今年の東京はひどい冷夏だったようですね。皆さんお変わりないでしょうか。こちらはいつもの年より少し雷雨の多い夏だったとのことですが、もう5月の末には陽射しも強まり、6月早々にプール開き。僕の住まいはダウンタウンから20マイルくらい離れた郊外なのですが、どこのモールやレストランの駐車場でも、ハイスクールを卒業したばかりと思しきティーンズの男女のグループが楽しそうに集まっていて、なんかそんな彼らの浮かれた様子も待ち焦がれた夏の到来を街中で喜んでいる風景に、とても似合っていました。 それから数日後、今度はダーティー・ダズン・ブラス・バンド DDBB の告知をタウン誌で見つけて、とある金曜日の晩に大学のすぐ近くの、これまた小さなパブに出かけてまいりました。入場料10ドル也。今回は9時開演とあったので、週末とはいえそんなに遅くはなるまいと思い、会社帰りに料金を払って手首にテープを巻いてもらったまま、一度帰宅。カレーライス掻き込んで9時過ぎに再び会場へ。ところが、まだほとんど人もおらず、ホントに今夜ここでそんなイベントがあるの?って雰囲気。まだ外もほんのり明るかったのですが、仕方なく生ビールなど、うぐうぐ飲っておりました。 肝心のニール・ヤングはというと、既に各メディアでも紹介がされているようですが、GREENDALEという新譜・架空の集落を舞台にしたトータルアルバムに基づいた寸劇仕立てのステージで、総勢40人くらいのアクターたちと、完璧な展開でその作品が再現されているようでした。明らかに9・11以降の彼の創作意欲に駆られて湧き出た作品連だということは、その詳しいストーリーや細かい背景を理解できなくてもはっきりと感じられる表現の強さがありました。 そのクリエイティブなパワーにはあらためて感心しながらも、やっぱり初めて見るニ−ル・ヤング。アンコールから始まった「MY,MY,HEY,HEY」や「ROCKIN IN A FREE WORLD」だけでなく旧譜からももっと演って欲しかったというのが正直な気持。「WALK ON」、「SOUTHERN MAN」とか。そういえば先日、この新譜を買おうかなと思いBARNES&NOBLESに向かったのですが、 「渚にて」の再発CDを発見。しばし悩んだ挙句こっちを買って帰ってしまいましたよ。いいでしょ?、別に。 今回、あらためて実感したのは、ニ−ル・ヤングはギタリストなんだということ。ピアノの弾き語りもありましたが、ギターを掻き鳴らして会場をグアングアン揺らしている時のカッコよさは、特筆物でありました。あの歪んだ大音量が快感に感じるのは、いやはやこれは何ゆえ?余計な物を削ぎ落として、いつも同じ歩幅で歩き続けて、その結果変化していくニ−ル・ヤング。好きなんですよねぇ。僕にとってのロックのICONなのです、ポール・ウェラーと同じくらい。 ところで、ニ−ルの曲がその登場シーンにいちばんぴったりはまる野球選手はカープの前田じゃないかと思うのですが、いかかでしょう、虎党の皆さん。 で、僕にとっての「友人のような音楽」。というと、これはやっぱりJTなのです。 ソウルが好きで、サザンロックのレイドバック感が好きで、AORも大好きで。 2月に日本を離れ、着任直後のホテル住まいのさなかに、夏にこの街でJTのコンサートの予定があることを知り、慣れない土地での悪天候の毎日にブルーになっていた自分に、半年頑張ろうと道標を立てて新生活に取り組んできました。その頃までには落ち着けているかな、なんて考えながら。 前夜の雨降りのおかげで空気がすっかり入れ替わって、その日は真夏の天気にしては湿度が低く終日爽やかな晴天で、オハイオ川からの風も最高級の快適さを運んでいました。 ドラムはスティーブ・ガッド。コーラスにはデビッド・ラズリ−とバレリー・カーター。いやはや卒倒モノです。まだ日の沈みきらない薄暮の夜八時、ほぼ定時に白いボタンダウンシャツにカーキパンツ姿のJTが登場しました。HOWDY!と一言。さすがはJT。躾が、お育ちが違うよ。と一人で納得。でも思ったより大柄な彼が、力強いステージアクションでバンドを煽っていたはちょっと意外でした。 ホーンセクションを携えて「IN THE MIDNIGHT HOUR」を熱唱しても、ギター一本抱えて「SWEETBABY JAMES」を演っても、彼のテンションは押し付けがましくなく、でもこちらの目をそらさせない強さで会場全体を包み込んでいました。 