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Yasunari Morimotoの'Live Scraps'No.8

「神保町の古本屋の間にアメリカが見えた日」

 ここのところ、わりと仕事がヒマなので、いろいろと本を読んでいます。で、こないだ「田宮模型の仕事」という本をブックオフで100円で買って読んでいて、プラ モデル・マニアだった中学生の頃を思い出しました。 当時は作るのがもっぱら飛行機だったせいで、戦車やクルマが得意なタミヤの製品にはあまり目を向けず、レベル、エアフィックス、モノグラム、ハセガワ、ニチモ …こんなあたりを買っていたんですが、読んだらやっぱり面白かった。

 だいたい主流は100円の1/72、時々お小遣いがたまると500円の1/32のものや1/48のを買います。パーツをランナーから切り離して、削って塗って、組み立てて。

 冬の土曜の午後、ポータブル・ラジオから流れてくるシュープリームスの「ラヴ・チャイルド」を聞きながら、コタツに入ってイギリスの戦闘機ホーカー・ハリケーン を作る、なんていうダイアナ・ロスも絶対想像しなかっただろうことをしていました。あ、アニマルズの「スカ イ・パイロット」だったこともあったから、1968年頃ですね。

 友達と出来を競って、一度はプラモデル屋さんの店頭 ケースに飾ってもらったこともあります。これ、わからないかもしれないけれど、もうすごく名誉なことなんですよね。とりわけ中学生にとっては。 そんなに熱中していたプラモデルだったんですが、中学3年になって、レコードを買ったり受験があったり、で大学を卒業するまであまり作らなくなりました。

 その後今の仕事を始めてあまり(というか全然)仕事がない頃、またプラモデル作りを再開したんですけど、 よく考えたら仕事と同じ内容の作業をしてるわけで、すごく疲れました。

 絵を描いている作業台から横にスライドしてプラモデルを作ったりして。バカですね。だから今はあんまりやっていません。不景気でヒマだから再開しようかなぁ。

 あ、でもここを読んでいる方々にはまったく面白くない話でしたね。すいません。さて。

* * *

 

 70年代中頃の神保町の話のつづき。前回はお茶の水駅から、駿河台の坂をおりて靖国通りを渡り、書泉グランデの前をすぎて、小宮山書店まで歩いた。

 小宮山書店をすぎても小さな書店がならぶ。文学の全集ものばかりをあつかう店や田村書店、大久保書店など など。

 その先の松村書店で美術関係の洋書をのぞき、神保町交差点を渡ると、岩波書店をすぎて左側に音楽関係書の矢口書店(ミュージックマガジンやレコードコレクターのバックナンバーや伝記などがそろっています)があり、 そして、今でも落語・芝居関係の本をのぞく豊田書房のならびに伝説の東京泰文社があった。

 この東京泰文社は、例によって植草甚一さんや片岡義男さんの文章に何度となく登場する、主にアメリカのペーパーバックを置く古書店で、日本語のタイトルが書かれた手作りの帯が一冊一冊にていねいにつけられているのが印象的だった。もちろん、オチこぼれの浪人生の僕にとっては原書を読む力量など当然なく、店外のワゴンに置いてある、おそらくは在日米軍関係の家族の子供達 が読んだとおぼしいMADやスーパーマン、キャスパー、 といった漫画雑誌の古本や、唯一日本の本で置いてあっ た早川ミステリの古本、それが目的だった。ずいぶん前に惜しまれつつ店を閉じたと記憶する。

 


●その頃東京奏文社で買った早川ミステリ



●前回書いた虫コミックス



   さて、前回書いたとおり、それらの古書店をめぐって文庫、単行本を問わず手にとっては書架にもどし、いつかは買うぞというデータをインプットしたり、安いものはたまに実際買ったりしたわけだが、この書籍渉猟の散歩にはもうひとつ目的があった。レコード・ショップだ。

 駿河台交差点から神保町まで続く古本屋にまじって、 今の厳松堂と松村書店の間くらい、眼鏡屋のとなりに、 ロック・ワークショップという輸入レコード店があった。 当時は浪人中の身であったし、購買力の主力は本にあったので、そうそうレコードは買えなかったが、ここで買った何枚かは現在も棚の中にある。

 今でも覚えているのはレオン・ラッセルのアルバム(たしかシェルター・ピープル)を買ったときのことで、 このころよくあった「ソリ盤」をとりかえてもらいに行ったところ、そこのおじさんに「アメリカのレコードって黒人のおばさんが詰めてたりするからちゃんと検品しないんだよね」と言われたこと。

 真偽のほどはさておき、その彼の言葉を聞いた時、僕は思わず 「太った黒人のおばさんが鼻歌を唄いながらニコニコとレコードを袋に入 れてはジャケットに差し込んでいるところ」を想像して、自分が持っ ている一枚のレコードを通して遙か彼方のアメリカの体温をわずかに 手に感じたような気がしたのだった。

 思うんだけれどHi-Fiに訪れる人の何人かはやっぱりこんな思いを胸に抱くことがあるのではないか。この原稿を書いていてふとそんなことを想像して少し嬉しくなった。

 次回は神保町の表通りから裏通りに入って不良浪人の神髄に触れる。



●いつだか書いたドノバンの
コンサートパンフが出てきました
 


●そのコンサートの曲目



●そのドノバンのコンサートに出演した
コスモスファクトリーのパンフ






以下は僕が浪人していた頃に姉が行っていた
コンサート(僕は行っていない)


●マハビシュヌチケット




●ムーディー・ブルース・
コンサート・チケット



●ムーディー・ブルース・コンサート・パンフ




●レオンチケット



●レオンパンフ





●ロッドチラシ

 

 



盛本康成
 ロックのライヴ・アルバムを買い求めて、あれっ、何か違うなと思った方は少なく ないに違いない。ライヴ会場のあのわくわくする感じと違うぞ、と。レコード店の店頭でもライヴ・アルバムは、実は人気がない。
 ライヴはやっぱりライヴ。会場にいなくちゃね。サウンドにしても映像にしても、 パッケージされたものには、妙味が少ない。とはわかっていても、ライヴを語るほど 難しいこともないのもまた事実。そんなわざに盛本氏が、軽妙に挑戦中。
 是非皆さん、この下の「ライブラ日記」のバナーをクリックして下さい。可笑しくも切なくほろりとする盛本ワールドへさぁ、どうぞ、ようこそ。

Please come to ライブラ日記!
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