表松川

 気仙沼市月立字表松川は、松葉石“Monodixodina matsubaishiw”と呼ばれる
細長いフズリナの産地として古くから知られてきた。 上八瀬同様ツクダニ状に
化石が密集する、石灰質を含んだ砂質頁岩が発達し多くの三葉虫が得られている。
私達は石切場跡と穴淵と呼ばれる小さな沢周辺を中心に採集を行っていた。

 現在、それらの露頭は土砂に埋もれて採集は困難である

【三葉虫】
 下の表の様に産出している。


中部二畳系叶倉統
合地沢階 岩井崎階
穴淵 Pseudophillipsia spatulifera
Pseudophillipsia sasakii
Pseudophillipsia binodosa
Ampulliglabella arakii
A. rotunda
Pseudophillipsia spatulifera
石切場跡
Ampulliglabella arakii

Acanthophillipsia
Pseudophillipsia aff. simplex
P. aff. binodosa
Ampulliglabella arakii
A. rotunda
Cheiropyge
宝鏡寺 Pseudophillipsia spatulifera Ampulliglabella arakii
A. rotunda
Pseudophillipsia spatulifera


 穴淵:Pseudophillipsia spatulifera は合地沢階のLeptodus帯から比較的多く見いだされる。
尾部が多く、頭部は稀で、頭鞍と自由頬に分かれて産することが多い。
 Ampulliglabella は沢の左側の岩井崎階の砂質頁岩から産出する。Pseudophillipsia は稀になるが、
合地沢階との境界付近で密集して産したことがある。

 石切場跡:埋め立て・石垣用石材として採掘が行われていた当時は、砂質頁岩中から多くの
貴重な頭足類が採集されていた。私達が採集を始めた頃には既に採掘は中止されていて、
これらが産出した部位はほとんど失われていたようである。しかし時々崖の上から落ちてきたと
思われる石の中には名残のようにオウムガイ等が見いだされることがあった。

 私は石切場で初めて化石(腕足類・Linoproductus)を採集した。だが、この崖は危険だし一見
化石も少なく、小学生の私には手に負えない場所だった。私達の興味は荒木氏に教えて貰った
市内滝ノ入の鍋越山層の化石層に移っていった。滝ノ入は当時盛んに宅地の造成が行われていて、
化石の宝庫だったが 三葉虫は採集できなかった。だいぶあとになって知ったのだが、鍋越山層は
登米統即ち三葉虫が滅んだ後の上部ペルム紀のものだったのである(笑)

  やがて私は宝鏡寺で初めて三葉虫(Ampulliglabella の尾部)を発見し三葉虫に夢中になっていった。

 再び石切場に足が向くようになったのは3年ほど後のこと。今日のAcanthophillipsia の正体解明を目指し、
探索範囲を崖の上の更に上まで拡げていったのである。2年ほど掛かったものの、粗い砂質頁岩から
様々な化石と共に、幾つかの三葉虫を採集することが出来た。(上記・表参照)

 他にEndops に似た半円形の節の数が少ない尾部、表面が滑らかで他の三葉虫とは明らかに
区別できる頭部などを確認している。

  1984年のモノグラフには、産出地、採集者等に混乱があり、それが同定にも影響があったようだ。
前述の未報告のものを含めて、いま一度整理してみる必要がありそうである。


未報告の三葉虫たち
Kathwaia? sp.
頭鞍
Kathwaia? sp.
尾部・雌型
Kathwaia? sp.復元図
ウルリッヒ フリック氏原図
頭鞍・シュードフイリップシアのように
頭鞍と頚環の間に3ヶの突起があるが、
頭鞍側葉は認められない。
Pseudophillipsiaに似ているが
種の同定は出来ない。
むしろDitomopyge densigranulata の
本来の尾部なのかも?
Pseudophillipsia aff. simplex
Paraphillipsia? sp.
頭鞍・表面は滑らかで一対の
頭鞍側葉がある?
Paraphillipsia? sp.
Paraphillipsia? sp.

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