僕の席は(自慢しちゃうのですが)3列目。でも目の前にいるのに、その安定したボーカルと一糸乱れぬバンドのバックアップで、ちょっと生のライブ感に物足りない感じがしたのですが、それは文句言うことじゃありませんもんね。なんていうかこう、せっかく初めて目にしたのに、余りに完成し尽くされていたもので、こちらの思い入れの強さが、ちょっとはぐらかされた感じがしたのかな。まあ、複雑なファン心理ということでお許しを。 そんな風に、おそらくいろんな気持でいろんなファンが集まっていたのだと思います。僕は大好きな「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」や、「Brighten Up Your Night With
My Day」(なんて素晴らしいタイトル!)も演ってもらえず、ちょっと心残りも。でもやるわけないか。「Your Smiling Face」や「Mexico」で盛り上がるアロハ・シャツのおとっつぁん達は、たぶんその殆どが2週間後の週末に、同じ場所で行われるジミ−・バフェットのライブに再び集まってくるのでしょう。待ち侘びた夏を両手一杯のビールとともに、目一杯楽しんでいる様子は見ている僕まで幸せな気分に。 一人一人にとって、その晩のハイライトは違ったと思うのですが、それでもショーが終わりに近づいた頃に歌われた「You’ve Got A Friend」には、その場にいた全員が胸を震わせていたのがわかりました。10年くらい前に東京で行われたキャロル・キングのコンサートで「君の友だち」が弾き語りされたとき、会場中ですすり泣きが聞こえたと聞いたことがありますが・・・わかるわぁ、それ。「EVERGREEN」という言葉の意味を、肌で感じた瞬間でした。 で、アンコール最後の嘘のような風景。照明の落ちた舞台で一人ギターを爪弾くJTの周りを、信じられないくらいたくさんの蛍たちが飛び回っていました。あの場面、一生忘れることは無いんじゃないかな。自分の年齢を忘れて、このBITTER SWEETな夏の瞬間に浸っておりました。 たしかB・スプリングスティーンは映画「BADLAND」を見て、「NEBRASKA」を書き上げたとか。(なぜか僕は彼の作品の中で このアルバムが一番好きで)。 この夏はそんなわけで、思いがけず長年待ち望んでいた二人のライブを体験する機会に恵まれ、なにやら思い入れたっぷりのこっ恥ずかしいお便りになってしまいました。でもまあ、いいか。 最後に7月4日の独立記念日の日に近くの公園で行われたイベントついて少々。 完璧な好天の中、幕開けたステージは以前に東京で見たときよりも土地柄を意識してか、ややカントリー風味の濃い内容でのどかに始まり、徐々に「Jesus Is Just Alright」や「Takin’ It to the Streets」あたりの連発で盛り上がってきたのですが、同時に北の空から明らかにそれとわかる凶暴な雷雲が迫り地響きが鳴り始め、こりゃピンク・フロイドの方が気分だね、なんて余裕かます暇無く真っ暗になったと思ったら、タープテントが空中に巻き上げられ砂埃と豪雨。 帰り道すがら、木が倒され道路が封鎖。信号は停電してるし、叩きつける雨で前は見えず。翌日の新聞によると死者も出たDEADLY STORMだったようで。あのあとドゥービーの連中、いったいどうしたのかな。
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To 嶋田歩 "こちらも先週末から一気に冷え込みが厳しくなり、日中でも息が白くなるほどでした。そろそろ行き交う人たちの挨拶もHAPPY HOLIDAYSになり、周りの家からも暖炉の焚き火の匂いがしてきます。本格的に冬支度が始まったこのごろです"なんて、素敵なお便りを最近いただきました。赴任先のオハイオで迎える初めての冬ですね。半年頑張ろうと道標を立てた新生活。もしかしたら島田さん、音楽にあふれてもっともっと幸せものになっちゃうかも。それにしてもJTクンは、幸せクンです。これからも楽しいリポートお待ちしてます。 お手紙、そっとご紹介してしまってゴメンナサイ。(大江田信) |
DAYTON OHIO 2003 | 1 |
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