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『風街ろまん』
「暗闇坂むささび変化」収録。歌詞中の「ももんがー」が「お化け」の総称の意であることは、随分最近になって知りました。 |
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はっぴいえんどが「暗闇坂むささび変化」で歌った「暗闇坂」とはどこなんだろうと、学生時代に東京に遊びに来たついでに探した記憶があります。後で判明したのですが、都内に「暗闇坂」という地名はたくさんあるのです。当時、僕が見つけた「暗闇坂」は、確か谷中とか上野近辺にあった坂だったと思いますが、残念ながら歌に出てきた坂とは違ったようです。
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暗闇坂 この一帯が多摩川のハケにかかってるのです。
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さて、その近所の暗闇坂を旅人気分で登っていると…。
「カナカナカナ…」
お、今年の初ヒグラシだ! あまりに近くで鳴かれたので、風情もへったくれもなかったのですが、まあお初ということで許してあげましょう。初セミを聞く瞬間は、何だか縁起がイイ感じで好きですね。
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焼鳥屋 カウンターのくたびれた色と、
角のとれ具合がたまらんのです。 |
坂を探検した後は、同じサカでもサカ場へと急行しました。商店街の中ほどで、埋もれるようにたたずむ焼鳥屋へ。常連客がわいわいと呑んでいる狭いカウンターの後ろを、壁にへばりつくように奥の席まで入っていきます。
そこは、呑んでるおっちゃん達の顔が見渡せる特等席です。とりあえずビールを1本頼んで、おっちゃんと店のおばちゃんの会話を肴に飲み始め。時間にして、まだ夕方の6時半くらいなので、商店街はわんさかと人が闊歩しています。そんな人の流れを背景に、手前にはすでに顔を赤らめた男たち数名。
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3メートル先の商店街には、女子校や女子大の生徒が見るからに花のような“香り”をさりげなく振りまきながら歩いている一方、僕の傍には、悲喜交々の人生を経て、いろんなものが熟成された“臭い”を放つおっちゃんたちが不防備な姿で、うだうだと時間をすごす。ああ、いい光景だ。今日の酒は旨いのう、と心の中でつぶやきました。
やはり、酒には“臭い”のきつい肴の方が合うのです。そのうち、僕もそんな“臭い”を放つことができればと…。
しかし、これだけ、いい顔がそろうのは良い店の証拠。御年80にもなるおばちゃんも、若い男ども(とはいえオーヴァー50)に囲まれて、いい顔してます。
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男は自らを“スパイダー”と名乗り、
元モッズだったとか何とか言いながら…
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そう。何が目的で酒を呑むかと問われれば、いい顔が見たいからと答えるかも知れません。
先日も悔しいほどイイ顔をして、イイ酔い方をする男と呑みました。こういう酔い方に憧れ、また呆れもするのです。男は自らを“スパイダー”と名乗り、元モッズで云々と言いながら、うだうだと人生を語っておりました。
このとき、彼はあの“臭い”を発していたはずです。 |
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