マンドリンやギターはピッキングにすると、音を持続できない。
持続音だと「ウーーウッ!」て後で入れることが出来るけど、
ピッキングによって音が切れるということは、
よっぽど1個1個の音の処理と音楽を結びつけていなければいけない。
だからマンドリンの方が、むしろ高等な要求があるわけですよ。
例えば歌で声を出す時や、管楽器なんかだと思った通りクレッシェンドが出来る。
音に方向性をつけることが出来る。
音楽の方向性とか、テンポの揺れとか、
音のダイナミクスとかをちゃんとマンドリンでやろうと思ったら、
1個1個の音の処理に対する的確な集中力が絶対に必要かもしれない。
そうじゃないと、思ったようにうまくいかない。
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当日のインタビュアーたちと |
トレモロって、アップ・ダウンに基づいて音を維持させて、いわゆる長い音をつくる。
マンドリンの場合は複弦であって、上の弦と下の弦にあたっている微妙な時間の差と、あたっていない時の響きの差によって持続音があるわけですよね。
上あたって下あたって、微妙に音が止まらないで続いていく。
で、ある一定の長さの音がほしい。
「ターン」という長さがほしかった時と、「タン」という長さと、「ターーン」とい
う長さと弾き分ける時に、トレモロ5回とか7回とかいう話になったとする。
バイオリンの場合は「ターン」といったら「ターン」という長さで弓を上げてしまえ
ばその長さになるけど。
♪ブロックバター
例えば市販のバターで、
10グラムなら10グラムの1ブロックごとに予め切り分けられているバターって売ってるじゃない。
あれはあれできれいに取れるからいいんだけど、
でも一般に真四角で大きなカタマリで売ってるバターなら、
1ブロック分より薄く切ることも出来るし、
2ブロックまではいかないような1ブロック半分とか切ることが出来る。
つまり普通のバターなら1.7ブロックとか1.8ブロック分を切ることが出来るけど、
ブロックごとに切れてるバターは1ブロックとか2ブロックとか、
ブロックごとにしか切ることが出来ない。
トレモロで演奏するマンドリンの難しさというのはそういうところにあるのかもしれない。
バイオリンの場合は6.7もあれば8.3もある。
そういう微妙な差が音楽的には楽であるし、反対にボクなんかにすればマンドリンにきたとき、
少し束縛感がある。良くも悪くも、トレモロというものに束縛されながら、
拘束されながら、しかし生かしながら、っていうのがマンドリンオーケストラなのかなと思う。
ただ、拘束されてるだけだと終わってしまうから、その先大事なのは、
音楽的にどうしたいのかっていうのがあって、
それをいかに処理していくかっていう判断力とかテクニックを培っていくっていうのが必要だよね。
あまり(トレモロの)数できっちり束縛されると、音楽の広がりっていうのはそこの
範囲を越えなくなってしまう。
音楽が少しデジタルになりすぎるかな、と思うよね。
例えば同じ4分音符なんだけど、「タン・ターン・ターーン・ターーーン」ってリタ
ルダンドがかかる場合、ここは何回トレモロが入ってる、ここは何回、ってやると、
音を1つ1つ区切んなきゃいけなくなってくる。
それがバイオリンの場合にはない。
ニュアンスですむわけ。
だから、やっぱりそういうところが難しいかなぁ。