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[7974]4結 横浜
=八卦(関東)
=17/05/03(Wed)13:17


2作出しで1作は洋舞、1作は和ものという趣向です。
敬称略です。



1.夏木りりか

和楽器をフューチャーした勇壮な音楽とともに幕を開けます。
おひきずりの着物に爽やかな水色の花模様の刺繍が、白い生地に浮かびます。
手にした扇でまぁるく円弧を描き、膝をついて立ち上がり、すっと背筋を伸ばします。

2曲目は祈りの歌で、軽く明るいポップス調。
つつーと足を運んで扇をゆらり、手振り中心でたおやかに舞います。
おひきずりの着物の帯を手際よく解けば、その下は動きやすそうな真っ白なドレス。

3曲目で溌剌と、のびやかな歌声に快活なリズムが裏打ちします。
  ♪Good day's for you!   Good day's for me!

目覚めの朝の情景でしょうか。
キレ味鋭いステップで前後左右、ふっと浮き上がるような軽快さ。

ベッド着は半透明で墨流しのようなモノトーン。
そこに白い蓮の花がぼぅっと浮かび上がります。
心揺さぶるバラードは、夕暮れの情景。
盆で、襟や裾を乱し、仰向けでのけぞります。
襟元にぽかりと浮かぶ赤い薔薇、鮮明な色が白い肌に映りそう。

袖を通したまま、ポーズを連ねて凛々しく立ち上がり。
3曲目の溌剌とした流れの伏流が、ここで一気に奔流となって溢れます。
肩脱ぎ姿で本舞台に戻ると、冒頭の勇壮な曲が流れ、闇に沈みます。



2.翼裕香

振付師がかつて自ら演じた作品です。
ドラマティックな筋立てを簡潔にまとめ、不幸な運命を一輪の椿で象徴させます。

女郎の悲恋物語。
好いたあの人との心のすれ違い、狂乱のあまり失火、郭は炎上。
過剰なほどの身振り・表情で、明快でスピーディーな展開。
切迫した音楽と相まって、映画を見ているような緊迫感を与えます。



盆の縁を井戸の囲いに見立て、倒れ込むように身投げします。
井戸の底に沈むその刹那の、思考や情念を表現します。
悩める魂、すがりついた椿の花。
あの人への想いを辿るように、1枚1枚数えて花弁をむしります。
真紅の椿は、業火の色にも、犠牲を払う血の色にも見えてきます。
そう言えば、身投げする前に井戸に投げ込んでいましたっけ、一輪の椿。
椿の花がしおれるとき、花は首からぽとりと落ちます。
不吉な連想が浮かびます。



明るくなって再び姿を現したときは、既にこの世の者と思えません。
跪いて手を左右に広げ、右手に椿を持ち、左手は掌を天に向けます。
遠くの寺で鐘が鳴り、団扇太鼓のような音が延々と続きます。
邦画の音楽のように、弦楽器群が悲しげに奏でます。

本舞台に戻ると三つ指ついて、ていねいに最後のご挨拶。
冥界の鳥羽口まで繋がる物語をここで断ち切って、魂を現世に戻します。



3.木村彩

着物姿で横たわったところから、舞台が明るくなります。
『ゆめ』から覚めるように立ち上がって、『夢幻』の世界へ。
澄み渡る歌声。

  ♪ひとつめの言葉は『ゆめ』・・・・、
  ふたつめは『かぜ』・・・・‘

言葉を説明するようにくちずさみます。
詩的な言葉がまた新たな言葉のイメージを呼び覚まし、
言葉の限界を押し広げて、彼方へ。
言葉はやがて『そら』へと届きます。



おひきずりの着物は抜けるようなスカイブルー。
枝ぶりのよい桜に、淡いピンクと、夕陽に染まる茜色の花が咲いています。
白いショールをまとえば、白いうろこ雲がたなびくよう。
しゃなりしゃなりとすり足、手振りで、様式化した世界にとけ込みます。

曲はアコースティックなものから、ボーカルが多声に響くアンサンブルへ。
やがて潮が引くようにして穏やかに、ピアノと弦楽器に引き継がれます。
脱いだ着物は丁寧に広げ絵柄をこちらに向けます。
着替えた襦袢は、ベージュがかった白、ゴールドの菊花模様をちりばめます。

ピアノの左手が駆けめぐり、余韻を残す間もなく、メロディアスなロックバラードへ。
アコースティックギターにバイオリンがからみ、ベースラインとボーカルとが競います。
飛翔するようにポーズ、こころはそらへと羽ばたきます。



