毎日涙を流す゛奇蹟゜の少女像。だが、このブロンズ像は持ち主の自殺した朝に限って泣いていなかった・・・・・・。家政婦の持ち込んだ突拍子もない噂話に、隠された犯罪を見抜く表題作。箱根の霧の中を流れる雅な旋律が結びつけた死者、発見者、犯人の運命を描く「越天楽がきこえる」など、両親を亡くした車椅子の少女千晶と、娘を失った捜査の鬼、河内刑事の心の交流が事件の謎を解く推理四編。 ○ 越楽天がきこえる 中公文庫(本のカバーから引用) |
[越天楽がきこえる] 出だしは、「多摩湖半殺人事件」のエピローグのようでした。河内警部補と橋本千晶が駒ヶ岳に行くところから始まります。 男が病死し、一緒にいた女はその場から逃げ出し、そして殺されてしまう。 千晶の推理から事件が解決するのですが...。その解決の仕方が急転直下ですね。これからというところで、あっけなく解決し、尻切れトンボの感は否めません。 [ドクターブライダル] 友人の行方不明に不信を抱いた長田竹美は、橋本千晶の名前をかたり、ドクターブライダルに入会申し込みをした後、行方不明になった。 橋本千晶もドクターブライダルに入会するが...。話としてはおもしろいのですが、ミステリーとして見ると物足りない感じです。 [踏まれたすみれ] モーツァルトの「すみれ」を録音中、「...すみれを埋めた...」と叫ぶ男の声。 次々起こる殺人事件。それにしてもモーツァルトから連想したストーリーには感嘆しますね。 橋本千晶に迫る危機...。いや、おもしろいですよ。 [少女像は泣かなかった] ブロンズ像が泣くには理由がありました。そして、千晶が訪問した一瞬の時間に仕掛けが行われ、ノイローゼだった夫人が殺害される。 巧妙なトリックを千晶は、いとも簡単に解明してしまう。おもしろい作品です。 この短編集は、配列が悪いのだと思いますね。 [少女像は泣かなかった][踏まれたすみれ][ドクターブライダル][越天楽がきこえる]の順の方がいいように思います。 理由は、「踏まれたすみれ」が一番おもしろかったからです。 198.11.7記 しょう |