新潟交通電車線について  東関屋−月潟   1つ前のページ
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 平成11年4月4日、
 多くの歴史を残し、またひとつ電車が消えました。

詳細な沿線、車両紹介などは他の方のページにお任せして
趣味的な見方で書くと、私がいつの日か通う気になるのを
「待っていてくれた」
そんな鉄道でした。

 小学生の時に巡回図書室(本満載のバスみたいなやつ)に通っていたとき、小さな私鉄を集めた本を見つけました。それに南部縦貫鉄道などといっしょに書かれていたのがこの鉄道を知ったきっかけです。電車と言えば長い編成で走るのがあたりまえな都会に住んでいて、草ぼうぼうの所を走る電車がとても不思議でした。でも新潟県なんて夢の彼方のような世界だった当時は、なんとなくあこがれでした。
 学生の時分(平成2年春)、当時は気の遠くなるような目標だった「JR私鉄全線乗車」に手をつけ始めたとき、最初の東北旅行(ひたすら鉄道のりつぶし)の締めが、この電車でした。当時は市役所前(白山前駅)から燕まで延々走っていたときで、路面を走るのを撮って乗り込んだのですが、その日は雨。終点などは土砂降りの中でした。でも、本で読んだ世界そのままってのが気に入り、いつの日かまた来られたらいいな、なんてなんの約束もない気持ちを抱いてました。
 京津線を追っかけ終わったとき、1つやり残したこと。それは、四季の中の写真がないってことでした。5月30日から10月11日だと、ほとんど緑ばかり。秋に紅葉か南天の赤か…だけでした。
 自然の中の田舎電車なんて近畿にはもうない(近江鉄道は駅はすごいレトロだけど電車が派手でアウト)、じゃあどこにいこうかな…と思ったとき、大井川や福井や高松琴平などの面々を押さえて草ぼうぼうのかぼちゃ電車に白羽の矢を立てたのは、幼児体験だからとしか思えません。そして、それから1年半、延べ約30日も来るという冗談みたいな追っかけを始めました。
 ここで据えた大きなテーマは、上に書いたそのまんま

四季の変化の中を走る田舎電車を撮る   

あとは成り行き。時々人や犬や猫や鳥や鯉のぼりも。
 時には中之口川の土手に一目百匹の毛虫が群生する所を歩く試練や、吠えてくる犬に攻撃しにいってみたり、はたまた梨と電車を組み合わせた写真を撮ったら絞りが浅すぎてただのナシの実の写真になったり、道を歩いてると地元で顔見知りになった子が話しかけてくるなと、今振り返るといろいろ変化や訳わからない話があって楽しかったです。
板井−七穂駅間 平成10年5月2日

板井−七穂駅間にて
去冬分はこちらです。
春先分はこちらです。
夏の分はこちらです。
秋の分は工事中です。
廃止当日工事中です。
廃止翌日工事中です。

過去の表紙はこちらです。


 延々夜行乗ってやっとたどり着いたところが、いつもの所というのをしつこいぐらいに繰り返しました。おかげさまで電車の運転手さんにはすっかり顔を知られ、「どこから来た」というのも覚えておられるという有様。終点の月潟には電車通学の小学生がいて下校時ともなると時間待ちの間駅に集まって遊び場となるのですが、その子らの挨拶が遠くの人とは思えない「おう!」「また来たの」「写真見せて」、電車撮ってるんだか子供たちと遊んでるんだかよくわからないことをよくやっていました。季節の移り変わりを押さえる定点観測地(右上の写真)では、あまりによく来るので、電車待ちの間いろんな思いをここに一時保管していろいろ考える場所にもなってしまいました。全然生活基盤を置いていないのに、なんか自分の住んでいた町のような気がして。
 追っかけ当初から既に廃止の噂が流れていて最悪半年限りだよ、とのことでしたが、そのうち地元話し合いで延期、平成10年春には一時期補助金存続と流れが変わりかけ、しかし今のご時世将来性のないものに補助金なんて出せないとなって一転廃止本決まりとなってしまいました。そりゃ、設備の老朽化が並じゃないし、そして昼間の電車は1時間1〜2本、終点側半分の区間は人がほとんど乗ってないんでは。一時期2年計画で気長にやろうと、白根の線路横断凧揚げ大会など取り損ねたのがちょっと残念。

 1つ、納得したこと。
 会えるときに会えなくて後で悔しい思いをするのって、ものすごくつらい。
 対処のしようがないから。
 15年前、そんな思いをしてずっと根に持ち続けて、だからこそ
 ここでは徹底的に納得するまで通いました。
 思う存分、最後の最後まで会えたのだから、
 もう後悔していません。

 財布にきびしいおっかけ(たぶんバズー○砲レンズ軽く買える位使ったな)、でも地元の方と話すことができ、最後の方なんか電車が目的では無くてその人たちに会いたいから行くんじゃないかと思うことがあるぐらいでした。でもその人たちとも、4月5日付けでお別れでした。
 気持ちの整理がついたいつの日か、もう一度だけ月潟に残った電車に会いに行こうと思っています。

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