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[7909]浅草8中〜8結
=八卦(関東)
=10/09/11(Sat)08:17




敬称略です。


1.月川ひとみ

 淡い水色に桜色、涼しげな浴衣姿の7人で、ねぶたの節を振り切るかのように、熱いサンバのリズムを刻みます。
 ショールを肩に掛け手にしたうちわで涼を取るわ、蛍を追うわ、竹とんぼのようにくるりくるりと回して見せるわ… 優雅な風情とは裏腹に、白足袋で前がかりのステップをタン、タタン。
 照明も派手さを増してはじけるように後押しして、飛散る汗、荒い息遣い、沸き起こる興奮をつぶさに拾ってみせました。
 さて花道往きは、透き通るような薄手の紫の襦袢を、羽衣のように羽織ったり翻したり、背後から射す白色光を、紫の生地が遮って目に優しく届きます。
 ベッドの1曲目終わりは、盆の縁で手足をたたんで背を向けて横たわります。なだらかな背中の起伏、浮き上がる骨による凹凸を克明に見せてリアルでエロティック。
 フュージョン系のおおらかな曲調に、新体操のように全身運動で応じてみせて、腕のつけねから指先にいたるまで均質な動きを心がけていました。音節を思いきり引き伸ばしてゆるやかな中にも起伏に飛んだ流れを求めます。



2.彩音しゅり

 うだる暑さ、遠のく意識、蜃気楼のように景色が熱気にあおられて歪んで見えるような…、 そんななかでも羽飾りで派手に飾りたてた5人は、カーニバルに加わり気力を振り絞って踊りまくります。
 鈍重な拍子、間延びする音と音の間、遠くからでもよく聞こえるドラムの響き、叫ぶようなワイルドな歌声、バイタリティ溢れる音どもが、南国の高い空に吸い込まれるように消えていきます。
 鷹揚に練り歩きながらダンス、ダンス、ダンス。盛り上がったヒップをプルプル振って背中の羽根をちぎれんばかりに揺さぶります。
 頭の中を沸騰させ、南国幻想に浸りきったところで、メインは白いドレスをなびかせくねくねと軽やかに、ジュリアナ東京のようにイケイケで花道を上ります。
 ベッドの半ば、腰を落とさないままキメるスワンが印象的で見栄えがします。のびのびと、惜しみなく数々のポーズを放って舞台を埋め尽くします。



3.沙羅

 雷鳴、シャワー、暗がりからシルエットで浮かび上がる5人… ものものしく登場します。黒地に赤のアクセントを添えて、明るい色の蝶の柄を染め抜いた、沖縄風の民族衣装。
ゆるやかに始まった冒頭から、加速・減速を繰り返す変拍子。力まず、粋に振舞うスタイリッシュな振付で、シンメトリーできれいに揃えます。
 メインの着替えが始まる2曲目で、よさこいの鳴子を手にして響き渡らせて、余韻の残るなかをバックダンサーは引いてゆきました。
 花道から盆にかけて、イエローの照明を浴びるとき、桜色だったレース地のベッド着が、なまめかしくサーモンピンクに染まります。花道往きでは動きを抑え、期待と緊張を高めて盆に降り立ちました。
 曲が比較的短いのですが、そこを生かして、のけぞり仰ぐポーズでは長い静止に入らずに、淡々と流して花道戻りへ。
いつしか照明の色はイエローから、濃厚なマゼンダ、そして爽やかな淡いブルーから白色へ。花道を遠ざかる姿が、霧が晴れるように鮮明に浮かび上がります。
 仰ぎ見て、ふっと力を抜いた瞬間、開き直ったように大胆に… 大輪の華を咲かせます。



