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[8000]1月浅草 騒
=八卦(関東)
=20/02/02(Sun)20:08

敬称略です。


序 三番叟

新年目出度や、三番叟。
烏帽子、紗の羽織、
羽織の下から覗く着物の裾。
着物の生地は黒地に桜、梅を散らし、
正面を向くと、割った裾から裏地の赤が覗いて末広がり。

あらたまって正座で一礼、銀色の扇子をさっと開けば、
『騒』の一文字が。
鈴なりの鈴を手にし、琴に横笛の曲で颯爽と、
花道を流れるように摺り足で渡ります。
手にした扇子をひらりと返し、
優雅な着こなし、身のこなし。
実り多き年よと、祈ります。



1景 お座敷 橋元まこ

芸者衣装のメインを中央に据え、袖から一人、二人、三人と加え、
踊り子総出でお座敷にお迎えします。
手にした扇子を達者に捌き、
掛け合い、戯れ合い、すれ違い。
集まって離れて、今度は揃えて調和の美。

お囃子はスリリングにモダンな三重奏。
お三味にフラメンコギターに、パーカッシブなスラップ奏法のギター。

♪Burst up high in the sky♪

お先にと、ギターが単純なフレーズを提示した後に、
お三味がせり上げて旋律をなぞり移調を繰り返し
フラメンコギターはリズムを引っ掛けて走り抜けます。
ギターは打楽器としてぐいぐい引っ張り緊張を高めます。

ベッドは赤い襦袢にお腰。
アシッドジャズでダンサブルな曲調。
メロディアスなギターの歯切れよい音に、
献身的なポーズを打ち上げます。
花道戻りは移動台の上で、
さっと開いた扇で要返しに扇子回し、また要返しと目まぐるしく。
場内盛り上げて終わります。



2景 江戸の怪盗 武藤つぐみ

今夜は冷えるねぇ、やけに犬めも吠えやがる・・・
おっと通しておくんなせい、御用だ御用だぁ!

丑三つ時の江戸町屋、甍を渡るねずみ小僧。
御用提灯、六尺棒、追っ手を煙に巻く逃走劇。
あちらと思えばまたこちら、鬼さん手の鳴るほうへ〜
翻弄される与力のDNAは、いずれ銭形のとっつあんに流れつくような。
コミカルな展開を大真面目な顔で演じられると、
ぁあ〜8時だよ全員集合を思い出します、また見たい。

千両箱を抱えた小僧は、町屋から裏長屋に富を再分配。
手を差し伸ばす客席に、小判がじゃらり、雨アラレと降らせます。
出初式のはしご乗りよろしく、高所アクロバット。
14段はしごが右へ左へと揺れるなか、
小僧の手を離れたお宝が、LEDを反射してキラキラリ。
のけぞり、開脚、ぶら下がり・・・目を見張る身のこなし。
その姿はカクテル光線と交錯しながら、サーカスのように幻想的です。



3景 江戸のアイドル 西園寺瞳

あのな、笠森稲荷んとこの水茶屋で団子をほうばっていたらよ、
そこの給仕の娘が、マジかわいっス(はあと)

島田髷に黄八丈の小袖。
色白で、うりざね顔に、涼しげな眼、品のある口元。

どこに行くにも一緒、気の合うメンズ3人組、
おなごの趣味も一緒とは、揃いも揃ってひとめ惚れ。
気を引くためにあの手この手のプロポーズ合戦は、
花<服<銭で、勝負あり。
仙ちゃんってば、欣喜雀躍、喜色満面で、銭を握りしめた、とさ。

着替えて花道上りは、和傘を手に。
水色の傘に、さわやかな水色の襦袢。
レース生地の奥に桜のような花柄が埋もれています。

明るい曲調に合わせてふわりとポーズ、
傘を片手にバランスを取り、幸せそうな笑みを浮かべます。

♪Someday my prince will come
Someday we’ll meet again♪



4景 鳳凰 沙羅

令和に吉兆をもたらす鳳凰、キメラのお姿で降臨いたします。
四人の精霊と戯れて、嬉々として和やかに舞いました。
五色にちなむ着物の色の取り合わせ、前帯たらし、背側には波打つ魚のひれ。
つむりに鳳凰をかたどる冠が、燦燦と金色に輝きます。

