例えば今日、楽譜にばかりとらわれずに、ちゃんと周りの環境を分かりながら演奏しようというようなことを言ったけど、 大学の時だと、ドラとチェロは自分達のパートナーがどこにいて、どのバランスでどう弾かなければいけないか、 でも、弾く能力だけじゃなくて――っていうのを、いちいちこちらが実践して教えてなくちゃいけなかった。 でも、ポルタビアンカでは、僕が直接的な表現をしなくても、とたんにパッとできてすぐ良くなる。 だから今はその先のことをお話ししてます。例えば、「小節線のすぐ隣には音楽の重さがある」とか 「音楽の拍間はおなじじゃない、方向性がある」といったこと。これは、 ポルタビアンカ以外の団体に行ったときにも使える基本的な話ですね。 --僕らは、そういったことを技術的に処理していかなくてはいけないんですけど、 プロのオーケストラの中で、その役目をする人は誰になるんですか。 合:正確にいうと全員が出来なくちゃいけないですよね。リードする役はトップ。 それとコンサートマスターですけど。同じことを結果として出すときでも、楽器によって処理の仕方が違ってくる。 弦楽器と管楽器とでは、当然違う処理をしないと同じ結論に達しない。高い音域と低い音域の楽器もそう。 同じ行為しても同じ結論に達しないっていうのがオーケストラ。 --そこらへんは各奏者が理解しておくべきことなんですね。 合:もちろん。僕はゴルフをやらないんですけど、この距離に飛ばすにはあと何ヤードですかって聞くと、 キャディさんから、あと何ヤードですねって言われる。そしたら、何番アイアンだとクリアできるっていうことが、 キャディさんと自分でお互い分かっているっていう、共通の認識が必要ですよね。 トップだけ分かっても、自分だけ分かっていても処理ができない。トップが例えば5番アイアンを使いましょう、 7番アイアンを使いましょうと言ったら、「あっここは刻むんだ」というのが分かる。 「このフレーズは、アップ・アップ・ダウンでいきましょう」って言ったら、すぐにその意味がわかる。 前野さんが、あれはああいう風に処理してって言って、トレモロにしようってことになって、「トレモロ4回くらい入るよね」 っていう話をするじゃないですか、その4回入ることに求められている音楽性を各奏者が分かることが大事なんです。
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