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第45回 合田香氏・前野一隆氏・高杉健人氏対談
「コントラバス奏者の視点から」その2

合:コントラバスなんかはヴァイオリンと一緒で、弓が弦をとらえて、自然に減衰したり伸び上がったりするというのは、スムーズじゃないですか。同じように膨らみを作っていけるわけだけど。
それがマンドリンのトレモロの場合は、言葉を選ばないで言うならある程度恣意的にメイキングをしないといけないわけです。その部分が上手くできないと、不自然な響きになるわけですよね。

そういうことは日常的に聴いていて感じるわけですか?

高:感じます。特に、指導者の立場で教えているときの方が感じるんですけど。
長い音を弾いているときに、やっぱりマンドリンだと、ただ何フレット目を押さえて、右手をトレモロしておしまいなんですけど。

合:そうすると長い音符が、ダーッと平坦になってしまう。

高:そうです。味付けが難しいです。あと、弓の圧やスピードが変わって音が変わるとか、ヴィブラートがあるのが一番大きいんですけど。それがないので、右手をもっと、歌えるようなトレモロがあると。

合:この前もヴィブラートの話が出たんですよね。ヴァイオリンオーケストラの場合って、弓のスピードの膨らみ・減衰と、ヴィブラートの濃さ・強さと、右手・左手の組み合わせで音楽がまちまちになるんです。それが自由自在に出来る。
それがマンドリンの場合は表現が単調になるんです。表現レンジの狭さにもつながるのかもわからないんですけど。それへの方策はあるんですか?

高:僕は思うんですけど、「引き出し」がないっていうか。ヴァイオリン系の楽器の場合は弓のスピードとか圧力とか、ヴィブラートっていう「引き出し」があって、それをいかに組み合わせていこうかなっていうのがあるんですけど、マンドリンだとその「引き出し」が最初から無いので。

合:例えばヴァイオリンでも子どものオーケストラだと、なかなかそうはいかないじゃないですか。音楽大学の学生達でさえ、ある程度トレーニングをしながら表現を学んでいったりして。それは、学べばなんとかなる。
マンドリンの人達も、何となく理解をして学んで身に着けていけば、なんとかなるものなんでしょうか。

高:なると思います。僕は、そう信じてやっています。
ノウハウ的には多分、できるんだと思います。ただ、「引き出し」が無いだけで。だから例えば指導しているときに、すごく長い音を弾いていて、ただ同じトレモロをバーッと弾いているときに、そうじゃなくて、もし僕らだったらっていろんな右腕の話とかヴィブラートの話とかすると、その「引き出し」を彼らは得て、それをトレモロならどうやって表現していこうかって試行錯誤してくるんですよね。

2008年10月21日更新
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