イギリス海岸のバタグルミ | イギリス海岸の歌 (歌詞のあるページにジャンプ) |
私は何の感慨もなく 初めてイギリス海岸に立った。賢治のファンにして想像力に欠けるといわれれば、言葉もないが「賢治縁の場所」というフィルターがなければ、やはり何の変哲もない景色である。ただ陽の照り返しの中で煌めく、青白い泥岩の河床だけが賢治をささやかに弁護していた。 今では水かさが増して、滅多にこの泥岩層を見ることは出来なくなったらしいが、この時は乾燥した河床を自由に歩き回ることが出来た。私はしばらく河床の淵に立ち北上川の流れや遠くに霞む北上山地の山並みなどを眺めていた。 何時しか私は陽の光の眩しさに ふと足許に目を落とす。或いは かつての「化石バカ」の哀しい性(笑)だったのかも知れないが ..まもなく私は泥岩の表面に僅かに浮き出た変調に目を留めた。クルミの化石だった。 「バタグルミ」。それは、賢治の発見によるもので、私の「化石」の師匠のそのまた師である早坂一郎博士が報告している。賢治はイギリス海岸に博士を案内し、博士はその論文の結びに賢治への謝辞を述べている。 そのバタグルミは ほぼ完全な形を留めていた。私は これを賢治からの贈り物と信じた。「化石」との関わりの中で揺れ動いていた私に対する、ひとつの答えなのだと。この日以後、私は時々イギリス海岸を訪れるようになった。だが この時以来バタグルミには せいぜい欠片くらいにしかお目にかかっていない。 |
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【早坂一郎 「岩手県花巻町産化石胡桃に就いて」 大正15年2月発行 地学雑誌444号.p.55-p.65
..論文は胡桃化石が主題だが, 偶蹄類の足跡の存在についても触れられてる。
謝辞に「伊藤博士並びに化石採集に便宜を與へてくださつた盛岡の鳥羽源蔵氏花巻の宮澤賢治氏に感謝の意を表する、(大正十四年十二月二十二日)」とある。
】 (賢治と地質学との関わりについては宮城一男氏の著書「宮沢賢治 地学と文学のはざま」他、に詳しい。) |
賢治の歌曲に対して、BUNBUN氏とちえりんさんのMIDI演奏に肥後さんのグラフィックイメージでCollaborationしたものです。(Graphic Gallery CYBERBUST) |
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