レビュー16

BUSCH+MULLER CYCLESTAR 901/3 サイクルミラー

評価:★★★★★
「視界よし、剛性よし、耐久性よし。」



 自転車においてターンや横断の際に後方確認は必須なのだが、首をぐるんと回して確認するのは少々大変だ。まぁターンの時だけなら回数は少ないのでともかくとしてだが。車道を走っている時、後方から車がきたらどんな車種がきたのかによっては路肩に寄せて停止したり減速する必要がある。自転車が車道を走るものである以上はこういった事例は頻繁に発生するのだが、そのたびに首を回すのは正直おっくうなのだ。そこで省力化と自身の首の健康のためにも自転車用の小型ミラーの出番となる。

 今までゼファールのバーエンドに取り付けるタイプのミラーを使用していた。だがこいつは正直言って鼻糞同然の出来であった。ほんのちょっとぶつかったり駐車時に転倒させてしまっただけでボッキリとモギリ折れてしまう脆弱性がたまらんわ。今までに三本購入したが一本は曇りで使い物にならなくなり、残り二本もぶつけてぶっ壊している。そのうちの一本は購入してから三日で壊した。ギョハー。

 しかも安くない。一個1800円だ。マジでたまらん。しかもゼファールのミラーは定番とかいわれて大概の自転車屋においてあるくせに品質がよくない。一年もすれば鏡面にカビのようなものが浮いてきて曇りが増大し、いずれは見えなくなるのだ。なんだこりゃ!てめぇ!ゼファール!ちょっとこっち来い!一晩ケツ貸せ!

 …よって、2回ぶっ壊したのを機に、ゼファールはきれいすっぱり見限ることにした。つーか、この手のミラーって別にゼファールのものだけじゃなくて他にもいっぱい出ていたのね、と。このチョー高速インターネッツ時代に、おいらのこの情報棄民っぷりは何だ一体。アイター。

 もういくつか地雷を踏むのも覚悟して複数購入して試してみようと考えたその時。そういえば自転車関連のレビューサイトを見ればいいじゃないかということに気づいた。で、そこで発見した良評価のミラーがこのサイクルスター901/3だった。実際に購入してみて、評判がいいだけのことはあると納得することとなる。

 まず各部品がしっかりしている。ハンドルに取り付ける台座こそ樹脂製だが、アームや台座と接合するための基部は金属製。ミラー部もちゃんと固定されている。各部にしっかりとした剛性があるので、自転車の走行振動でもガタガタとミラーが揺れて後方が見にくくなることがないのだ。これは素晴らしい。視界も小型の円形ミラーなのに悪くない。きっちりと固定できるから視界を常に確保できているからだろうか。

 取り付けは、まず付属の樹脂製台座を六角レンチで固定する。台座は二種類付属しており、スレッドステムのウスみたいな構造になっているハンドルバーやエンドバーの穴に挿入して取り付ける物と、パイプなどに固定するためのバンド状のような物が必要に応じて選択できるようになっている。この台座にはボールジョイントが付いているので、それを円錐状の基部(半分に分割するようになっている)で、アーム側のボールジョイントと接合する。ミラー部とアームもボールジョイントで接合されているので、樹脂製台座→円錐状部品→アーム→ミラという感じに都合三つの部分が関節として動作することになる。このおかげで非常に高い位置決めの自由度があり、実にやりやすい。

 この構造のおかげで、もしどこかを木枝とかにぶつけても各部が動くことによって衝撃を逃がすことができそうだ。これならよもやゼファールのように光の速さでぶっ壊れるようなことはあるまいて。これでミラーが楕円形だったりしたらもっと好みだったんだがのう。

 なお、おいらはハンドルバーではなくエンドバーの先端に取り付けるようにしている。(写真の黄色いパーツがエンドバー)これだと視線の移動も最小限ですむし、横に張り出さないので破損する確率もぐんと下がりそうだったので。

