レビュー17
SERFAS PRO-FLO LOCK ON グリップ
評価:★★★★★
「楽だ。」
自転車のグリップ。これは単に握れればいいという物じゃない。体重をかけたり、逆に引っ張ったりしても回転したり動いたりしないということがけっこう重要だ。力が入りがちなマウンテンバイクなどの用途などではなおさらだ。でもそれがきちんと実現できているグリップはなかなかない。 以前、TIOGAのマッシーグリップというグリップを使用していたのだが、これがもう信じられないレベルの鼻糞で、力を込めるとクルクル回る、汗をかくとツルツル滑る、挙げ句の果てには表面のゴムがブチブチちぎれるなど、散々なものだった。(ゆえに買っちゃ駄目)ああ、お手軽に固定できて丈夫で疲れないグリップはないものか。
だがしかし、自転車用グリップという物はゴムの筒をハンドルにかぶせるという単にそれだけの構造なのだから、そんなに期待をしても酷だということもある。むろんグリップ用の接着剤を使って固定してやればいいのだが、取り外す時の面倒くささを考えると二の足を踏んでしまう。だが、それらの問題をまとめて何とかできてしまうのがロックオングリップだ。
■固定するグリップ、ロックオングリップ
ロックオングリップとは、通常はゴムの筒をハンドルバーに押し込んでいるだけでしかないグリップに、金属のクランプをはめてネジで締め付けることによって、万力のように固定するという方式のグリップだ。経年劣化でゴムがぐずっても、雨滴がグリップの隙間に浸入してしまっても、ネジでがっちり固定してあるのでびくともしない。もちろん体重をかけても手でひねっても大丈夫。逆に取り外す時もネジを緩めるだけですぽんと取れるのが再セッティングに非常に便利な物だ。
で、マウンテンバイクのハンドルを新調した際に、このロックオングリップに交換しようと思い立った。ロックオングリップも最近では種類が増えてきており、調べてみるとかなりの選択肢があった。最初はダウンヒルバイクのフェンダーなどで有名なTHE(ティーエイチイー)の物にしようと思っていた。ちょうどそのTHEのフェンダーを使っているのでおそろいって事で。でもついでに…と、いろいろショップを覗いている時、このサーファスのグリップを目にした。一目見て思った。そうだ、エルゴグリップだ、と。
■使えないエルゴグリップ、使えるエルゴグリップ
エルゴグリップと良く呼ばれるこういった変形グリップは過去にも使ったことがある。人間工学に基づいたとかなんとかの大仰な売り文句がパッケージに書かれていたような気がする。でもこの膨らんだ部分に体重をかけたり、立ち漕ぎ時に引っ張ったりすると、いとも簡単にくるりと回転してしまい、正味の話まるで使い物にならなかった。特に雨天時などで水が毛細管現象でグリップの間に入ると、いとも簡単に回ってしまう。整備で外す時にもスポイトでグリップの中に水を入れるくらいだし、その影響たるや…。円形ではないので、回転してしまったら放っておくというわけにもいかない。握力でもってグリグリと動かして元の位置に戻してやらなくてはならないのが面倒くさすぎた。
また、街乗りと山での乗車姿勢は全く違う。当然グリップの握りも異なるのでエルゴリップは状況に応じて角度を変えてやる必要があるため、普通のグリップのように接着剤で固定することもできなかった。つまりそれは単に手にフィットするという、ただそれだけの物でしかなかった。つまり当時はエルゴグリップという物は害悪でしかなかったのだ。
だが、ロックオングリップなら話は全く変わってくる。用途に応じて姿勢を変えたい時にはネジを締め直してやるだけでいいのだから。しかも体重をかけようが何しようがびくともしない。ロックオングリップはエルゴグリップでこそ適しているのではないかと思ったわけだ。そして買った。このサーファスのプロフロー・ロックオングリップを。
■長所と短所
実際に使用してみると、まさに期待通りの良い物だった。
さすがはロックオンタイプというか、力をかけまくってもズレることなく安定している。良い。次にエルゴ形状の膨らんだ部分に手のひらを押しつけてみる。すると、下腕の骨とエルゴ部分のふくらみが一直線に一致し、手首への負担が通常の円形グリップとでは比較にならないほど軽減していた。良い。通常はパイプを握って体重をかける状態から、机の上に手のひらを乗せるような感じに変わったような物だ。良い。通常街中を流す際にはハンドルに上体を預けて疲労を軽減するようにしているわけだが、円形グリップでは手首への負担が大きく、頻繁に握りを変更してやる必要があったものだが、このエルゴグリップならそれがかなり少なくなった。フラットバーやライザーバーでの使用において、これはかなり使える。
グリップの前縁は少し尖ったような形になっており、そこに指をかけられるようになっている。実際に引っかけてみてもうまく収まり、良い滑り止め効果が実感できた。手前側の親指の収まりも非常に良く、エルゴグリップの良さを生かすことのできる状態となっていた。親指の握り部分だけは硬質ゴムが抜いてあって、ふにゃふにゃとした感触で、指への負担を軽減させているのだ。
基本構造は硬度の異なる樹脂の三層になっているようだ。ベース部の黒い樹脂はかなり固い。樹脂にはかなりのしっかり感があるため、ハンドルを一番奥まで入れなくても使用できるレベル。三分の二くらいまでしか入れずにハンドルを5センチほど延長することも可能だった。次にベース部に巻かれるようになっている実際に握る部分のグレー部は少し柔らかめの樹脂で滑り止めのエンボス加工。柔らかめといってもあくまでもベース部と比較してという程度の話で、指で少々押したくらいでは変形することなどないくらいの堅さだ。そして島のようになっている黒色部分は軟質のゴムで、衝撃を吸収するために設けられているようだ。内側は通常の貫通型ではなく行き止まりの袋状になっており、ハンドルにかぶせるようになっている。よって、そのままではエンドバーなどを取り付けることはできない。ただ、金ノコのような物で比較的簡単に切断できるので、エンドバーを装着したいということなら切ってしまえばいい。好みに応じて色々と自由度の高いカスタムが可能な構造となっている。
むろん悪い点もある。
まずグリップに付いている黒い島の部分。軟質ゴムで衝撃を吸収するような作りになっているのだが、この部分のゴムが汗でベタつく。グローブを付けた状態での滑り止めにはいいかもしれないのだが、素手での使用には少々不快感が。グリップエンド部の前に向かってつきだした形状もちょっと困る。以前車とすれ違う時に道の端に寄ったのだが、その際に道に張り出していた雑木にグリップが少し突っ込んだ。その雑木の中には木の蔓が生えていたらしく、それがグリップの突起に引っかかってしまい、ハンドルを取られて転倒しそうになってしまったのだ。ここに小指を引っかけて脱落防止の役目でも持たせるつもりなのかもしれないが、エルゴ部に親指を引っかけて握っているので効果は少ない。ゆえにこの突起があったからといって何か恩恵があるわけでもなかったので、正直いらないなと思ってしまった。なので、今はその突起部分をノコギリでカットして貫通型のグリップにし、突出させたハンドルバーにエンドバーとエンドキャップを取り付けてある。
良い点が悪い点を大幅に凌駕し、総合的に見てかなり良い。フラットバーの自転車を使用している人にはおすすめをしておく。
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