まあ最近はプロのオーケストラもどんどんフランチャイズ化が進んできてですね、新しいホールができるとそこでやるようになってきていますね。 実は僕はスタート当初から四ツ谷の紀尾井ホールというところで紀尾井シンフォニエッタという室内オケのアドミニストレーターという責任のある立場をやっていて、あそこは練習を全部ホールでやるんですね。だから、その期間は「練習日」って公演カレンダーにも書いてあるぐらいなんです。 そういうことの一番の強みは「響きに慣れる」ということなんです。演奏するほうとして大変なのは、こういう響きの違うところに来たときに、早くそこの「響きに慣れる」ということがとっても難しいんですね。 お風呂場で歌を歌うと上手く聴こえるのと同じように、こういう場所に来ると随分違ってくるので、演奏者も早く耳を慣らすということですね。 僕たちがここへ来て今回も言ったんですけど、僕の大学の学生たちにも同じようにいつも言っていることは、とりあえず「空間を目で見る」ということをよくやります。舞台の上から一番奥の調整室とか、非常灯のマークまで目視する、と。目で見ると、とりあえず人間は空間を目で捉えることができるので、まずは斜め上を見るということを必ず僕たちもしますし、それから音楽の専門家もよくする手法ではあります。 聴いていただくときに、一つ今日チャレンジしていただけたらなと思うのは、これはよく音楽大学の学生たちとか、今日もゲネプロを聴いていた中央大学の学生たちに言っていたんですけども、ここのホールにも三点吊りというマイクがあるんですが、(舞台と客席間の空間の上方を指しながら)このマイクのちょっと上あたりに少し目線を開けていただくと、人間っていうのはおかしなもので、目で見るとそこにフォーカスが当たるんですね。 だから、1stマンドリンがメロディーをやってますと、そこに目を向けると、つい1stマンドリンが聴こえる。自分がギターのパートだからといってギターを見ていると、ギターはよく聴こえてくるという、おかしなものですけど。 少し、本番の最中に、特に朗々と皆さんがトレモロしているあたりのとき、この三点吊りの上のあたりの空気に目をやっていただくと、全体的に上に上がってきている音を見ることができます。 これは、どの楽器のことをやるときにも僕たちはよく言われています。特に、コンチェルトですね。ピアノコンチェルトとかヴァイオリンコンチェルトのバランスを最終的にチェックするときには、よくその三点吊りの上のところに目をやって、上に上がっている空気中の音のバランスを目で見るっていう作業を僕たちはよくやりますので、ま、こういうプレトークをした機会ですので、ぜひ一度そういうものをしていただければと思います。
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