4.沙羅

坂本冬美の素直な歌いぶりに、けれんみのない日舞。
無地のネービーブルーのおひきずり、膝下から覗く裏地は白くて、鮮やかなコントラスト。
純白のレース編みの羽織は、雨を凌ぐように頭上に掲げます。

  ♪朝霧が招く・・・・

で顔見せ。歌詞のあて振りが続きます。

特に2番では、

  ♪いつか雨に 失くした空も・・・・

で目線を遠くにやり、

  ♪涙ふけば 虹もかかるよ・・・・

で目元をぬぐい、頭上で掌を翻します。

所作の領域を超えて、かなり様式化された手振りになっています。
リアリティを失うかわりに、音の流れにのせたおおらかな舞いとなりました。

情感溢れる1曲目から、一転して無機質な伴奏へ。
面前で早着替えは手馴れたもので、白い襦袢にお越で盆へ。

ここからはおきまりのポーズを連ねます。
腰を深く折ってお尻をつき出す、
川面の水をすくうように、上向けた掌を序々に上げる、
掌を外向けてかざす・・・・
おおらかな動きの、そのひとつひとつに自然な表情を浮かべ、キメていきます。

お腰を取り去り、ちょっと咥えてみせます。
襦袢の袖から腕を抜き、後ろ前に羽織りなおして、一礼。
目元でありがとうと訴えて、本舞台に引きました。



5.矢沢ようこ

ストーリーやシチュエーションを排除し、なにかを象徴するように白一色に絞って、舞台芸術っぽい作風です。
浅草ロックでは聴きなじんだ5曲構成で、神々しさと緊迫感に圧倒されます。

仮面舞踏会の白塗りのマスクをかぶり、真っ白で幅の広い羽織を引きずります。
板付で座りこんだ姿勢からスタート。
雷鳴とともに天井近くの照明がフラッシュを2度、3度、浴びせます。
重低音を響かせて、パイプオルガンをフューチャーした荘重な音楽が流れます。
大仰な身振りで本舞台へ、羽織を脱ぎ、白地のスパンコールドレスに。
生地には鱗のようなキラキラをちりばめて、照明の加減で七色に乱反射します。

2曲目でステージをところ狭しと動き回ります。
3曲目で盆に戻り足をとめ、直立した姿勢で体の軸をぴたっと止めます。
そのまま腕を突き出す、頭上に伸ばす、ウェーブのように引き込むといった動きを組み合わせます。
マイムと似て非なるのは、なめらかでなく硬直してごつごつした動きを選んだ点で、曲調もあいまって異様な緊迫感を受けました。

5曲目は混声合唱を交えたオラトリオのよう。
レイバックなどを挟んで、浅草トリ景のように、大向こうをうならせる演技で感銘を与えます。










番外 雅麗華 賛助出演
   【22,23,29,30日に1公演のみ】

師範代による公開模範演技のような機会でした。
2〜3曲を早着替えで10分ちょっとで踊りきります。
形式は、大衆演劇の舞台で入れ代わり立ち代わり花形が登場して日舞を踊る、あの「歌謡ショー」に近いものです。
しかし選曲では、民謡調、演歌調のタメをきかしてゆったりした曲は少なく、アップテンポでノリのいい曲を、かっこよく平然と踊りきるパターンのほうが多かったです。



30日の楽日は想定外のことが重なって、場当たりなしで本番へ。
アドリブっぽい疾走感が色濃く出ていました。

簡単に紹介すると、

1曲目 ミディアムテンポのハードロック
 紺に花柄浮かべたモダンな着物。銀の簪、耳元に桜の花飾りをポイントに。

2曲目 黒人系の音楽でメリハリのあるリズム
 全身をタイトに覆う黒ずくめの衣装。その上から光沢のあるシルバー胴着、ちょうどコルセットのように着けてうしろを尾羽根のように伸ばします。

3曲目 アップテンポのハードロック たたみかけるように一気呵成に
 黒いタンクトップのような胴着、赤の襦袢、赤のスカートを重ねた和風の創作衣装。



劇場の御好意でもう1曲
 (津軽)よされ節にちなんだ陽気な民謡。
宴もたけなわとなった席で、先日故人となった師匠が好んで舞った、思い出深い曲だそうです。
 いなせな若衆といった感じに着物を着こなして、番傘振って仕込んだ桜の花吹雪。
 いっときもステップをとめず流暢な身のこなし。



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