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Yasunari Morimotoの'Live Scraps'No.6
"アンクルJ.Jと浪人手代"
しかしなんですってねぇ。CDって20年でダメになるって話、
あれ、本当なんでしょうか。
初めてCDが発売されてから今年で20年だというので
言われてたことなんですけど。
だとするとあれだなぁ、初めて買ったロキシー・ミュージックの
「アバロン」ってもうすぐダメになるのかなぁ。
それより前に買っていたレコードは録音の善し悪しはともかく
聞けるのにね。
そういやこないだ音響関係の人がいってたっけ。
「音源メディアとして保存性が一番高いのはレコードです」って。
なんか「今さらそんなこと言うんじゃねーよ」っていうか、
どうすんの、あの膨大なCDの山っていうか。
βに録画された映像だってどうにかしなきゃなんないし。
もう「これからの音楽はMDです!」とか「MP3です!」とか
「HDです!」とかいっくら言われたって絶対信用しねぇぞ、
オレぁ!
というわけで今回も初めてのCDやβビデオが発売された
年よりも前のお話です。
*
1973年のある春の日の午後。学校から池袋へ向かう
バスに乗ると運転手の後ろ、前を向いた席に植草甚一さんが
座っていた。
そう、あの「ぼくは散歩と雑学がすき」、
「こんなコラムばかり新聞や雑誌に書いていた」の
植草甚一さん。
彼の後ろの席に座ってちょっとどきどきした。
というのもこの頃の僕の生活の思想的なバックボーンに
なっていたのがこの植草さんとその周囲の人たちで、
「10セントの意識革命」(片岡義男)や
「緑色革命」(チャールズ・A・ライク)なんかを
読んでいたからだ。
しかし悲しいかなこの単細胞の高校生には
「革命」は「カクメー」となって、彼らの真意は伝わらず
結果生まれたのは「神保町で古本とレコードをあさり、
『兵六』で焼酎を飲む変な高校生」だった。
植草さんは背後から来る「不気味な視線」を感じたの
であろう。一度だけ少しこちらを振り向いただけでバスを
降りていった。「ちょっと得をした感じ」だけが残った。
というわけであいかわらず遊んでいるので2年の時に比べて
さらに僕の経済は困窮し、この年は姉から誘われた
ニッティー・グリッティー・ダートバンドのコンサートへ一度
行っただけだった。
聴いたレコードもやはり彼女が持っていた
「アンクル・チャーリーと愛犬テディ」だけだったが、
このアルバムのインパクトが強かったこともあって
深く印象に残るコンサートになった。
この「アンクル…」がかなり売れたせいか、
曲目も「プー横丁の家」に始まって「Mr.ボージャングル」
にいたるまで、かなりこのアルバムからのものが多かったと
記憶する。2階席からでも例の「ウォッシュ・タブ・ベース」が
よく見えた。たしかアンコールは「レイブ・オン」。
ただただ楽しい印象だけが残るコンサートだった。
こうしてこの後、僕の怠惰な高校生は終わりを告げ、
とうぜんのことながらすべて不合格だった受験を経て
1974年の楽しい浪人生活へと突入する。
大塚周辺の予備校へ行く友人が多かった中、
「こいつらと一緒になっては受かるものも受からない」
とお茶の水の予備校を選んだ少数派の僕は200円程度の
安い昼食を予備校ですませると、参考書代という名目でもらった
小遣いの残りすべてを消費するために一人で神保町の
古本屋へ向かった。
そこで僕のもう一人のアイドルの雄、手塚治虫氏の
虫プロが前年倒産したためにたたき売られていた
漫画の単行本を一冊100円で毎日のように買い、
さらに隣の書店で売っていた森茉莉やラブクラフト、
さらに別の本屋で絶版になった早川書房の本や
「M.A.D.」などのアメリカの漫画雑誌を買いあさっては
大塚へ行って友人たちと酒を飲んだ。
やがて秋。その年の9月に受けた公開模擬試験での
英語の偏差値は35しかなかった(ちなみに世界史は15)。
植草さん風に言うと「困ったことになっちゃったなぁ」。
さすがにまずいと思った。
なぜかというとこのまま大学に行けないと、
「呉服屋の手代」にされてしまうからなのだ。
この年の平和な時間はここまでだ。
●ニッティー・グリッティー・ダートバンド コンサートパンフ
●同コンサート チケット
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●浪人していた’74年、それでも行った
オノ・ヨーコ&プラスティック・オノ・バンド
コンサートパンフ & チケット
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●そのころコンサートで配られていたチラシの数々
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盛本康成
東京出身の40代と、ここまでは大江田と同じ。ものすごい数の外タレのコンサートを観てきた音楽ファン、とこれは足元にも及ばない。忙しい毎日なのに、今もうまく時間を作っては、コンサートに、芝居に、寄席にと足繁く通う。相変わらず歌舞伎観劇には熱心で、この原稿入稿の前日も、「いい芝居を見た」とご満悦の様子。
数多くの雑誌でイラストを描いてます。くすっと笑いながらも、ちょっと苦い思いをにじませる彼のイラストを、お手元の雑誌に見つけて下さい。(大)
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