盛本康成の「ライブ・スクラップス」
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「エルトン・ジョン公演チケット」

     「エルトン・ジョン公演チケット

 


No.2 「エルトン・ジョン24歳頭髪有」

 前回に続いて1971年の話。この年がどういう年か、とものの本をひもといてバラバラにして調べてみると、いろんなことがあった年でした。曰く「マクドナルド一号店が銀座に誕生」、曰く「カップヌードル発売」云々…そして「リッキ
ー・マーティン誕生」。ふーむ、さて。
 後楽園球場で生まれて初めて経験した壮大なレコード視聴会(前回参照)の約3ヶ月後、エルトン・ジョンが初来日、再び姉と一緒にコンサートへ行った。
 前回がそういうわけだったので正確に言うとこのエルトン・ジョンのコンサートが僕にとっては生まれて初めてのライブコンサートだったことになる。姉はすでに前年シカゴとレッド・ツェッペリンのコンサートへ行っているので初体験は経験済み(と、こう書くと何だか変ですね)である。
 この年姉は雑誌(ミュージックライフ)の通信販売で「Empty Sky」を買った
(この時僕らはまだ輸入盤屋の存在を知らず、しかもたしかこのデビューアルバムが当初日本でリリースされなかったからだったと思う。一緒にジェフ・ベックの「Truth」を買っていた。僕にはまだそうやってLPを買う財力はない)。
 彼女のおかげで僕はすでに「Tambleweed Connection」までの3枚すべてを聴
いていたが、コンサートに行こうと決心したのは友人から借りたライブアルバム「11-17-70」を聴いたからで、中学生の時にやっとの思いで買った日本の「フォーク・クルセダーズ」に始まった僕のライブアルバム好きはこれによって決定的になった。
 チケットを買ったのは前回に続いて池袋の赤木屋プレイガイド、会場は新宿厚生年金会館だった。何回公演だったかはわからない。僕が選んだのは日曜日のマチネーで、まだ親の目を気にしていたのだと想像する。当日は日曜の新宿を歩いて会場へ向かったはずなのだがその時の様子は覚えていない。唯一当時新宿駅前にあった三平会館のビジュアルだけが今も頭に残っている。
 コンサートはステージ上に置かれたピアノの前に下手から登場したエルトンが座って静かに始まった。たしかオープニングは「Sixty Years On」だったと思う(「Border Song」だったかもしれない)。とにかく前半は「Skyline Pigeon」
などのバラードを中心にソロで進んで行き、小一時間のステージを終えて休憩に入った。
 やがて始まる後半はナイジェル・オルソン(Drms)とディー・マレイ(Bass)が加わってトリオのステージになる。二人に続いてエルトンが女性の'おっぱい'
のカラー写真が胸に印刷されたTシャツを着て登場、それまで僕が抱いていた
「内省的で神経質な陰のあるイギリス青年」というイメージを完全に破壊した。たしか変てこなサングラスももうすでにこの時かけていたように記憶する)。
 とはいえ初めて至近距離で聴くアンプで増幅されたベースとドラムの音にかなり感動した。前回の(この時はまだ生だと思っていた)ライブでミュージシャンがひどく自分から遠かったせいもある。
 この後半では僕がライブアルバムを聴いて待っていた「Madman Across The
Water」や「Burn Down the Mission」を演奏、やがてロックンロール・コンサートとなって終わる。
 コンサートの終盤になると僕は席を立って前の方に走って(若い。姉は席に
ついたままだった)行った。この時それを制止する警備員がいなかったのはコンサートの主催者も僕と同じように「真面目なエルトン」という印象を持っていたせいかもしれない。一階にいた聴衆の大半がステージ前に立ってアンコールを待っていた。
 やがてアンコール。例の「足をピアノの上に持ち上げるポーズ」に観客は沸
き、大団円を迎える。そして最後のアンコールが終わる直前、16歳の僕の3mばかり前方には24歳のエルトン・ジョンがおり、その距離が次第に遠くなって僕の初めてのコンサートは終わったのだった。

 

 

 

「新宿のロック喫茶”ローリング・ストーン”開店記念の巨大マッチボックス」

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盛本康成

東京出身の40代と、ここまでは大江田と同じ。ものすごい数の外タレのコンサートを観てきた音楽ファン、とこれは足元にも及ばない。所有するチケット、コンサート・パンフレット数知れず。久しぶりにご一緒したブライアン・ウィルソンのコンサートの帰り道に、そんなわけで、この企画を思いついたのでした。下町の呉服屋さんの若旦那として生まれたのに、いつのまにかイラストレーターに。数多くの雑誌でイラストを描いている。くすっと笑いながらも、ちょっと苦い思いをにじませる彼のイラストを、お手元の雑誌に見つけて下さい。(大)


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