「みんなの目」第14回目は、1st.匿名希望郎さんにお願いしました。
第14回 9/13 東京芸術劇場 中リハーサル室3
『”生”プロの目』
梅雨のような真夏時にも、真夏のような残暑にもめげず(多分)、続けられてきた練習も残り2回。今日からは合奏の時間も早まりいよいよ最後の仕上げに入った観もあるポルタ・ビアンカ・マンドリーノ、さてその練習風景はというと…………
11:00 『山の印象』(合田先生)
チェロに対して「皆さんとても良く弾けてるんですけど、音に気持ちが追い付いていませんね。何
か音だけが響いているようで虚しい感じがします」。こう言われるとチェロは例外なく(ただでさえ
デカイのに)更にパワーアップします。もはや「静かに山の目覚めを奏でる」どころか地鳴りのよう
ですが、それも又良きかなポルタ・ビアンカ。次は1st、叙情的な旋律を表情豊かに歌って「ああ、
いいな」と思っていたら最後に突然崩壊。「いやぁ〜、そこは難しいよね。どうやれば良いのか分か
んないもんね」と云いながら、指示を出す訳でももう1度弾く事もなく次へ……。(良いのかな?)
11:40 『シンフォニア』(合田先生)
ドラTOPに「その部分、君の体の動きは逆だね。こうやってこうだよ」、としばらく音を出さずに体
を前後させる練習をするドラTOP。その光景に誰とはなく笑いが漏れるのも、いとおかし。ドラ・チ
ェロが指導を受けている間、(何故かこの曲でコンマスをすることになった)前野さんが振り向き囁
き声で「ここは音量もアタックも、もっともっと前向きにして向こう(=ドラ・チェロ)に仕掛けよう」と楽
しそうに。で、当然次の合奏ではお互いが掛け合う場面で熱い戦いが繰り広げられるわけで……。
13:00 昼休み
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練習後、打ち合わせを |
13:55 ○○○―ル(?)
弾き終えて。指揮者「まだ重たい感じがするな」。コンマス席のマンドリン用サイボーグ「そうです
ね。もっとテンポ上げた方が良いんじゃ?」。指揮者「大丈夫?」。サイボーグ(皆の表情に気付か
ず)「大丈夫ですよ」とあっさり。「よし、じゃあ今度はもっと速くしよう。皆さん、悪いのはこいつなん
で袋叩きはこいつにしてくださいね!」。(その他のマンドリン)「………………………(笑)」
15:00 ○○○―ルに熱が入りすぎたため、『リュート』はサラッと通して終わり。
15:40 また『山の印象』(合田先生)
ドラ・チェロに(踊りながら)「僕はこーんな音が欲しいのに今はこれぐらいしか出てない。楽しそ
うに弾いてるんですけど、その楽しさを客席にも伝えないと。あの、手術の時とかによく使う、患
者の胸に当ててボンッ!てやる電気のやつみたいに、お客さんの胸にボンッ!て音が欲しい」。
踊りも例えも絶好調で、いよいよ調子が出てきました。
16:10 『日本の歌三章』(前野さん)
「もっと枯れた感じが欲しいな。お婆さんが子供に話すように、一つ一つ語りかけるような。」で、
合奏。止めた途端吹き出して「それじゃ枯れてるんじゃなくて死にそうだよ(笑)!」。「で、今まで
は舞台でお婆さんが一人で語っていたんだけど、そこでサッと幕が開いて風景がパッと広がって
お客さんがおおっ、てなるような雰囲気が欲しい」。そこで何度もやるのですが、なかなか上手く
いかない。サッと広がるのではなくドンと舞台の床が抜けたようになってしまう……。
このようにして今日の練習も過ぎていくのでした。
いかがでしたでしょうか?どれほど厳しい練習が行われているか、僅かながらでもお分かりいただけたかと思います。更にこれは各曲のどの部分の事だろうかと想像しながら本番も聴いていただけると、より楽しめるかと思います。(なお、以上は一個人のフィルターを通した練習風景であることをお断りしておきます。)
ややテクニカルな印象のある前回に比べて、今回の選曲は「歌」に溢れたものになっています。楽しい歌、悲しい歌、熱い歌、枯れた歌、勇ましい歌、厳かな歌、朝の歌、黄昏の歌、優雅な歌、素朴な歌。
合田先生が何度も言います、「そのメロディの持つものに心から共感して歌いなさい」と。いろいろな人達が集まっているのと同じように、歌のもついろいろな想いを伝えられる演奏が出来たら良いのですが、こればっかりは天気と同じく蓋を開けてみなければ分からないですよね。
2003年9月16日更新
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