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[7907]川崎6頭
=八卦(関東)
=10/06/12(Sat)03:32



敬称略です。



1.藍花

 打楽器の乾いた音がエキゾチックに響きます。小刻みに鳴らして密集した音に乗って、おおらかに抑揚つけて舞うアラビヤン。心地良い雰囲気にもっていきながら、ボディタイツひとつの露悪的な姿に変わります。思い思いの音が織成す個性的な3曲の振付けでダンスを終えて、ベッドでは歌の旋律を活かして、体ひとつで歌い上げます。
 場内の7つのサーチライトが、壁を、床を、なめるように照らし出し、淫靡なムードを盛り上げます。
 終曲はせつせつとバラードへ。ボーカルの息遣いに合わせて、やすやすとポーズを繰り出せば、気持ちよい開放感に溢れます。愉悦に満ちた瞬間を、踊り子と客席とで分かち合います。



2.安田志穂

 乾いた空気、焦がすほど強い陽射し。中米のどこかの国に連れてこられたのでしょうか。
 幹にあたる筋肉を駆使して動きをゆったりと見せるのは、アニメーションのひとコマのよう。新体操とバレエの要素を溶け込ませています。
 サンフラワーかざして、麻袋のエコバッグ抱えて、歩きつかれてたどり着いたのは水辺のほとり。ソフトなボーカルが朗唱し、包み込むように癒してくれました。
 水辺にかがんで湯あみのように汗を流し、流されるようにブラも体を離れてしまい、くつろぐように水中の舞へ…
 水圧を跳ね返してくねらせる、その腰使いがエロティック。
 ポーズをはさんでそのままエンディングまで、持続的な動きを連ねます。



3.木村彩

 町人風の着物、黒地に色鮮やかな花紋を散らします。
 女だてらに脇差しょって、花道をのたり、危うい道行きです。
 怒涛のハードロックのサウンドにまみれて、顔見世から官能的。ギターもボーカルも自分のパートに陶酔しきって精一杯暴れれば、まるで異種格闘技の様相を呈します。
 口元引締め、眼光鋭く、隙なくあたりに目を配ります。1、2曲目の間に設けたしじまは数秒間。ここで、鞘を払って闇に閃光を走らせます。
 気高くニヒル、苛酷なまでにストイック。帯を緩めて柔肌を覗かせても、抜き身を握りしめ、近寄りがたい雰囲気を漂わせたまま。かっこよさを超えて殺伐として、寂寥感さえ醸します。
 もの静かでいながら心ざわつかせる旋律に包まれて、瞑想的。まとった朱の襦袢に生き血を吸わせるように、抜き身をかざします。
 スタイルに様式美を追求してなお、内面からエロティシズムが滲み出ます。



4.HIRO

 着物は白地のお引きずり。若草色のグラデーションに、扇子の柄が、芸者遊びを思い起こさせます。ちょっとしどけなく着こなす姿は、遊女のよう。
 手にした扇子は金地、銀地で、艶やかに彩色を施します。荘厳な序奏の響くなか、しゃなり素足で踏み出します。
 ゆったりとしたテンポに控えめな音、その歌声は、遠くの声が風に乗って聞こえたり消えたりといった趣です。
 暗転後、白日の下に横たわる姿は、お腰一枚で。声明の声が重なり合ってポリフォニー、巡礼の鉦、虫の音、清流のせせらぎ… 
 吸い込まれるように、自然界の音をサンプリングして聞かせます。
 生々流転、諸行無常、深いペダルのピアノひとつで、わびしく歌が流れます。
 “なにもない頃…”
 詠嘆をこめて歌う花鳥風月の世界から、禅的な解釈へと抜け出して、背筋をつめたいものが走りました。



5.小室りりか

 雰囲気のある、きれいな4曲を並べます。1.2曲目は同じグループの同じ曲の別バージョン。ゴスペルソングでアレンジを若干変えています。
 のびやかなフレージング、一糸乱れぬ緻密なアンサンブル。1曲目で出しゃばらない程度にリズム楽器で刻んだリズムを、2曲目では指を鳴らして調子をとりました。ようやく聞きなれてきたころに、せつない歌詞が心にじわり、しみてきます。
 ダンス部ではマイムに一人芝居にナレーション交え、男装でしなやかな動きを追って野心的な試みです。ベッドは椅子を持ち込んで、着崩れ、寝乱れ、しどけなく乱れるさまを、透明感のある静かな曲で彩ります。
 帽子を椅子の上に置いて、といた髪を奔流のように流すと、うなじからYシャツの襟までが隠れます。再び帽子を深くかぶってうつむいて、表情もその下に隠したとき、黒いストッキングの脚を宙に漂わせて、肉体が解放されました。



6.京本かえで

 淡いラベンダー色のロングドレスはふともものつけねあたりを絞って、曲線を強調しています。白い羽根扇を両手に品よくおおらかに。テーマ旋律がのびやかに歌われるなか、羽根扇を繊細に震わせます。甘くロマンティックな歌詞ですが、出すぎたところがない、抑制をきかした振付に徹します。
 つややかな黒髪、アイラインは目尻を長く引き、物憂げな表情を強く印象づけます。
 パープルのダンス着に着替え、凝ったリズムに合わせ、花道を長く前後に使います。
 ベッドへは上品な藤色のベッド着にふわりと包まれて。ホワイトやイエローの照明が錯綜しながら降り注ぐと、幻想的な光景です。
 動きは神経質に思えるくらい、ていねいにきめ細かく。力をこめずにバランスでしのぐポーズを流れのなかで切って、息の長い静止状態を保ちます。



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