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今回から数回にわたり、演奏会パンフレットのために収録した『プロの目・特別版』をとりあげていきます。 パンフレットではページ数の都合上掲載できなかった内容など盛りだくさんでお送りします。 (6月30日 某ファミリーレストランにて)

第11回 合田香氏・前野一隆氏対談
ホールと練習場

--本番のホールでの響きと練習の響きっていうのは違うわけですよね。 普段からどういう練習をしていけば本番のホールでもすぐに馴染めるようになるんでしょうか?

前野氏(以下 前): まず一つ絶対に言えることは、まぁいろいろ難しいんですけど、 個人練習するときに小さい音で練習しないこと。 で、音をさらう時でも、楽器を響かせて弾くこと。 これができれば、ホールに行っても全然怖いことはない。 ホールに行くと、妙に響いたような気がしちゃうんですよ。 実際には響いてないんですけど。

なので、まぁ言ってみれば、ホールに行くとお風呂屋さんで弾いているような感覚になっちゃうからわかんなくなっちゃう。 それは自分が自分の音でちゃんと弾いてないから。 ちゃんと響かせて、自分はこういう音が出てるんだぞってわかってれば、 どこへ行ったってべつに怖くもなんともないんで、一つはそういう練習をちゃんとすること。 これが一番大きいんじゃないかな。 で、表面上だけ撫でたような音で練習してみたりすると、どんどんひどくなる。 あとはできれば練習場が空間のあるところがいいと思うんですけど。 さっき合田さんもおっしゃってたように。

合田氏(以下 合): ボクもね、この前ウチの音楽大学の学生たちと演奏旅行をしてて話したりするんだけど、 結局、しゃべる相手の相手先がどこにあるか。 いわゆる空間っていうのは見えないわけですよね。 だけどボクたちは日常的には空間を捉えてしゃべってるわけですよね。 例えば、耳元でボソボソっとしゃべるのと、少し離れてる人にしゃべるのとでは少し違う。 その時の声の飛び方っていうのがまさに空間を象徴しているわけ。 だからそのへんが、空間を見定める一つの方法としてはいいわけですよ。

合田先生・前野さん
対談中の一コマ

だからやっぱり、普段から楽器の弦の上だけで弾かない。 弦を弾くっていうのは、一つの物理的作業でしかないんだけど、 音を作る作業っていうのは違うわけですよ。 だからもう少し、やっぱり空間を見る。 で、空間を見るっていうのは、本当に物理的に空間を見ることが必要なんですよ。 だから少しちゃんと顔を上げて。 それから、目的に応じた音の作り方、かな。 今自分たちが何をしようとしているのか。

どういうことかっていうと、今ボクがこうやってしゃべってる。 で、誰かが相づちを打つときに、大きく「うん!」って言うのか、 一通り話を流すために「うんうん」って言うのか。 目的に合った音の出し方っていうのは、やっぱり合奏にも必要だし、 それは空間を見れていないと。

前: 空間に出た時にいつでも空間に対して、今合田さんがおっしゃったように、 空間をまたいでも話せるようにトレーニングしておかないと、 「おまえ、空間に出たから、そこでしゃべれるようにやってみろ」 っていきなり言われても出来ないんですよね。 だから少し、しっかり楽器を鳴らして練習したほうがいいんじゃないかなと。

合: そういうものを少し積み上げていったほうがいいよね。 それで、OBはある程度の経験があるから、 どっかで確認しておくと「フッ」とすぐにその位置に戻れる。 体はアレかもわかんないけど、意識は戻れる。 だからそこはなんとかなるんじゃないかな。

--関係ないですけど、 紀尾井シンフォニエッタはたしか5日間くらいリハーサルをホールでやりますよね、いつも。 そういうプロの団体って……

合: っていうのは、外国のオケはみんなそこの本拠地で練習をしてるわけだから、基本的には。 あまり知られてないかもわかんないけど、 紀尾井シンフォニエッタなんかは練習の中で、多いときは3回くらい配置変えをする。 それこそハイドンなんかをやった時に、最初は普通の並びをしてるわけですよ。 下手(しもて)から1st、2nd、チェロ、外っかわにヴィオラ、後ろにコントラバス。 でもやっぱりハイドンだからもう少し対向的に弾きたいからって、 今僕たちがやってるみたいに対向配置(1stと2ndが左右に配置)になったりとか。

それからほとんどのオケが普通の曲でやってるんだけど、 この前も何かの演奏会で、「これはなんとなくヴィオラまでが一緒になりたいね」で、 「チェロ・バスが分離するね」って言って、1st、2nd、ヴィオラ、でチェロが外っかわ、 コントラバスが後ろって、紀尾井ではあんまりやらなかった並びをやったりする。 実際、曲に合ったり合わなかったりするからね。 そういう意味では今回の(ポルタビアンカの)並びも一つのチャレンジではある。 他にも、ギターを後ろにするっていうのも一つの案ですよね。 ギターがどう処理されるのかっていうのは大きな問題。 難しいよね。

前: 今回、モーツァルト(ディヴェルティメント K136)はギター抜きなんですよね。 で、そのへんがクリアーになるかなっていうのもあって、 あえてギター無しって合田さんに提案したんですけど、 いざやってみると、やっぱり響きが薄いですね。 結構やっぱり、ギターの響きって和音がよく鳴るんで、 マンドリンの響かない部分を補ってくれてるんだなっていうのを実感しますね。

合: そうだね。 だけどこれはモーツァルトだからアリだなとは思うよね。

前: そうそう。 だけどチャイコフスキー(弦楽のためのセレナード)をギター無しっていうのは勇気がいりますけど。

2002年7月24日更新
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