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第19回 第5回演奏会企画
「CUMC1972とシルクロードの出会い」その2

交響幻想曲「シルクロード」。鈴木静一作品の中でも大作中の大作。「この作品はマンドリンオーケストラと 言うよりレギュラーオーケストラの性格が強い作品で、多くの管楽器群に対しマンドリンレギュラーも当然多数で あることが条件となります」と作曲者自ら語っているように、なかなか安易には取り上げられない作品なのです。
曲は1963年完成、岐阜マンドリンクラブによって初演され、それ以降慶応大学/北海道大学/青山学院大学の マンドリンクラブが取り上げていましたが、100人超す大編成での上演は初めてであり、その点で鈴木先生も かなりの期待を寄せていたのではないかと思います。
理工学部の一角にあった富坂の練習場にお出でになる回数も増えましたし、演奏会直前の岩井での関大との 合同強化合宿にもわざわざ足を運んでくれ、細かい指導をして下さいました。

岩井前芝荘
岩井前芝荘

音が反り返る小さなドラの叩き方、第2楽章のタクラマカン砂漠の場面ではキャメル・ベルの音が響き過ぎるので、 タオルで弱音器代わりに包んだり、第4楽章の蜃気楼の場面ではマンドセロのメロディーをサウンドホールの はるか左側で弾く奏法を教えてもらったり、第6楽章のフルートソロの指導をして頂いたり……
フルート・ソロと言えば、当時フルートトップの藤井氏が「細川ガラシャ夫人」のフルートソロを鈴木先生から 直接指導を受けていたこと思い出します。 琴に見立てたギターと絡み合うあの美しいフルートソロです。 インテンポで始まり中心部から最尾部に向かってのアゴーギグが自然で美しい流れを作り、楚々とした ガラシャ夫人の美しい姿が浮かび上がるようでした。 言うなれば藤井氏のガラシャ夫人のソロは鈴木先生直伝と いうことになるのでしょうか。
岩井での夜、先生は練習の汗を風呂で流し1泊されました。 女風呂を貸し切り、もちろん指揮者の藤本氏とコンマスの瀬村氏がお供し、 先生のお背中をお流し申し上げたことは言うまでもありません。 

「交響幻想曲シルクロード、シルクロードとは、東は唐の首都長安から西へ広漠たるユーラシア大陸を貫き ユーロピアに達する交易の街道である。2世紀の初期、ローマ人は遥な東洋から運ばれてくる“絹”と呼ばれる 神秘なまでに美しい織物を知った。 美しい絹はたちまちローマ人の心を捉え商人は争い隊商を唐に送り、 王侯は使節を派遣してまで絹を求めた。行程は2万キロを越え、実に2年半を要する大旅行であったが西に東に キャラバンは絶えることが無かったという。
第1楽章、序奏とキャラバンの出発。曲は不安定な前奏で始まる。 この部分はキャラバンの苦難に満ちた旅程を暗示し、金管がキャラバンの主題を提示する。 静かな鐘の音をギターがハーモニックスで奏し帝都長安の夜が明ける。今日は遠いローマから絹を求め 派遣された一団が帰るのである。 ドラが鳴りホルンが出発のファンファーレを高く響かせ 数百のラクダで編成された壮大なキャラバンが出発する。」

第1楽章のナレーションが終わり、いよいよ曲が始まる。一瞬の緊張の中、南房総岩井での合宿の夜、 鈴木先生の背中を流したタオルを指揮棒に持ちかえた藤本氏の右手が勢いよく振り下ろされた。 公会堂の天井が吹き飛ぶのではないかと思われるほどの大音響がホールいっぱいに鳴り響いた。 そして次に現れた2本のホルンとトロンボーンで奏されるキャラバンの主題は、多数を占める弦楽器群と みごとに溶け合い、思わずこれがマンドリンオーケストラの音かと疑いたくなる程の柔らかく厚みのある 素晴らしい響きとなって、眼前に壮大なキャラバン隊をみごとに浮かび上がらせました。
しかし、その時、文京公会堂のミキサー室はたいへんな騒ぎになっていた。たかがマンドリンオーケストラと 高を括っていた録音係は録音しているテープデッキのレベルメーターを見て唖然とした。 曲の冒頭でのあの大音響でメーターの針が振り切れて右隅に張り付いたまま微動だにしない。あわてた係は 急いで録音レベルを下げた。 しかし、その後、曲はギターのハーモニックスによる長安の夜明けの場面の ピアニッシモに変わり、今度はあわててレベルを上げている。 後に作成したLPレコードを聴くと、 残念ながらこの様子はしっかり聞き取れる。


2006年7月25日更新
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