわかり、彼が容疑者に…。被害者と池沢の関係は?消えた花嫁の行方は?錯綜する事件の真相に迫る浅見光彦自身にも死の影が…。長編旅情ミステリー。 角川文庫(本のカバーから引用) |
この本を再読して、あらためて考えたことは、やはり、唐突な結末でしょうか? プロローグの「音無川」の狂女の話、続いて、飛鳥山でトラブルに巻き込まれた女性を助けたことから池沢と出会ったこと、花嫁が水上バスから消えてしまったこと。 さらに、雪江の絵画教室のつながりから、小松美保子との再会、そして、池沢からの依頼という具合に、一見なんの脈絡もないようにみえる事柄が、途中から一本の線になってつながる。 隅田川の水上バスからの情景描写、謡曲「隅田川」のエピソードといい、見事ですね。私の好奇心をくすぐります。 それから、光彦と雪江の会話、須美子の存在も十分楽しめました。 謎もふんだんにありました。 なぜ、死人の口の中に池沢のバッチがあったのか? 「スケンヤ」とはなにか? 光彦の推理に一緒になって考えている自分がそこにいました。一度、読んでいるから思い出しながらと言った方が妥当でしょうか? この本で印象に残ったのは、はじめの方に戻りますが、光彦と雪江の会話でした。 「興味と親身では、天地の開きがあるでしょう。人さまの不幸を、面白半分でつつくのはお止めなさい」という雪江の言葉が印象に残りましたね。一連の会話と言ったほうがいいでしょうか。 それにしても、結末は急転直下でしたし、エピローグも物足りなさを感じました。 余韻を楽しめということなんでしょうね!きっと...。 1998.10.17記 しょう |