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第33回 合田香氏インタビュー
「マンドリンオケに求めるもの」

合:マンドリン以外の団体でも多いんですけど、〈p〉は弱い〈f〉は強いっていう話があって、 どんなことかというと、〈p〉は、小さくとか静かにとかっていう表現はあるけれども、 弱くっていうのは基本的にないんですね。弱いと音の意思が萎えてしまうことになって聞こえなくなってしまう、 だからそれは基本的に間違い。逆に〈f〉は粗雑になってしまうことが良くある。

 僕が前から教えている中学生のブラスバンドでね、こんな話をしたことがあるんですよ。 同じ音でね、ターンタターンターンタターンターンタターンってクレッシェンドをしていくところがあるんですけど、 「今の君達はね。最初のピアノは、〈ねずみ〉で、次に〈うさぎ〉になって、〈こぶた〉になって、 〈おおかみ〉になる、っていう感じなんだけど、ここはね、〈小さい熊〉〈中くらいの熊〉〈どでかい熊〉、 ここはずっと〈熊〉でいてくれる?」っていう話。

 それはどういうことかっていうと、最初の〈ねずみ〉から 〈うさぎ〉に変わるのは「変質」で、〈小さい熊〉から〈大きな熊〉に変わるのは「同質」っていうことで、 そういう風に変わってほしいっていうことですね。 本来のクレッシェンドで求められているのは同質の変化なんです。

--そういうことって、自分達ではなかなか気づかないですよね。あと、スタッカートの本来の意味は 〈短く切る〉っていうことじゃなくて、〈区別する〉っていうことだっていう話とか。

プロの目
プロの目

合:「麗しきいたイタリア」で前野さんが「あそこはトレモロにしましょう」って言ったでしょう? あれ良くなったよね。ああ、あそこはトレモロでいいよねっていう話をあとでしたんですど。 僕でも先入観がありますからね。ここのところ良くやっているのは、 ダウンでやっているところをダウン・アップでやってねって、いう話があって、それはなぜかっていうと、 4つの音が並ぶとところがあるでしょう? あれをダウンでやるのは良くないんです。

 音楽って言うのは、水が高くから低いところに流れるように方向性があるわけだから、 ダウンにするとタンタンタンタンって均等になって流れていかない。それがいやだから、 ダウン・アップでお願いしたんですね。でも、それがダウンでもできるようになるといいですよね。

--合田先生は、マンドリンやブラスバンドや色々教えてらっしゃいますけど、 マンドリン特有の語法ってありますか?

合:う〜ん。トレモロとピッキングの区別をしないといけないっていうのが一番大きなところかな。 たとえば、何か書きたいことがあるっていったときに、他の楽器だったら同じペンで書けるけど、 マンドリンの場合は、いちいちペンを持ち書いて書かなくてはいけないっていうことがあるかもわかんないですね。 トレモロとピッキングの違いって、アルコとかピチカートとはぜんぜん違いますからね。

--マンドリンを教えていると違和感がありますか?

合:長くやってるから、マンドリンでやったときの響きは、想像できるんですよ。特にピッキングは。 でも、最終的に音がどういう感じであがっていくかを聞きたいから、トレモロとかでやってもらっていうことが 出てくる。違和感っていったら、本来良く知ってるオケの曲をマンドリンでやっているとき違和感はありますね。

--具体的にはどういう違和感なんですか?

響きの深さかな。

2006年7月18日更新
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