4.桜庭彩

 セパレートにミニスカート、あどけない3人娘が元気いっぱいにGO!GO!GO!
 赤、青、黄と、3人に3色それぞれの衣装を割り当てて、歯切れのよいリズムにのって競うように、跳ね回ります。
 気前よく愛想振りまいて、惜しみなく美脚さらして、シンプルなメロディが耳になじんだ頃には、お転婆娘の掛け合い、じゃれあいも始まって和やかに。
 曲の終わりは唐突に。遊戯の「フルーツバスケット」のように、イチ抜けの黄色い衣装の娘が、巨大なサンフラワーを抱えて躍り出て、ベッドの権利をつかみます。
 大輪の花に負けない満面の笑み、ピンクとホワイトの2色をあしらったワンピース姿で、はつらつと健康美を誇示します。
 花道、盆入りからは、しなやかに体を泳がせるベッドへ。
 立ち上がりからは豪快にそそり立つポーズも組み込んでみせました。ノスタルジックに響くバラード調の曲が寄り添います。



5.はるき

 もだえるようにうなるサックス、キレまくるドラム、荒々しいジャズの洪水を、変奏曲形式でつむぎます。
 激しいビートにのって狂おしく踊りまくる数分の間、花道往きと戻りで使ういつものゆったりした曲はカットします。陸上のトラック競技の200m走のように、トップスピードのまま、完全燃焼を目指します。
 メインと相方の二人は、ラフなシャツにゼブラ模様のレギンス風のコスチューム、サバンナを疾走するしまうまのように奔放に、二人横並びで掛け合いで、互いに相手のバランスを突き崩すように、時間差でループやスパイラル。さらに二人のレディが加われば、アルゼンチンタンゴのように肩をそびやかし、情熱をこめて蹴りあうようにせめぎあい。
 トップレスになってソロへ、白い肌をさらして花道を駆け上がります。
 息つく間もなく静止ポーズをふたつみっつ… ストレートな音に追い立てられるように花道駆け戻り、暗幕の前でスポットライトを浴びたと思ったら、かき消すように姿を隠します。



5.安田志穂

 接近するや一瞬にして発火して、燃え尽きる真夏の恋。男女二人は、熱しやすさを象徴するように真っ赤なスーツとドレス。ラテンのノリ、社交ダンスのようなステップで、男女二人はさえずるようにコミュニケーションを交わします。
 はじめに誘ったのは女のようにも見え、誘いにのって手を出したのは男のようにも見え… 遊戯にも真剣にも見えながら、真相はすべて藪の中。二人の応酬が激しさを増し、挑発と煩悶との間で揺れ続け、ついにはダンスによる表現を超えて、体当たりの演技へ。女は組み敷かれ、体をまさぐられ、事の顛末の後に、その場に置き去りに。
 傷心と悔恨の情をせつせつと綴るベッド。背景で暗幕を閉め切って、やるせないゴスペル調の曲で盛り上げます。
 芝居に傾けば重くなる、舞踊の延長線上のベッドでは虚しい… どちらの路線にも偏らず、表情を主体に目線を自在に操って、シリアスながら胃もたれのしないベッドに仕立てます。



7.灘ジュン

 玲瓏な肌の和風美人は、遊び女のセンスを感じさせるあでな着物でまみえます。赤いチャイナで揃えたおつきのクーニャンたちが、メインを取り囲んでは、つかず離れず、不規則な動きを重ねます。頑強な結界に阻まれるように、目に見えない檻に遮られて翻弄されるクーニャンたち。不吉ですが、それでいてチョッとユーモラスなクーニャンたちを、クールなメインと対比させて眺めます。
 高貴な紫と朱を織り込んだ羽織を剥いで、渋い色合い、落ち着いた色合いの着物姿。赤い襦袢で花道たどる頃までに、穏やかな管弦楽は潮が引くように静まってゆき、一瞬の静寂を受けて、繊細なピアノが旋律を、副次的な旋律をチェロが朗々と奏でます。か細い声が希望とも憧れともとれる思いを歌い上げ、周囲を闇に閉ざされて静かなベッドへ。
 ダンスパートの人形振りから、能面のように表情を殺すベッドの入り、静かに佇んで微細な変化を兆す表情で引き付けます。氷のような世界を、瞬きひとつで破った場面では、こちらが動揺してしまいました。
 その空気を引きずって、盆の立ち上がりから花道戻りは穏やかに。気高い風情で律儀に別れを告げました。





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