敬称略です。
1.真白希実
勝利を目指してチームワークを固める、シンクロナイズド・スイミング、チーム「Yoko」。努力の上にも努力、忍耐に次ぐ忍耐を重ねます。
逆光のなかに浮かび上がる群像、直立姿勢は、なんだかスポ根アニメのタイトル・ロールを思わせます。そこはかとなくユーモラス。
おいっち、にぃー、おいっち、にぃーと、ジャージ姿で入場行進も生真面目に。一同整列、揃いの水着に着替え、禁欲的に演技します。
連日の過酷を極める特訓に、出演者の筋肉も悲鳴をあげますが、歯をくいしばれェ〜、水面に浮上したときは咄嗟に、明るい笑顔に変わります。
個人的にですが、金メダルを差し上げましょう。
メインは颯爽とバレエのステップで花道を駆け上ります。
背負うトレーナーの背には、赤い縫い取りで燦然と、劇場の名が輝きます。
ためらうことなく明快なベッド。爽快に、3連のポーズをスパッとキメました。
2.魅麗
グレーのビニールレザー風のレオタード、全身を叩きつけるようにダイナミックなジャズダンス。
舞台中央に置いた椅子にこちら向きに掛け、物々しい序奏のなか、逆光浴びてドラマチックに登場します。
ノリのいいビートは、ややスロー。勢いに任せることもままならず、体幹を酷使して、楷書のように一点一画明確にして丁寧に踊ります。
2曲目はラップ系で粘りつくようなリズム感。一糸纏わぬ身を大きな羽根の束に埋めます。黒い髪、大きな瞳、抜けるように白い肌。羽根はカラスの濡れ羽色でエロチックなコントラスト。
3曲目で終曲は、ユーロビート系を一段とドラマチックにアレンジしています。連続ポーズ後に息をつかせぬ立ち上がり、花道戻りまで、歓喜、狂乱のまま押し切ります。
3.菜摘りんか
まぶしいくらい溌剌としたJK3人娘。
真っ白なブラウスを洒脱に着こなしてキュート、赤いタータンチェックのミニに萌え…
まぁかわいい、と口をついて出そうですが、所詮、人の本性はうしろめたくフェチなもの、そのイタいところを突いてきます。
イキの良さ、ノリの良さを競う3人。疾走感あふれるストレートなロックで、歯切れのいいリズムがたたみかけるなかを、アイドル風の型にはめたシンプルな振りで懸命に追いかけます。この振りをすんなり揃えるのは難しそうですが、じきに音に引き込まれ自然と息が合ってきます。
フェチなコスチュームをかなぐり捨てて、メインはグッとアダルトに。フェロモン満たして花道へ。
キュッと結ぶ口元、毅然とした表情、祈るような目。
ベッドはメッセージ性の強い曲から折り返して、終曲はゴスペルのようにひと言、ひと言を諭すように、ソフトな語り口の男性ボーカルで。
言葉と言葉の継ぎ目で静寂に沈んで、息も詰まらせて、ハッとさせるくらいピュアな世界をくり広げます。
4.仙葉由季
ダン、ダン、ダダン、ダァン!
冒頭に出た4つの音が、運命動機のように変容しながら、曲全体を支配します。
和太鼓や和楽器の響きに融合しながら、シンフォニックでシリアスに。
袴姿の7人が、まなじり決して覚悟をキメた顔、颯爽と演じます。
リズムの饗宴の隙を縫って、副次的なテーマ旋律を弦楽器がここぞとばかり歌い上げます。
毅然としてセンターを譲らないメイン、バックダンサーは左右から押し上げるように寄せては散って、磁場に支配されるように元の隊列に戻ります。
バックダンサーが和太鼓を連打して、息の長いロールで1曲目を締めくくります。
2曲目は4人が二手に分かれて、バチ弾ませて和太鼓で囃します。
花道を押し上げて、メインは大仰に見得を切り、さっと浴衣をはだけた途端、背後で幕が下ろし、天井から射し込むような光で、コバルトブルーの海に染まります。
ほの暗くチェロが憂鬱な旋律を引きずり、ピアノが風と戯れるように硬質なタッチを挟みます。手の先、足の先で、親指と人差指がしごきをギュッと挟んで、ピンと張った様子は、弓をつがえたよう。
気を抜くように静かに緩め、孤独をかみ締めるように蹲ります。
終曲は、てらいのない言葉でストレートに、♪きらきら光ぁるぅ…というフレーズで始まります。4度目にその言葉をつぶやくころに、大河のように力強いエンディングを迎えます。
5.小野今日子
つややかなビニールレザーの表面が黒光りしています。
タイトなボンデージをまとい、無表情、いえ、冷酷な表情。
デスメタルが支配する前半2曲では、胸を張り、肩をいからせ、力みかえってそそり立つ姿が、妙に男っぽく。
傍若無人で乱暴に叩きつけるようなドラムは、流れをときどきスパッと断ち切って、真空状態を作ります。荒々しく咆哮するボーカルにつられて、ステージ上に赤や黄やプラチナと、原色の光が溢れかえります。
花道上りからベッドへは、思いきりリラックスしてしどけない姿をさらします。