 購入時に気をつける点としてはハンドル部に取り付ける際、ハンドルの内径が17ミリ以上ないと取り付けられないという点だけだろう。その場合でも付属のバンド状の台座を使用してハンドルバーに取り付けるなどの対策を取ればいいので、やり方はいくらでもありそうな感じだ。

 自転車ミラーでは紛れもなくおすすめの逸品である。



レビュー17

SERFAS PRO-FLO LOCK ON グリップ

評価:★★★★
「楽だ。」



 自転車のグリップ。これは単に握れればいいという物じゃない。体重をかけたり、逆に引っ張ったりしても回転したり動いたりしないということがけっこう重要だ。力が入りがちなマウンテンバイクなどの用途などではなおさらだ。でもそれがきちんと実現できているグリップはなかなかない。 以前、TIOGAのマッシーグリップというグリップを使用していたのだが、これがもう信じられないレベルの鼻糞で、力を込めるとクルクル回る、汗をかくとツルツル滑る、挙げ句の果てには表面のゴムがブチブチちぎれるなど、散々なものだった。(ゆえに買っちゃ駄目)ああ、お手軽に固定できて丈夫で疲れないグリップはないものか。

 だがしかし、自転車用グリップという物はゴムの筒をハンドルにかぶせるという単にそれだけの構造なのだから、そんなに期待をしても酷だということもある。むろんグリップ用の接着剤を使って固定してやればいいのだが、取り外す時の面倒くささを考えると二の足を踏んでしまう。だが、それらの問題をまとめて何とかできてしまうのがロックオングリップだ。


■固定するグリップ、ロックオングリップ
 ロックオングリップとは、通常はゴムの筒をハンドルバーに押し込んでいるだけでしかないグリップに、金属のクランプをはめてネジで締め付けることによって、万力のように固定するという方式のグリップだ。経年劣化でゴムがぐずっても、雨滴がグリップの隙間に浸入してしまっても、ネジでがっちり固定してあるのでびくともしない。もちろん体重をかけても手でひねっても大丈夫。逆に取り外す時もネジを緩めるだけですぽんと取れるのが再セッティングに非常に便利な物だ。

 で、マウンテンバイクのハンドルを新調した際に、このロックオングリップに交換しようと思い立った。ロックオングリップも最近では種類が増えてきており、調べてみるとかなりの選択肢があった。最初はダウンヒルバイクのフェンダーなどで有名なTHE(ティーエイチイー)の物にしようと思っていた。ちょうどそのTHEのフェンダーを使っているのでおそろいって事で。でもついでに…と、いろいろショップを覗いている時、このサーファスのグリップを目にした。一目見て思った。そうだ、エルゴグリップだ、と。


■使えないエルゴグリップ、使えるエルゴグリップ
 エルゴグリップと良く呼ばれるこういった変形グリップは過去にも使ったことがある。人間工学に基づいたとかなんとかの大仰な売り文句がパッケージに書かれていたような気がする。でもこの膨らんだ部分に体重をかけたり、立ち漕ぎ時に引っ張ったりすると、いとも簡単にくるりと回転してしまい、正味の話まるで使い物にならなかった。特に雨天時などで水が毛細管現象でグリップの間に入ると、いとも簡単に回ってしまう。整備で外す時にもスポイトでグリップの中に水を入れるくらいだし、その影響たるや…。円形ではないので、回転してしまったら放っておくというわけにもいかない。握力でもってグリグリと動かして元の位置に戻してやらなくてはならないのが面倒くさすぎた。

 また、街乗りと山での乗車姿勢は全く違う。当然グリップの握りも異なるのでエルゴリップは状況に応じて角度を変えてやる必要があるため、普通のグリップのように接着剤で固定することもできなかった。つまりそれは単に手にフィットするという、ただそれだけの物でしかなかった。つまり当時はエルゴグリップという物は害悪でしかなかったのだ。

