よくある話だけど、指揮者がオケのほうに引きつられてって言うと表現が悪いかもわかんないけど、 オケの良さを認めて「それいいから、それ採用しよう」とか、 ベースが「ボンッ」って良いピッチカートをして「ああ、いいじゃん」 「そしたらそのピッチカートに応えて、こっちはもう少しやさしくつくろう」 とかいうようなことがある。 だから演奏者にとって大事なことは、 指揮者が何かを見せるまで自分の中に何も無いっていうのは決してダメ。 まずは自分の中に、譜面から読みとったアイディアとか音楽のつくりをちゃんと持って臨む。 で、それは指揮者にも見せるし、他のセクションにも見せる。 例えば1stマンドリンがメロディーを弾いてて、同じように2ndも下で弾いてる。 そしたらその1stと2ndのズレがあった時、2ndが追従的にいつも1stにくっつくのかというと、 そういうわけじゃない。 とにかく練習の場だから見せ合う。 何よりもそれぞれが(やりたいことが)無いとダメ。 それはパートの中でも。 1stに10人いたとしたら、一番レギュラーなのはコンサートマスターっていうか、 1stのトップの人の意思に合わせていく。 しかしみんなでやった時に、他にいい弾き方があるかもしれない。 そしたら、「それがいいね」って。 やっぱり全員が全員、個人のレベルとして音楽の思いをつくる。 それが無いでやるとダメね。 で、オケと指揮者の関係で言ったら、まず演奏者側は何をやりたいのか見せる。 それで、それを見てから指揮者が勝負するんじゃなくて、ジャンケンポンをやるが如くに、 みんなで「せーの」で見せる。 それで両方「いいね」っていくかもわかんないけど。 まぁ、どっちがいいかはわかんない。 だけど、その時にどこで見せるかっていったら、オケ側は演奏で見せるわけ。 ところが棒振りは、音の出る前に見せる。 そこが一番難しいわけ。 今ジャンケンポンって言ったけど、ジャンケンポンはオンタイムでグーとかチョキを見せる。 だけどオケと指揮者の場合は違ってて、演奏側はジャンケンポンの「ポン」の時に見 せるんだけど、指揮者は「ケン」の時に見せるわけね。 で、演奏側は指揮者の「ケン」を見て、「あっ、あんなケンなんだ」と思うわけ。 で、「ポン」を出す。 指揮者は「ケン」を見せて、もういっぺん「ケン」と同じ内容の「ポン」を見せるわけ。 もっと具体的に言うと、演奏側は今から弾くところを「赤」だと思ってる。 ところが指揮者は「ケン」のところで、もっと淡い「朱色」を見せる。 「えっ?」とか思うんだけど、演奏者はとりあえず「赤」を出す。 指揮者も「ケン」を確認するように、もういっぺん「朱色」を出す。 ここでギャップがでるよね。 そしたらそこですり合わせをするわけ。 それはだけど微妙なことで、本番とかになってきたら、 指揮者が「ケン」で「朱色」を見せたら、 演奏者はあわてて「朱色」の音に変えて「朱色」の音を出す、ということはあるかもわかんない。 だから大事なのは、いつも話題になるけど、指揮者の“予備”がルーズだと良くないってこと。 で、オケと指揮者の関係の大事なのはやっぱり、オケが指揮者に追従しすぎないこと。 まずは演奏者側に音楽っていうかな、やりたい意思が無いとダメ。 だからボクらなんかは、オケに音楽がなく演奏しないようにさせることが仕事の一つだろうと思うよね。 --結局、オケだけで成り立つ部分っていうのがあると思うんですよ。 そこをわかってないとダメですよね。 あくまで言われるまで待つ、みたいな。 そうそうそう。 だから反対に言えば、まず指揮者がそういう練習をしちゃうのがいけない。 自分たちで演奏することをさせないように全部振っちゃって、 ラジコンのロボットのようにしてしまう。 今あなたが言ったみたいに、何か命令が出ないとそれまでは何もやらない、みたいな。 そういうクセがつきすぎると良くない。 --僕らも仕事をしててそうなんですけど、上司が厳しいんですよ、仕事に関して。 毎週会議で「今週のやること」っていうのが言われるんですよ。 で、言われて、ちゃんと結果検証されてって中で仕事をしてると、 今度は言われたことしかやらなくなるんですよね。 サラリーマンだから、会社的にはOKなんだろうし、善し悪しなんでしょうけど。 でもそしたら今の話のように、上司の思いつかないことへは行かないわけですよね。 一人の考えしか行かない。 そうすると、みんなの英知の集合体には決してならないですよね。 そうすると全体の生産性っていうのか、発展性からいっても低いよね。 広がりとか深さとか。 やっぱり、言われたことを活かして、 その先に行くような要求のされ方っていうのがあると思いますね。 指揮者とオケの関係にしても、 やっぱりどうしても指揮者がコントロールしてると、オケは安心感があるからね。 だからもしも、すんご〜い良いオケとやったら、ひょっとしたら指揮者は、 前で感動だけしてるかもしれないよね。
| |