朝倉理絵は東京都カルタ会の女王である。事件は、理絵が浅見家恒例のカルタ会に姿を見せ、浅見光彦が、彼女の横顔に、ある種の翳を見出したことで幕があく。理絵の父親が不可解な死を遂げていたのだ。光彦は理絵をともなって、その謎の解明に旅立った。手掛りは父親の遺体が発見された「末の松山」と手帳に記されていた「白浪、松山を越ゆ」―。契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪越さじとは、理絵の得意な札でもある。が、なぜ「越ゆ」なのか?古歌に詠みこまれた諸国の名所を歌枕という。契りは愛の約束、末の松山は一級品の歌枕。この作品は、怖ろしくも哀しい結末を、旅情と短歌の香りたかい文脈に刻みこんだ長編ミステリーである。
双葉文庫(本のカバーから引用) |
この作品の結末は、哀しいですね!ただ、あの程度の動機で殺された人は浮かばれません。 やはり、罪は罪として司直の手に委ねるべきであったと思います。 この作品は、一貫して百人一首、それも枕詞がテーマとなっています。ところどころにちりばめられた歌がなんとも粋ですね。 浅見家新年恒例のカルタ大会で光彦と東京都カルタ大会の女王・朝倉理絵との決勝戦。光彦のかけひきの前に僅差で破れた朝倉理絵は、父の死にまつわる「すゑのまつやま」の話を光彦に聞かせる。 そして、多賀城市へと旅立つのでした。 百人一首は、小学校時代に友達の家で遊んだ記憶がありますが、そのときだけでしたね。 なんとも、優雅な遊びではあります。 朝倉が死の直前にメモしたとみられる「白浪、松山をこゆ」の謎を光彦と理絵、そして千田刑事が追う。 光彦と理絵とのお互いの感情のすれ違いもおもしろかったですが、ちょっと歯がゆいというか...。 あやうく3人目の犠牲者になるかとはらはらしました。 あのような結末で、千田刑事の名誉は回復されたのでしょうか? 理絵の気持ちの整理はついたのでしょうか? そこらへんの思いが後をひく結末でしたが、それを除くとわりときれいにまとまった作品であったと思います。 内田作品を読むと、なんとなく教養が身に付くと感じているのは、私だけでしょうか? 1998.10.19 |