メカニカルキーの雄、CHERRY MXスイッチ
前出のCHERRY製のキースイッチ、これが私の一番のお勧めスイッチです。 ドイツ製だからってわけでもないのでしょうが、実に堅牢な造りで経年変化の影響も出にくく動作は確実で耐久性も高い(らしい)。 打鍵時におけるスイッチのがたつきも少なく底付き時にも派手な音を立てないのも好印象。 普及度ではALPSスイッチの足元にも及びませんが、高級メカニカルの代名詞といっても差し支えのない精度と品質を誇っています。
手持ちのCHERRYスイッチ採用キーボードのキートップを外して中をのぞいてみると、様々な色のスイッチが見て取れます。 その軸の色によってタッチが変えられていて、黒軸、茶軸、白軸、青軸の4種類が存在しているようで。 リニアフィールのオレンジ軸っていうのもあるようですが、これはどこを探しても見つからない。
黒軸はノンクリック(リニア)タイプで押し下げ力が少々強め。
茶軸は微妙なクリックタイプで軽い押し下げ力のわずかなタクタイル感。
白軸はクリックタイプで押し下げ力が黒よりも重くタクタイル感も強い。
青軸はクリックタイプで感触はクリック音の出る茶軸という感じ。
一般的にキーボードマニアの間ではノンクリックで軽いタクタイル感の茶軸が最も評価の高いスイッチのようです。 この茶軸を使用したビンテージ物のキーボードは使い込まれた中古にもかかわらず1枚あたり1〜2万円で取引されるほどの人気ぶり。 メンブレンが新品同様のものですら捨て値同然の価格で取引されている現状からすると、まさに驚き。 さらに新品となると物によっては3〜5万とか…。
CHERRYスイッチの詳細についてはQwerters Clinicの「技術情報」→「Cherry MX Keyswitch」を参照してみてくださいな。
私も茶軸と黒軸のキーボードを所有していますが、茶軸は確かに打ちやすいです。
黒軸もリニアな感じが非常に良いのですが、少々押し下げ力が強すぎて指に負担がかかるのが残念。 でもキーボードに適度な反発力が必要という方には最適って言われていまして、黒軸の愛好者も非常に多いようです。 さらにその適度な反発力から高速打鍵には黒軸が向いていると言う意見もあるそうです。 でも私の個人的な意見としては茶軸がタクタイル感、反発力、静音性ともに最高という判断ですな。 次点が青軸。 茶軸に近い感触でカチっていう音の出るタイプです。 私は音が出るのが好きじゃないので回避していますが、打っているっていう実感があるのは青軸でしょうね。 プログラマとか文書のテキスト起こしを本業とするキーパンチャーに向いているかもしれません。
CHERRYスイッチ特性比較図
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軸色
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押下力
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タクタイル感
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クリック音
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ストローク長
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MX茶軸(メカニカル)
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軽い
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有り
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無し
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4ミリ
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MX青軸(メカニカル)
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軽い
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有り
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有り
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4ミリ
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MX黒軸(メカニカル)
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重い
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無し
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無し
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4ミリ
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MX白軸(メカニカル)
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重い
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有り
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無し
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4ミリ
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ML黒軸(メカニカル)
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少し重い
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無し
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無し
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3ミリ
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MY白軸(メンブレン)
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普通
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無し
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無し
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4ミリ
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MLスイッチはコンパクトタイプに、MYスイッチは廉価版に多く搭載されています。 MXスイッチは言うまでもなく高級タイプのキーボードに搭載されるもので、接点に金合金を使用した特殊なもののために耐腐食性、耐摩耗性が強いそうです。 スイッチタイミングはMXが2ミリ、MLは1.5ミリほどの地点でスイッチが入る設計です。 ただ、MLスイッチはMXスイッチと違ってキーストロークが短いからか、斜めに打鍵してしまった場合にザリザリと側壁に摺れるような音と感触があるので、あまりオススメできないかもしれません。
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<参考>
CHERRY茶軸を装備しているキーボードは少なく、改造品を除けば現在確認されている物は次の物だけです。 一番安く、また手に入れやすいのはダイヤテック(FILCO)のMajestouchシリーズ。 形状が特殊なKINESISのキーボードは日本ではぷらっとホームやラカなどが取り扱っています。
★CHERRY G80-5000シリーズ(絶版・英語配列・ユーロ配列etc、エルゴノミクス、テンキーレス)
★CHERRY G80-1838シリーズ(絶版・英語配列・ユーロ配列etc、コンパクト)
★CHERRY G80-1863HUMUS-2(英語配列・コンパクト・黒筐体、キーボードショップネオテックのオリジナルモデル?)
★CHERRY G80-3000HKMUS(絶版・英語配列・フルサイズ・黒筐体)
★CHERRY G80-3000LXNUS-0(英語配列・フルサイズ)
★COMPAQ G80-11801シリーズ(絶版・英語配列・ユーロ配列etc、トラックボール付コンパクト)
★COMPAQ G80-11802シリーズ(絶版・G80-11801と型番違いのほぼ同じ物)
★KINESIS Contoured Keyboardsシリーズ(英語・ユーロ配列etc、特殊形状)
★ダイヤテック(FILCO) Majestouchシリーズ(日本語配列・フルサイズ)
★ダイヤテック(FILCO) FKB91JP(絶版・日本語配列・テンキーレス)
(注)G80-3000シリーズには上記の型番の物の他、もしかしたら未確認の各国語版も存在しているかもしれません。
もうひとつのメカニカルキーの雄、ALPSスイッチ
CHERRY以外では日本のアルプス電気製であるALPSスイッチも昔から高い評価を受けています。 というよりも、むしろCHERRYよりも遙かに普及度の高いスイッチでしょう。 これは昔から各種キーボードに使用されている実績のあるメカニカルスイッチで、メーカー独自設計品を除けば市場に出回っているメカニカルスイッチのほとんどがこのALPSスイッチ採用品だったといってもいいでしょう。 これは従来の物よりも遙かに入力確実性に優れ、チャタリングや初期不良発生率の低さ、そして高い精度を誇っていました。 黄軸、緑軸、黒軸など色分けされた種類も豊富でタクタイル・クリック共に多数のバリエーションがあり、好みに応じて好きなスイッチを選べるという幅広い選択肢も魅力で、ある意味最終完成型といってもいいスイッチでした。
しかしながら、すでにアルプス電気はメカニカルスイッチの生産を中止してしまっており、現在出回っているALPSスイッチは簡易軸と呼ばれる形だけそっくりのニセ物スイッチ(台湾などで生産されていると思われるコピー品で日本のオリジナルALPSとは関係がないといわれている物)などがほとんどで、寿命が短かったりキートップががたついてしまうなど精度が低く品質の悪い物ばかりです。 もちろんビンテージ物の中古キーボードに採用されている本物ALPSスイッチはしっかりとした純正品なので最高といってもいい物ですが、悲しいかな本物ALPSスイッチはそれなりに酷使されている物が多いようなので、理想的なタッチが保存されている物を発掘できるのは非常にまれなのです。 で、無難かつ最適な選択としてCHERRYとなるわけで。
この簡易ALPSスイッチは90年代中期から見られるようになってきて、現在では新製品のメカニカルは全てこの簡易ALPSスイッチに置き換わってしまっています。 どこかが本物ALPSスイッチで良い物を作ってくれたらいいのですが…何とか復活して欲しいものです。
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