まばゆい肌を黒髪と黒いブーツで包んで、媚を売らずに女性らしさをねっとりとアピールします。
ロックナンバーで揃えたステージですが、進むにつれ曲想が大きく変化していきました。荒々しさ、爽快さ、心地よさ…、ビターチョコからメイプルシロップ、そしてサワードロップ。
舞台中央に浮かべたミラーボールから、花道沿いにこちらへ向けてまっすぐ光の矢が突き進みます。分厚い弦楽器群が波のように押し寄せます。映画音楽のセンチメンタルなバラードを大音量で鳴らしきります。
1段1段、階段を上るように積み上げて、ピークで感極まるまで待って、視線を引き込んでポーズへ。ズシンと響くドラムにかぶせて、シンバル一閃。
I’d miss you…
瞬きの間も惜しいほど、壮麗な景観のなか、すっと立ち姿を伸ばしてまま消えてゆきました。
6.鈴木茶織
アテンションプリーズ。
やわらかい発声のひとことが、緊張した旅客の気持ちを解きほぐします。
スカイブルーのウェアに帽子、ふわりと緑とエンジの混色のスカーフを巻いて、色合いをきりりと引き締めます。
雲海が晴れ渡るようにして、薄い紗の幕を開けたとき、制服3人が30度傾斜のお辞儀で礼儀正しくお迎えします。
狭い通路を闊歩して、すれすれでワゴンを通して軽食をお届けいたします。
機内が揺れても慌てず騒がず、アレぇ、お召し物にコーヒーが、あちゃァ、おみ足をヒールで踏み抜きましたか! ごめんあそばせ・・・(ウィンク)
陽気なコメディでフライトを盛り上げ(!?)ます。
胸の鼓動をなぞったリズムでなごませてきた1曲目は、検問のパトライトのけたたましいサイレンで破られます。
ベッドは芝居的な世界から抜け出して、対照的にのびやかに。
めざめのすがすがしさを満喫するように、明るい表情で。盆では、素直な気持ちを綴った歌にシンクロして、ナチュラルな演技で通します。
言葉にならないほど深い思いを搾り出すようにして、身振りを借りて気持ちを訴えます。
7.矢沢ようこ
舞台中央の寝台にメインをはべらせ、天井から照明を直下させ、あたかも満月の夜の湖畔でしょうか…ロマンチックな情景を演出します。
けだるい女性ボーカルがほの暗く、メインの表情も物憂げに、脚を伸ばしてゆらめかせます。続く2曲で、2回の場面転換を迎えます。
通算2曲目で、舞台上手に立てたポールで演技するメインを軸に、6人のショウガールを対置させます。6人が忍び寄ってメインを取り囲んでセクシーに、吐息まじりに赤いベルベット地の衣装に長手袋でなまめかしく迫ります。猫のようにしなだれかかる勢いの6人を、パッとメインから引き離して一列横隊に。支える力を失って、メインはポールの上から真っ逆さま…
3曲目は一転してメリハリきかせたアップテンポなナンバーでチャールストンっぽく。肩をゆすり手を叩いて、7人が一丸となって陽気にはしゃぎます。
ここまでは場面転換するたびにめまぐるしく照明が活躍して、ドラマチックな効果を演出してきましたが、6人と別れてメインが花道にさしかかると、雰囲気を一掃して黄昏時のように落ち着いた風情へ、囁くような女性ボーカルに包まれます。
ローズピンクのベッド着に、白やピンクの薔薇がぽかり、ぽかりと浮かびます。
解いたロングヘアーを波打たせ、首で払うように振り回します。膝や腰を浮かせて水の中のようにゆらめかします。
継ぎ目も縫いあとも気づかせないほど丁寧に仕立てた縫製品のように、ごつごつしたところのない動きで、のびやかで優美です。
花道戻りではますます奔放に。ブリッジから立ち上がりで、伸び上がりながらスッと立つ姿は、ナチュラルでいて威厳をたたえます。
8.フィナーレ
バニースタイルのようにふとももの付け根まで露わにして、その上から燕尾服にシルクハット、メインのみ赤で引き立てて、他は鮮やかなイエローで揃えます。
カーテンコールでひとりひとりがとる挨拶のスタイルは、膝を曲げたり、腰を若干沈めたり…、 さっと左右に払うように手を広げるジェスチャーや、なかにはシルクハットのつばに指をかけ、つつぅーっと半周すべらせてみせて…など、みなさん伊達で洒落者ですね。
頭上のシルクハットを落とすまいとして、姿勢を正して矯正代わりになりましたか。速いテンポ、小気味よいリズムにのってサイドステップへ。
縦列体型のまま左右から2列が、正面からぶつかるように進ませて、ジグザグにひとりずつ相手をかわして1列に融合させるなど、凝った動きが随所に見られます。
いよいよ最後に閉まりかけた幕の向こう側、ほっとして見合わせる顔と顔。イエローのシルクハットをいっせいにはずし、なごんだ笑みを浮かべます。
以上
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