胡弓奏でる旋律は、表情豊かにたおやかに、肥痩線のごとき軌跡を描きます。
竹林はエメラルドグリーンの光に包まれて、
精霊はコサックのように、バレエのように、技巧的なステップでアンサンブル。
時折、竹の実をついばみながら、一体感のあるステージを繰り広げます。

ベッドは冠をつけたまま、白いレース織の襦袢で。
盆に踏み込んで胸を広げ、はばたく姿は有翼のニケ。
表情翳り、曲はダークに。
去り際を予感させ、滞空時間の長いポーズを保ちます。

きっといつかまた探し出してあげるから。
言葉を耳にしながらエンディング。
はかない気持ちで見送ります。

♪No matter where you go
I will find you, if it takes a thousand years・・・♪



5景 お花見 みおり舞

紅白の垂れ幕を背にセレモニー。
ホストの旦那に奥方に、コンパニオンでお迎えいたします。

おっと夫婦ゲンカか、いきなりの。
口角泡をとばして罵り合いか。
荒々しいジャズ進行に、セリフはスラング満載で。
ブチ切れるエモーショナルなこのシーンにぴったり。

サブキャラでキレイキレイなコンパニオンは、
旦那さまにチト色目を使ったものだから、
奥方の顰蹙をかって、あらたいへん。
旦那がどっかにしけ込んでからというもの、
奥方は怒り心頭、興奮が収まりません。

嫉妬と恨みに身を任せ、
コントロールを失ったように激しいダンスで鬱憤を晴らします。

ベッド1曲目、なだらかなバラードで。
シックな黒のランジェリーで、
マイムに、脱力系の動きと流れます。

それもつかの間、終曲は、ド派手なヒップホップで弾けまくります。
ランジェリーを咥えて歯噛みしてこちらを睨みつけながら、
癇癪を炸裂させて場外乱闘か、客席に降りて挑発行為。
劇場型のパーフォーマンスに徹し、
ワイルドなキレキレのダンスで猛威を振るっては、
唐突に去っていきました。



6景 弓 須王愛

武装したもののふが、突如暗がりから現れます。
弓の長さは身の丈を越えて2m。
弓をつがえ、しばし待ち、息を吐くようにいかにも自然にすっと引き手を離します。

‘自分をまず外から内へ向け、その内も次第に視野から失う・・・’

師範がおっしゃるなら、その通りなのでしょう。
破壊的な威力を目の前にしたからには、極意を得んと、ひたすら道を求めましょう。

花道上りは無心になるためのルーティン。
いつものように、鉢巻、手甲、緋縅の鎧、脚絆、袴を順に脱ぎます
胸の白い晒を解き、江戸紫の腰巻ひとつになって前盆に進みます。

心を曇らさず、逸らず、無心のままに。
3点ブリッジで挙げた手が、矢のようにまっすぐ天を指しました。



7景 はいから 南まゆ

じゃじゃ馬娘とイケメン少尉の悲恋物語ですが、
出会いから恋が芽生えて寄り添うまでをコメディタッチで描きます。

袴姿で自転車をさっそうと駆る紅緒さん、少尉に衝突して、あぁ御免!
出会いから急転直下、典型的な少女漫画の展開にノッて、
ダンサー4人も色鮮やかな袴姿で誇らしげ、ミュージカル風に盛り上げます。

車屋を軽くひねった後には、モテ過ぎの少尉にすねてみせ、
さぁ、いよいよ奔流のような大正ロマンに突入するところで、
皆と別れて、すっと花道じひとり旅へ。

朗々とクラリネットが音色わびしく、
‘恋せよ乙女〜〜’
と旋律を奏で、出征、少尉との別れをほのめかします。

本舞台からのマゼンダの照明に包まれ、メインは輝かしい桜色の襦袢で前盆へ。
紫の矢羽根模様の帯が、桜色に映えます。
頭に赤いちょうちょうのリボン、かわいらしく。

複雑な想いを胸に仕舞い、さりげない歌いぶりに気持ちをのせて、
心地よくポーズを放ちます。

♪いのちある限り 道は続いていく〜
 〜行く手に待つのは新しいあした♪

悲恋のままで終わらない、明るい予感がいたします。



9.フィナーレ

からりとしたジャズで、ラテンっぽいノリ。
紅白の創作着物にサンバ・カーニバル風の白いトサカ、白い尾羽根。
ねり歩けば白い羽根がステージを埋め尽くします。
カーテンコールの前に、太鼓叩いて景気づけ。
活気あふれて、騒、Roaringを締めくくります。



                           以上

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