 だが、ロックオングリップなら話は全く変わってくる。用途に応じて姿勢を変えたい時にはネジを締め直してやるだけでいいのだから。しかも体重をかけようが何しようがびくともしない。ロックオングリップはエルゴグリップでこそ適しているのではないかと思ったわけだ。そして買った。このサーファスのプロフロー・ロックオングリップを。


■長所と短所
 実際に使用してみると、まさに期待通りの良い物だった。
 さすがはロックオンタイプというか、力をかけまくってもズレることなく安定している。良い。次にエルゴ形状の膨らんだ部分に手のひらを押しつけてみる。すると、下腕の骨とエルゴ部分のふくらみが一直線に一致し、手首への負担が通常の円形グリップとでは比較にならないほど軽減していた。良い。通常はパイプを握って体重をかける状態から、机の上に手のひらを乗せるような感じに変わったような物だ。良い。通常街中を流す際にはハンドルに上体を預けて疲労を軽減するようにしているわけだが、円形グリップでは手首への負担が大きく、頻繁に握りを変更してやる必要があったものだが、このエルゴグリップならそれがかなり少なくなった。フラットバーやライザーバーでの使用において、これはかなり使える。

 グリップの前縁は少し尖ったような形になっており、そこに指をかけられるようになっている。実際に引っかけてみてもうまく収まり、良い滑り止め効果が実感できた。手前側の親指の収まりも非常に良く、エルゴグリップの良さを生かすことのできる状態となっていた。親指の握り部分だけは硬質ゴムが抜いてあって、ふにゃふにゃとした感触で、指への負担を軽減させているのだ。

 基本構造は硬度の異なる樹脂の三層になっているようだ。ベース部の黒い樹脂はかなり固い。樹脂にはかなりのしっかり感があるため、ハンドルを一番奥まで入れなくても使用できるレベル。三分の二くらいまでしか入れずにハンドルを5センチほど延長することも可能だった。次にベース部に巻かれるようになっている実際に握る部分のグレー部は少し柔らかめの樹脂で滑り止めのエンボス加工。柔らかめといってもあくまでもベース部と比較してという程度の話で、指で少々押したくらいでは変形することなどないくらいの堅さだ。そして島のようになっている黒色部分は軟質のゴムで、衝撃を吸収するために設けられているようだ。内側は通常の貫通型ではなく行き止まりの袋状になっており、ハンドルにかぶせるようになっている。よって、そのままではエンドバーなどを取り付けることはできない。ただ、金ノコのような物で比較的簡単に切断できるので、エンドバーを装着したいということなら切ってしまえばいい。好みに応じて色々と自由度の高いカスタムが可能な構造となっている。

 むろん悪い点もある。
 まずグリップに付いている黒い島の部分。軟質ゴムで衝撃を吸収するような作りになっているのだが、この部分のゴムが汗でベタつく。グローブを付けた状態での滑り止めにはいいかもしれないのだが、素手での使用には少々不快感が。グリップエンド部の前に向かってつきだした形状もちょっと困る。以前車とすれ違う時に道の端に寄ったのだが、その際に道に張り出していた雑木にグリップが少し突っ込んだ。その雑木の中には木の蔓が生えていたらしく、それがグリップの突起に引っかかってしまい、ハンドルを取られて転倒しそうになってしまったのだ。ここに小指を引っかけて脱落防止の役目でも持たせるつもりなのかもしれないが、エルゴ部に親指を引っかけて握っているので効果は少ない。ゆえにこの突起があったからといって何か恩恵があるわけでもなかったので、正直いらないなと思ってしまった。なので、今はその突起部分をノコギリでカットして貫通型のグリップにし、突出させたハンドルバーにエンドバーとエンドキャップを取り付けてある。

 良い点が悪い点を大幅に凌駕し、総合的に見てかなり良い。フラットバーの自転車を使用している人にはおすすめをしておく。